ジジイ、1分だけ最強になります   作:過去カッコー

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5話 物語のはじまり

「フォッフォッフォ。これから3人でパーティーを組むんじゃ。

ちゃんと名乗っておこうかの。

ワシの名はレグナード・アルマリウス、元勇者じゃ。」

 

「いやいやいやいや!ちょっと待って!展開に全然追いつけてないんだけど!説明を要求します!」

 

先に再起動した七ノ歌がジジイに早口で詰め寄る。

ちょっと怖い。

 

「ほ、本当に勇者レグナード・アルマリウスなんですか!?

確か勇者って魔王討伐後に行方不明になっていたはずです。」

 

リオルも一緒になってジジイに問い詰める。

 

少し離れた場所にあった岩に腰を掛けると、ジジイはゆっくりと『魔王討伐の真実』を語り始めた。

 

「ワシは魔王を倒していない。戦ってすらいないんじゃ。」

 

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70年前、魔王城———

 

単身で魔王城に乗り込んだ勇者レグナードは、魔王がいる玉座の間に扉の前までたどり着いていた。

満身創痍で装備もボロボロ、既に気力だけで立っている状態だった。

それでもここで退くわけにはいかないと気合を入れ直して勢いよく扉を開けた。

 

直ぐに目に入ったのは玉座に鎮座する魔王だった。

が、その腹にはひと目で分かるほど大きな穴が空いており、ダラダラと流れ続ける血がその周囲に血溜まりを作っていた。

 

「遅かったではないか、勇者よ。

私が死ぬことがあれば、それは貴様に敗れたときだと思っていたが、まさかこんなことになるとはな。」

 

予想外の事態にレグナードは反応できずに完全にフリーズしてしまう。

 

「貴様にも散々手こずらされたな。本当に忌々しい。

故に、貴様にとびきり性質の悪い呪いを遺そう。」

 

「ま、待ってくれ!何だこの状況は!お前は何を言っている!」

 

詰め寄ろうとしたレグナードを阻むように黒い霧が彼を覆った。

霧を振り払おうともがくレグナードを眺めながら魔王は続ける。

 

「貴様には不死の呪いをかける。だが、死なないだけだ。

その恐ろしさはそのうち理解するだろう。

解呪の方法は一つ。こやつら5体全員を殺すこと。」

 

レグナードの頭に5体の魔物の名前や姿、その他断片的な情報が流れ込む。

ようやく霧から解放されたレグナードが魔王のもとにたどり着く。

 

「ふざけるな!俺はお前と戦いに来たんだ!何をワケのわからないことを言ってるんだ!」

 

事態が飲み込めず半狂乱になっているレグナードを魔王は満足気に眺める。

 

「ふふ… 最期に貴様の愉快な姿を見れて少しだけ気が晴れたぞ。」

 

そう言って最期まで威厳を崩さないまま魔王は静かに事切れた。

 

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レグナードは王都に戻った。

そして、魔王の最期をありのまま報告した。

 

「そうか、『魔王討伐』大義であったな。」

 

王は冷たい目でレグナードを見下ろしながら告げる。

 

「い、いえ、私は魔王を討伐しておりまs…」

 

遠慮がちに否定しようとするレグナードを遮るように王が言葉をかぶせる。

 

「いいや、勇者レグナードは魔王を討伐した。たった1人でな。」

 

王はレグナードを救国の英雄に祭り上げ、「厚遇」という名の軟禁をしたのだった。

「単身で魔王を討伐した勇者の保有」というカードは他国に対して絶大な効果をもつものになる。

王国と事を構えれば前線に勇者が出てくるかもしれないという可能性だけで脅威となるのだ。

 

そこにレグナードという”人間”は不要だった。

ただ、「魔王討伐した勇者」という役割だけが求められたものだったのだ。

王国にいる限り「政治の道具」としての人生しかないことが確定した瞬間だった。

 

レグナードは何度も抗議をしたが、結局受け入れられることはなかった。

失意の中1年を王城で過ごした後、レグナードは姿を消した。

 

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「逃げ出した後は大変じゃったなぁ。

まあ、今はもう利用価値がなくなったのか追手もなくなったがの。」

 

「お、思った以上にヘビーな内容ね… 余計に混乱してきたわ…」

 

「不死って呪いというよりも良いものじゃないんですか? あと、倒さなきゃならない5体の魔物って何なんですかね?」

 

思いついた疑問を素直にぶつけてくるリオル。

 

「不老不死なら望む者もおるじゃろ。じゃが、これはただ死なないだけじゃ。

老いもするし、傷を負い痛みを感じる。

病や毒、呪いなんかの苦しみも和らぐことはないんじゃ。

仮にバラバラにされたとしても、死ねずに壮絶な痛みと苦しみを永遠に味わい続けることになるんじゃろうな。」

 

「な、中々エグい呪いじゃない…」

 

身体は劣化し続けていずれ動かなくなる。

それでも生き続けなければいけないというのは地獄以外の何物でもない。

そんな想像をして七ノ歌は顔をしかめた。

 

一息ついてからもう一つの疑問にも答えるジジイ。

 

「おそらくワシが玉座にたどり着く少し前にクーデターでもあったんじゃろ。

返り討ちにしたものの仕留めるまでには至らなかった。

じゃから、後始末をワシに押し付けたというところじゃろうな。まったく、迷惑なことじゃわい。」

 

「それで、呪いは解けそうなんですか?」

 

真剣に心配しながらジジイに問いかけるリオル。

 

「いや、始末できたのはまだ2体だけじゃ。

すっかり衰えて今はもうまともに戦えるのは1分だけときた。

流石にちょっと焦ってきとるわい。フォッフォッフォ…」

 

呑気に笑ってはいるが、心無しかいつもの元気はないように見えた。

 

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なんとも言えない空気が支配する中、唐突に声が響いた。

 

「ハハハハ!やっと見つけましたよ、元勇者。

雇っていた盗賊の反応が消えたので確認に来てみたら、下っ端のくせに大物が引いたではないですか!」

 

現れたのは細身のスーツをまとった男。

短髪で口元周辺を囲うようにヒゲを生やしていて、どこか全体的に毛深い印象を受ける。

 

その男を見たジジイの目が見開かれる。

 

「貴様は…ゾルダーク・ゴリドン!」

 

「いかにも。長い間探していましたが、ようやく見つけましたよ。

2人もやられているので、それなりの情報を持っているんですよ。

あなたは1分しか戦えない。そして、今はその1分を使い切っている。

ともなれば、やることは一つですね。」

 

禍々しい気配が爆発し、それに伴い男の姿も変貌を遂げる。

身の丈3メートルを超える屈強なゴリラのような魔物になったのだ。

そして、その腹には巨大な目玉があり、ギョロギョロと不気味に動いている。

 

「グアアァァァ!!!」

 

耳をつんざくような雄叫びを上げると近くにあった大岩に拳を叩きつけると、ドォンと轟音をたてて大岩は砕け散ってしまった。

 

今まで体験したことのない凄まじい迫力に完全に怖気づくリオルと七ノ歌。

 

「大人しくここで潰れろ!!!」

 

先程の慇懃無礼な態度とは打って変わって暴力的に吐き捨て、猛スピードで迫ってくる!

 

「1秒だけ…」

 

そうつぶやき、ジジイが前に出る。

あと一歩に迫られたタイミングでジジイの身体が膨れ上がった。

 

残していたわずかな時間を使ってのたった1秒の攻防。

 

想定外の変身に一瞬だけ戸惑うゾルダーク。

だが、すぐに立て直しレグナードの狙いに気づく。

レグナードは見るからに弱点である腹の大目玉を見据えていた。

 

この一撃さえ凌げば自身の勝利であることを確信し、腹の目玉を防御する。

だが、目玉めがけて放たれたレグナードの突きは直前で軌道を変えた。

目玉狙いはフェイクだったのだ。

 

「虚牙一閃!!」

 

がら空きになったゾルダークの喉をレグナードの拳がピンポイントで捉える。

メリメリ喉骨が軋む音がし、次の瞬間ゾルダークは派手に吹き飛び、岩に叩きつけられた!

 

同時にレグナードの変身も解けて、元のしなびたジジイに戻ってしまう。

 

「逃げるんじゃ!!」

 

間髪入れずにジジイが叫んだ。

リオルがジジイを回収し、3人は全力で逃走した。

 

喉を強打されたことで呼吸困難に陥りゾルダークは動けなくなっていた。

 

「絶対に!絶対に許さない!!

お前ら3人とも!次はグチャグチャにして叩き潰してやる!!」

 

声にならない声で無理やり叫びながら離れていく3人にありったけの憎悪を叩きつけるのだった。

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