ジジイ、1分だけ最強になります   作:過去カッコー

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2話 パーティ結成のジジイ

「助けてくれてありがとうございました。あと、失礼なこと言ってごめんなさい。」落ち着いたアイナがしっかりお礼と謝罪をしていた。よく出来た娘である。

 

「フォッフォッフォ、いいんじゃよ。さて、そろそろ帰ろうかの。」

 

当然のようにリオルにおぶわれるジジイ。

リオルはもう慣れたらしい。

 

「おじいさん、聞きたいことがあるんですけど。あのムキムキになるの何だったんですか?変身?」

 

「いや、ただの気合じゃ。ものすごく気合を入れてる間だけああなる。」

 

「…」

「…」

 

二人は考えるのをやめた。

 

「それより薬草はちゃんと採取できたのかの?」

 

「あ、はい。これでお母さんもきっと良くなります!」

 

「それは良かった。」

プルプルしつつも優しくジジイは微笑んだ。

 

「いや、良くないです!あんな危ないところに一人で行ってどれだけ心配したと思っているんだ!」

 

「ご、ごめんなさい…」

 

「もう二度とするんじゃないぞ。」

 

リオルの父はリオルが幼い頃に失踪しており、元々身体の弱い母を2人で支えながら生活していた。

リオルは1日18時間も日雇いの配達をしていて1人で家計を切り盛りしていて、アイナの薬師修行の月謝もそこから出している。

リオルは16歳ながら立派に父親の代わりをやっていた。

 

「のう、リオル。ワシら2人でパーティを組んでみないかの。」

なんとなく事情を察したジジイが唐突な提案をする。

 

「ど、どうしたんですか突然?」

 

「ワシは1人じゃクエストは難しいからの、仲間を探しておったんじゃ。お主、ワシと組めば多分今より儲かるぞ。」

 

「で、でも、留守が増えたら母ちゃんとアイナに負担をかけちゃうから…」

珍しく歯切れが悪くなるリオル。

 

「お兄ちゃん、やりなよ!私とお母さんは大丈夫だから!たまには私を頼ってよ。ほら、『勇者』になりたいって昔の夢本当はまだ忘れてないんでしょ?」

 

「アイナ…」

妹の言葉に少し泣きそうになるリオル。

ぐっとこらえてジジイに向き直る。

 

「よろしくお願いします!師匠!」

 

ウム、と満足そうなジジイ。

 

「でも、家族のこともおろそかにしないから。みんなも家族も両方守れないと『勇者』になんてなれないから!」

 

顔を見合わせてニィッと笑い合う兄妹であった。

 

 

翌日、早速ギルド前に集合したジジイとリオル。

 

「ほれ、あそこ見てみんしゃい。」

 

ジジイが掲示板を指差す。

そこには昨日倒した樹皮熊について書いてある紙が貼ってあった。

なんとアレは賞金首だったらしい。

 

「ふーむ、証拠として熊の牙がないと賞金はもらえんのか。仕方ない、牙を取りに昨日の場所までまた行くかの。」

 

早速2人は森に入る。

いつものようにリオルがジジイをおぶって疾走する。

 

「あのー、これがこのパーティの基本陣形なんですかね…」

 

「コンパクトでよいじゃろ。それぞれの役割にアサインして生み出されたシナジーにコンセンサスを取るのじゃ。」

 

「前方に蜘蛛が30匹くらいいます!多分襲ってくるヤツです!うわ、なんか糸飛ばしてきた!」

ワケのわからないジジイの戯言を無視してリオルが報告する。

てのひらサイズの蜘蛛が大量にこちらに向かってきていた。

 

「む、仕方ないの。全部つぶしていくぞ。まずは一番右のヤツからじゃ!」

 

的確に出される指示をきっちり遂行してどんどんつぶしていくリオル。

 

(やはりコイツはセンスが良いのう。育てがいがありそうじゃ。それにしてもこれだけの蜘蛛がいるとなると奥にはアイツがいるかもしれん…)

 

「着きました!昨日の場所です!うわっ、何だアイツ!?」

巨大な樹皮熊に負けず劣らず巨大な蜘蛛がそこにはいた。

 

「あの熊を餌にする気かの。とんだバケモノじゃな。」

 

リオルから降りたジジイが気合を入れる。

ボフムッと音を立てて筋肉が瞬時に膨れ上がり百戦錬磨の武人の姿になる。

 

「行くぞい、バケモノ。悪いんじゃがソイツはワシらのものじゃ。」

 

ダンッと踏み込み、一気に距離を詰めて試合を決めに行く。

が、蜘蛛はその巨体に似合わない俊敏な動きで右に左にそして樹上にと3次元の動きでジジイを翻弄しようとする。

スピードでは蜘蛛のほうが明らかに上だった。

 

「アレをやるか…」

 

粘着糸を乱れ撃ちし、武人の動きを封じようとする蜘蛛。

が、ジジイも3次元の動きで事も無げにかわし続ける。

一進一退、互いに決め手に欠ける攻防が数十秒続いた。

 

「そこじゃ。」

 

ジジイが小声で呟いた瞬間、巨大蜘蛛が着地した太い枝が唐突に折れた。

もがきながらも成す術なく地面に落下する。

 

先程の攻防の中で密かに枝にダメージを入れておき、そこに蜘蛛を誘導したのだ。

 

間髪入れずに天高く飛び上がるジジイ。

空中で一瞬だけ静止し、今度は一気に急降下!

 

ドゴーン!!

渾身の踵落としが巨大蜘蛛のやわらかい腹に命中しギチギチに詰まっていた中身が爆散した。

地面には半径数mのクレーターが出来ていて、その威力の凄まじさを物語っていた。

 

「1分じゃ。」

 

ぽひゃん、と間抜けな音を出しながら元の姿に戻るジジイ。

戻った瞬間すごい勢いでプルプルしだす。

 

「やったー!さすが師匠です!」

 

喜びを爆発させながら駆け寄ろうとするリオル。

が、次の瞬間…

 

もう一歩も動けないジジイの背後から先ほどと同じ大きさの蜘蛛が現れ襲いかかった!

 

「あ、ワシ死んだわ。」

 

ズオウッ!

なんの前触れもなく蜘蛛の脇に巨大な火球が現れる。

 

そのまま巨大蜘蛛に命中し、一瞬で燃やし尽くしてしまった。

 

「な、何じゃ!?新手か!?」

 

プルプルの身体でファイティングポーズを取るジジイ。

 

数秒後、見知らぬ魔法使いの女が現れた。

 

「……なんで要介護のおじいちゃんがこんな場所にいるのよ。徘徊?まあ、いいわ。助けてあげたんだかr ぷぎゃッ」

 

唐突に現れた魔法使いは盛大に転んだ。

 

「…」

「…」

「…」

 

微妙に気まずい空気が場を支配した。

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