『終焉』が近いであろう青空世界で私達は生きる......らしいよ? 作:エリオ(別同位体)
ホシノ救出のスチルと掛け合わせた感じを考えて「朝日」→「烈日」に。オンパロス要素はないです(NYN姉貴)
あと先に謝っときます。イオリ推しの先生のみなさま申し訳ございません。今回ばかりはアンチ・ヘイトが輝くかもしれない
ブラックマーケットの騒動及び闇銀行強盗事件から数日。
奪う事ができた集金記録の書類から隠された事実が明らかになった。
対策委員会が収めた返済額788万の集金。
その金の行方が度々襲撃を企てたカタカタヘルメット団へと流れていたという記録。
その間の流れにカイザーローンの職員が加担していたこと。
即ち債権者であるカイザーローンがヘルメット団を利用し、債務者側のアビドスを攻めていたということだった。
対策委員会はこの事実に憤慨するも、同時にある謎が浮かび上がる。
何故なら、この様な形でやっても待っているのはアビドス高校及び自治区の消滅。
最終的には借金の回収は不可能となり、貸している側としては一切の利がなくなる。
付いてきてくれたヒフミも交えて会議を進めたが、敵の狙いは不明。
確固とした答えは出ず、現時点の結論としては様子見という名の保留で収めた。
ヒフミは出身校トリニティ総合学園へ帰り、生徒会「ティーパーティ」へ報告することに。
この数日間、対策委員会はカイザーローンについて引き続き調べる中で事件が起こる。
事の始まりはある店からの爆発だった。
あるクライアントの依頼でアビドス高校と敵対関係となってしまった【便利屋68】
社長【陸八魔アル】
室長【浅黄ムツキ】
課長【鬼方カヨコ】
平社員【伊草ハルカ】
母校ゲヘナ学園に指名手配されるも立派なアウトローを目指す違法零細企業。
彼女たちはあろうことか対策委員会が贔屓しているラーメン屋「紫関ラーメン」で自爆テロを起こしてしまったのである。
彼女たちには悪意がなかったもの、対策委員会は前に襲撃された例もあり聞く耳持たず怒り心頭。
対策委員会と便利屋68
義憤と抵抗。両陣営との争いは避けられず。
先生のバックアップもありこの戦いは便利屋側に劣勢、勝敗はアドビスの方へ向く。
だが、予想外の勢力が出現。
【ゲヘナ風紀委員会】
ゲヘナ学園の風紀を守るはずの治安維持組織がアビドス自治区に襲撃。
その戦力の規模は百を超えた一個中隊。
三つ巴の戦いを経て、落ち着きを見せた頃。
この襲撃の下手人。ゲヘナ学園行政官【天雨アコ】が姿を現す。
赴いた理由としてゲヘナ自治区外で暴れる便利屋68の捕縛を目的とした責務と主張するアコ。
しかし、それを表向きの建前だと見破くカヨコ。
カヨコの追及に観念したアコは真の目的を自ら暴露する。
アコの目的は先生の身柄の確保。
シャーレという不確定要素を取り除く為、近いうちに険悪関係のトリニティとの条約に支障が及ばせない為に。加えて便利屋の捕縛と一石二鳥の作戦だと驕るアコ行政官。
『――風紀委員会、攻撃を開始します。対策委員会と便利屋を制圧して、先生を安全に確保してください。総員攻撃準備!』
「よくもショットガンの乱射なんて決めてくれたな……覚悟しろ!!」
「ああもう、どうすれば…………」
「かかって来なさい!便利屋68の名に懸けて返り討ちにしてやるわ!行くわよ!!」
「先生を守る。みんな準備はいい?」
「ええ!」「はい!!」
『敵、包囲を始めています!先生!私たちと便利屋68の指揮、お願いします!』
「”まかせて!”」
先生を奪わせまいと奮い立つ対策委員会。
ついで扱いとされ、怒りを見せる便利屋68。
画して、対策委員会と便利屋68の同盟対ゲヘナ風紀委員会との対峙が幕を開けようとしていた。
「──双方。そこまで」
たった1発の乾いた銃声が響くまでは。
「あれって……アラネアさん?」
光が遮られた昏い裏路地からひとつの影。
現れたのは男装の麗人。
レディ・アラネア。
以前ヒフミと共にブラックマーケットにてアビドスを手助けした謎の傭兵。
片手にサブマシンガンを抱えながら優雅に歩き、丁度両陣営の間に割り込むような形で、彼女は呑気に声を掛けた。
「やほっ♪来たわよ、先生と対策委員会のみんな」
まさかの登場に対策委員会と先生が戸惑う中、ノノミが口を開く。
「アラネアさんどうしてここに?」
「どうしてって?約束どおり。ラーメンを食べにきたけれど…………今はそれどころじゃなさそうね」
『ああ……。それには理由がありまして────』
紫関ラーメンだと思われる瓦礫の山。
彼女がここに来た理由を察する対策委員会。
それを見て残念そうにするアラネア。突然の乱入者に困惑する風紀委員会と便利屋68に対して意に介さず対策委員会と駄弁り始める。
「おまえは!?」
「ハアイ久しぶり。同じゲヘナから消えた割に楽しそうね鬼方カヨコ」
ただひとり。
カヨコは愉しそうに嗤うアラネアの姿を見て、慄然とする。
「なぜおまえがここに居る!ヴィヴァルディの蜘蛛ッ!!」
「えっ?どうしたのよカヨコ?あのひとと知り合い?」
『ヴィヴァルディの蜘蛛?あれ…確か、前に見たような……?』
普段面倒で便利屋の間抜けさにため息を吐くも、持ち前の知識と凛然とした態度で支えてくれる便利屋68課長。
冷静沈着で頼りになる彼女とは思えない形相に心配するアル。
カヨコは必至の顔で、対策委員会と先生。そして愛してやまない仲間たちに忠告しようとする。
言葉をする前にアラネアは心外だ、と悲しい顔をした。
「そんな心配しなくても、君の大事なお仲間には手出ししないわ」
「だって用があるのは…………風紀委員会だもの」
アラネアは風紀委員会に銃を向け、そのまま発砲。
その実弾はひとり風紀委員に直弾する。
仲間が撃たれた光景を見て、呆然とする風紀委員会。
当然、対策委員会と先生も撃ったアラネアを見た途端愕然する。
『何者ですか!いきなり攻撃するなんて、ゲヘナ学園の風紀委員会と知っての狼藉ですか!』
「狼藉?ゲヘナらしくない秩序を謳う連中の割には”美食”と”温泉”ごときに手こずる弱者の集まりに言う資格あるのかしら?」
『な、なんですって!?』
辛辣に冷たい声音で風紀委員会を評価するアラネア。
自分たちのことを弱者と言われ、ざわつく風紀委員会。
当然、彼女の評価に気に入らない、と切り込み隊長である【銀鏡イオリ 】と一年【火宮チナツ】が食ってかかる。
「部外者のくせに随分と舐めた評価だな」
「だってそうでしょ?思想短慮で能力不足の行政官。的確性だけ優秀な二番手スナイパー。考えない葦の有象無象。場数を踏んだ不良たちからは『風紀委員長さえいなければ楽なやつら』なんて言われる始末。ここまでくれば穀潰しに等しいわ」
「穀潰しだと……?おまえ…!」
「落ち着いてくださいイオリ!なにか誤解しているようですが、私たちは常日頃からゲヘナのために…………」
「なら、なぜ矯正局に送らないの?」
「えっ?」
”罰”という言葉に止まるチナツ。
アラネアは心底つまらなそうに口を開く。
「度を越した不良生徒は矯正局に送るのが一般的。まさか牢屋だけで済ませているの?お行儀の良いトリニティでも成績主義のミレニアムでも厳しい罰則が存在しているのに、反省室程度で秩序維持を心掛けているなんて、さすがゲヘナの風紀委員会はいい子ちゃんね。頭お花畑で羨ましいわ」
「そ、それは…………」
「アイツ、また馬鹿にして……ッ!」
困惑するチナツと拳を握りしめるイオリ。
他の風紀委員も散々小馬鹿にされ、銃を構えだす。
それでもアラネアは止まらず、言葉を続ける。
「あら顔真っ赤ね。なら、良いこと教えてあげる。反省しない不良生徒の更生方法を」
「余計なお世話だ!ゲヘナの風紀は私たちだけで…──」
「二度と生を実感できないような死刑を見せるの」
瞬間。アビドス自治区に空気が凍る。
風紀委員はおろか、便利屋68、対策委員会、大人である先生さえ、口が開かない。
「な、何を言って……」
「あら、死刑は言い過ぎちゃった。そうね、具体的には拷問。爪剥ぎ、電気椅子、洗脳教育なんてどうかしら?特におすすめは洗脳教育よ。可愛いハムスターやリスみたいに愛を注ぐように教え込めば、嘘のように人が変わるわ。これなら初心者でも……」
「やめてください!!」
あまりにも非人道的な提案。
生徒とは思えない恐ろしい方法と思想に思わず、チナツが叫ぶ。
アウトローを心目指すアルも、彼女に今でも感謝の気持ちを抱いていた対策委員会たちも同様。
アラネア以外、全員聴きたくないのも気持ちであった。
「そ、そんな非人道的なことを言うんですか!拷問だなんて……」
「あら優しいのね?でもね、”かつてのゲヘナ”ならこの程度のことならやっていたわよ、そうでしょ?」
ちらっと、カヨコの方に目を配るアラネア。
当の本人は黙秘。口にしたくないと言っているようにも感じた。
「ま、別に無理やりやらせるわけでもないし、マコトが議長の座についている限りそんなことしなくてもいいでしょうけど……」
「例えを出しただけでここまで怖気づいているなんて……がっかりね。こんな弱者に慕われる風紀委員長の器が知れてるわ」
『──────は…?』
こいつはなんて言った?
アラネアはいま風紀委員会にとって聞き捨てならない言葉を口にした。
それは風紀委員会全員が尊敬する存在。
目の前にいる生徒は確かに彼女たちの長【風紀委員長】を侮辱した。
殺気。
対策委員会と便利屋68相手にした時、拷問の話に恐れた時とは違う雰囲気がすべての風紀委員会に伝播する。
それでも行政官と言う立場に座るアコが冷静に先程の言葉の取り消しをアラネアに求めた。
『今。委員長のことを侮辱しましたか?訂正しなさい』
「事実でしょ。ゲヘナの不良生徒が更生しない理由をもう一回言うわ。弱い君たちのせいで彼女たちは自由気ままに好き勝手するの。そんな舐められた集団のリーダーを務めるなんて私から見れば空崎ヒナは”委員長の資格”なんてないわ」
『──ッ!?』
我慢の限界だった。
『──風紀委員会、攻撃対象を変更します。対策委員会と便利屋ではなくあの無礼者を……ヒナ委員長を貶す下衆を粛正しなさいッ!総員攻撃開始ッ!』
「嗚呼!さすがの私でも委員長を馬鹿にされて、黙っていられるかッ!!私に続け!」
怒りに歪む行政官アコの号令共に斬り込み隊長イオリ含む全風紀委員会の進軍。
百を超える軍団。対策委員会と便利屋68ではなくそれがたったひとりの生徒に向けられる。
「あの馬鹿…ッ!」
怒りのまま進む風紀委員会と愚考とも言える命令を下したアコに頭を抱えるカヨコ。
「死ねぇえええええ!!!!」
風紀委員会の戦車部隊の砲弾がアラネアに向けて放たれる。
あまりにも過剰すぎる攻撃。威力が高すぎた為か黒い爆煙が大きく舞う。
しかし、高火力の砲撃を受けたにも関わらず、煙から現れたのは無傷のアラネア。
アラネア……否、カフカは瞬時にいつもの格好へと衣を変え二丁のサブマシンガンを手に面白可笑しく嗤った。
「さて、ゲヘナ学園の風紀委員会のみなさん♪」
「少しばかり……私と踊りましょうッ!!」
これから行われるのは一方的で残酷な蹂躙である。
カフカ対ゲヘナ風紀委員会。
彼女たちは対策委員会と便利屋68を置いてけぼりに乱闘を始めた。
「一体、どうなっているの……」
「そんな分かるわけないでしょッ!?」
シロコが困惑するが、セリカもいま起こっている状況が理解できずにいた。
なぜ、
その疑問で頭が埋めつかせる一方で、先生はカヨコに近づく。彼女なら何か知っていると思って。
「……先生。こうしてちゃんと話をするのはラーメン屋以来だね」
「”カヨコ。アラネアについて何か知っているなら教えて欲しい”」
「そうよカヨコ!あの人が現れてから様子が変よ。一体どうしちゃったのよ!」
「落ち着いて社長。言う、言うから。……まず第一にアイツはアラネアなんて名前じゃない」
カヨコへと向けられる全員の視線。
彼女は包み隠さず、ため息を吐きながら自身が知っていることをみんなに開示した。
「──神秘ハンター『ヴィヴァルディの蜘蛛”カフカ”』。かつてゲヘナ学園に在学していた悪魔。いまでは裏社会で知らない者はいない大悪党だよ」
「”神秘ハンター?”」
「うん。私たちなんかよりずっと深いところにいるやばい奴らだよ。
「ヤペラー音楽館……その事件なら私も聞いたことがあります。アラネアさんがその悪人なんて……」
カヨコから次々と明かされる罪状。
ある企業の令嬢であるノノミもワイルドハント関連の事件について聞いたことがあったのか、その顔には驚きの表情を浮かべる。
まさか、助けてくれた恩人が大悪党だなんて信じられなった。
「でもなんでそんな犯罪者がアドビスに来たの……」
「さあ?でも少なくとも神秘ハンターは”何か”目的があって動いている。それだけは確実。アビドスに”そのなにか”があるんじゃない?」
『────やっぱりありました!』
「アヤネちゃん?」
『思い出したんです!便利屋のみなさんの情報を調べたときに確かにありましたっ!』
カヨコに続き、アヤネも思い出したかようにアビドス校舎から情報を送られる。
前に便利屋について情報収集してた際、アヤネはカフカの情報を知っていた。
あの時は便利屋と武器の行方を追っていた為、興味もなく少しばかり一瞥しただけ。
それ故か、カフカが変装した姿。アラネアとして初めて会った時に違和感を感じていた。
送られてきた情報。それはカフカについて書かれた指名手配ファイル。
カフカの名前と「趣味はコートを集めること」が書いてある簡素なもの。
『再度調べてみたところ、ヴァレキューレにも懸賞金が懸けられてました。その額は…』
懸賞金108億9900万
「108億ッーーー!!!?」
規格外の金額に思わず白目を向くセリカを筆頭に、対策委員会は
なにせアビドスの借金の12倍にも及ぶ大金であり、声を荒げるのも無理もない。ついでに見た便利屋も先生も同じ反応であった。
「すごい額。これだけあれば復興するどころか」
「この金額なら小さな自治区の1つなら余裕で買えることができますよ……」
『お気持ちなら分かります。これを見たらそんなこと考えてしまいますよね』
「捕まえましょう!……って、何言っているの私。あのひとが犯罪者とはいえ、仮にも恩人よ。おちつけ……」
みんながざわめく中、先生はこの懸賞金の額を見てあの事実に行きつく。
「”でも、それだけ大金が掛けられているのに捕まっていないということは……”」
「察しが良いね。それだけ手強い相手だからだよ。ヴァルキューレは愚か、SRTやトリニティの正義実現委員会でさえ捕まえることはできなかった」
それを聴いたアルは汗水垂らながら、カヨコに質問する。
「……ちなみだけどカヨコ。貴女から見てあのカフカっていうひとはどのくらい強いの」
「…………ヒナとひとり相手しても、余裕で生還するどころか一方的に打ちのめされるだろうね」
「「「まっ!?」」」
「勘違いしているだろうけど、これについては私の持論だしヒナが負けるとは一言も言ってないよ。だけど、だからこそあの女は恐ろしい」
便利屋の仲間たちが驚く中、再度カフカについて語るカヨコ。
「アイツは恐怖を持たない優雅な殺し屋」
「二年前のゲヘナ。当時の生徒会のもとでその手腕を振るい、ゲヘナを支配してきた」
「ひとが変わっても、その実力と知性は衰えていない。寧ろ悪辣さを増している」
戦場へと視線を向ければ、その先にいるのは一方的に
それひとり相手に苦戦する風紀委員会。
必死に状況を覆そうと焦りを見せ指示を出すアコ。
そんな彼女たちに向けるカヨコの目は、どこか憐憫の感情が宿っていた。
「このままじゃ風紀委員会は”壊滅する”」
「アコは……風紀委員会は馬鹿なことをした」
「余計なことをせず、
カヨコはそう言って、戦いに手を出さず見守る。
自分ではどうすることもできない。──達観というより諦めた様子で状況を俯瞰した。
風紀委員会に喧嘩を売ったカフカ。
数値だけ見れば、差は歴然。むしろ過剰戦力とも、リンチだと評してもいい。
白ひとつだけで百通りある多彩色を塗りつぶせるか?
答えは否。白だけでは様々な色には勝てず、取り込まれるか逆に塗りつぶされるのみ。
風紀委員会は様々な色がある側だ。
風紀委員一人ひとりの実力は並みである。
よその学園・自治区からも認める最強格ゲヘナ風紀委員長【空崎ヒナ】の足元に及ばぬが無力ではない。
それぞれが長所と短所を補い合い、秩序を乱す規則違反者を追い詰め捕獲する。
【美食研究会】と【温泉開発部】ようなテロリストには委員長の力なしでは苦戦するが、今日この日まで違反者たちを成敗してきた。
行ける。私たちなら
今までと同じように、いまは便利屋ではなく敬愛する
「「うおおおおお!!!」」
「あら怖い。落ち着いて♪」
勇敢に突撃した10人の風紀委員会。全員がカフカの銃弾に命中する。
全部、急所に撃ち抜かれ悶絶する風紀委員たち。対するカフカは余裕の表情を浮かべる。
「うぐッ……!」
「この程度?もっともっと私を楽しませてちょうだい」
「馬鹿にするなッ!!!!」
周囲に構わず撃ちまくる風紀委員たち。
カフカは鮮やかに回避し、撃ち返す。
銃撃だけじゃない。時に懐へ割り込みでの体術。寂れた看板等の障害物や地形の利を生かし、次々と風紀委員を制圧していく。
「あら?」
制圧していく中、突然カフカが愛用している二丁のサブマシンガンの引き金が固くなる。
空薬莢の排出異常。所謂
「ジャムったぞ。今が攻め時だ!」
「撃って!!」
前衛にカフカと同じサブマシンガン、ショットガンにアサルトライフル。後衛にはイオリを含めたスナイパーライフルを扱う狙撃手たち。風紀委員会はサブマシンガンの弱点を突き、全集中攻撃の場面を整えていた。
絶対絶命の窮地。しかしカフカは動じず。それどころか面白可笑しく嗤った。
銃弾が放たれる0.2秒前。近い位置に居た風紀委員たちに異変が起こる。
「え?」
「残念。近接手段なら幾らでもあるのよ」
手にしていた銃が真っ二つに割れる。
カフカの手には動作不良を起こした短機関銃ではなく、一振の刀。
その刀によって前衛の
「ちょうどいい
「ッ!? 撃つな!」
気付いたイオリは射撃を止めるよう促すが遅い。
逆にイオリの声が原因で指先が掛かった引き金を引いたものが出てきてしまった。
弾丸の雨がカフカに降り注ぐ。
だが、カフカは銃を失った数名の風紀委員をお得意の糸でまとめ上げ、それを盾にする。
盾の役目をされてしまった風紀委員たち。それだけに留まらず、カフカはありえない形でそれを後衛へと投げつけた。
「なんだとッ!?」
「うわあああ!!!!?」
さながら人間大玉とも呼べる攻撃は、後衛の陣営を崩した。
イオリは間一髪、避けたが後衛に当てていた大半の風紀委員は全滅。
だが、動揺する暇はない。戦車部隊が味方を助けようと戦車を走らせ砲弾を撃つ準備を始める。
しかし、カフカは砲弾を撃たれる前に接近し、横薙ぎで一閃を描く。
戦車は銃と同じく、二手に分かれ、操縦した乗り手が露わになる。
「戦車が真っ二つに!?」
「そんなバカなッ!?トリニティのヤツとタメ張れる新品だぞ!」
「よそ見は厳禁」
「「しまっ……ッ!」」
言っている間にも乗り手たちは撃たれ、戦車は大爆発を起こす。
加えて数十人の風紀委員は起こされた大爆発に巻き込まれる。これにより、一個中隊の大部分は戦闘不能。残るは隊長イオリと10人程度の先鋭、チナツ率いる救護班のみ。
「残りわずか、ね?」
白ひとつだけでは百通りある多彩色を塗りつぶせない。だが、それが黒色なら?
黒は明度と彩度が最も低い「無彩色」であり、光をすべて吸収・遮断する。黒が大きければ大きい程色は黒に塗りつぶされる。
今回の場合、カフカは全ての覆う黒。
風紀委員会は次々と黒に浸食されるように数が潰される。
多勢に無勢。
まさにそう表現せざる負えない戦況だった。
カフカから放たれる
「よくも仲間をッ!許さない!」
不利的状況の中、風紀委員会の切り込み隊長が仲間の敵討ちに突撃する。
【クラックショット】
イオリが愛用するスナイパーライフル。
遠距離から鋭い弾丸が射出されるが、カフカは戦闘中で散りばめた瓦礫を糸で手繰り寄せ、簡易的な盾にする。
「いい腕ね、風紀委員会の切り込み隊長って言われるだけある。でも、その程度の腕じゃ私に当たらないわ」
「なら近づくまで!」
遠距離からでは決定打にはならないと踏んだイオリは近接手段を選択。
サブマシンガンとスナイパーライフルの雨が振り、両者とも手が届く位置につく。
射撃混じりのインファイト。
撃っては殴り蹴り、銃床や頬当てで物理的に両者互いに攻撃を仕掛ける。
イオリの頬に汗が流れる。
近接戦闘はイオリにとって珍しいものじゃない。規則違反者を制圧する際に身体を使って取り押さえることが多く、それなりに力をつけている。だからこそ、目の前の相手の実力がはっきり分かってしまう。
(コイツ!めっちゃくちゃ強いッ!)
ただの不良レベルじゃない。攻撃力、柔軟性、精密性等どれも格上。
彼女の脳裏に一瞬、
これは狩りを楽しむ狩人そのもの。
命のやり取りに生き甲斐を感じるような狂人だ。
(私たちはこんな奴に喧嘩を買ったのか。……まったく今日は厄日だッ!)
悪態つきながらも、戦いの手を止める選択肢などない。
そう思った瞬間、激しい火花がイオリの横に通りすぎた。
「……なんだッ!?」
カフカとの距離を置き、確認をとったイオリ。
そこにはワイヤーと一本の針。それも激しい電気が走るものが地面に落ちていた。
(電流の針!?)
「あーら残念」
まさかの搦め手登場にイオリは更に警戒心を高める。
「でも次は痛いわよ?」
「ッ!?」
電流流れる網針が、イオリを覆いつくさんと迫ってくる。
「ッ!!(不味い不味い不味いッ!アレに当たったら絶対
生徒は銃弾に強いが、電流に対しては並みの人間より上程度の耐性。
彼女は悟った。長引けばこっちが不利に追い込まれるぐらいなら、一撃に賭けると。
逃げに徹していたイオリは最後の一手をかける。
再びカフカの懐へ近づく全力のダッシュ。カフカはイオリの狙いに察し迎え撃つ。
「残念、あと一歩だっ……」
距離的にあと一歩の所で、イオリの右手からカフカの顔に何かがかかる。
「(目潰し。なるほど、アスファルトの……)」
それは戦闘中で露出したアスファルト。その粉。視界を防がれたことで隙が生まれ、その隙をイオリを待っていた。
「もらったッ!!!」
狙いは前額部。人間の致命傷に当たる急所。
勝利の手はイオリに渡ろうとした。
「いい戦いね、けど残念」
その時、イオリの側面部に衝撃が走る。突然の衝撃で身体が吹き飛ぶ。
「ッ!!? 撃たれた?どこから……」
目を潰した以上カフカは攻撃できる手段はなかったはず。
なにか仕掛ける素振りも仕草もなかった。
「な……っ!?」
弱った体に鞭を打ち、目を開けると信じられない光景が待っていた。
倒れ伏していたはずの風紀委員たち。
その全員が仲間であるはずのイオリに銃を向けていた。
「お前たちなんで……」
「行きなさい♪」
カフカが号令をかけると同時に動き出す風紀委員。
「やめろ!私が誰だがわからないのか!?」
イオリは必至の形相で訴えるが、彼女たちのその目は虚ろ。
まるで操り人形のように生気を感じられなかった。
カフカはイオリに攻撃仕掛けた間、倒れ伏し意識が曖昧の風紀委員にワイヤーを飛ばしていた。ワイヤーに巻かれた風紀委員はカフカの神秘を用した暗示を掛けられ、駒と化したわけである。
駒へ変えられた彼女たちは命令のままにイオリに組み付く。
「何をしているんですかみなさん!!目を覚ましてください!」
「力つよ!?おまえこんな握力強くなかっただろが!?」
「イオリ隊長から離れろーッ!!」
激しい戦いで見ることしかできなかったチナツたち救護班もここで加勢に出る。
イオリに引っ付く仲間をはがそうする救護班。
「え?」
やっとの思いで1人はがせた。その時一つのプラスチック製の箱があった。
救護班は見覚えがあった。それは仲間の1人が所持していた
何故ここに、救護班がそう思った中、カフカは遠くから起動スイッチを取り出す。
「ポン♪」
呑気な合図と共にスイッチが押される。
設置型爆弾は光を放ち、イオリとチナツたちを包み込む。
緩やかに時間が流れる中、風紀委員会は何が起きたのか自覚できずに激しい爆発と共に散った。
『ゲヘナ風紀委員会部隊長及び、風紀委員全員の撃破確認しました。…………ぜ、全滅です』
平静を装いながら震えるアヤネの声が空間に響く。
目の前の広がる光景に茫然とする先生たち。特に便利屋68は強い動揺が隠せない。
何せ風紀委員会の脅威は彼女たちがよく知っている。手を交えたことなど数十回にも及ぶ。
『そ、そんな……』
『ぜ、全滅。風紀委員会がたったひとり相手にやられるなんて』
当然この場から遠目に眺めていたアコも。
ありえない。多勢相手に圧倒するなど、こんなの委員長しか許されないはずだ。
対策委員会と便利屋68相手に負けたのならまだ理解は出来た。納得はしないが”先生”と言う要素が邪魔したと無理やり理解を示したかもしれない。
だが、これはどうしようもない。
たった1人相手に完膚なきまで屈され風紀委員会は死屍累々。
いまのアコの表情は絶望そのもの。
自分の独断行動が、先生を手駒に収めるつもりが部隊壊滅を招いたなど、崇拝するヒナ委員長になんて述べればいいか。
「がっかりね。ここまでゲヘナが弱くなっていたのは予想外」
(そう見えるだけの)死体の道をカフカは歩く。
ため息を吐きながら、地べたに倒れた風紀委員たちを冷たい態度で見下す。
「……まあ二年前より平和になった結果なのは理解しましょう。けれど強くなりたいという向上心がまるで感じられない。君たちが敬愛してやまない委員長が
戦って分かった。
風紀委員会の全体的強さは”そこそこ”止まり。最強の風紀委員長と言う壁が身近にあるせいで誰もが成長を諦め「あの人だけでいいんじゃない」と結論を下している。
カフカは母校を裏切った身としてゲヘナのことはどうでもいいが、
そこで”試練”としてカフカは行動を移す。
その試練とは……
彼女は倒れ伏すイオリの
「ぐあああああっ!!!?」
『イオリッ!?』
弱り切った身体に鋭い痛みがイオリを襲う。
カフカの突然の凶行を見た先生たちは驚愕した。
「これを見ている風紀委員会。君たちに贈る元先輩のちょっとした試練よ」
「今から30秒おきにカウントダウンを3つ数える。その間に助けるなり、私を撃つなり、君たち行動を起こしたものがいるなら、私は謝罪でも土下座でもなんでしてあげる」
「居ないなら君たちの隊長の
突然の死刑宣告。
それを聴いたこの場にいる全員の背筋が凍る。
『ま、待ってください!冗談ですよね?命を奪うなんて、それこそキヴォトスでは大重罪ですよ!?それを理解しているんですか!!』
「理解ね……。これを見て、冗談だと思うなら呑気ね」
「が、あああああああッ!!!!!」
踏みつける力を強めるカフカ。
それに伴い、イオリを襲う痛みが一層強まる。
イオリの絶叫を耳にし、はったりではない、本気でやろうとしているのを感じた。
「”待って!それ以上はやめてくれ!!”」
「先生の言う通り、これ以上アビドスで好き勝手させない」
「助けてくれたのは感謝しますが、これ以上はいけません!」
「そうよ!私たちの場所で、血が流れたらたまったもんじゃないわよッ!!」
「ムツキ、ハルカ、カヨコ。対策委員会に続いてあの人を止めるわよ!」
「はいアル様!!」
「そうだね、流石にコレは笑えないかも!」
「仕方ない。これに関しては止めなくちゃ」
これ以上は不味いと感じ取り、止めに入る先生たち。
こちらに駆けつける先生たちを見て、カフカはあの言葉を口にする。
「聞いて」
この言葉を耳にした瞬間、先生たち全員の身体に異変が生じる。
「”こ、これは、あのときの…!?”」
「ん!!?な、にこれ。身体がうごけない……?!」
強制的な金縛り。
前日、先生だけに掛けたあの時と同じ束縛が先生たちを足止めにする。
「悪いけど、これはゲヘナの問題だから見たくないなら目をつぶってちょうだい」
「それじゃ始めるわ。いち、にーーい」
始まるカウントダウン。
代価はイオリの命。カフカの言う通りなら30秒おきに進むカウントダウンの中で風紀委員会の誰かが行動を起こさない限り、命の保証はない。
だが、風紀委員は先の戦闘のおかげで大打撃。全員が動きたくても少し動かすだけで激痛が走る。
29秒たった時、アコが通信で大きな声を挙げた。
『分かりました!私たちが、私たちが悪かったですッ!アビドス自治区に侵攻した件も先生を拉致しようした件も、なんなら貴女に攻撃したことも謝ります!だから……ッ!』
いつもの彼女らしくない言葉。涙越しに風紀委員とイオリを救う為、謝罪するアコ。
しかし……
「残念だけど、貴女は例外。対象は倒れている風紀委員のみ。私が求めているのは責任より”勇気”。全力で走って助けるなら話は別だけど」
『そ、そんな!?』
「さんじゅう。カウント1」
「ゔ、あああああああッ!!!!!」
残りカウント2。踏みつける足の力が強まりイオリの絶叫がまた響く。
この光景を目にして、誰もが必死に動こうとする。
「い、おり……ッ!」
「う、ごけ……うごけよッ!このからだ…ッ」
「た、隊長……ッ」
チナツとイオリと親しい友人が立ち上がろうとする。
だが、C4爆弾の威力が強すぎたのか。全身が悲鳴をあげ、膝までしか立ち上がれない。
「カウント2。残り30秒わずか」
「あ、ああああ………っ」
残りカウント1。
イオリの声が弱々しくなり、もう限界だった。
「”やめて、止めてくれ………”」
先生の目に涙が流れる。
自力、シッテムの箱、言葉。自分にできる限りに拘束を解こうとするが、効果なし。
無情にも秒数が数えられ、そしてその時がやって来る。
「時間切れ。残念ね、結局はイキのいい獲物はいなかったわね」
サブマシンガンをイオリに向ける。
その先にあるのは”死”だ。
「
「イオリいいいいいい!!!!」
「”やめろぉおおおおおッ!!!!!”」
チナツと先生の大絶叫が響き渡る。
カフカが引き金を引こうとした瞬間、彼女の頭上に影が覆った。
「────やっと来たわね」
嬉々とカフカは迷いなく空に弾幕を放つ。
放たれた先にひとつの人影。それはゲヘナ学園の校章を模したかのような天輪に猛々した悪魔の翼を携えた豊かな白髪の少女。
それを見たイオリはその姿を、自分たちを想う逞しい存在を目にする。
「委員長……」
ゲヘナ風紀委員長【空崎ヒナ】
サブマシンガンの弾幕をものともせず、己の肉体のみだけ弾き、身の丈ほどもある長銃【終幕:デストロイヤー】による弾丸の嵐をカフカに放つ。
対するカフカはイオリから足を離し、回避と平行に銃撃戦を開始する。
激しい銃撃戦を経て、両者は相対する。
「私の後輩になにをしているの?カフカ」
「久しぶりヒナ♪いつぶりかしら?」
ゲヘナの最強とヴィヴァルディの蜘蛛
彼女たちにとって二年の時を経て、再会する。
敵意と憎悪。愉悦に虚無。
ヒナとカフカ。その関係は歪で険悪そのものだった。
『委員長!来ていたんですかッ!?』
状況が変化して早々、驚愕の声を荒げるアコ。
委員長は遠くで出張中だったはず?なぜアビドス自治区にいるのか?
「アコ」
次の瞬間、アコの思考が停止する。
ただ名前を呼ばれただけなのに、その声色は冷たく、怒気を孕んでいた。
「委員会を独断で他の学園の自治区での運用。加えてこの悲惨な状況」
「あとで。きちんと説明してもらう。覚悟して」
は、はいぃ……。アコは腰を抜かす。
戦況は光が差したが、このあとのことを考えると怒られるのは確定であった。
「委員長ッ!」
「ごめんなさい!私たちは……」
「反省はあとで。チナツ、救護班は?」
「な、なんとか運用は出来そうです。身体は悲鳴をあげていますが」
「今すぐアビドスから撤退し治療を優先して。この後は私がやる」
背を向けてカフカと対峙する風紀委員長。
彼女の指示に従い、ボロボロな身体ながら撤退準備を開始。
ヒナはボソッと風紀委員たちに言葉を口にする。
「聞いて。本当だったら許可なく自治区に入ったことは許されない。……でもみんな無事でよかった」
慰めの言葉に風紀委員全員が涙を流す。
それを見たカフカは微笑ながら、ヒナのリーダーシップを眺めた。
「随分と親しまれているわね。情報部にいた頃とは大違い」
「……そういう貴女は変わったね。以前貴女なら後輩の指導なんてしなかった。それどころゴミ扱いにして肉盾にしていた」
「懐かしいわね。あの頃は生き甲斐なんて何もなかった。つくづくゲヘナを裏切って正解だったわ」
「それはなにより。答えて……────”
脅迫じみた気迫がカフカを襲う。
何処となくそよ風程度に流しながら、カフカは髪を呑気にいじる。
「さあ?あんなおもちゃ。今となっては使う必要はないし、それでキヴォトスを支配する気なんて微塵もないわ。寧ろ私が隠したままの方がよくない?」
「貴女が使おうと使わまいと所持しているなら私は…私たちは遺産を壊す”責任”がある。包み隠さず吐いてもらう」
ふたりの険悪ムーブに後退りする先生と対策委員会。
いつの間にか便利屋は姿が消えたり等、状況はカフカと風紀委員長のペースに乗せられたその時、対策委員会にとって馴染み深い気だるそう声が耳にした。
「うへ~、こいつはまた何があったんだか。すごいことになってるじゃ~ん」
「「「ホシノ先輩!」」」
小鳥遊ホシノ。
アビドス一番上の先輩。どういうわけかこの場で遅れて登場する。
対策委員会はホシノに詰め寄り、ヒナはホシノを視認したや否や目を丸くしていた。
「うへー…遅刻しちゃった?ごめんねー。お昼寝が気持ちよくてさ♪」
「昼寝ぇ!?こっちは色々大変だったのに!とんだ怠け者ね!」
「ん。遅い。もう大体片付いてる。けど……」
「これはこれで大変な状況なんですよね……」
怪我しながら逃げ惑う風紀委員。
両者睨み合い真っ只中のカフカとヒナ。
確かに大変な状況下だとホシノは察した。
「で、これは一体どうゆう状況?」
「いろいろあって便利屋と一緒にゲヘナ風紀委員会とやり合ってた。けど、アラネア…いやカフカが割り込んで来て風紀委員会をボコボコした」
「ちょっとまってシロコちゃん。状況説明ありがたいけど、飲み込めないっていうか……なんというか」
「小鳥遊ホシノ」
「ん?君は……」
頭を抱えているホシノに話しかけるヒナ。
「空崎ヒナ。ゲヘナ学園の風紀委員長を務めている。勝手ながらアビドスに協力を要請する」
「いやいや。いきなりなにを………」
「そうよ!協力しろって、第一アンタたちがアビドスに来なければ……!」
「それについては本当に申し訳ない。これを機に風紀委員会が
ヒナは静かに頭を下げる。
その突然の行動には対策委員会は驚愕の表情を浮かべた。
まさか、一校の学園で名が知られる風紀委員長が頭を下がるなんて、思いしなかった。
「その上で、無礼承知でお願いを聞いてほしい」
「────カフカ。彼女はゲヘナ学園が追っている犯罪者」
「二年前、姿を消してから情報部さえ行方を掴めなかった相手なの。もちろん、ただ働きはさせない。ゲヘナ学園から報奨を出すことも約束する」
ヒナにとってカフカは捕まえなればならない相手。
この場で姿を見せた理由は不明だが、ヒナにとっては千載一遇の機会。
だが、相手は自分1人では対峙しきれない悪魔。ここは恥を偲んで対策委員会に協力を要請するしかない。
頭を下げるヒナを見たホシノは仕方なく、答えた。
「頭を上げてよ、風紀委員長ちゃん。……いいよ、そのお願い聞いてあげる」
「ちょっとホシノ先輩!相手は私たちを助けてくれた恩人よ!?」
セリカが声を挙げると、ホシノはやれやれと諫めた。
「セリカちゃんの言う通りアラネア……いやカフカか。あのひとは恩人かもしれない」
「……けどね」
アビドスを血に染めようしたおバカさんを
ホシノから殺気が放たれる。
いくらブラックマーケットでは恩を感じたとはいえ、愛する自治区を汚そうした狼藉は許さない。
口調も”おじさん”ではなく”私”。ホシノの堪忍袋の緒は切れていた。
普段だらしない先輩とは思えないほどの覇気に怖気づく対策委員会。
ホシノは愛銃「Eye_of_Horus」を構え、先生に許可を求める。その問いは簡素なものだった。
「いい。先生?」
「”……わかった。彼女には言いたいことも聞きたいこともある”」
”彼女を捕まえよう”
ヒナからのカフカという人物像を知り聞いて尚、彼女との対話を試みるために先生はシッテムの箱を起動し、準備に入る。
これは戦闘ではなく「捕獲」。対策委員会4人も理解し渋々ながら態勢を構える。
前方に風紀委員長。
後門に対策委員会。
なにがあっても対処する先生も加わり、全員がカフカに対する包囲網を敷き、逃がさないよう近づく。それを見たカフカはこんな危機的状況を見ても笑みを浮かべた。
「ふふ♪」
「……なにがおかしいの?」
「別に、さて困ったわ。ゲヘナとアビドスの最強2人に先鋭揃いの対策委員会。おまけに先生の指揮が加わるとなると切り抜けるには困難。大勢の相手したせいでいまの私は疲労困憊、状況から見て絶対絶命」
「”降伏するの?それなら万々歳だけど……”」
いいえ、とカフカは降伏ではないと否定する。
「申し訳ないけど、いまの私はゲヘナのカフカじゃなく【神秘ハンターのカフカ】。過去の因縁なんて関係なく誰であろうと捕まってはいけない身なの。そうでしょ……」
「────
彼岸、葬送
「”!? みんなよけてッ!!”」
先生の警告も空しく、対策委員会は一歩遅れ、ホシノとヒナに至っては防ぐことさえままならない中、斬撃が命中する。
「「「きゃああ!!」」」
「うぐっ!?」
「がぁっ……!?」
彼岸花が舞い散り、吹き飛さばれる生徒たち。
同時にカフカの傍に立つ人物が姿を現す。
黒いフードにロングコートを身に纏う長身の人物。
フードを深く被っているせいか、顔は隠され露わになっているのは垂れた濃灰色の髪とひび割れた天輪。
その片手には銃ではなく黒い刀身に亀裂が入った剣。ただの生徒にしては異質な存在だった。
「……お前は遊びすぎだ。余計な敵を作ってどうする」
「今後の私の"脚本"に必要な展開よ、それじゃエスコートお願いね?」
その人物はカフカを片手で抱き寄せ、彼女もまた遠慮なく肩に寄りかかる。
「逃がさないッ!!」
誰よりも早く立ち上がったヒナがカフカたちに向けて、弾幕を放つ。
謎の人物は避けようとも防ごうともせず、平然と背中でヒナの攻撃を受ける。
攻撃を物ともせず、一撃が必殺級の激しい弾幕に平然と立つ黒フードの人物。
カフカから刃ちゃんと呼ばれたその人物は歯がゆい表情で歪んだヒナを見て、愉しそうに笑う。
「いまのが、ゲヘナの風紀委員長の弾丸、か」
「ッ!」
「いい、なかなかだ。だからこそ味わえぬ今が惜しい」
名残惜しそうに呟き、腰を低く捻って剣を構え出す。
「余さず受け取れ──── 彼岸、葬送」
剣を振り出したと同時に血のような斬撃が再びヒナに襲う。
「う、ぐぐううッ!!!!」
今度は防ぐヒナであったが、斬撃の威力に耐えられず、最終的に壁へと叩き付けられ、瓦礫の山へと這いつくばる。
「がぁっ……!?」
それは斬撃のダメージなのか、壁に叩き付かれた衝撃なのか。風紀委員長に就いて久しく忘れていた“痛み”がヒナに襲い掛かる。
口から血反吐を吐き出し、膝をついてしまうヒナ。
それを横目にカフカは倒れ伏す全員に手を振る。
「じゃあね、ヒナ。それと対策委員会と先生。またいつか顔を合わせる日を楽しみにしているわ」
「カフカぁああッ!!!!!!」
怨みを込めたヒナの叫びを最後に郊外へと消えていくカフカたち。
一体、なにが目的だったのか。
それを知る前に、彼女たちの姿はアビドスの砂嵐のように過ぎ去り、消えていった。
まさかMAPPA産のスタレアニメを見られるとは…このリハクの目をもってしても…。
星核ハンターの深掘りしてくれるのかな……銀狼が愉悦の使令だったから更にプロット考えし直しの羽目になったの……(泣)逆にブルアカは連邦生徒会長の件で面白かったし、ストーリー構想がスムーズに進みそう。
あとFOX小隊実装おめでとう!限定なのでみなさん課金はほどほどに……。
【おまけと小話】
Q. 神秘ハンターってなにやかしたの?
A.色々。義憤やら金儲け、喧嘩売られた等など。
カイザーハローワークの倒産 → サム
ゴールデンフリース号不正豪遊事件 → 銀狼
DOG小隊敗北事件 → 刃ちゃん
ヤペラー音楽館 → カフカ
因みに、カフカの二つ名である【ヴィヴァルディ】は”外の世界”から流れた遺物【アントニオの楽譜】を使って演奏したのをきっかけで名が付けられた。その後「慈愛の怪盗」と楽譜を巡って結果音楽館は壊滅。あーかわいそう
Q.なんでイオリを酷い目に遭わせたの?
A.思いのほか風紀委員会が弱すぎたため、失望と苛立ち故の行動。同時にヒナ及びゲヘナへの挑発する意味合いもある。尚本気でイオリを殺す気はなかった模様。
あとカフカの冷酷さを強調するためと作者が不憫なイオリを見たいがためです。あーかわいそう
《解説》カフカについて
今作のカフカはかつてゲヘナ学園に所属し
ある日を境にカフカはエリオと出逢い、自身の願いのためにゲヘナ学園を裏切りました。
同時に
そのため、犬猿の仲で知られるヒナとマコトが協力してでも追い求める唯一の相手でもある。当然なにか知っていそうなカヨコも周知の事実。
なら、なんでそんな重要人物を三年生であるアコが気付かなかったのか?
アコの人物像として「行政官」という地位に登り詰めた程、血の滲むような努力の末に獲得した努力家とヒナから明言されている。→つまり当時はただのゲヘナ生で下っ端だった。
一方で感情的で公私混同に走りやすい性格で、昔からヒナのことを心酔していた可能性あり。それにより上位組織の生徒会のことは二の次だったと推測。
それに伴い、アコにとってカフカは名前だけ聞いたことある有名人程度だったわけです。
まあ、もし知ってたとしても蹂躙される未来は変わりませんが。あーかわいそうあーかわいそう