『終焉』が近いであろう青空世界で私達は生きる......らしいよ?   作:エリオ(別同位体)

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前編と比べて少し短めと台詞多め
やっぱり小説は難しいね。台詞はまだ楽だけど、地の文が難しい。
状況説明やキャラ描写に苦戦しがち、他の作者みなさまを尊敬する気持ちが強くなる一方です。


物寂しい砂丘の空に 後編 ※改稿版

対策委員会が汗水垂らし、懸命に返済し続けてきた借金返済資金。

その回収の裏で糸を引いていた下手人は、カイザーローン。

自分たちの血の滲むよう尚金が、あろうことかブラックマーケットの犯罪資金として消費されていた─────その事実に、一同は激しい怒りを隠せないでいた。

 

もちろん、先生とて黙ってはいられない。

大切で可愛い生徒たちが、かけがえのない青春を犠牲にして作ったお金だ。

それを汚い手で我が物顔に利用していた、同類であるはずの「大人」のやり口に、腸が煮えくり返る思いだった。

 

重苦しい沈黙と暗い空気が充満し、全員が苦悩に暮れる中。

ヒフミがハッと何かを閃いたように口を開いた。

 

「……あっ! それなら、さっき手渡していた集金確認の書類……あれを見れば決定的な証拠になりませんか!?」

 

集金確認の書類。

取引の際に記録される納品書や請求書に該当するものがあれば、悪行を証明する証拠としては充分すぎる。

ヒフミの不意のアイデアに一同が感心し、アラネアもパチパチと拍手を送った。だが─────

 

「冴えているわね、ヒフミちゃん。……で? どうやってそれを手に入れるのかしら?」

「あはは………。そうですよね、書類は既に銀行の金庫の中ですし……無理ですね」

 

書類は既に堅牢な銀行の奥深く。

警備の厳重さは折り紙付きであり、ヒフミとアラネアの二人も、カイザーローンが「ブラックマーケットで最も強固なセキュリティを誇る金融機関」であることを周知していた。

もっとも、アラネア単体であれば銀行どころかカイザー本社ごと壊滅させることなど造作もないが、今の彼女は変装した身。エリオの脚本上、ここで大派手に動くわけにはいかないのだ。

 

ヒフミが頭を抱えて考え込む中、シロコが静かに彼女の思考を止めた。

 

「─────うん、他に方法はないよ」

「え?」

 

シロコが放った鶴の一声。

その瞬間、他の対策委員会メンバーと先生の脳内に激しい電流が走った。

彼女が何を言わんとしているのか、一瞬で理解できてしまったからだ。

以前、アビドス定例会議の場でも提案してきた、彼女らしくもあまりに突拍子のない過激な手段。

 

それこそが───────────────

現状を打破する唯一無二の一手であった。

 

「面白いわね、あの子(シロコちゃん)。まさか闇市最大の金融機関に対して、()()()()()()なんて」

 

あまりに奇想天外な発想に、アラネアの口元が愉悦で歪む。

 

「”(先生)としては、あまりやって欲しくなかったかな……”」

「純粋で良い子のアビドス生をこんな場所(ブラックマーケット)へ連れ込んだ時点で、今更すぎないかしら?」

「”………それを言われたら返す言葉もないけれど”」

 

そこからの行動は迅速だった。

銀行強盗を推奨するシロコの案に乗っかった対策委員会は、あろうことかヒフミをも巻き込んで現場へと突入。

各自「ブルー」やら「クリスティーナ」やらのコードネームを名乗り、組織名【覆面水着団】として手際よく銀行強盗を遂行していく。

ちなみに、全員これが人生初の銀行強盗である。ヒフミに与えられた配役は首謀者兼リーダー『ファウスト』。周囲の人間からは「一番ヤバい首領」と認定され、ヒフミは心の中で再び号泣していた。

 

急襲を受けた銀行側は大パニックに陥っていた。

日頃からマーケットガードの圧倒的警備に守られていた弊害で、いざ非常事態となると危機管理能力は皆無。行員たちはただただ右往左往するばかり。

加えて、顔を隠す覆面(ヒフミの分は用意がなかったため、たい焼きが入っていた紙袋で代用)と、アラネアが仕入れた変装服が効を奏し、犯行の主導者がアビドス対策委員会であると見抜く者は誰一人としていなかった。

 

唯一勘づいたのは、前日の依頼でアビドス高校を急襲し、偶然にも金貸しの契約現場に居合わせていた【便利屋68】の社員ふたりのみ。

犯人たちの声が明らかに対策委員会のそれであったため一瞬で察したようである。(尚、便利屋68の社長は覆面水着団の極悪非道な暴れぶりに憧れの目を輝かせていた)

 

一方、アラネアは先生と共に別行動をとっていた。

ヒフミはアラネアにも同行してほしかったのだが、シロコが「今回ばかりは自分たちの問題」と主張してアラネアの介入を拒否。代わりに、手薄になる先生の護衛役を頼み込んだのだ。

確かにアラネアは頼もしく強い存在だ。

だがシロコとて、いくら恩人とはいえ敬愛するホシノ先輩を恐怖させた人物をこれ以上近づけたくなかった。同時に、そんな人物に先生を押し付けてしまったことへの後悔も少なからず抱いていた。

 

シッテムの箱から電子音が鳴り響き、手慣れた様子で先生が画面を確認する。

表示されたモニターには、目的の集金記録を回収しつつ、押し寄せる追手から逃走を図る覆面水着団(対策委員会+ヒフミ)の姿が映し出されていた。

 

「”シロコとホシノは盾持ちの敵を中心に撃破して”」

「”ノノミはミニガンで周りの群れを散らして。セリカは撃ち漏らしたマーケットガードを狙い撃ち!””」

「”ヒフミは敵の進行ルートを妨害、遠隔援護のアヤネはいつも通り全体の回復と状況分析を!”」

「”指示は以上! みんな、こんな場所とはおさらばしよう!!”」

『『『『『『了解(です~☆・です)!!』』』』』』

 

先生の活気ある指示に、元気に応える生徒たち。その声を聞きながら先生は笑みをこぼす。

傍らで見つめるアラネアは、おくびにも出さないが、その手腕と指揮能力に秘かに感嘆していた。

 

シッテムの箱を用いた極めて正確な状況把握。

各生徒の特徴や長所を完璧に把握した役割分担。

そして、生徒と先生の間を結ぶ確固たる信頼関係。

それらが噛み合い、戦況をことごとく最善へと導いていく様は、まさに戦場の卓越した指揮官そのものであった。

 

「どうやらうまくいったようね。D.U.での大騒動でも、そんな風に生徒たちを指揮していたのかしら? 状況を的確に把握し、最良の手を打つ……流石はシャーレの先生と言ったところね」

「”私はただ、大人としてなすべきことをしたまでだよ”」

 

アラネアの称賛に対し、先生は控えめに謙遜する。

 

「ただ、なすべきこと、ね。……生徒からの称賛は素直に受け取っておくものよ? 己の能力に溺れる必要はないけれど、あまり謙虚になりすぎるのも相手に対して失礼というものだわ。謙遜は必ずしも美徳とは限らない……私はそう思うけれど?」

「”そ、そうかな……? あ、ありがとう”」

 

斜め上からの指摘に戸惑いつつも、先生は率直尚礼を口にする。

 

「さて、そろそろ私たちも撤退するとしましょうか」

「”そうだね……─────って、うわああぁっ!?”」

 

アラネアの姿が消えたと思った次の瞬間、先生の視界が急速に浮遊した。

先ほどまで潜んでいた狭い裏路地から、広大な市街地が一気に眼下に広がる。横を見れば、ワイヤーを駆使して夜空を舞うアラネアが、先生をお姫様抱っこで抱え上げていた。

状況を理解して一瞬恥ずかしさが込み上げた先生だったが、次の瞬間には顔面を蒼白に変化させる。

目の前直近に、巨大な高層ビルが迫っていたからだ。

この速度で衝突すれば、生身の自分など一たまりもない。

 

「”前! 前!! ぶつかるって!!!?”」

「怖いなら、目を閉じていなさい」

 

情けなく叫ぶ先生の横顔を見つめ、アラネアは悪戯っぽく微笑む。

衝突の寸前、アラネアはビルの窓ガラスを鋭く蹴り破った。ワイヤー移動の慣性と勢いそのままに、室内にある障害物ごと突き抜け、最終的には反対側の分厚いコンクリート壁すら撃ち破る。

再び宙へと投げ出され、重力に従って垂直落下する二人。

アラネアは雑居ビルの外壁や室外機の出っ張りを器用に足場にし、落下の衝撃を段階的に殺していく。

 

「”ひ、死ぬかと思った……”」

 

心臓が早鐘のように高鳴るのを感じながら、着地の衝撃もなくゆっくりと地面へ下ろされる先生。

先生は生身の人間だ。

銃弾が日常的に飛び交うキヴォトスにおいては、一発の弾丸で命を落としかねない最弱の存在。

普段は信頼する生徒たちの防護のおかげで安全を保っているが……今回のスカイダイビング紛いの力技はあまりに想定外すぎた。

 

「”せ、せめて一言事前に教えてほしかったな……!”」

「そう? けれど、生身で空を舞うなんて男のロマンでしょう?」

「”………生命の危機じゃなかったら素直に喜んでいたよ”」

 

空を飛ぶロマンには同意しつつも、先生は深く息を吐き、まずは全員が無事に脱出できたことを喜ぶべきだと思考を切り替えた。

 

「それじゃ、私はここまでよ。この道をまっすぐ進めば、あの子たちと再会できるわ」

「”君は一緒に行かないの?”」

 

不意に先生は問いかけた。

不正流用された資金の真相や、アビドスの裏に潜む巨大な陰謀。

ここまで到達できたのは間違いなくヒフミとアラネアのおかげだ。もう少し協力してほしいという本音もあった。

しかし、彼女は静かに首を横に振る。

 

「アラネア……蜘蛛が獲物を狩るときは、いつだって独りなの。それに、ホシノちゃんやシロコちゃんにも嫌われてしまったようだし、今日はここでお暇させてもらうわ」

「”……そっか”」

「それに……ここから先は、脚本通りに進む。進まざるを得ないのよ」

「”………え?”」

()()()

 

たった三文字の言葉。

それを耳にした瞬間、先生の全身が金縛りに遭ったように硬直した。

 

「”な……っ!? え? なんで身体が動かない……!?”」

 

突如起きた異常事態に困惑する先生。

金縛り─────混乱する頭の中で、その言葉が思い浮かぶ。

 

『先生!? 待っていてください、今助け……あれっ!?』

 

「シッテムの箱」のメインOS「A.R.O.N.A」。

普段は先生の“秘書”を自称するアロナが急報を察知し、シッテムの箱の防護機能を起動しようとする。

シッテムの箱には高度なハッキング防止やセキュリティ機能、さらにはあらゆる攻撃を防ぐ絶対的な防護フィールドが備わっている。

瓦礫の落下や銃弾、神秘に起因する攻撃であっても、先生の身の安全は完全に保障されるはずだった。

 

しかし、アロナの視界に映ったのは異常な光景だった。

先生の手足や全身に、無数の「見えない糸」が絡みつき、完全に拘束している。

こんな糸、防護機能で切断してしまえば─────そう試みたアロナだったが、結果は惨敗だった。

 

『な、なんですかこれ!?』

 

切断しようとしても糸は切れず、それどころか防護障壁を容易くすり抜けてくる。

構造や存在自体は認識できるのに、空の雲を掴むかのように触れることすらできない。

 

『し、シッテムの箱の機能が全然効かない……!? なんで、どうしてなんですか!?』

「何をやっても無駄よ、A().R().O().N().A()。今の君の段階では、私の神秘に対抗することはできないわ。無駄にリソースを消耗するだけよ」

 

先生とアロナは息を呑んだ。

アロナはシッテムの箱の中にのみ存在する特別な存在だ。

アロナの声や姿は先生にしか認識できないはずなのに、目の前にいる少女ははっきりと「A.R.O.N.A」と口にした。つまり─────

 

「”アラネア……君にはアロナの姿が……”」

「ええ、視えているわ」

 

当然のように肯定するアラネア。

彼女は身動きの取れない先生の手から不躾にシッテムの箱を奪うと、覗き込むように画面を見つめた。

 

「それにしても『A.R.O.N.A』じゃなくて『アロナ』ねぇ……。随分と可愛らしい姿になっちゃって。幾ら姿を隠すためとはいえ、先生に甘やかされる気満々じゃない。これじゃまるで甘えん坊のお子様ね」

『な、何の話ですか!? あと、アロナはお子様じゃないですっ!』

 

呆れ混じりの慈愛の目を向けられ、アロナは赤面して困惑する。

 

『せ、先生に危害を加えるつもりなら許しませんよ! これ以上近づくなら、アロナちゃんの拳が火を噴きますからね!』

「ふふっ、こわいこわい♪ 別に愛しの先生に怪我をさせるつもりはないわ。ただの確認と、言葉を残しに来ただけよ」

 

クスリと笑うと、彼女はシッテムの箱を持ち主である先生の手元へと戻した。

 

聞いて:今、この状況にとても困惑しているわね。私が誰で、何者なのか。なぜアロナを知っているのか。目の前の生徒が本当に味方なのか、信頼して良いのか分からない……」

 

「けれど、そんなことは重要ではないの。重要なのはこの先─────先生(あなた)が決められた道を正しく歩んでいくこと。アラネアという偽りの名など、気にする必要もないわ」

 

聞いて:これからあなたは、数え切れないほどの危険に晒され、恐ろしい真実や残酷な現実に直面することになる。……けれど同時に、美しい出来事にもたくさん出会うわ。我が子のように愛おしい生徒(子供たち)と歩み、かけがえのない青春をいくつも経験する……」

 

「そして最後に、あなたが道中で抱えた苦悩と、この世界のあらゆる謎が解き明かされるわ」

「─────これがエリオの予見。そして、あなたがこの世界に存在する理由よ」

 

微笑みを浮かべるアラネア。

語られる言葉の意味など、就任したばかりの先生には何ひとつ理解できない。しかし強制的に聞かされているにも拘わらず、その言葉は不思議と心に深く染み渡っていった。

先生は絞り出すように口を開く。

 

「”……分からないよ。君が何の話をしているのか、さっぱりだ”」

「”世界の謎とか運命なんて、赴任したばかりの私には想像もつかない”」

「”……ただ、私は先生として、大人として。生徒たちに寄り添い、導きたいだけなんだ”」

 

拘束された身で言えるのは、それが精一杯だった。

質問に対する回答にはなっていないかもしれない。

しかし、アラネアはその言葉を聞くと、深く満足そうに頷いた。

 

「今はそれでいいのよ」

聞いて:今のその気持ちを絶対に忘れないで。生徒を想い、寄り添おうとするその姿勢を。己の心に従って歩み続ければ、必ず物語の正しい結末に辿り着けるわ」

「私は……いいえ、()()()は、あなたのそういうところが大好きなのだから」

「”アラネア……君は一体……?”」

「残念けれど、もう時間みたい。次の仕事に向かわないと……最後に言葉を贈るわ。そこにいるアロナ(”鳩”)にもね。聞いて選択の機会が訪れた時、自分が後悔するような決断をしてはダメよ。責任を正しく背負う者は、必ず報われる。私たちがそれを保障するわ」

 

─────じゃあね、シャーレの先生。また近い将来に会いましょう。その時は、本当の名前でね♪

 

別れの言葉を残し、レディ・アラネアはかき消えるように姿を消した。

直後、拘束されていた先生の身体は、何事もなかったかのように自由を取り戻していた。

 


 

「先生ー! こっちですよー!」

 

アビドス自治区の近郊。

対策委員会にとって馴染み深い砂漠の境界線で、ツンデレ気質で皆から可愛がられている後輩・セリカが手を振っていた。

覆面水着団、無事に全員生還である。

 

アラネアの助言通りまっすぐ進んだことで、先生は無事に生徒たちと合流を果たしていた。

その後、集金記録どころか数億円の現金が手元に残るというハプニングに見舞われたものの、倫理観と良心に従って大金は放棄することを選択。

後から追いかけてきた便利屋68の面々を上手くなだめすかしたところで、ヒフミがふと重要人物の不在に気づく。

 

「あれ……? アラネアさんはどちらへ?」

「”それなんだけどね………”」

 

アラネアとのやり取りを説明しようとした矢先、先生のポケットから一枚の紙切れがひらりと舞い落ちた。

近くにいたシロコが拾い上げると、そこには達筆な文字でこう記されていた。

 

『ヒフミちゃんへ。今回は色々と楽しませてもらったから、護衛料金はタダでいいわ』

『代わりに対策委員会のみんなへ。近いうちにアビドス自治区へ遊びに行かせてもらうわ』

『なんでも、サービス精神旺盛な素晴らしいラーメン屋があると聞いたの。今度食べに行くわ。それを今回の報酬代わりとするわね』

 

「サービス旺盛なラーメン屋って……」

「それって、うちの柴関ラーメンのことじゃない!」

 

紙に書かれた内容から、対策委員会の面々はすぐにピンと来たようだった。バイト先として働いているセリカは、どこか誇らしげで嬉しそうな表情を浮かべている。

 

「近いうちに、と書いてあるということは、またお会いできるということでしょうか?」

「そうじゃないかしら! 今度大将のお店に来てくれたら、会えるかもしれないわね!」

「よしっ、今度会ったら目一杯ご馳走してあげましょう!」

「……あのー、アラネアさんの護衛依頼料って10万円だったので……なんだか私、すごく申し訳ない気持ちでいっぱいなのですが……」

「”本人がそれで良いって言っているんだから、気にしなくて大丈夫だよ、ヒフミ”」

 

再会を楽しみにする一同の中で、ただ二人。

ホシノとシロコだけが、アラネアに対して複雑な後ろめたさを抱いていた。

 

「……ホシノ先輩」

「ごめんごめん、シロコちゃん。大丈夫だからね」

 

レディ・アラネア。

己のトラウマに触れるどころか、容赦なく抉ってみせた危険な女。

心配そうに見つめるシロコに対し、ホシノはぽつりと溜息を漏らした。

 

「そっか……アビドスに来るんだねぇ……」

「…………おじさんとしては、もう二度と会いたくないかな」

 

呟くようなホシノの言葉を最後に、対策委員会は自分たちの安寧の場所─────アビドス高等学校へと帰路につく。

その平穏な居場所が、近い将来に大きく脅かされることになるとは、今の彼女たちは知る由もなかった。

 


 

先生と別れたアラネア改め、カフカは高層ビルの屋上で黄昏れていた。

機嫌よく鼻歌を口ずさみながら、優雅でゆったりとした時間を過ごしている。

 

「エリオから聞いていた通りね。まだ完全には目覚めていないけれど、直接会って確信したわ。『彼/彼女』こそが、この世界(キヴォトス)を照らす唯一の希望。()()()と同じく()()()()()()()()()()権利を持つ者。エリオと連邦生徒会長(彼女)が、あれほど気にかける理由も頷けるわ」

 

かつて、自分たちのリーダーは語っていた。

先生こそが、この世界を救う鍵なのだと。

あの子と同じく、■■或いは【■■(■■■■■)】の魔手からこの世界を救う主要人物(主人公)であると。

 

(……とはいえ、まだまだ未熟さが目立つ。今は彼女の加護が働いているから守られているけれど……見ていて危うい)

 

先生は生徒を慈しみ、自らが信じる大人の責務と誇りを胸に抱いている。

だが、その高潔さこそが時に強大な枷となるのだ。

この世界において、真の意味で正しく純粋な「大人」は先生ただ一人。

一人の人間である以上、万物すべてに通用する万能な理念など存在しない。

この先、先生は数多くの失敗と挫折を経験し、その結末に苛まれて無力感に打ちひしがれることになるだろう。

 

(それと……小鳥遊ホシノに関しては、少し鎌を掛けすぎたかしら? そこは反省ね)

 

脚本に従えば、神秘ハンターはただ()()を除いて物語の序盤には深く介入できない。

今の彼女たちに与えられた役割は、結末が最悪の破滅へ傾かないよう裏で流れを調整することのみ。

それはそれとして、ホシノの古傷を不用意に抉ったのはやり過ぎだったと、カフカは素直に自戒した。

 

焦っても意味はない。

カフカはただ、一言呟く。

 

「─────()()()()

「今はそれしかないわね」

 

彼女はゆっくりと歩みを進める。

その表情は一変し、先ほどの慈愛に満ちた笑みから、敵を嘲笑う残忍で冷酷な笑みへと塗り替えられた。

 

「さて、お次は─────」

 

対策委員会は正しく脚本に従い、裏で暗躍する敵の姿を捉えた。

ならば、次にカフカが行うべき仕事は──────────

 

「─────ゲヘナの風紀委員会を蹂躙しましょうか

 

()()()()()()に対して、その鋭い毒牙を向けんとしていた。




【カフカについて初めて会ったみんなの心情】
ヒフミ
「怖い人だけど、頼りがいがあって優しいひと」と警戒心なし。

ホシノ
ヤバイ奴認定。生徒とは思えない大人っぽさや、彼女にとってのトラウマに触れられたため尚更。警戒心フルマックス。多分、対策委員会編三章まで心を許さない。

シロコ
ホシノ程ではないが苦手意識を持つ。描写しなかったが、銀行強盗の際のアドバイスをくれたことには感謝しているらしい。

ノノミ、セリカ、アヤネ
恩人。助けてもらった感謝の気持ちが強い。アヤネだけは何処かで見かけたことがあるような気がするらしい。(なんでやろうな?ストッボケ

先生
不思議な子って印象。自分と同じ大人の人間のような感覚がした。けれど悪意もないし、助けてくれたから良い娘なのは分かっている。そして彼女の言葉はある場合()で……?

アロナ
まさか自分が見えているとは思わなかった。尚、アロナの中に居る()()は内心ドギマギだった模様。
???「好きなひとに甘えてもらう。それがなにがいけないんですかッ!」←そういうところやぞ

2026年8月10日 後書きを含んで改稿済み
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