fate/grand order 神域立証遊戯トータス 作:KAZ1421
我慢ならなくてネタ帳にあったこの作品を連載しちゃいました。
更新は不定期ですのでゆっくりお待ちください。
では、どうぞ。
プロローグ
最近よく夢を見る。
周囲は燃えていて瓦礫だらけの中、瓦礫に埋もれている人物。
その子は女の子で辛うじて生きているが、もう助からない事が一目でわかる。
『──あの………せん…ぱい。 手を 握ってもらって…いいですか?』
その子は息絶える前に自分に握って欲しいと頼む。
『これでいい?』
その子の頼みを自分は了承し、握る。
この周りが炎に包まれ、逃げ場ない状況。 その恐怖を押し殺しながら優しく言う。
握った手が恐怖で震えてる。 それでも
『大丈夫 俺も一緒にいるから。』
今自分がこの子に出来ることはこれしかない。 だからこそこれを全力でやる。
『………はい。』
その子はその言葉を聞いて笑みを浮かべ、目を閉じる。
「……またこの夢か。」
そして俺、『藤丸立香』は目を覚ます。
「じゃ、行ってきます。」
“いってらっしゃい”と母親が自分を見送る。
今日は月曜日。 休日の翌日だ。
毎週この日は憂鬱になる日だろう。 学生は学校へ、社員などは会社へ出勤と今週の始まりを感じさせる。
藤丸は学校へ向けて歩いていく。
「ん?」
その登校中に藤丸はある人物を見掛け、声をかける。
「おはよう、ハジメ。」
「あ、おはよう藤丸。」
その人物『南雲ハジメ』は藤丸に気付き挨拶をする。
彼は藤丸とはゲーム友達で昨日も一緒にゲームを夜遅くまでネットを通じて遊んでいた。
「……学校に行って大丈夫なのか?」
「……うん。 憂鬱だけど、大丈夫だよ。」
“立香のおかげさ”と言い2人は学校へ登校する。
藤丸が南雲に何故そう質問したのか。 それは……。
「よぉ、キモオタ共! また、徹夜でゲームか? どうせエロゲでもしてたんだろう?」
「うわっ、キモ〜。エロゲで徹夜とかマジキモいじゃん〜」
クラスメイトが自分達、特に南雲に対して強く当たるからだ。
「違うよ。 オンラインゲームのRPGだよ。 ようやく最新のストーリーのラスボスを倒したんだ。 なかなか苦戦して辞められなかったんだよ。」
そう藤丸は自分たちを笑っている4人、『檜山大介』『斎藤良樹』『近藤礼一』『中野信治』に言う。
「なんだ? 本当の事を言うと恥ずかしいから嘘ついてんのか?」
「嘘はついてないけど、仮に檜山君の言う通りだったとしてもゲームは楽しかったよ。 ね、ハジメ。」
「う、うん。」
檜山達は“認めた” “キモイ”とか笑って言っているが藤丸はそんな4人に普通に会話をしている。
南雲はそんな誰にでも会話しようとする藤丸にいつも助けられており、彼がいなければもっと憂鬱な人生になっていただろうと思う。
ちなみに何故南雲はここまで絡まれているのか? それは、
「南雲くん、おはよう! 今日もギリギリだね。 もっと早く来ようよ。」
ニコニコと微笑みながら一人の女子高生、「白崎香織」という女の子が理由だ。
正確には彼女には一切悪気は無いのだが、学校で二大女神と呼ばれ男女問わず人気だ。
そんな彼女はハジメとよく話す。
そんな南雲に男子生徒たちは我慢ならないのだ。 要するに嫉妬である。
一度南雲に「ひょっとして白崎さんは南雲が好きなんじゃ無いか?」
と言った事があったが、「まさか。」と南雲に否定された。
「あ、ああ、おはよう白崎さん。」
「白崎さん、おはよう。」
「うん。 藤丸くんもおはよう。」
そう会話をしていると周囲から殺気を孕んだ眼光が降り注ぐ。(主に南雲への視線。)
藤丸はいつもこの光景を見て、「ハジメは大変だなぁ。」と思っている。
当の南雲本人はその状況に冷や汗をかいているが、藤丸は「さっさと気づけ、朴念仁。」といつも思っている。
そんな会話をしていると、
「南雲君、藤丸君。 おはよう。毎日大変ね。」
「香織、また彼らの世話を焼いているのか? 全く、本当に香織は優しいな。」
「全くだぜ、そんなやる気ないやつにゃあ何を言っても無駄だと思うけどなぁ。」
3人の男女が自分たちに話しかけて来る。
女の子の名は八重樫雫。 香織の親友でポニーテールにした長い黒髪がトレードマークである。
彼女は剣術道場を営んでおり、小学生の頃から剣道大会で負け無しという猛者である。 現代の少女剣士として雑誌の取材を受け、熱狂的なファンがいるらしい。
次に天之河光輝。
いかにも勇者っぽい名前で容姿、成績共に上位、正義感も強くスポーツ万能の完璧超人………なのだが思い込みが激しく色々とトラブルの原因になる困った人物だ。
次に坂上龍太郎といい光輝の親友。 190センチメートルの身長で脳筋タイプ。 彼は努力、熱血等が大好きで、南雲の様にゲームの徹夜で寝てばかりいる人物は嫌いなタイプだ。
「おはよう、3人共。」
「おはよう八重樫さん、天之河くん、坂上くん。 はは、まぁ、自業自得とも言えるから仕方ないよ。」
「それが分かっているなら直すべきじゃないか? いつまでも香織の優しさに甘えるのはどうかと思うよ。 香織だって君たちに構ってばかりはいられないんだから。」
そう天之河が言うと藤丸は言う。
「でも、ハジメはちゃんとテストでは平均点取ってるよ。 ちゃんと努力してね。 ゲームをやる事だって努力が必要でしょう? 最近じゃプロゲーマーって仕事もあるんだから。」
「……まあ、藤丸の言う通りだが、せめて授業中は寝ない様にしないといけないだろう?」
「まあ、そこは同意するよ。」
「うぇ〜。裏切り者め。」
そう南雲は藤丸に笑いつつ言う。
その後、授業等を行い、お昼の時間となる。
藤丸はトイレを済ませて南雲の所に行くと、驚愕する事となる。
「なんだ、
天之河の足元に純白に光かがやく円環と模様が現れたからだ。
全員がそれに気付くも足元に異常が迫って来るまで硬直が続き、先生が「教室から出て!」と叫ぶも既に手遅れだった。
魔法陣といえば良いだろうか。 その陣から発せられた光が教室を覆い尽くし、人間だけが姿を消したのだ。
両手で顔を庇い、目を閉じていた藤丸はざわざわと騒ぐ気配に目を開く。
「ここは、何処だ?」
藤丸が突然の事で周囲を見渡していると自分達を囲んでいた1人の老人が話しかけた。
「ようこそ、トータスへ。 勇者様、そしてご同胞の皆様。 歓迎致しますぞ。 私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ。」
そうイシュタルと名乗った老人は挨拶をする。
藤丸達は場所を移り、イシュタルから事情を教えてもらう。
まとめると以下の通りだ。
・この世界はトータスと呼ばれている。
・3つの種族があり、人間族、魔人族、亜人族の三つ。
・北一帯は人間、南一帯は魔人族、亜人族は東の樹海で暮らしている。
・人間族と魔人族は何百年も戦争をしており、魔人族が魔物を使役し始めた事で“数”のアドバンテージが消えて人間族は滅びの危機となっている。
・この世界の神“エヒト神”がそれを阻止する為に自分たちを召喚した。
・自分達に戦争に参加して人間族を救ってほしい。
要約するとこれらである。
当然先生である愛子先生は反対するも、現在では元の世界に帰還するのは不可能という。
皆が戦争や帰れないという事実にパニックになる中、天之河の協力するという言葉にクラスメイト全員が同意してしまう。
「(……みんな浮かれているのかな? もう少し慎重になるべきだと思うけど。)」
先生は反対するも天之河が作った流れを覆せず了承するしか無かった。
戦争の為に訓練する為【ハイリヒ王国】へ向かう途中、ハジメから小声で話しかけられる。
「なあ、藤丸。 あのイシュタルってお爺さんどう思う?」
「……ちょっと信用できないかな。 ハジメは?」
藤丸の質問に南雲も頷く。
「ああ。 あの人、誰が影響力があるのか見抜いて光輝が頷く様に誘導してた。」
「……やっぱり油断できないよね?」
藤丸の言葉に南雲は頷く。 とはいえ今は何もできないので黙ってついていく。
王宮に到着すると、藤丸達は真っ直ぐに玉座の間に案内され、緊張している中、立っていた国王はイシュタルが権限は上だという動作を行う。
これを見てハジメと藤丸は「協会が権限が上であり、神が国を動かしている」事を確信する。
そこからは自己紹介だ。国王、エリヒド・S・B・ハイリヒと名乗り、王妃、王子、王女、騎士団長と紹介していく。
明日には訓練が始まると言い、晩餐が終わり解散。 各自に一室ずつ与えられた部屋に案内される。
「豪華なベットだ。」
天蓋付きベットに愕然としたが、怒涛の1日に疲れ、そのベットにダイブし眠りにつくのだった。
『どこだよここ!! 何なんだよこいつら!!』
気付いた時、ここは地獄だった。 ビルなどの建物は崩れ、辺り一面は燃え上がり、そして武器を持ったガイコツが自分に目掛けて追ってくる。
『死後の世界ってやつか…? 説得力あり過ぎだろうッ!』
その時、その武器を持ったガイコツが藤丸の命を刈り取らんとし武器を振りおろす。
その時、“ゴッ!” とそのガイコツを吹き飛ばされる。
そのガイコツを吹き飛ばした人物は黒い鎧を着て、大きな盾を持っていた。 薄紫色のミディアムボブで紫色の目。
俺は、この子を知っている。
『……マシュ?』
あの瓦礫に埋もれていた女の子だったからだ。
「……今のは、夢の続き?」
今まではあの女の子に手を握って、それで終わりだった。
だが、今。 その後の出来事を藤丸は見た。
そう確信するのだ。
「……マシュか。」
あの女の子の名前をずっと知りたかった藤丸はようやく知る事ができた事に喜ぶのだった。
翌日から訓練、座学が始まる。
集まったクラスメイト全員に12センチ×7センチくらいの銀色にプレートが配られる。
騎士団長メルド・ロギンスはそのプレートについて説明する。
このプレートは『ステータスプレート』と呼ばれているアーティファクトらしい。
アーティファクトとは現代では再現できない強力な力を持った魔法の道具の事で、神や眷属がいた神代につくられた道具で中々見る事ができない代物なのだが、このステータスプレートは唯一一般的に広まっているアーティファクトらしい。
これが身分証にもなるそうだ。
なるほど、と頷き。藤丸は顔を顰めながら指先に針を少し刺し、血を魔法陣に擦り付けた。 すると魔法陣が一瞬淡く輝く。
すると……
藤丸立香 17歳 男 レベル:1
天職:召喚師
筋力:10
体力:10
耐性:10
敏捷:10
魔力:10
魔耐:10
技能:召喚・言語理解
表示された。
“召喚師”と表示され、藤丸はテンションが上がる。
火の精霊とか水の精霊とか召喚出来るかもと考えていたからだ。
藤丸はハジメにもどんなステータスなのかを聞くと“錬成”らしい。
自分とハジメのステータスの値はメルドさん曰く、普通の値との事だが、他のクラスメイト達は全員数倍などの値らしいので、2人はガッカリする。
檜山大介などに揶揄われるという事もあったがそれ以外は問題なく進む。
後日訓練中にてメルドさんに“召喚”について聞いてみた。
理由は藤丸が何か召喚出来るかと色々やったが何も起こらなかったからだ。
魔法に関する知識等は座学で多少はあったが、召喚に関しては全く分からなかった。
故にメルドさんに聞いたのだ。
本来なら異世界召喚に関わっていたであろうイシュタルに聞くのが一番良い事だろうが、信用が出来ない。
更にいえば座学や訓練等で忙しいので聞く暇が無い。
故にメルドさんを通じてイシュタルに聞くのがいいと思ったのだ。
メルドさんは快く了承して、訓練後その情報を話してくれた。
準備はしたが召喚はエヒト神が行った事で自分達も詳しくは知らない。
だが、全能のエヒト神ならば天上の世界を観測し、勇者に値する人物を召喚したのだろうという事。
詳しくは自分達も調査するとの事。
後日、メルドさんから伝えられた“召喚”に関することに驚く。
どうやら俺の召喚には絆、繋がりが必要らしい。
しかも呼ばれてもいいと思う程の信頼関係、そしてその対象を思い浮かべる必要があるらしい。 つまり、
「……何も召喚できないじゃん。」
今の自分は何も召喚出来ない状態だ。
それからしばらく経ち、藤丸はハジメと一緒に休憩時間を利用して王立図書館にて調べ物をしていた。
2人は今自分達に出来る事を考え、行っていたのだ。
トータスにある七大迷宮や亜人族の国。魔人族の宗教など様々な物を調査していた。
「はぁ〜。」
「お疲れハジメ。 少し休んだら?」
藤丸の提案にハジメは頷く。
「そうだな。 調べた内容は今日の夜また一緒に報告とまとめをしようぜ。 藤丸のお陰で結構整理出来たし。」
ハジメはそう藤丸の提案に了承して本を戻し、休憩を取る。
「……いつもありがとうな、藤丸。」
「どうしたんだよ、いきなり。」
ハジメがそう礼をした事に藤丸は疑問を持ち、問う。
「いや、僕はいつも藤丸に助けられてばっかりでさ。 こうして今も手伝ってくれるし。」
「何言ってんだよ。 すごいのはハジメだよ。 休憩中も自分に出来ることを考えて行動しているんだ。 それって中々出来ない事だよ。」
「───いつも思うけど、藤丸はすごいよな。 どんな人にも尊敬しているって言うか、良く人を見てるって感じだ。」
「そうかな?」
そんな会話をしているとあっという間に訓練の時間になる。
藤丸は用を足してからいくとハジメに言い。
遅れて訓練場にやってくると、
「! (あれは。)」
今正に檜山達がハジメに絡んでいる場面だった。
どうやらハジメが何かを断った事に苛立っている様だ。
「(まずい、今の檜山達じゃ暴力を振るいかねない!!)」
最近クラスメイト全員にも言えるがこの異世界召喚という王道の状況で与えられた力を使いたいと思うのはある意味当然だがその対象がハジメでは振るわれたハジメも振るった檜山達も不幸にしかならない。
故に藤丸は足元にあった石を拾い、全力で投げた。
“パリーン”と投げた先の窓を思いっきり割ったのだ。
その音に暴力を振るおうとした檜山達も含めた全員がその方向へ向く。
それと同時に“何事だ!”とメルド団長も急いで駆け付ける。
「す、すみません。 自主練で投石の練習をしていたんですが、誤って窓を割ってしまいました。 メルドさん、本当にごめんなさい。」
藤丸はそう自分のせいだと申告する。
「……藤丸、自主練は大した心意気だが、反省は必要だ。 罰として他より多く走って貰うぞ、良いな!!」
藤丸はそれを了承し、頷く。 そしてハジメの方を見て“ほっ”と安堵する。
メルド団長が来た以上、これ以上檜山達にハジメが絡まれる事は無いと安心したのだ。
「(……藤丸、もしかして僕を助ける為に?)」
ハジメは藤丸が自分を救う為にワザと窓を割り、メルド団長が来る様に仕向けたのだと察する。
訓練後、藤丸の所にハジメがやって来た。
「藤丸、あの時はありがとう。」
「──何の事かな? 礼を言われる事はしてないよ。」
そう笑いながら藤丸は答えるのだった。
その後、夕食まで自由時間になる……筈だったが、メルド団長から伝える事があると言う。
実戦訓練の一環として七大迷宮の一つ、『オルクス大迷宮』へ遠征に行くとのこと。
「……(遂に実戦か。)」
何の力もない自分に何が出来るのだろうか。 不安を抑え、ハジメと共にまた図書館へ向かうのだった。
その日の夜、藤丸はハジメと共に調べた内容の意見交換をしていると、扉えをノックする音が響いた。
「南雲くん、起きてる? 白崎です。 ちょっと、いいかな?」
2人はその事実に驚き、ハジメは扉に向かい鍵を外して扉を開ける。
「……なんでやねん」
「えっ?」
ハジメが思わず関西弁でツッコミを入れてしまったのは白崎の格好だ。
純白のネグリジェにカーディガンを羽織っただけの姿で現れたからだ。
そしてそれを見た藤丸は
「あーあ。 ちょっと眠くなって来た。 ごめんなハジメ、予定より早いけど先に寝るね。」
「ちょ、藤丸!?」
そう言い藤丸はハジメの部屋から出ていく。
「(何か進展でもあれば良いけど………ん?)」
自身の部屋に帰ろうとしたその時、藤丸はある人物を見つける。
藤丸は後ろから驚かす様に声をかける。
「よう檜山君。お二人を覗き見とは趣味が悪いね。」
「うお! 藤丸!!」
白崎の事を見ていた檜山に藤丸は話しかけるのだった。
「駄目だよ邪魔しちゃ。 今2人は良い感じなんだから。 ……それに聞きたい事もあったし。」
「う、うるせえ! テメェみたいな無能に関わってる暇なんか………。」
「
その言葉に檜山は“ビクッ”とする。
「いつもみたいに言葉で絡むのは良いよ。普段通りだし、でも暴力はいけないよ。 教室での君は最低限そこは守ってた。 なのに一体どうしたんだよ。」
「テメェ、『あの時』はワザとか?」
檜山は藤丸が窓を割ったのがワザとだと気付き、怒りを見せる。
「……そっか、やっぱり檜山も白崎さんが好きなんだね。」
その言葉に檜山は頭が真っ白になる。
「そんな檜山君に残酷な事を言うけどさ。 白崎さんは
「な、なんであんな無能を選んだんだ!! それなら俺の方がよっぽど良いだろうが!!」
そう檜山は藤丸に叫ぶ。 それに対して藤丸は“やっぱり嫉妬か”と頭を掻く。
「どうして白崎さんがハジメを好きなのか。 これはあくまでも俺の想像何だけどハジメの外見じゃなくてその心に惹かれたんじゃ無いかな?」
「───何?」
藤丸はハジメについて語る。
「ハジメはどんなに弱くても、誰かの為に自分の出来る精一杯の事が出来る奴だ。 俺もそんなハジメを尊敬してる。」
“もちろん檜山君達も尊敬してるけどね。”と藤丸は言う。
「暴力を使わなくても誰かの為に動く。 そんなハジメだから白崎さんは好きになったんじゃない?」
「────うるせえ、うるせえ!!」
檜山はそう言い何処かへ走って去って行く。
「……立ち直れるかな?」
藤丸は失恋をしたであろうクラスメイトに心の中で手を合わせ、自室に戻るのだった。
また夢を見る。
前に見た燃えた街で盾を持って戦うマシュと鎌を持った女性が戦闘を繰り広げている。
その戦いは正に人外同士の戦い。 目に見えないスピードで戦い、何をしているのか全く検討もつかない。
『マシュ!!』
だが、マシュが押されている事だけはわかった。
藤丸はマシュに駆け寄ろうとするがそれを近くにいた女性に止められる。
『所長、何を……。』
『何やってるの!! サーヴァント同士の戦いに人間が飛び込むなんて自殺行為よ!』
その女性はプラチナブランドの髪をしており、“所長”と呼んだ事から位の高い人物の様だ。
藤丸は無力感に立っていると、突然別の方向から炎が飛んでくる。
『貴様、キャスター!』
その方向には如何にも魔法使いという格好をした男性がいたのだ。
「……また夢か。」
そこまで見て、藤丸は目を覚ますのだった。
『オルクス大迷宮』は冒険者や傭兵、新兵の訓練に非常に人気の場所である。
階層が深くなるにつれ、強力な魔物が出現する。 言い換えれば、階層が深く無ければ弱い魔物であり、階層によって魔物の強さが分かる。
故に訓練には最適場所だ。
藤丸もその迷宮で訓練を……という訳ではなかった。
一応ハジメと2人で騎士団が弱めた魔物を倒したりとしたがやはりメインは天之河を始めとしたチートを所持している彼らだ。
「流石だね。 これなら何もしなくてもいいかな?」
「うん。でもこれじゃあ完全に寄生型プレイヤーだね、僕たち。」
ハジメの言葉に藤丸は同意する。 その後休憩中、藤丸はハジメに質問する。
「そういえば、昨日どうだったんだ? 白崎さんとは進展あった?」
「し、進展って!? そう言う訳じゃ──。」
そう言いながらハジメは白崎さんの方へ向くと目が合い、ハジメは恥ずかしくなったのか目を逸らす。
「(どうやら意外と進展があったみたいだね。よかったよかった。)」
藤丸は周りを見るとそんなハジメに嫉妬と憎悪の視線が集中しているのが分かる。 特に、
「(檜山君。まだ納得出来ないんだなぁ。)」
ハジメに主に殺気を放っている檜山に藤丸はため息をつく。
「……何も無ければ良いけど。」
そんな期待をしつつ、藤丸は檜山に警戒をするのだった。
藤丸とハジメが後ろで前の様子を見ていると魔法陣が現れ瞬く間に部屋全体に広がる。 この世界に召喚された時の様に。
「くっ、撤退だ! 早くこの部屋から出ろ!」
しかし、すでに遅かった。 あの時と同じ感覚が藤丸達を襲う。
気がつくと巨大な石造りの橋の上だった。 100メートルはあるだろう。橋の下は川などなく、全く何も見えない深淵の如き闇が広がっていた。
落ちれば一巻の終わりである事は想像に難くない。
橋の一方には奥への通路、反対側には上への階段があり「あの階段の場所まで行け。急げ!」とメルド団長が言う。
藤丸とハジメが気付く。上への階段近くには魔法陣から夢で見た様なガイコツの群れ、そしてその反対から巨大な魔物が姿を現す。
「ハジメ、あのデカい魔物。」
「ああ。 多分ガイコツ達よりヤバい!!」
そのデカい魔物はメルド団長達を襲う。 戦いなれていないクラスメイト達はパニックになり、階段に向かって走っていく。
騎士団の1人が必死にパニックを抑えようとしてるが、恐怖で耳を傾ける者は居ない。
「このままじゃあ、死人が出る! ハジメ、『あれ』であのガイコツ達落とせないか!」
「! アレか、よし!」
藤丸の言葉に2人はガイコツ達へと駆け出して行く。
目の前にそのガイコツの持つ武器によって殺されようとしているクラスメイトの園部優花が居たからだ。藤丸は瞬時に事前に持っていた石を取り出してそのガイコツへ正確に投げる。 訓練の成果が実った瞬間だった。
その隙にハジメが錬成で地面を変化させてガイコツ達を奈落へと落とす。
その光景に唖然としている園部優花にハジメ達は笑顔で声をかける。
「早く前へ。 大丈夫、冷静になればあんな骨どうって事ないよ。」
「俺たちでもできるんだ。 強いみんななら必ず生きて帰れる!」
2人の言葉に園部は「うん! ありがとう!」と元気に返事をして駆け出した。
「ハジメ、この数をどうにかするには天之河君みたいな力が必要だと思う。」
「うん、僕も思った。 早く行こう!!」
クラスメイトが全員で帰れる為には天之河の力が必要と考え、あの巨大な魔物の所へ向かう。
そこではメルド団長の指示に従わず、ここに残って戦うつもりの天之河がいた。
「ッ! 何やってんだよ、天之河!!」
「藤丸!? それに南雲も!? 何でこんな所に──」
「早く後ろのみんなを助けてくれ!!」
天之河の言葉に被せるように藤丸は言う。
「アレが見えないの!? みんなパニックになってる! リーダーがいないからだ!」
光輝の胸ぐらを掴みながら指を差すハジメ。
その方向にはガイコツ達に囲まれて右往左往しているクラスメイト達がいた。
「天之河くんの力が必要なんだ! みんなで生きて帰るにはリーダーの力が! 後ろもちゃんと見て!!」
その言葉を聞き、クラスメイト達を見た光輝はぶんぶんと頭を振るう頷く。
「ああ、わかった。 直ぐに行く! メルド団長! すみませ──」
「下がれ!!」
“先に撤退します”と言おうとした瞬間、巨大な魔物『ベヒモス』の進行を食い止めていた障壁が砕け散った。
衝撃波が藤丸達を襲う。ハジメが石壁を形成して多少は威力を殺せたようだが、 全員がその場に倒れるのだった。
メルド団長達の後ろにいた天之河達が立ち上がり、ベヒモスに最大の攻撃を振るうも、全くの無傷だった。
「ボケっとするな! 逃げろ!」
白崎さんの回復のおかげで立ち上がったメルド団長がそう叫ぶ。
そして近くにいた自分たちに命令する。
「坊主達! 香織を連れて、光輝を担いで下がれ!」
その言葉を聞き、藤丸とハジメはメルド団長がここを死地と定めている事を察する。
ハジメはその言葉を聞きある決断をする。
「藤丸、もし僕がアレを抑え込めれば全員助かるよな?」
「…ハジメ、もしかして!!」
その言葉に藤丸は戦慄する。
そしてハジメは自分がベヒモスを食い止めると提案する。 戦力で一番低い自分が囮になる事でガイコツ達を倒し、安全に撤退するつもりなのだと。
当初メルド団長もその行動を否定するもハジメの決意は固く。
メルド団長は最終的に同意したのだった。
「俺も一緒にやるよ。」
「藤丸!?」
そう藤丸はハジメの隣に立つ。
「囮は多い方がいいでしょう? 俺に出来るのはこれくらいだし。」
「………ありがとう。」
そう言い2人はベヒモスを止めるために立ち向かう事を決めるのだった。
後ろに向かう前にメルド団長が囮となって地面に固定された状態となったベヒモスにハジメは錬成で更に拘束する。 そんなベヒモスの目に向かって藤丸は石を投げる。
少しでも時間を稼ぐ為に全力で。
「(もうそろそろ魔力が……、)藤丸!」
「うん! 早く離れよう!!」
ハジメの魔力が尽きるまで、藤丸は腕が外れそうになるまで石を投げ、体力的にも限界を迎えていた2人はクラスメイト達がいる階段方向へ走る。
その数秒後、ベヒモスの拘束が解かれ藤丸とハジメを倒さんと追いかけて来る。
次の瞬間、あらゆる属性の攻撃魔法が殺到した。
ダメージはないようだが足止めには充分。 このまま進めば逃げ切れると確信した時、藤丸は気付く。
「(檜山君?)」
檜山が悪い笑みを浮かべて魔法を放とうとしている事を。
「! まさか!!」
そのやな予感は的中した。 檜山が放った火の魔法がハジメの方へ向かっていったのだ!!
その攻撃を受けてハジメは吹き飛ばされる。
「──ッ! アイツ!!」
藤丸は怒りのまま直ぐにハジメの方へ向かい起き上がらせそうとするが、ベヒモスの攻撃が向かって来る。
「「!」」
2人はどうにか回避するもその攻撃で石橋が崩れてしまう。
ベヒモスも藤丸の後方にいたハジメも共に奈落へと落ちて行く。
「! ハジメ!!」
先程の攻撃の影響で血が多少出る擦り傷をした藤丸が奈落へ落ちようとした南雲の手を取るも、藤丸がいる足場も崩れ
「「うわあああああ!?」」
2人は奈落へと落ちて行く。
「(あ、これ。 駄目か。)」
藤丸は走馬灯のように今までの人生を振り返る。 思い出すのは家族や友人等───
そんな中、
『先輩。』
何故か夢に出てきた女の子の事を思い浮かべる。 どうしてか分からない。 でも、
『夢の中での繋がり』での召喚は思い付かなかった。
藤丸はダメ元で試す。
「来てくれ。」
夢での繋がりの召喚等笑い話だ。 クラスメイトや家族に笑われるだろう。 でも藤丸はそれに縋る。
“生きるために”
「マシュ!!」
その女の子の名前を。
すると2人の近くで召喚の魔法陣が出て来て、そこからある人物が出てくる。
その人物、女の子は
「シールダー、マシュ・キリエライト 先輩の召喚に応じて参上しました。」
夢に出てきた女の子だった。
以上如何でしょうか。
また次回お楽しみに。