『終焉』が近いであろう青空世界で私達は生きる......らしいよ? 作:エリオ(別同位体)
星核ハンターにブルアカ合うんじゃね?という思いつきで作った作品です。
文章レベル3ぐらいですが、楽しんでくれたら幸いです。
今日は昨日の明日
学園都市キヴォトス。
銃社会であり多くの生徒たちと様々な学校が存在する世界。
本来女子生徒の甘酸っぱい青春で溢れている筈この世界は混沌の渦を巻き起こしていた。
キヴォトスの行政を握る【連邦生徒会】。首都あたるエリア
電車バス含む交通便停止、発電設備ダウン、ヘルメット団・スケバン不良生徒の多勢闊歩、連邦矯正局にて囚人脱獄、武器不正流通率2000%上昇等々。幾ら銃社会とはいえ法の許容範囲を超えていた。
あちらこちらに銃音と爆音の嵐が鳴り続け、裏に潜んでいる筈の強大な悪の組織やら下らないお騒がせ集団まで千差万別に暴れ散らし、無関係な学生や罪なき住人たちを困らせている。
治安維持を握る組織らは混乱を収めようと奔走する。しかし、一向に止む気配はない。
こうなった原因はただひとつ。
キヴォトス中誰もが認める著名人【連邦生徒会長】が行方知らずとなってしまったのが始まりだった。
最初は秘匿していたものの、キヴォトスの中枢と言われる最重要建造物【サンクトゥムタワー】を唯一制御できる人が居なくなった結果こそが、今回の地獄絵図を生んだのだ。
埒が明かないと慌てる連邦生徒会。
連邦生徒会のNo.2に当たる【七神リン】はこの収まらない混乱を解決すべく彼女は残された会長の置き手紙を頼りにある人物の迎えへと向かう。
────”先生”
連邦生徒会長が直々に指令した外からの
あるビルのエレベーター。
本来関係者意外立ち入り禁止である建物の中で独り、人影が佇んでいる。
「♪〜〜〜」
外では大変な目に遭っている中、人影…蜘蛛の
端から見ればこの女は完全に自分の世界に酔っているように見えるだろう。
あまりにの混乱故の自暴自棄にも見える。
時は流れ、歌は佳境を越えてようやくクライマックスへ終ろうとした直後。
大きな爆音と共に激しくエレベーターが揺れ出した。
「⋯⋯まだ私の出番じゃなさそうね」
『いやちょうどいいタイミング』
目の前にプログラムモニターが現出したにも関わらず、女は対して驚かず寧ろ、待ち続けたと呆れた態度をとる。
『午前○○時○○分、時間通りだカフカ』
「
『いいやさっきのはただの砲弾の爆風。トリニティ製のクルセイダー1型で遊んでいる不良生徒によるもの。まあ55分後には例の"大人"率いる生徒4人によって大破されるって書いてあったけど』
「へぇー~♪私たちは彼らと交戦するのかしら?」
『分かっている癖に。会ってもいいけどその場合
モニターの人物はにカフカと呼ばれた人物に対しため息をつく。その言葉の裏にはつまらないという感情が溢れ出ていた。
『はああ…今日に至るまで、最近はハッキングやら素材集めとかで本当に退屈だった。必要なことだと理解しているけど、手応えなさすぎて暇つぶしにもならかった』
「ごめんね。今日の任務はただ『手に入れる』だけだから。後で好きなもの買ってあげるわ」
『了解。終わったら私の出番が出るまでカイザーコーポレーションの所でレベル上げしておく。──"先生"か。あの大人は私を楽しませてくれそう』
──ピッポン、とエレベーターが開く。
『あ、そうそうそこから50歩先、バタバタヘルメット団が居るから。目的地につくにはかなり時間がかかりそうだけど、まあカフカなら問題ないでしょ?』
「ええ、問題ないわ」
出口に一直線。優雅に歩く。
モニターの仲間が言っていた通りにちゃんと50歩先。一集団が留まっていた。
バタバタヘルメット団。
キヴォトスの各地で活動するヘルメットを身に着けた武装不良集団。その一派。
規模は百にいくそれなりの集団。
立入禁止のビルから出たためか、彼方側が気付き始めた。
「おいおまえ。ここはバタバタヘルメット団が占領したところだ!」
「通りたければ通行料払え!」
出会ってから早々
相変わらず
こっちに来る存在に生意気と感じた団員たちは苛立ちを覚える中、ひとりだけ
「あ、あああああ…!?」
「お、おいどこに行く!?」
「は、離して!い、いやだ死にたくない!!」
突然の逃走する仲間に困惑し騒ぎだすヘルメット団。
「これから始まる物語は悲しく辛い運命が立ち塞がてくる」
「私たちはその露払いをしなくちゃいけない。可哀想だけど」
目の前に有象無象の不良たちに懐刀にしまっていた二丁拳銃を取り出す。
「そもそも」
「エリオの脚本にないものは」
「どうだっていいもの!」
激しく火花が散る。
ここより離れた向こう側、”先生”の躍進が始まったその裏側で。
規定された運命に抗う者たちも動く始めた。
バタバタヘルメット団は今までの人生の中で今日というこの日を一番呪った。
ドクロのシンボルマークがついたヘルメットを被る彼女たち。
【サンクトゥムタワー】が停止したのを機に。この混乱に乗り、略奪や今まで溜まった鬱憤を晴らしに暴れた。自分たちこそが覇者だぞと傲慢に振舞っていた。
だが、優越感に浸っていた彼女たちの時間はたった一人の
女はまず近くに居たバタバタヘルメット団3人を拳銃で弾き撃ち飛ばした。
突然現れた奴に驚愕するも仲間がやられたのを目にした途端、彼女たちは迎撃戦へと迎えたが、そこからは女の独壇場だった。
銃弾を難なく避け、的確にひとりひとり脳天へと撃ち抜き、流れるように団員を優雅に処理するその姿はまるでダンサー。他所から購入(あるいは強奪した)戦車や持ってたロケットランチャーを運用しても仕留められない。
キヴォトスでは珍しい刀で蜘蛛の巣が広がるよう戦車を貫き、隠れていた糸が絡まり銃が切断される。
多種多様な
「くそっなんだよアイツ、めっちゃくちゃ強え!!」
「おい中井!おまえ逃げようとしていたろ。アイツのことを知ってんのか!」
リーダー。バタバタヘルメット団長は目の前にいる敵を見た瞬間逃げようした団員 中井に問い詰める。逃げたということは少なくとも目の前のヤツを知っていたからだろう。現に涙目を浮かべている団員 中井は団長の問いに必死に答えた。
「団長。アレは神秘ハンターの【カフカ】ですよ!去年から裏社会問わず、ヴァルキューレから百八万億の懸賞金が掛けられた大犯罪者です。早く逃げないとまず不味いです!!」
「百八億!?スゲーな!おい聴いたかおまえら、アイツを捕まえば一攫千金だ行けええ!!!」
「ま、待って!?」
懸けられた大金に目を眩んだヘルメット団はカフカに突撃する。
無策無謀に突っ込んでいく仲間たちを見た悲痛な声を上げた。
中井は知っている。
カフカという女を。だからこそ恐怖した。
キヴォトスで最も
忠告も虚しく、全員がカフカを囲むように飛び出した瞬間だった。
「さようなら」
踊るように回転しながら乱射した跳弾の嵐。
一発一発が一瞬。まるでスローモーションに入ったようにひとりを除く全てのヘルメット団に突き刺さる。そして……
「────パン♪」
明るい掛け声と共に爆発を起こし、敵全体に激しい爆音が鳴り響いた。
「あ、ああ」
地に蜘蛛の亀裂。そして、目の前に広がる黒く焦げ倒れた仲間たち。
キヴォトスの生徒は極めて頑丈な身体を持つ故に死にはしない。だが、幾ら頑丈であろうと莫大な神秘を籠めたカフカのソレは例外。みな瀕死でありこれ以上は動かなかった。中井はこの光景に絶望し、腰を抜かしてしまう。
「
「ヒィッ───!?」
そんな傷心中の中井はカフカに目線を合わせられ、怯えてしまう。結果彼女の言葉を聞いてしまった。
「君の仲間たちは
「───……はい」
カフカがそう言うと中井の目はハイライトオフとなり、立ち上がって向こう側へと走っていく。まるで操り人形のように従順に。
戦闘を終えた直後。カフカのポケットからバイブレーションが鳴る。
『お疲れ。流石カフカ、スマートな戦いだった』
「ありがとう。それにしてもヘルメット団って、本当にどこに行ってもいるわよね。在学中の頃ただの一介の不良集団だったのに面倒ね」
『所詮はぐれの者の集まり。今では大きな勢力になっても急成長を遂げたせいで統率が取れていない。まあ”代表格”だったら話は別だったかもだけど。それよりこっちは目的地についた。いまハッキング中。
そう言って通信が途切れる。
目指す先はD.U.外郭地区そのオフィスビル。
「ここが目的地ね」
ここはD.U.区内の連邦生徒会拠点から30㎞離れた外郭地区のビルの屋上。
道中、他のヘルメット団やスケバンという不良生徒をなぎ倒しつつ、建物の上を飛び渡り着いたカフカ。
後は中に入って目的の物を回収するだけの、簡単なお仕事のみ。
屋上から中へ入ろうと扉に手を掛けた、その背後に魔の手が迫る。
それはひとつの砲弾だった。
対戦車ロケット弾。
この弾丸は元々カフカに向けて発射されたものではない。近くで行われているヴァルキューレ警察学校の部隊とスケバンとの抗争中。スケバン側が抵抗して放った無差別攻撃によるもの。
不運にもその発砲の行方がこのオフィスビル。カフカが立つ先が着弾点となってしまった。
カフカもキヴォトスの生徒であるため、死ぬことはない。
だが、放たれた弾は対戦車の名の通り、戦車を容赦なく破壊する威力を持つ。喰らってしまったら、カフカが蹂躙したバタバタヘルメット団のように重傷を負うのは確実だった。
対戦車ロケット弾がカフカに着弾する五秒前……
四、三、二、一……。
瞬間、爆発することなくロケット弾は消えていった。
現実ではありえない現象。突如として戦車を破壊する一撃はホログラムの壁に消えていった。
「他人の
華奢かつ小柄な銀髪の少女がカフカの背後に語りかける。
屋上のフェンスに背を預け、空間に浮かぶホログラムを風船ガムを膨らませて操作していた。
「いいじゃない。で、さっきのは何処へ行ったの、銀狼?」
「座標は適当に決めた。今頃どっかのだれかに当たったんじゃない?」
閃光と爆音が鳴り響いた。ほら、と様子を見れば、煙が上がっているではないか。
弾はどうやら元々当たる所へ戻ったらしい。スケバンの間抜けな断末魔が聴こえたような気もする。
カフカは感心した目で銀狼を見つめた。
「いつ見ても君のやり方は不思議な方法よね」
「別に私の神秘を使って現実をデータにして修正ているだけ、昔お世話になった発明好きの先輩からもらったものを改良した程度で言及する価値は低い。それよりさっさと中に入ろう、今なら誰もいないしスムーズに事が進められる」
カフカと銀狼。屋上から入ったとは言え本来は入館管理ゲートや監視カメラなどが設置している。
そこはカフカが来るまでに銀狼が監視システムをハッキングすることによって一時的に使用不可。
外から見たビルは六角柱を複数連ねた形で建てられた建物であり、入った先は色々な施設が広がっていた。
一階に図書室、教室、射撃場、実験室等に右側にバスケットコートやテニスコートを備えた体育館。二、三階以降はシャワールーム、コンビニどころか、キッチン付きの食堂やゲームセンター等充実した施設が多数存在していた。
「凄ぃ!ここにほんとにオフィスビル?ゲームセンターがあるなんて夢みたい。HIT GIRLS 3Dあるかな?」
「銀狼。今はまだ任務中よ」
まさかただのオフィスビルが充実性に満ち溢れた娯楽天国だったこの光景に目に銀狼は大興奮。
このまま自由探索しそうな銀狼に釘を刺しつつ、カフカは目的のものを探し歩く。
「ふふ、見つけた♪」
そして、遂に目的のものを見つけた。
何処にでもある普通のオフィス。オフィス机にある
彼女はそれを手に取った。
「それが”例のもの”に必要なやつ?」
「正確には必要な物を開ける鍵。オーパーツ【シッテムの箱】。この箱こそ”先生”にとって必要なもの。エリオの脚本に書かれた重要なパーツよ」
「ちょっと見せて。……へぇ一見普通のタブレット端末だけど不思議。製造会社、OS、システム構造さえ不明。それどころか動く仕組みすら分からない。けどこれだけは分かる。コレはもの凄い神秘に満ち溢れている」
ホログラムを使い銀狼は端末機器。否、シッテムの箱と呼ばれるオーパーツの凄さに驚愕する。
分析結果。これひとつで現在機能不全へと陥いているサンクトゥムタワーへの干渉が可能。セキュリティ対策も万全であり、加えて使用者が危機に直面した際のバリア保護機能が付いている。
ゲームで言うまさにチート級と言える品物だった。
「さてさて、早速起動を……あれ?」
シッテムの箱の神秘さに惹かれ、起動を試みる銀狼。しかし、シッテムの箱はなにも反応しなかった。
「銀狼。残念だけど、それは”先生”専用のオーパーツよ。私たちでは使えないわ」
「ちぇ。専用アイテムなら仕方がないか。で、どうする。私たちが
「大丈夫よ。今回だけの
銀狼の手にあったシッテムの箱を手に取りるカフカ。
彼女が撫でると先程動かなかったシッテムの箱の電源が入った。
| ……。 Connecting To Crate of Shlittim システム接続パスワードをご入力ください。 |
迷いなくカフカはある言葉はシッテムの箱に入力する。
「……我々は望む、七つの嘆きを。……我々は覚えている、ジェリコの古則を」
「……
| ……。 接続パスワード承認。 現在の接続者情報は【カフカ】、確認できました。
最高管理者 連邦生徒会長の名に於いて今回限り「シッテムの箱」のご機能を一度だけ使用可能となります。ご命令を。 |
「……なに、今のパスワード?長くない?」
「まったくね、本当なら昔から伝わる古則の部分だけ入れれば済むけど。
そう呟くカフカはシッテムの箱にある”機能”を発動し、画面にビルのマップが移る。
カフカたちはシッテムの箱が記した場所へ向かう。
真っ暗な部屋に淡い光が照らし始める。
それはビルの地下にある詳細不明の物体。
連邦生徒会長がここに来るであろう”先生”のために残したもの。
| ……。 命令を承諾。 |
ふたりを出迎えたのひとつの巨大な物体。
名は「クラフトチェンバー」
シッテムの箱同様謎多いオーパーツ。これこそがカフカと銀狼。神秘ハンターが求めるもの。
このオーパーツは「シッテムの箱」の管理者のみが接続および操作できるもの。
今までは連邦生徒会長。或いはこれから来る”先生”のみが使える物。だが、今回だけ一度。カフカが使えるようにシッテムの箱を使って動かしたのだ。
「始めるわよ。─── 銀狼」
「───OK。今回だけのレアアイテム作成スタート」
カフカがそう言うと、銀狼はホログラムを出現させ、操作を始める。
「
「ノード設定。……目当ての項目無い。なら、ハッキングして……
1次【煌めき】2次【煌めき】3次【神秘】。─── よし、ノード設定完了」
クラフトチェンバーの権能。
それは【ありとあらゆる物質を生成する生産能力】
生きているもの(植物は除く)以外なら戦術BDや大きな家具といったものがこの装置から出てくるのだ。使い方次第では使用者の生活が豊かになりそうなものだ。
しかし、使用者本人が望むものが必ずしも出てくるのではなく、出るもの全てがランダム性が強い。ある首席行政官曰く「大型の3Dプリンター」「連邦生徒会長のおもちゃ」とそれなりに価値が低いと思われているようだ。
「─── 仕上げだよカフカ」
しかしだからこそ、ふたりはこのオーパーツの力を狙っていた。
銀狼のハッキングでランダム性さえ制御してしまえば、クラフトチェンバーの力は思うがまま。
アイテム作成が完了したクラフトチェンバーは金色に輝く。
シッテムの箱に写る「完了」という文字をカフカは躊躇いなく押した。
生成オーパーツの内部から現れたのはひとつの”光”であった。
”ソレ”は温かい熱を帯びていると同時に激しい光に満ちている。
初めて見るはずものなのに、何故か悪寒する”ソレ”は胎動していた。
「─── 完成したわ」
クラフトチェンバーから出た”ソレ”をカフカは平然と触れる。
「エリオから予め聞いていたから驚きはしないと思っていたけど……」
「─── ヤバい。何なのこのエネルギー。【
「【
銀狼が冷や汗かく中、カフカは言った。
「最もこれは『
「まさに”星”を侵す”核”と書いて”星核”。……
”星核”と呼ばれる危険物を遊ぶカフカと震えて二の腕を擦る銀狼。
傍から見れば、ふたりが話す内容はどれも理解できない。
しかし、”星核”と呼ばれるものを使って何か企んでいる。それだけしか分からない。
「残る作業は……”
「全然ダメ。
そう言いながら、銀狼はホログラムを展開し操作する。
すると、カフカが持っていたであろう星核が消えていた。
「なにをしたの?」
「拠点に移動させた。キヴォトス中全てのセキュリティシステムが停止しているからいいけど……あんな高密度なエネルギー体。人に見せるわけにいかないでしょ」
それもそうね、とカフカは納得した。
本物に及ばずとも、あれは銃器どころか名の通り”核兵器”並みのエネルギーを持つ。
周囲に知られば、彼女らにとって不都合な展開が起こるかもしれない。
銀狼の行動は正しい。
もしコレが欲深い大企業「カイザーコーポレーション」に目をつければ厄介極まりなかっただろう。
「さて目的を果たしたことだし、サッサとこの場から離れて……」
「─── 待って銀狼。いますぐ証拠を隠して」
「え、急に何?」
キョトンとする銀狼。
カフカはすかさず、わけを答えた。
「どうやら、私たちと同じ招かれざる客がやってきたみたいね」
反響する足音。
コツコツ、とカフカと同じハイヒールが鳴る音がふたりがいるであろう地下室へと近づいてくる。
「最初は連邦生徒会の職員か、雇われの従業員が隠れていると思い、調べてみればまさかの先客がいらっしゃったとは……ここで何をしているのですか?」
「げぇー……」
現れたのはひとりの女子生徒。
黒を基調とした色っぽいセーラー服に銃剣が付いたスナイパーライフル。
大きな狐耳と赤い桜のヘイロー。
なにより雅で特徴的な狐面が特徴的なその姿に銀狼は思わず、げっそりする。
【狐坂ワカモ】
機能不全へと陥ったキヴォトスの混乱時、矯正局から脱走した「七囚人」の一人。
無差別かつ大規模な破壊行ためを行う「災厄の狐」と呼ばれた少女。
本来なら外で暴れているはずの危険人物がここに来てしまった。
(─── 銀狼)
(問題ないよカフカ。シッテムの箱はギリギリ彼女が来る前に隠せた。ただ……)
クラフトチェンバーだけは隠せなかった。
銀狼は顔をしかめる。シッテムの箱は傍から見れば、ただのタブレット端末にしか見えないため、誤魔化せるが、クラフトチェンバーに至っては大型故にどうあがいても無理であった。最悪布で覆い隠せても怪しさで暴かれるため、意味が無い。
(問題ないわ。
(なら、後はここを離れるだけだね。目の前のコイツさえ超えれば私たちの目的は完遂する)
……とは言え、彼女を無視すればなんだか逆鱗に触れそうな気がしたため、銀狼よりも年上のカフカから口を開き始めた。
「あら奇遇ね。【災厄の狐】と呼ばれ畏れる貴女がこんな辺鄙な建物に来るとは思わなかったわ。自己紹介は必要?」
「ふふ、必要ありませんわ。矯正局の中で過ごしていたとは言え、あなた方のことはそれなりに知っていますので。そうでしょう……」
【ヴィヴァルディの蜘蛛”カフカ”】
【パンクロードの”銀狼”】
ふたりを見て薄っすらと笑うワカモ。
「裏世界に名を知られながらも素性不明な謎の組織【神秘ハンター】」
「所属するものはみな、行動や方向性、目的はバラバラで纏まっているのが不思議な行人たち」
「唯一分かっていることはふたつ。ひとつ各々珍しいオーパーツを盗む盗賊らしい行いをしていること。もうひとつは『エリオ』という名のリーダーに従い行動しているのみ」
「そんなあなた方が連邦生徒会肝入りのこの建物にいるなんて、一体なにが目的でしょう?」
そう言い、ワカモは問い詰める。
この狂人相手に常人なら怯えるだろうが、カフカは恐れず彼女の問いに平然と答えた。
「ただのお宝さがしよ。『超人』と謳われた
(うん。言っていることは間違ってないね。実際、お宝手に入れたし)
銀狼は心の中で頷いた。
確かに嘘は言っていないし、そのお宝については事前に拠点へ移した。
真偽を確かめるすべはなく、ワカモは自分たちが何を探しているのか、自らの想像に任せるに他ならない。
「ふぅん、そういう事にしときましょう」
そう言い、ワカモは素直に言い下がった。
とりあえず言い訳に近い内容にとりあえずワカモは納得したようだ。
「君がここに来たのは、連邦生徒会の復讐?」
「復讐…。そうですね、そこまで大それた程ではないですが、矯正局の”御礼”として連邦生徒会の所有物であるここに傷を付けよう思いまして。手始めに連中の計画の要になりそうなものを徹底的に壊そうと探していた中、あなた方に出会ったわけです」
(完全に逆恨みじゃん)
銀狼はそう思った。
彼女のやっている事は単なる逆恨みであり、社会的(キヴォトス基準)に見れば大規模な器物損壊罪で
キヴォトス全域の混乱を収めるために翻弄している連邦生徒会が不憫でままならない。
「なら、私たちは失礼するわ。ここには正体不明の物体しか無かったし、くたびれて損したわ。後はこの場で嫌がらせするなり壊すなり、貴女の好きにしてちょうだい。帰るわよ、銀狼」
目的の物を手に入れた時点でここにはもう用はない。
この後、ふたりが待っているのは一時の休息。
カフカはコートの整理を、銀狼はやり残したゲームのレベル上げ。やりたいことで頭の中いっぱいになったふたりは出口から出ようとした、その矢先だった。
「お待ちなさい」
背に殺意を感じる。
振りかえば、物騒な気配を醸し出すワカモが銃を構えているではないか。
彼女の手に持つ銃の先にはふたりのどちらかの心の臓を指していた。
「─── どういうつもり?」
銀狼は苛立ちを隠さず、ワカモを睨んだ。
「なんでこっちに銃を向けているの?別に貴女に何かするわけでもないし、争う理由なんてないけど?」
「確かに貴方達にはそうでしょう。ですが、少なくとも
ふと、ふたりに”?”が浮かんだ。
少なくとも、カフカと銀狼はワカモについて、今日初めて会ったどころかそれ以前、彼女の悪行などの伝聞しか知らない。どこかしらすれ違ったのか?
「御二方は
「あれでしょ。SRTが誇るFOX小隊の連携によって無様に捕まった、違う?」
銀狼が思い出すように言うと、ワカモは少し間を開けながらもはっきりとした声で言い放った。
「……ええ、確かにあの時は不覚を取ってしまいましたが、そもそも私が囚われる原因は
「は?」
予想外の答えに銀狼は啞然とした。
「思い出せば、
ワカモは忌々しく思う。
己が囚われる身となった事の顛末を思い出す。
キヴォトスでは物珍しい古びた剣を持つ者が傷をつけ尚、己に言った言葉を。
「カフカ」
「事実よ。確かに彼女は刃ちゃんと交戦したわ。刃ちゃんが言うには世話になった業者に傷を負わせた故に剣を向けたと記憶しているわ」
戯言であって欲しかった。
銀狼は刃ちゃんと呼ばれた仲間を少しばかり恨んだ。
なんで仲間の後始末が自分たちに襲い掛かってくるのか、と。
「……と言うわけですので、【血染めの剣客】本人ではないのは残念ですが……。仕返しとして御二方には少しばかり痛い目に合わせてもらいます。気の毒ですが、その四肢を潰してあの者に見せつけてあげましょうか」
あ、これはヤバい。確実にヤる気だ。
彼女の宣言通り、四肢を潰せるような気配も実力も肌で感じられる。
このまま、抵抗しなければ無事ではすまない。
そう思い、銀狼は行動を起こそうとする。
「あら?そんな余計なことをする暇が貴女にあるのかしら」
しかし、カフカの一声によって状況が一変する。
「……なんのことでしょう?」
「とぼけなくとも結構よ。私たちと違い君は脱獄犯。本当なら凶悪な犯罪者である君の背中にはヴァルキューレやSRTの連中が血眼で追ってきても不思議じゃない」
「けれど今のキヴォトスは大混乱。ヴァルキューレは人材不足。SRTは責任者が不在で出動さえ叶わない。あら不思議、障害は何もない。邪魔者がいない君は何者も縛られないこの場限りの強者となった」
「…………」
「エリオが描く脚本に、君は
「でも、そうはならなかった。
カフカの持つ
『災厄の狐、勇気ある四人の生徒によってその野望砕かれる』と。
脚本とやらは事細かく精密に、ワカモの現状を的確に記されていた。
仮面の裏で、戦慄くワカモ。
そんな彼女を尻目に淡々とカフカは言葉を続けた。
「君は恐れた」
「ミレニアム、ゲヘナ、トリニティ。所属も学園もバラバラ、君にとって造作もない四人の生徒相手に手駒を潰され、それどころか首を狙われた事実に」
「焦った君は急いでここで来たものの、準備不足で頭を悩ませていた所、私たちと出くわした。違う?」
「まったく。連邦生徒会の復讐なら、それこそ生徒会本部を狙えば済んだでしょうに。あろうことか君はいつも通り享楽を選んだ。ひとつ計算を間違えたようね」
「…………」
「図星ね」
カフカの答えにワカモは黙る。
ここまで事実を述べられた以上、ワカモの反応は笑うことしかなかった。
「……ええ認めましょう。私は確かに油断していました。目の前の愉しみに目を眩ませ、こうして痛い目に遭っているわけですし」
「……ですが、それがなにか?」
不愉快。
ワカモの感情は不快に極まった。
こうも事実と正論を貫かれ、気分は最悪そのもの。
もはや怒りが有頂天になる寸前。ワカモは感情のままカフカに銃を向けた。
「追われている身は事実でも、時間は充分。それこそ貴女をズタズタにするぐらいには」
「まあ、刃ちゃんが君に戦闘を持ち掛けた件に関しては申し訳ないわ。─── だけど、困るのよねソレは」
カフカは腕を払うような動作を行う。
先手を打たれたワカモは咄嗟に後退しようとするが……
(─── !?)
(動けない? これは糸?いつの間に……)
ワカモはその場から動けなかった。
眼を凝らせば、いつの間にか彼女の手足、胴体、首に強度な糸が繋がれていた。
小癪なと、ワカモは拘束を解こうと暴れる。
無理やりもがこうとするが、糸は切れずにワカモを捕え続ける。
「私たちには役目がある。それまでに大きな怪我は負いたくないの」
だから。
カフカは動けないワカモに近づき、災厄の狐の象徴である狐面をあろうことか
「─── おまえ!」
「
他人に見られたことがない素顔を暴かれたワカモ。
怒りに我を忘れた隙を突かれ、カフカの声を聴いてしまった。
「しまっ…………!────── 」
瞬間、ワカモは無気力となる。
ここに来る前同じようなことをしたバタバタヘルメット団の団員 中井と同じように目が虚ろと化す。
「仲間が迷惑を掛けたのと、素顔を見たお詫びとして金言をあげる」
「連邦の仕返しとして破壊し暴れまわった罪びとの貴女に
「ソレは貴女が今まで味わった”虚無”と”壊滅”の運命を覆すような人」
「彼の者との出逢いをきっかけに貴女は胸が息苦しくなるほど甘美な気分を味わうわ」
戯言にしては切り捨てる気にはなれない預言じみた言葉。
そんな言葉を紡ぐカフカは外した狐の面を戻す。
「おやすみ」
ヴィヴァルディの蜘蛛と呼ばれた恐怖を知らぬ女にされるがままに。
ワカモの意識はテレビの電源を切ったように闇へ落ちた。
「……ふう」
「仕掛けているなら最初に言ってよ。変に身構えたじゃん」
「ごめんね。その様子だと君の脚本には彼女について書かれていなかったのね」
「ない。私に書かれた脚本には主に”ミレニアム”を中心としているから。それで?いまの彼女の状態は?」
「3分間だけ眠るよう暗示したわ。流石七囚人ね。本当だったら10分ぐらい寝させるつもりが、抵抗されちゃった」
「ああ、だから立ったまま寝ているの」
それほどまでにワカモの精神は強いという証拠。
銀狼は改めて「コイツとは関わりたくない」と尚更思う。
「帰るわよ、銀狼」
「いいの?このまま放置したら、余計なことされない?」
「大丈夫。難しかったけど、少しばかり記憶を改
【災厄の狐】とエンカウントする事故があったものの、目的を達成したふたりはようやく帰還へと果たせるようになる。
「いよいよだね」
「ええ、ここからがゲームで言う所の序章よ」
彼女たちは脚本で知っていた。
これから始まる物語。
そして、数多の
「アビドス、ミレニアム、トリニティ、ゲヘナ、アリウス、SRT」
「これは
「私たちは最期の刻まで見届けましょう」
「
「あまねく奇跡の始発点に繋がる選択肢を」
その言葉を最後に彼女らの姿は消えた。
これは”終焉”の運命に抗うもうひとつのおはなし。
最後までお読みいただきありがとうございます。
はじめて書いたけど、台詞から地の文を繋げるのが難しかった。
次回はアビドス編。カフカ、暗躍します(ฅ^・ω・^ฅ)もうしばらくお時間ください。
※次話投稿に伴い、銀狼の二つ名を変更しました。2026/03/22
『ウラル』→『パンクロード』