伏黒家の末裔、現代最強の生まれ変わりと噂される女に見初められる 作:呪術児
「………。」「目、覚めた?」
瞳と魂を入れ替え六眼による急激な視界の変化で脳がぐらついた俺は、彼女のアドバイス通り目を瞑り、何でも見える目を見ようとしない努力をしていたのだが…いつの間にか意識を失ってしまったようだ。
頭がなんかゴツゴツとしたものに当たってると思ったら、瞳が俺の体で膝枕していたらしい。こうしてみると、男の肉体というのは結構いかついのだなと再確認させられる。
「フッ、愛しの人を愛しの人の肉体で膝枕出来るなんて♡肉体の記憶を辿れないのはちょっと残念だけど。」
瞳の奴はそのシチュに恍惚としているらしく、俺は寒気を覚えてガバッと起き上がった。肉体を入れ替えても記憶が共有されないという事実には安心した。
「うぐ…」
「あーまだ無茶しないでよ。意識失うくらいまだ慣れてないんだからさ。」
はいこれと、瞳は真っ黒な布を渡して来た。これで頭を撒けとでもいうのだろうか。
「これは五条家が先祖代々作ってる秘蔵の呪具だよ。」
ただ黒いだけの布ではないとのことで、六眼の当主が産まれた時のみ使われる視界を塞ぐ術式効果が刻まれているという。
「………悪いな。」
その布を撒くと本当に何も見えない、何も感じない。これはこれで不気味ではあるのだが、先程より大分楽になった。瞳は俺が素直に感謝の言葉を述べた事に舞い上がっている。本当にめでたい頭をした奴だと改めて思う。
「これ付けてても、呪力は見えるんだな。」
サーモグラフィーのように、俺が15年培ってきた蒼い呪力が目に入って来る。しかも均一に薄く俺の肉体を形どっている。かなり高度な呪力の纏い方だ。こんな芸当俺には出来ない、瞳の生来の才能だろう。六眼がなくてもこのレベルの運用が出来るのか。
「六眼がないと呪力強化の制度は落ちるけど、普通の眼も案外悪くないね。頭痛くならないし。」
瞳が俺の思考を覗いたような事を言うのにも既に慣れたが、彼女は言葉通り俺の肉体で呪力を運用し、倍の速度で経験値を刻み込んでいるようだ。
「呪力出力や強化術は生まれつきの才能もあるけど、後天的にもかなり伸ばせるんだよねぇ。新宿決戦の高専術師達はそれで呪いの王を仕留めたって実家の人が言ってたし。」
瞳は俺の肉体で呪力を放出している。俺が普段やってる時とは比べ物にならない量、同じ肉体を使っているというのにここまで差が出るものなのか?
「ほら、アンタもボケっとしてないで。私の体使いなよ?」
瞳の言う通り、俺は彼女の体を使って呪力を放出し、纏ってみる。
「うおっ………」「ちょっと!私の体で間抜けな声出さないでよ、まあ面白いからいっか。」
彼女の呪力出力は後天的努力で伸ばすとか以前に、常人とは比にならない天賦の領域だ。
科学室の水道は水圧が高いみたいなそんな感じ、チョロチョロ水を流す家庭用の蛇口とはレベルが違う。一度に放出出来る呪力量の莫大さに気圧されてしまう。
「やっぱり呪力操作はまだまだ未熟だねぇ。まあそのレベルで準一級やれてるなら先は期待できるけど。」
瞳は肉体の記憶をたどり、全身に満遍なく呪力を纏ってみろと言う。呪力強化術は術師の基本的な能力だが、ここを疎かにしては強くはなれない。呪力強化は肉弾戦においての
「呪力を薄い空気やスーツのように全身に纏う…これが出来る一流の術師ほど攻撃が読まれにくいんだよね。」
二流の術師は攻撃前に手や足に呪力を集中させてしまうから読みやすいのだと。
「攻撃する時も防御する時も、被弾部位に一気に呪力を溜める”瞬発力”も大事だよね。」
瞳は空に正拳突きをしながら、拳を振り切る直前に一気に呪力を放つ練習をしろという。
「呪力の流れを読める六眼もあるし、自分の体でやるよりは楽な筈だよ?」
「………。」
パンッ パンッ
返事こそしなかったが、俺は瞳の言葉通り攻撃の瞬間に呪力を出す”瞬発力”の修業に取り掛かった。今までこんな事意識もしなかった。ただなんとなく、感覚で呪力を使っていた。
「そうそうそんな感じ。やっぱり六眼ある私の体だとやりやすいでしょ?」
(瞳みたいな天才、俺は勝手に感覚派だと思ってたが………)
認識を改める必要がある、彼女は強くなる為に呪術の
「ねぇ。」「………なんだ?」
「玉犬召喚してみていい?」「やめろ。」
俺の鍛錬をただ見ているのが退屈になったのだろう、瞳は俺の十種影法術を使いたいと言い出した。勿論嫌だったが、結局瞳の奴は強引に二対の玉犬を召喚し、モフモフして悦楽に浸っていた。
玉犬達も舌を出して満更でもない顔をしていたのが腹立つ。
「………はあ」
瞳の相手をまともにしていてもストレスがたまるだけだ。俺はまたスパークリングに一人戻った。