『終焉』が近いであろう青空世界で私達は生きる......らしいよ? 作:エリオ(別同位体)
改めて、この小説は神秘ハンター(星核ハンター)中心を主にした第三者目線で執筆しています。
いずれ、この世界のブルアカ先生たちの掲示板を書きたい。
物寂しい砂丘の空に 前編 ※改稿版
彼女たち【神秘ハンター】には、ある絶対的なルールが存在する。
それは、たったひとつのシンプルなもの。
─────リーダー『エリオ』の脚本に従うこと。
【エリオ】
またの名を
「運命の奴隷」の二つ名を持ち、預言じみた"脚本"を紡ぎ出す存在。
彼は未来を見通す目を持ち、未来予知の能力を保有している。
未来を知る彼が書き記した脚本には、これから起こるであろう事象そのものが刻まれていた。
彼の力はトリニティ総合学園のある”生徒”の特殊な力と通底する部分があるものの、両者に直接の関連性はない。
神秘ハンターNo.2の言葉を借りるなら『そもそも源流が違う』とのことらしい。
記される脚本は、最善の結末へと至る未来を選りすぐったものだ。それぞれの目的や野望を胸に秘めた四人のメンバーへ、個別に異なる内容が手渡されている。
脚本に記された内容は、必ず現実となる。
とはいえ、具体的にどのような形でそれが引き起こされるかは、実際の場面に直面するまで分からない。
逆に言えば、脚本に書かれていない範囲外であれば神秘ハンターは比較的自由に行動でき、最終的な結果さえ一致していれば、そのプロセスや手段は問われないのだ。
故に、彼女たちは先の見えぬ闇の中で
己の願いを叶えるため、そして最悪の未来を回避するために。
昨今。
神秘ハンターがD.U.区での暗躍を終えた、その後のこと。
連邦生徒会長の失踪に端を発した大騒動が鎮圧された後、連邦生徒会により、とある組織の設立が発表された。
【連邦捜査部S.C.H.A.L.E】
通称「シャーレ」。
キヴォトス史上の勢力図における、最大の特異点。
連邦生徒会を束ねる連邦生徒会長自らが呼び寄せた大人、「先生」が活動拠点とする組織である。
キヴォトスで暮らすあらゆる生徒の相談に応じ、同時に所属や学籍を問わず不特定多数の生徒へ協力を仰ぐことができる。連邦生徒会長から与えられた権限により、既存の規約や法則すらも無視できる超法規的機関。
その設立目的は、連邦生徒会名義では介入の難しい諸問題を積極的に解決するため。
分かりやすく例えるなら、「国境なき医師団」のような慈善組織に近い。
連邦捜査部「シャーレ」の担当顧問兼責任者として赴任した大人『先生』。
そんな先生のもとに、ひとつの依頼が舞い込む。
ある生徒から届いたメッセージ。
その内容は、アビドス高等学校を助けてほしいという切実なものだった。
アビドス高等学校とその自治区。
かつてはキヴォトスで最も長い歴史を誇り、数多くの生徒が通う最大規模の学園として名を馳せた場所である。
しかし数十年前から頻発し始めた大規模な砂嵐によって環境は激変。他所からの莫大な借金に加え、学園のシンボルであったオアシスまでもが枯渇したことで、急激な過疎化を辿ることとなった。
かつて羨望や畏怖の目で見られた超有名校も、今や見る影もなく、往時の栄光の痕跡が虚しく残るのみ。
現在のアビドス。
「対策委員会」というわずか五人の生徒たちが、九億にも上る借金の利息を細々と返済しながら、懸命に完済を目指して奮闘しているという。
そんな学園からの救済要請を受け取ったシャーレの先生は、いざアビドスへと向かう。
到着早々、熱中症で死にかけたりもしたが。
かつての帝国、その夢の跡。
アビドスを取り巻く巨大な陰謀。
対策委員会と先生の出会いをきっかけに、物語の歯車が動き始める。
舞台は変わり、とある裏路地に佇むオフィスビル。
連邦捜査部S.C.H.A.L.Eのビルが存在する地区とは真反対に位置する、別のD.U.区外郭地。
過疎化の進むアビドス自治区と、無秩序なゲヘナ自治区が隣接する境界線。
ここは闇市。またの名を─────ブラックマーケット。
都市部から切り離された旧自治区の廃墟。市場の規模を逸脱したスラム街。
不良生徒や悪徳な大人たちが巣食う、キヴォトスの闇を象徴する場所。
油断すれば身ぐるみを剥がされ、下手をすれば尊厳すらも奪われかねない恐ろしい街だ。
そんな悪意渦巻く闇市の入り口付近。
珍しく荒らされていないオフィスビルの中で、ふたつの人影が佇んでいた。
「あなたが依頼人の『ファウスト』?」
神秘ハンターの一員、「カフカ」。
今の彼女は普段着から一転、黒一色のサングラスとスーツ姿に身を包んでいた。
男性と見紛うような男装の麗人でありながら、どこか危険な香りを漂わせる美麗な女性としてその場に君臨している。
裏世界において「ヴィヴァルディの蜘蛛」と恐れられる女。
彼女は現在、仕事としてある顧客の相手をしていた。
「は、はい『ファウスト』です。えっと……あなたが護衛を引き受けてくださった方ですか?」
その相手は、明るいベージュの髪に幼さの残る顔立ちをした、一見すると特徴のない普通の少女。
だが、白を基調とした制服─────三大巨大学園の一角、トリニティ総合学園の生徒であった。
「そうよ。私のことは……とりあえずレディ・アラネアとでも呼んでちょうだい。依頼を受けたからにはきっちり仕事をこなすわ。大船に乗ったつもりで安心していいわよ」
「よ、よろしくお願いします!」
最初はどんな恐ろしい人物かと不安を抱いていたが、カフカ……レディ・アラネアが想定以上に頼もしく優しい雰囲気であったため、ファウストと名乗る少女はほっと胸を撫で下ろす。
「まずは内容のすり合わせをしましょう。依頼は《ブラックマーケットでの護衛》。訪れる理由として『ここでしか手に入らないものがある』と依頼書にあったけれど……どういうものかしら? 写真か何か、分かるものはある?」
「は、はい! 画像があるのでどうぞ!!」
そう言って、おぼつかない手つきで自身のスマートフォンの画面を提示するファウスト。
そこに映し出されていたのは、ひとつのぬいぐるみの画像だった。
白い鳥をモチーフにしたキャラクター。
丸々と肥えていて一見すると愛くるしい大きな鳥だ。
しかし、どこか焦点の合わない目が明後日の方向を向いており、間抜けに伸ばされたピンク色の舌がだらしない雰囲気を醸し出している。
デフォルメで誤魔化されてはいるものの、見ているだけでどこか不安を覚えさせる佇まいだ。
予備知識のない者が見れば不気味に思え、間違いなく好みが激しく分かれるであろうデザイン。
画面に映るこのブサカワなキャラクターを、カフカは偶然にも熟知していた。
「これは……ペロロ?」
「ご存知なのですか?!」
ファウストは思わず歓声をあげた。
まさか請負人が「ペロロ様」を知っているとは思ってもみず、興奮のあまり前のめりでカフカに詰め寄る。
謎の気迫に一瞬だけ圧倒されつつも、カフカは知っている理由を告げた。
「ええ。……と言っても、私がモモフレンズのファンなわけじゃないの。後輩の一人がホムくん*1の大ファンでね。それで知った、というところかしら」
「ホムくんですか! 私、miHoYo社とのコラボグッズも持っているんです! どちらもすごく可愛いですよね!」
(…………銀狼がペロロのことを気味が悪いと言い放っていたことは、伏せておきましょう)
満面の笑みを浮かべる少女を前に、カフカはどこか遠い目をしていた。
この無邪気な笑顔に対して、そこまで残酷な真実を突きつけるわけにもいかない。冷徹なはずの女は、そっと真実を心の中に秘めることにした。
話は変わるが、そもそも何故カフカがファウストと行動を共にすることになったのか。
話は数日前に遡る。
数日前─────。
それは銀狼との定例報告会における出来事から始まった。
『──────────というわけで、予想外のハプニングは起きたけど、脚本に狂いはない。明日も引き続き監視を続ける予定』
『そう。
『
『まだ動き出すだけの準備が整っていない、ということかしら。偽りの神に関しては、脚本通り今は放置するのが無難ね。今私たちがぶつかっても良くて相打ち……現在の
現在、銀狼は自身が担当する『ミレニアム』自治区郊外の「廃墟」と呼ばれる立入禁止区域に潜伏している。
立入禁止区域とは言っても、少し前まで連邦生徒会が実施していた規制は、連邦生徒会長の失踪に伴い有名無実化しており、出入りは容易になっていた。
「廃墟」には脚本において極めて重要な存在が眠っているほか、その奥深くに途方もない脅威が息を潜めている。銀狼はそれらの動向を注視し、脚本の軌道から外れた存在を排除するなど、四六時中警戒と監視を怠らないのが現在の仕事であった。
『報告は以上? それじゃ、おやすみ……』
『待ってちょうだい』
眠気に耐えかねて通信を切ろうとする銀狼を、カフカが制する。
時刻はすでに深夜の十一番。
銀狼の目元にはうっすらと隈ができており、限界近い眠気が覗いていた。
『なに? こっちは今すぐ寝たいんだけど……』
『きみに頼みたいことがあるの。聞いてくれるかしら?』
『明日にして。今日は面倒な奴に遭遇したせいで、一刻も早くリセットしたい気分なの』
銀狼は苛立ちを隠さず腕を組み、トントンと不機嫌そうに指を打ち鳴らす。
彼女がここまで荒れているのには理由があった。
この日、彼女にとって最も鬱陶しく、顔も見たくなかった人物と再会してしまったのだ。
その人物は彼女の元・先輩にあたる生徒であり、最強格と相手してしまった。最終的にその先輩と一死交えし、逃げるように退学した過去がある。
それが今日、偶然にも再会を果たし酷い目…疲労困憊な状態なのだ。銀狼はどうにか交渉をまとめて煙に巻き、この拠点スペースまで逃げ帰ってきたばかりであった。
『……というか、私の記憶が正しければ、あんたはあまり動く必要がないはずでしょ?』
『そうも言っていられないのよ。アビドスの物語には、ゲヘナが必然的に絡んでくる。ゲヘナが常に私をマークしている以上、アビドスでの直接行動が困難になるわ』
『それがどうして私の力が必要になるわけ? 流れは先生とアビドスの連中に任せて、そのまま見守ればいいじゃない』
そうもいかないの、とカフカは静かに首を横に振る。
『脚本の擦り合わせで判明したのよ。いま私がここで動かなければ、後々の展開が悪い方向へ傾く可能性が高いわ』
『…………それにあの地には、
(あー……これ、言うこと聞くまで終わらない奴だ)
そう察した銀狼は溜息をつき、諦め顔で折れた。
『…………これが終わったら、前から欲しかったヘッドフォンを買って。それで手を打つ』
『ええ、もちろんどころか、マイクでもモニターでも気が済むまで何でも買ってあげるわ』
『…………分かった。で、何をすればいいの?』
『簡単な仕事よ。ブラックマーケットの傭兵リストに、私のプロフィールを登録してほしいの。当然、偽名でね』
『? なんでそんな回りくどいことを?』
ブラックマーケットには独自のアタッチメントや流通システムが存在し、その一環として傭兵業が成立している。
そこに紛れ込み、偽の経歴・プロフィールを作成するという要求。
偽名を使う理由は明白で、良くも悪くも「カフカ」の名は知れ渡り過ぎているため、行動に支障が出るからだろう。
だが、そんな回りくどいことをして何のメリットがあるのか。
銀狼の当然の疑問に対し、カフカは理由を明かした。
『三日後、ブラックマーケットにある生徒がやってくる。その子はアビドス、そして先生と深い縁を結ぶことになる存在よ。これを機に、私はその子を護るブラックマーケットの傭兵という配役を纏って、脚本へ介入するつもりなの』
『その生徒って?』
『トリニティ総合学園二年生、名前は阿慈谷ヒフミ』
その名に、銀狼は聞き覚えがあった。
『サムが担当してる子じゃん!』
確かその生徒は、仲間のひとりが監視を担当している重要ターゲットのはずだ。
神秘ハンターにとって、脚本に記された最悪の運命を覆す鍵となり得るキーパーソン。
そんな重要人物が、なぜブラックマーケットという悪意の巣窟へ足を踏み入れるというのか。
『…………後でサムに報告しておいてね。観察対象が突然消えたら、あいつが焦るのは目に見えてるから』
『そうね。これ以上あの子の仕事を増やすのも気の毒だわ』
ともあれ、銀狼はその要求を完遂した。
第一段階として、ブラックマーケットの裏ネットワークへ偽情報を拡散。
その日のうちに、裏世界へひとつの噂が駆け巡ることとなった。
『レディ・アラネア』─────。
裏社会に突如として現れた謎の傭兵。
依頼を完璧にこなし、雇い主には傷ひとつ負わせず護り抜き、立ちはだかる敵を喰らい尽くす女郎蜘蛛。
その凄腕傭兵の存在を知った件の生徒。
提示されていた提示額が破格であったことも手伝い、阿慈谷ヒフミはある自治区にて勇気を振り絞って「レディ・アラネア」へ護衛を依頼。
間もなく依頼は受託され、現地での合流を果たしたのである。
数量限定の目的物、ペロロ様ぬいぐるみをその手に収めるために。
アラネア……カフカの狙い通り、ヒフミは蜘蛛の巣へと足を踏み入れたわけである。
もちろん、彼女を害するつもりなど毛頭ない。
騙す形になったとはいえ、依頼自体は誠心誠意やり遂げるつもりであった。
ブラックマーケット内の露店通り。
文字通り、出所不明の怪しげな商品が立ち並ぶ、この街の名物エリアである。
ここなら目的の物が見つかるのではないかと、まずは近場の老舗へと二人で向かったものの……目当ての品はなかなか見つからず、捜索は難航を極めていた。
何軒も見て回っても、どこへ行っても「扱っていない」の一点張り。
現在、六件目となる店舗にて。
日頃から常連として利用している店ならと、「ファウスト」ことヒフミを入口付近に待たせ、カフカ改めアラネアは店主との交渉に向かう。
ここなら、という期待も虚しく、現実は非情であった。
「うちじゃそんな商品は扱ってねぇよ。悪いな」
「そう……」
ここも駄目だったか。
おかしい。ペロロを含めたモモフレンズはコアなマニア層にしか受けないはずだ。
それにも拘わらず、ペロロの「ペ」の字すら見当たらないとは。ドロップ率でもバグっているのではないかと疑いたくなる。
そんな思考を巡らせていると、顔馴染みの店主がアラネアへ話しかけてきた。
「にしても珍しいじゃねぇか。アンタがそんなぬいぐるみを探してるなんてよ。なんの冗談だ?」
「ふふ、意外だったかしら?」
「意外も何も、アンタといえば大物マフィアですら恐れ打震える大悪党だろうが。そんな奴がそこらの傭兵というより何でも屋紛いの仕事をしてるなんて思いもしねぇだろ」
呆れ顔でそう吐き捨てる獣人の店主。
アラネアとは昔からの付き合いであり、腐れ縁と言ってもいい。
店主は嫌というほど、目の前にいる女の底恐ろしさを熟知していた。
「あの嬢ちゃんも運がいいのか悪いのか……アンタみたいなのに引っかかっちまったのは同情するぜ」
「あら、酷い言い様ね」
「どの口が言ってやがる……!」
面白そうに微笑むアラネアに、思わず悪態を吐く店主。
この店の店主はかつて某マフィアの一員であり、それなりの名を馳せて悪事を働いていた経歴がある。
しかし運悪く、その組織は目の前の蜘蛛の逆鱗に触れてしまったのだ。
ある日を境に彼が所属していた組織は壊滅。
今では足を洗い、ブラックマーケットのしがない雑貨屋として細々と食いつなぐ日常を送っていた。
……はずだったのだが、店主の人柄を気に入ったアラネアによって、今のような切っても切れない腐れ縁が続いてしまっているのだった。
(……まあ、気まぐれでドカンと買ってくれるおかげで店が繁盛してるし、文句は言えねぇんだがな)
「他に置いてありそうなお店に心当たりはないかしら?」
「そうだなぁ……ここから五百メートルほど先に行けば……って、あ?」
地図を開こうとした矢先、店主は異変に気付いた。
「おい……あそこにいたアンタの依頼人、どこ行った?」
「あら?」
振り返ると、さっきまで待機していたはずのヒフミの姿が忽然と消えていた。
会話に夢中になっている間に、どこかへ行ってしまったらしい。
「まずいぞ。アンタの依頼人はトリニティの生徒だろ? 早く見つけねぇと厄介なことになるぜ」
「そうね。早く見つけないと大変なことになりそうだわ」
店を後にする際、アラネアの懐から取り出されたのは大金。
数十万はあろうかという札束が、ポンと店主の目の前に放り出された。
「ちょ、今日は何も買ってねぇだろ!?」
店主は札束を返そうと叫ぶが、時すでに遅し。
アラネアは振り返りもせず、その場を立ち去ろうとしていた。
「情報料と、次の買い物の内金よ。お釣りはいらないわ」
「ったく……最近巷じゃ『超人』が行方知れずになってから、礼義を知らねぇ連中が増えてきやがった。……気をつけろよ」
「誰に向かって言っているのかしら?」
店主の心配など愚問であった。
あの依頼人は本当に運が良い。この女が敵に回れば悪夢だが、味方の護衛であるならばどんな脅威も退けてみせるだろう。
そう店主が思った時にはすでに、アラネアの姿は街の雑踏へと消えていた。
「……この金、どうすっかなぁ」
目の前に残された大金。
とりあえず、店主は思いがけず手に入った資金の使い道を考えるハメになるのだった。
行きつけの露店を離れて二十分。
依頼人を見つけるのに時間はかからなかった。
視線の先には、ヒフミと彼女に絡む数人の
そして……四人の生徒と一人の大人が、ヒフミを庇うように対峙していた。
それを見たアラネアの唇が、自然と弧を描く。
「
彼女たちこそ、エリオの脚本に描かれた中心人物たち。
アビドス高等学校対策委員会のメンバー、そして彼女らを助けに現れたシャーレの先生であった。
彼女は普段携行している二丁のサブマシンガンを構え、スケバン群へ向けて迷いなく引き金を引く。
「「「ぐぇ!!?」」」
「ん!?」
「な、なに!?」
一瞬で撃ち倒されるスケバンたち。
突然の銃声と無力化された敵に、生徒たちが驚愕して振り返る。
真っ先に反応したのは、依頼人であるヒフミだった。
「アラネアさん!」
「駄目じゃない。依頼人が護衛から離れてしまっては」
「ご、ごめんなさい! 待っている間に目当てのものを見つけてしまって……」
「そう。けれど契約には『最後まで付き合う』と書いてあったはずよ。ここは私に任せてもらえるかしら?」
「わ、分かりました! み、みなさん! ここはアラネアさんに任せて逃げましょう!」
「いや、この人だれよ!?」
「ん、まだ戦える」
「駄目です! これだけ騒ぎを起こしたら、ここの治安維持組織……マーケットガードがやってきます! そうなったら逃げられなくなります!」
「“あの人は大丈夫なの?”」
「大丈夫です! 会ったばかりですが、とても信頼できる方ですから!!」
ヒフミの必死な言葉に押され、対策委員会と先生は撤退を選択する。
逃走する彼女たちを追おうとするスケバンたちだったが、アラネアが放つ弾幕によって牽制され、ヒフミたちは無事にその場を離脱することができた。
「おいコラ待て!?」
「テメェ、いきなり撃ち込んできた挙句邪魔しやがって! 覚悟しやがれ……!」
獲物を逃がし、アラネアへ怒りを露わにするスケバンたち。
その安っぽい怒りに対し、アラネアは呆れたようにサブマシンガンを構え直す。
「覚悟? 必要性すら感じないわね。だって─────」
─────今から覚悟しなければならないのは、あなたたちの方だもの。
結果は言うまでもなかった。
ブラックマーケットに流入して間もないスケバンたちは、騒動を聞きつけてやってきたマーケットガード共々、アラネアによって蹂躙され全滅。
以後、彼女たちがどうなったのかについて、脚本には一切記されていない。
スケバンとマーケットガードを文字通りミンチへと変えた後。
アラネアはヒフミとアビドス対策委員会の後を追う。
あれだけの騒ぎを起こしたのだから、彼女たちは相応に離れた場所へ逃げ延びたはずだ。
……と思っていた矢先、あっさりと発見した。
飲食店街の出店が立ち並ぶ歓楽街。
彼女たちはそこへ逃げ込み、ひとまず休息と話し合いを行っているようだった。
アラネアと彼女たちが互いを視認できる距離まで近づくと、ヒフミが真っ先にこちらへ気付く。
「あ、ここです! アラネアさーーーん!!」
大きく手を振り、ほっとした表情を浮かべるヒフミ。
「あ、さっきの人」
同時によく見知らぬ美女へと視線を向ける対策委員会とシャーレの先生。
合流を果たした七人。
一安心しようとしたヒフミであったが、その額に瞬時に痛みが走った。
「痛っ!?」
「何も言わずに勝手に行動したお仕置きよ。ファウスト……いいえ、阿慈谷ヒフミちゃん」
「はいぃ……。え? どうして私の名前を!?」
デコピンを喰らったヒフミは困惑する。
正体を隠すために偽名で呼び合っていたはずで、本名を知っているのは出会ったばかりの対策委員会だけのはずだ。
アラネアは意地悪く微笑んで答えた。
「おあいにく様。あなたのことは前々から知っていたわ。このブラックマーケットには生粋のモモフレンズマニアがいるって噂になっているの。グッズのためなら大金を惜しまず、悪質な転売屋にはそのへんにあった巡航戦車で相手ごと粉砕したという最恐のペロロマニア……それがあなたでしょ?」
「そんなことしてたのアンタ!?」
「ご、誤解です! た、確かにそんなこともあったような気が……コニョゴニョ」
思い当たる節があるのか、口ごもるヒフミ。
そんな彼女を苦笑いで見つめる先生と、ジト目で怪しむ対策委員会。
「そんなことより、マーケットガード相手によくご無事でしたね」
「ああ、あの連中? ミンチにしたわ」
「え、ミンチ!? ミンチってどういうことですか!?」
「それで、そちらの方々は初めましてね?」
「えっ!? スルー!? スルーですか!? ミンチにしたって何なんですか、ねぇ!!」
「私はレディ・アラネア。このブラックマーケットで傭兵をしている身よ。もちろん名前は偽名。諸事情があって本当の名前は名乗れないの。よろしくね」
サングラス越しに微笑むアラネア。
彼女は対策委員会、そしてシャーレの先生との接触という目的を見事に完遂したのだった。
偽名を名乗ったアラネアに対し、先生と対策委員会も各自自己紹介を交わす。
対策委員会は五人のメンバーで構成されていた。
委員長の【小鳥遊ホシノ】。
二年生の【砂狼シロコ】と【十六夜ノノミ】。
一年生の【黒見セリカ】。そしてこの場にはおらずアビドス高校からの通信で参加している【奥空アヤネ】。
廃校の危機に瀕したアビドス高校と自治区を救うべく奔走する組織である。
「あ、アラネアさん。先ほどは助けていただいてありがとうございました」
「ヒフミから聞いた。あのまま戦っていたら、私たち捕まっていたかも。ありがとう」
ノノミとシロコ。ふたりは自分たちを救ったアラネアへ頭を下げ、それに続いて対策委員会の面々もお礼を口にする。
「気にしないで。私はただ、ヒフミちゃんを護衛するという依頼を全うしただけよ」
「でも、嬉しいわね。この街で仕事をしているけれど、純粋な感謝を向けられたのは初めてだわ」
そう言って、アラネアは穏やかな笑みを浮かべた。
実際、彼女がこれまで裏の仕事で関わってきた相手から返ってくるのは、銃弾と怨嗟、あるいは懺悔といった負の感情ばかりだったのだ。
対策委員会のような裏表のない感謝の言葉は、実に新鮮であった。
和気藹々と歓談する一同。
だが、アラネアはその背中に刺さる不穏な視線を感じ取っていた。
(……この人、ただ者じゃない。あんな激しい戦闘があったはずなのに無傷で済んでいる。ヒフミちゃんが言っていたマーケットガードとかいう連中とやり合ったはずなのに。あの射撃の正確さといい、実力は私以上かも……それに、礼儀正しいけれど、まるで"アイツ"みたいな"大人"を相手にしているような。…………警戒しておこう)
『(アラネアさん、とおっしゃいましたか。この方、どこかでお見かけしたような記憶が……)』
視線の主は小鳥遊ホシノ、そしてアビドスから遠隔で参加している奥空アヤネであった。
ホシノは深い警戒感を、アヤネは既視感の正体を探るべく思考を巡らせている。
当然、自身に向けられた視線に気付かないアラネアではない。
彼女はすべてを察した上で、二人へ声をかけた。
「あら? どうしたの、そんなに私を見つめて」
「ん~? 何でもないよ~、お姉さん、おじさんよりずっと美人さんだなぁと思ってさ~」
『あ、すみません! 私も少し考え事をしていて……お気を悪くされたなら申し訳ありません』
「ふふっ、口が上手いのね。さて、目的のペロロ人形も無事に入手できたことだし、そろそろ帰りましょうか、ヒフミちゃん」
「あ! え、っと……そのぉ……」
ヒフミの方を振り返ると、彼女は何か言いたげに佇んでいた。
実はアラネアが合流する前、ヒフミは対策委員会からブラックマーケットの案内を(半ば強引に)頼まれてしまっていたのだ。
放置して帰ることもできたが、阿慈谷ヒフミという少女は本質的に善人であり、助けてもらった恩を仇で返すような真似は躊躇われる。かといって自分ひとりで役に立つとも思えない。
ならばと、ヒフミはダメ元でアラネアへ事情を明かし、依頼という名の頼み事を口にした。
「あーーー……すみません、もう少しだけお時間をいただいてもよろしいでしょうか……?」
昼下がりが過ぎた頃。
ブラックマーケットの繁華街。スーツ姿の美麗な女性を先頭に、ラフな格好をした集団が通りの中央を闊歩していた。
それこそが、ブラックマーケットを訪れた対策委員会と先生、そして阿慈谷ヒフミ本人たちであった。
『というわけで、アラネアさんが同行してくれることになりました! ……正直、ここに来て日の浅い私なんかより、ベテランのアラネアさんがいてくれれば安心です! 私より遥かに強いですし!!』
『ふふ、短い間けれどよろしくね』
ヒフミの説得により、対策委員会へ同行することとなったアラネア。
未だ警戒心の強いホシノは遠回しに拒否しようとしたものの、案内人が増えることと戦力補強のメリットには勝てず、アラネアが排除されることはなかった。
そもそも、対策委員会がブラックマーケットへ足を運んだのには理由がある。
アビドス高校に迫る脅威のひとつとして、ヘルメット団がたびたび襲撃を仕掛けてくる問題があった。
先日、いつも通り彼女らを撃退していた際、相手の所持していた装備の異常性に気づいたことが発端である。
ヘルメット団はスケバン同様、不良生徒の集まりに過ぎず、資金力や組織力は皆無に近い。
だが、黒見セリカ誘拐事件の際に押収した装備から、強い違和感が浮き彫りとなった。
ヘルメット団が使用していた銃の刻印は、とうの昔に生産中止となったモデル。
希少価値が高く、彼女たちのような端た金で動く不良が用意できる代物ではないのだ。
数多の学園が存在するキヴォトスにおいて、そんな代物が流入する場所といえば─────。
おそらくブラックマーケット。そこから流出したものではないかと睨んだ対策委員会は、調査のために潜入したというのが事の顛末であった。
『実のところ、心当たりはあるのよ。……正確には、
『あった?』
『連邦生徒会長の失踪が発覚して以来、キヴォトス全域が大混乱に陥ったのはみんな知っているでしょ? その混乱に乗じて、多種多様な銃器や軍需物資、兵器がブラックマーケットへ大量に流入したの。それらを使って暴利を貪る業者が横行して、市場は今まで以上に酷い惨状だったわ』
『そんなに酷かったの?』
『ええ。騙されやすそうな可愛い仔猫ちゃん。ただの粗悪なライフル銃が、一千万で取引されていたくらいにはね』
『誰が騙されやすい仔猫よ! ……って、みんな何でそんな目で見るのよ!?』
『話を戻すわね。興味深いことに、ゲヘナにも劣らないカオスな状況の中で、正常に機能していた流通ルートが、たったひとつだけ存在したの。しかも不思議なことに、顧客は主にヘルメット団ばかり』
『…………なるほどね。お姉さんは、そこに意図的な意図があると感じているわけだね。そのヘルメット団と取引していた
『口で説明してもいいけれど、実際に見た方が早いわね。出発する前に、ちょっとした準備をしましょうか』
そして現在。一同はアラネアが用意した衣装に着替え、変装を完了させていた。
対策委員会はいつもの制服から、私服感の強いカジュアルな装いへ。
先生はシャーレの礼装から、裏社会の人間と見紛うような強面の装いへ。
そしてヒフミは、大量のペロログッズを身につけた、いわゆるオタク風の格好をさせられていた。
「いや! なんで私だけ普通の服装じゃないんですか!?」
思わずツッコミを入れるヒフミ。
客観的に見れば、マフィアめいた集団に紛れ込む異様な一般人。身につけた膨大なグッズのせいで痛々しい人物に見られかねない姿だ。「グフフ」と笑い出しそうでもある。
現に行き交う通行人からは「なんだアイツ!?」と刺さるような視線を向けられ、誰もが若干引いていた。(ヒフミは半泣きである)
「身元が割れる制服のままじゃ危険だわ」というアラネアの提案を受け入れた結果がこれであった。
「ごめんなさいね。あなたに合いそうな着替えが手元になくて、急遽手配させたのがそれしか用意できなかったの」
「ううう……別にいいですけれど……ペロロ様がたくさんいてくださるので何とか……嘘です、消えたいです……」
「“せ、先生はすごく良いと思うよ! 個性的で!”」
必死にフォローを入れる先生だったが、どんよりとした空気は晴れない。
対照的に、対策委員会の面々は楽しげであった。
「パーカー付きのお洋服なんて着る機会が少ないので……その、似合っていますか?」
「大丈夫。ノノミ、すごく似合ってる」
「わぁ、ありがとうございます! そう言うシロコちゃんもすごく似合っていますよ!」
「そうかな? こういう服はあまり着たことがないから分からないけれど……なんだか嬉しい」
「いつも通り二人が仲良しで何よりだね~。服も相まって眼福眼福」
「そういうホシノ先輩だって似合ってるわよ。近所の子供みたいで」
「それって褒めてるの、セリカちゃん……? おじさんとしては、もうちょっとおじさんらしいものが良かったかなぁ。腹巻きとか」
「「「それは絶対に似合いません(から)!」」」
「そこまで言わなくても……」
『(みなさん楽しそうでいいなぁ……)』←若干空気になっているアヤネ
そんな会話を交わしつつ、小休憩として売店で買ったたい焼きを食べ歩きながら交流を深める七人。
たい焼きを口にしながら、ヒフミはふと違和感を覚えた。
「……アラネアさん」
「あら、気づいたようね」
「はい」
ヒフミは抱いた違和感を確かめるべく、アラネアへ問いかける。
「歩いて数時間。本来なら、探している違法部品の情報くらい簡単に見つかるはずです。型番から仕入れルートを絞るとか……それなのにここまで一切の情報が出てこないなんて、いくら何でもおかしすぎます」
「え、なに? どういうこと?」
ヒフミは自身の推測を口にした。
本来、ブラックマーケットという場所は悪事を誇示する連中で溢れている。
ここを牛耳る大企業やマフィアたちは、自らが悪事に手を染めている自覚を持ち、それを隠そうともしない。
それどころか力や盾として誇示し、舐められないよう見せびらかすのが常である。
「そんなにおかしいことなの?」
権力、暴力、そして潤沢な資金と卸売ルート。
これらを掲げて堂々と開き直ることで、それぞれの勢力がブラックマーケットを支配している。
弱者は淘汰され、狡猾な者か強い者が制する。それがこの街のルールであり、魔窟と呼ばれる所以であった。
首をかしげるシロコに対し、アラネアは噛み砕いた例を挙げる。
「例えば、とても強力な傭兵を雇ったマフィアと、裏でコソコソ大金を溜め込んでいるヤクザ。攻撃するなら、
「ん、なるほど。それならヤクザの方を狙う」
「そうなんです。だからこそ、ここにいる企業は逆に開き直って、変に隠したりしないんです。例えば─────あの建物のように」
ヒフミが指さしたのは、立派なビルの一角。
悪名高い組織が拠点とする建物であった。
「ブラックマーケットにその名を轟かせる闇銀行。キヴォトスで発生する犯罪の15%の盗品が、あそこに流れていると言われています。横領、強盗、誘拐……あらゆる犯罪で得た資金が違法な兵器へと姿を変え、新たな犯罪に使われる。そんな悪循環が形成されているんです」
「……銀行が犯罪を助長しているようなものじゃないですか……」
「はい。ここの銀行自体が巨大な犯罪組織なんです。その上、治安組織であるマーケットガードもあの闇銀行の後ろ盾になっているので……」
改めてブラックマーケットの惨状を知る対策委員会。
アビドスの借金返済に追われるあまり、自分たちは外部の世界を知らなさすぎたと痛感する。
そんな中、アラネアが静かに問いを投げかけた。
「なぜ着替えてもらったか、理解できたかしら?」
「…………おじさんたちがアビドス高校の生徒だと、悟らせないため……かな」
ホシノの答えに、アラネアは嬉しそうに微笑む。
「やっぱり君は賢いわね。あのまま制服で練り歩いていれば、君たちの身元はすぐに割れていたわ」
「衰退したアビドスは、悪い意味で有名だもの。最悪の場合、誰かに利用されて終わっていた可能性もあったけれど……どうかしら?」
その言葉に、対策委員会の面々は息を呑む。
ヒフミが語った悪循環と犯罪の闇。もし自分たちが無防備な制服のまま歩き回っていたらどうなっていたか……想像するだけで背筋が凍る。
「そんなこと、させないよ。だって私が……」
「護れるかしら? 本気で?」
毅然と言い放つホシノに対し、アラネアは冷徹な一言を叩きつけた。
「本当にすべてを護り切る自信があるのかしら? ここは腕力だけで生き残れる場所じゃないのよ。狡猾に立ち回る者もいる。力だけがあっても、物語はうまく進まない。力と感情に任せた結果、かえって最悪の結末を招いた……そんな経験を、君はすでに知っているはずでしょう?」
「…………何が言いたいの?」
明確な警戒心と敵意を剥き出しにするホシノ。
だが恐れを知らないアラネアはホシノへと歩み寄り、その耳元でそっと囁いた。
「二年前、梔子ユメを喪った。その経験を」
「!!!!」
ホシノは反射的にアラネアを突き飛ばし、大きく後退した。
想定もしなかった言葉の刃に、動悸が激しく波打つ。
「なんで……それを……」
「ホシノ先輩!?」
異変を察した対策委員会が駆け寄り、ホシノの身体を支える。突然の緊張感に困惑するヒフミと先生。
直感で何かをされたと悟ったシロコだけが、鋭い視線でアラネアを睨みつけた。
「ふふ、お姉さんは何でも知っているのよ。でもごめんなさいね、ちょっとした悪戯よ。……けれど、良い勉強になったでしょう?」
「……うん、勉強になったよ。…………同時に、君が相当ヤバい奴だってこともハッキリした」
素早く呼吸を整えたホシノは、改めて強い警戒を刻み込む。
この女に気を許してはならない。一歩間違えれば、踊らされる操り人形にされてしまう。
アビドスを護る神性と、死線を潜り抜けてきた直感が、強く警鐘を鳴らしていた。
「そろそろ来るわね。アヤネちゃんと言ったかしら……私の計算が正しければ、この近くに接近する反応があるはずよ?」
『え? ………!?』
アラネアの指摘通り、アヤネのモニターには一行のすぐ近くへ接近する巨大な反応が映し出された。
それはブラックマーケットにおける治安維持組織の主力。アラネアが先ほど一蹴したマーケットガードの部隊であった。
「マーケットガード!? に、逃げましょ……ふぎゅ!?」
「必要ないわ。ここなら障害物が多いから、しゃがむだけで相手の死角に入れるわ」
慌てて逃げ出そうとするヒフミの頭を押さえつけるアラネア。
指示通り全員で物陰に身を潜め、マーケットガードの様子を伺う。
「さて、答え合わせの時間よ」
「ここブラックマーケットにおいて、『隠す・秘匿する』という行為には二つの意味が存在するわ。ひとつは自分たちが弱いと露呈しているようなもの。そしてもうひとつは……問答無用で黙らせられるほどの力を持った組織ということ」
「そして、この一帯を裏から支配するのは、悪名高い皇帝カイザーの名を語る大企業【カイザーコーポレーション】。その傘下組織であるカイザーローンこそが、君たちの探している答えよ」
アラネアを除く全員が息を呑んだ。
視線の先には、マーケットガードに重厚に護衛された現金輸送車の姿。
闇銀行の前に停車し、行員が担当者らしき男へと資金を引き渡す一連の手続きが行われている。
そのやり取りの中、セリカがいち早くひとりの人物に気づいた。
「あいつ……毎月うちに来て利息を回収していく銀行員……!?」
セリカの驚愕の声に、全員の視線が集まる。
現金輸送車の傍らに立つ銀行員。その人物は、今朝がたアビドス高校へ集金に訪れた職員その人であった。
毎度取り立てに来る顔だけに、見間違うはずもない。
自分たちが血の滲む思いで返済していた借金資金。
それを何食わぬ顔で受け渡し合う銀行員たち。
それが意味する事実は、ひとつしかなかった。
「私たち……ブラックマーケットに犯罪資金を提供していたってことですか……?」
ノノミの絞り出すような絞り出すような問いに、アラネアを除く全員が言葉を失い、静まり返るのだった。
一か月ぶりの投稿。今後のペース上1ヶ月に一、二回に投稿する形を基本とします。
会話より文章(地の文)が多くて申し訳ない。続きは近日公開→作者の都合と展開の変更により続きが投稿出来ませんでした。申し訳ございません(2026/03/29)
※プロローグにて銀狼の二つ名を変更しました
『ウラル』→『パンクロード』
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※2026年8月1日 改稿しました。