伏黒家の末裔、現代最強の生まれ変わりと噂される女に見初められる 作:呪術児
「正拳突き修行はもう十分でしょ。」
瞬発力強化のためのスパークリングをしていた俺に対して、領域展開の習得には実践が一番だろうと、自分の体の記憶を通してやってみろと瞳は言ってきた。
いきなり外殻の構築をするのは難易度が高いから、この体育館をそのまま結界に流用しろと瞳はアドバイスしてきた。他にも色々言ってきたが…
「領域展開に一番大事なのはねぇ…世界に自分を広げる、押し付けるみたいな?世界に自分が存在してるんじゃなくて、自分が世界に存在してやっている、あるいは自分が世界そのものって考えるというか…」
「言うなれば、圧倒的な自己………かな。」
瞳の例えはイマイチ分かり辛かったが、最後の”圧倒的自己”が大事だという言葉は腑に落ちた。
自分勝手で俺を振り回すコイツが最強な理由がまた一つ解き明かされた気がする。
今までの俺はどこか自分を抑制していたのだろうか。そんな事を考えながら、自分は世界より優位なんだというイメージをするよう心掛けながら、瞳の肉体の記憶を辿って領域の掌印を結んだ。
領域展開
体育館を外殻として、不完全で閉じていない領域が展開された。辺り一面に広がる美しい小宇宙、入れ替わっても心象風景は肉体依存なようだ。必中効果は付与されていない、単純に無下限呪術の基本性能を120%向上させるだけの領域。
「私の体を使った割にはお粗末だったけど、ちゃんと領域構築出来たじゃん。」
万が一に備えて必中効果を無視する簡易的な結界を貼っていた瞳が、掌印を解いて偉い偉いと撫でようとしてくるので俺はヒョイと避けた。
「それ、簡易領域とは違うな。」
「あれ、興味ある?」教えるのが好きな瞳の授業がまた始まった。
瞳が貼った結界は”
「簡易領域と比べて色々メリットデメリットはあるけどね。簡易領域は展開時に居合のポーズを取るのに対して、彌虚葛籠は掌印を結ぶのが工程なんだ。」
掌印を結ければ早々領域が剥がれる事もないが、反面両手が塞がるのは欠点だとか色々解説してくる。
「まあ簡易領域使えるアンタならすぐ習得できると思うよ?」
こんなチンケな術はどうでもいいからと、今度は元の肉体で領域を使う番だと瞳はまた入れ替わりの呪具を取り出した。
「えへへ、近いね♡」
俺の声でサブイボが立つ事を言わないで欲しいが、修行の疲れも相まって最早言葉を返す余力はなかったので無視した。
「ふーっ、名残惜しいけど戻っちゃったね。まあ何だかんだ元の体が一番落ち着くけど。」
別に俺は名残惜しくはないが、寧ろ六眼がなくなった事で頭痛も無くなり清々しているくらいだ。
「んじゃ、早速領域行ってみよーか!」
瞳は手をパンパン叩いて俺をまくしたてる。言われなくたって俺もそのつもりだ…
(俺の先祖で領域を修得してた十種使いは”薬師如来印”を使っていたと聞く。)
それにあやかり、俺も両手を握り込むような印を結ぶ。本日二度目の領域展開、
自己を、自我を、己を世界に広げる…押し広げる…!瞳の言っていた言葉を思い出し、もっと我儘にやってやろうと気を大きくする。
ザパン………
俺の足元から、影と呪力で構築された大波が広がる。
「おお…エグイ…」
俺の領域を六眼で見遠しある程度領域効果を把握した瞳は思わずそう漏らした。
「エグイってなんだよ。」
瞳は展開した俺ですらまだ分かり切っていない領域の仕様を解説しだした。結界に付与し効力を上げようとした術式は御厨子の筈だが、先天的に十種影法術を持っていた事と心象風景の具現化の影響でどす黒い影の荒波という領域が構築されたのだろうという。
「この影さ、足を呪力で強化してないと私も沈んじゃうよ。全く…アンタの心の中どうなってんのよ。」
心象風景が真っ黒だなんて相当アレな性格をしてるんじゃないと瞳は珍しく気が引けたような事を言って来るが、俺の性格がお世辞にもいい方じゃないのは言われなくとも自覚している。他人と仲良しこよしは苦手、攻撃的で嫉妬深い所も多分にあるから心象風景がこれなのは納得出来る。
「ただ、この環境効果は武器にもなるよね。」
必中効果のない不完全な結界だが、上からは斬撃、下からは全てを飲み込む影が襲ってくるのは相当脅威だろうというのが六眼を通してみた瞳の結論だ。
「そうか………」
瞳は嫌いだが、俺の事をを驚異だと言ったことにどことなく高揚を覚える。最強に認められたから自尊心が満たされたのだろうか。
「はいはい、充足に満たされるのはいいから。」
領域が持続しているうちに、さっさと円鹿を調伏しちゃいなよと瞳に言われた。
「そうだな。」
俺は鹿の影絵を作り、円鹿の調伏の儀を始める。今の俺なら、負ける気がしない。
”円鹿”
この日俺は、不完全な形ではあるが領域と反転術式を会得した。