ジジイ、1分だけ最強になります   作:過去カッコー

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6話 怪物の襲撃

ドゴーン!!

 

ゾルダークとの戦闘の翌日、ジジイ達のいる街に突如轟音が響いた。

街の外壁がなんの前触れもなく破壊されたのだ。

もうもうと上がる土煙から現れたのは腹に大きな目玉がある巨大なゴリラ、ゾルダークだった。

 

「レグナード! この街にいるかぁ?

さっさと出てこないと町ごとぶっ潰すぞ!」

 

轟音に驚いて通りに出てきた住民はゾルダークの姿を見て一気にパニックになった。

 

「キャー!!」

「な、何だアレは!?」

「魔物の襲撃だ! 早く逃げろ!!」

 

蜘蛛の子が散るように逃げ惑う住民たち。

 

「ハッハッハ。 逃げろ逃げろ!

どんどん騒いでレグナードを呼び寄せろ!」

 

ゾルダークは嬉々として周りの建物を破壊しながら街の中を進んでいく。

 

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一方、ジジイたちがいたのは襲撃地点からはちょうど街の反対側だったが、外壁や建物が破壊される轟音はそこまで届いていた。

 

「くっ、まさかゾルダークの襲撃か?

白昼堂々来るとは思わんかった。 急がねば!

リオルとナノカはここにおるのじゃ!」

 

1人飛び出そうとするジジイの腕をリオルがむんずと掴んだ。

 

「待ってください! 俺も行きます!

急ぐなら俺がおぶっていった方が良いでしょ?」

 

「そ、それはそうじゃが、アヤツは危険すぎる。

まだお主の手には負えないんじゃ。」

 

「私も行くわ。 私とリオルもアイツのターゲットになってそうだもん。

おじいちゃん1人に全部まかせるよりも3人で戦った方が勝率は上がるでしょ?

大丈夫、足手まといにはならないわ。」

 

かすかに震えながらもワンドを強く握りしめて七ノ歌はジジイをまっすぐ見据える。

 

「まったく… 最近の若者は頑固じゃのう。

すまぬが力を貸してくれぬか?」

 

2人は力強く頷いた。

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「マ、ママァ…」

 

住民が逃げ出して少し静かになった通りに、今年7歳になる小さな少女が1人でうずくまってシクシクと泣いていた。

手には、友達にあげるはずだったクッキーの袋が握られていた。

 

友達の家に遊びに行こうとした途中で混乱に巻き込まれ、足をけがしてしまったこともあいまって動けなくなってしまっていたのだ。

 

「ああん? まだ残っているガキがいたのか。

ククク、グチャグチャに潰したガキの死体をレグナードに見せつけてやるのもいいなぁ。」

 

「い、いや… 助けて…」

 

獰猛な笑みを浮かべながら少女に近づき、振り上げた両腕を叩きつけた。

 

ドゴン!!

 

ためらいなく振り下ろした両腕に少女を潰した感触は感じられなかった。

突如現れた巨大な盾がゾルダークの一撃を防いだのだ。

 

「ん? なんだぁお前ら?」

 

盾の影からは巨躯の戦士、そしてその後ろには更に3人の冒険者が立っていた。

豊満な身体の美人賢者、小柄なスカウト、そしてパーティー全体を指揮するリーダー。

そう、それはレグナードを追放したあのパーティーだった。

 

「もう大丈夫だ、お嬢ちゃん。

このお姉ちゃんが君をママのところまで送り届けてくれる。」

 

リーダーが少女に優しげに声をかけるとスカウトに目配せをした。

スカウトは静かに少女を抱きかかえるとそのまま戦線を離脱する。

 

「俺達はこの街の冒険者だ。

随分派手に暴れてくれたみたいじゃないか。

爺さんに用事があるようだが諦めろ。

 

…お前はここで俺達が討伐する。」

 

リーダーがゾルダークに剣先を突きつけながら宣言をした。

それに呼応するように、戦士が盾を構えて前に出る。

同時に賢者がパーティー全員に防御力強化の魔法をかける。

 

「お前らが俺を討伐? 舐めてんじゃねえ!!

あっさりぶっ殺してやるよ!」

 

激昂したゾルダークが凄まじい勢いで襲いかかる!

 

ガン!ガン!ガン!ガン!

 

が、怒涛の連撃も戦士が冷静に危なげなく受け止めきっていた。

 

ヒュン! ザシュ!

 

ゾルダークの攻撃の合間を縫うように盾の影から現れたリーダーが一撃を浴びせてすぐに退く。

 

「ガー! うざってぇ!」

 

かすり傷程度のダメージではあったが、怒りのボルテージが上がっていきゾルダークの攻撃は更に苛烈になっていく。

 

ゴンッ! ゴンッ! ゴンッ!

 

大振りだが一撃の重さが確実に増していき、さすがの戦士も次第に圧され始めた。

 

「回復します。」

 

消耗した戦士の体力を賢者が回復させ、戦況を立て直す。

 

(長期戦はマズイな。時間が経つほど攻撃力が増している。

だが、時間的にはもうそろそろだろ。)

 

チラリと周りを確認したリーダーが戦士と賢者に合図をする。

頷いた戦士が盾を構え直した。

直後、今まで受ける一方だった戦士が猛然とシールドチャージを仕掛ける!

 

「そんな攻撃が効くかよ!」

 

迫る戦士の盾を全力で殴りつける。

一瞬だけ拮抗するも結局力負けをしてしまい、戦士は吹き飛ばされてしまう。

 

「ハハッ そんなもん… なに!?」

 

嘲りの笑みを浮かべた瞬間、足元に潜り込んでいたリーダーに気づき焦りを見せるゾルダーク。

シールドチャージでゾルダークの視界を塞いだタイミングで絶好の位置につき剣を構えていたのだ。

 

シュン!!

 

鋭い突きがゾルダークの顎をめがけて繰り出される!

 

「ぅぐっ!」

 

身体を引き、空を見上げるような形で何とか突きをかわすも、そこでゾルダークはさらなる脅威に気付いた。

 

上空には巨大な槍が浮かんでいたのだ。

その穂先はしっかりとゾルダークに狙いを定めている。

 

『ギガントランス』

 

賢者が自身が持つ唯一にして最強の攻撃魔法を唱える。

もはや回避は不可能、受け止める選択肢しかゾルダークには残されていなかった。

放たれた矢のごとく真上から迫りくる巨大な槍をゾルダークは全力で迎撃する。

 

「クッソ、がー!!!」

 

虚を突いた攻撃であったが、それでもゾルダークは防ぎきった。

最大の危機をしのいだゾルダークは一瞬だけ緩む。

 

「詰みだよ。」

 

「なに…?」

 

リーダーのつぶやきとかすかな風切音を聞き、ふと自分の腹を見下ろすゾルダーク。

そこには大きな目玉に深々と突き刺さった矢があった。

 

「ゴフッ… ふざけやがって…」

 

血を吐き膝から崩れ落ちながら数十メートル先にいた人物を見つけ、すべてを理解した。

そこにいたのは最初に戦線を離脱したスカウトだった。

 

スカウトは少女を送り届けた後、すばやく戦場に戻り潜伏しながら密かにリーダーに合図を送っていた。

リーダーは目玉狙いの狙撃を悟られないよう、ひたすら上空へと意識を逸らすよう誘導のための連携を組み立てたのだ。

結果、スカウトは真正面からの暗殺を完遂した。

 

ズゥンと倒れ伏すゾルダークを見届ける4人。

 

「やったー!」

「ふう、上手くいくかヒヤヒヤしましたわ。」

「ああ、でも何とか討伐出来たな。」

「みんなお疲れ様。よくやってくれた。」

 

スカウトが歓声を上げ、メンバーそれぞれも互いを労うよう声を掛け合う。

肉体的にはまだしも、極限の集中が続いたせいで精神的には全員相当に疲弊していた。

 

「さて、そろそろ戻るか…」

 

リーダーがそう声をかけたその時、倒れ伏したゾルダークの身体がドクンと大きく脈打った。

 

「待て、様子がおかしい。 全員構えろ!」

 

ゾルダークの黒かった体毛が急速に赤色に変化しだし、もともと大きかった身体が更に巨大になっていく。

 

「ゴアァアァぁア!!!」

 

耳をつんざくような雄叫びを上げてゾルダークは起き上がる。

腹の大目玉はつぶれ、無惨にもグチャグチャになっていた。

 

大目玉は確かにゾルダークの弱点ではあった。

だが、同時にゾルダークの理性として、自身の精神をコントロールするための制御装置でもあったのだ。

今、それを失ったゾルダークは原初の獣に立ち返り、ただただ見境なく破壊をもたらすだけの存在になってしまっていた。

 

「来るぞ!」

 

リーダーの叫びと同時にゾルダークが飛びかかる!

パーティーを守るため渾身の力を込めて盾を構える戦士。

 

ドガン!

 

だが、一瞬も持ちこたえられず、あっさりと吹き飛ばされてしまう。

意識すら失ってしまっていた。

 

「嘘…でしょ…」

 

あれほど頼りがいのあった戦士がたった一撃で沈んだ。

あまりに桁違いなパワー、これまで見たことがないほどの「純粋な暴力」に棒立ちになってしまうスカウト。

 

「クソッ!」

 

恐怖を押し殺してリーダーは渾身の一撃を叩き込む。

が、1ミリも刃が通らず、ただ無力にもその頑強な外皮に押し返されるだけだった。

 

もはや勝機はなく、逃げることすらままならない。

わずかな攻防だけでリーダーは自分たちの末路を静かに悟ってしまった。

 

リーダーに狙いを定めたゾルダークが両腕を振り上げる。

致死確実なソレは1秒後に自分をグチャグチャに砕くだろう。

結末を受け入れ目を閉じてその時を待った。

 

ドカッ!

 

最期の一撃が振り下ろされる。

だが、どれだけ待っても痛みと衝撃は訪れなかった。

 

不思議に思い、再び目を開くとそこには筋骨隆々の巨躯の男の背中があった。

攻撃を受け止めた腕からはダラダラと血が流れていた。

 

「ハァッ!」

 

男はゾルダークの巨体を難なく蹴り飛ばした。

 

「じ、爺さん…?」

 

「すまんかったの、お主らが持ちこたえてくれたお陰でギリギリ間に合ったわい。

とりあえず全員生きてるようで安心じゃ。

それにしても、お主らゾルダークをここまで追い詰めるとは本当に強くなったのう。」

 

「いや、結局俺達じゃかなわなかった…

アンタに負担をかけたくなかったが、俺達はまだまだ未熟だった。」

 

苦々しく唇を噛むリーダー。

 

「ワシはまだまだ現役じゃよ。心配せずにあとはワシらに任せい。」

 

すぐに起き上がってくるゾルダーク。

 

「ガアアァァァア!! レグナードォォオ!!」

 

レグナードを認識するとゾルダークは前にもまして猛り狂う。

 

「さて、今度こそ決着を付けさせてもらうぞ。」

 

「俺達も援護します!」

「なんか昨日見たのと違ってない!? でも、ここまで来たらもう逃げられないわね。

私だって、やれることはやらないと!」

 

リオルと覚悟を決めた七ノ歌も戦列に加わる。

レグナード、リオル、ナノカ——3人のパーティーが、ゾルダークに立ち向かう。

 

「行くぞ!」

 

杖から剣を抜き、レグナードはゾルダークへと斬り込んだ。




書き溜め分を全て投下しましたので、ここからは週一程度の投稿頻度になります。
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