現代ダンジョン発生初日。世界がパニックになる中、俺だけが攻略wikiの知識で最強ビルドを試している~将来のSSS級探索者? ああ、全員俺の弟子です~   作:パラレル・ゲーマー

27 / 149
第23話 氷の女王の遺産、あるいは知性(INT)という暴力

 港区ミッドタウン・タワー。

 ギルド「アルカディア」のオフィスでは、いつものように乃愛(ウィズ)が淹れたコーヒーの香りが漂っていた。

 

「リーダー、何か面白いものでもあったんですか?」

 

 デスクでニヤニヤしている俺を見て、乃愛が首を傾げる。

 

「ああ、面白いなんてもんじゃない。

 公式オークションに、とんでもない『爆弾』が出品されてるのを見つけてな」

 

 俺はモニターを指差した。

 そこには政府公認オークションの特設ページが表示されている。

 メインビジュアルには一本の杖。

 全体が青白い氷の結晶で覆われ、先端には心臓のように脈打つ冷気のマナが渦巻いている。

 

アイテム名: 凍てつく思考(フローズン・ソート)

 

種別: 杖

 

レアリティ: ユニーク

 

必要レベル 33, 筋力 59, 知性 59

 

効果:

 

・杖装備時、攻撃ブロック率 +20%

 

・装着されたサポートジェムのレベル +1

 

・知性 +14%

 

・詠唱速度 +12%

 

・知性10につき、呪文ダメージ +1%

 

・このアイテムに、Lv1の【アイスストーム】スキルが付与される。

 

・【アイスストーム】: 知性に比例して威力と持続時間が増加する、氷の嵐を降り注がせる魔法。

 

フレバーテキスト:

 

杖が賢くなるたび、持ち主の血は冷えていく。

 

心臓が凍りつくころ、あなたは理解するだろう。

 

この猛吹雪こそが、私の鼓動だったのだと。

 

 いかにも「強そう」な見た目だが、その入札額は……。

 

『現在価格:10,100,000円』

 

 一千万円。

 一般人から見れば大金だが、強ユニークアイテムの相場としては安すぎる。

 しかも入札件数は、わずか数件。

 完全に「様子見」、あるいは「スルー」されている状態だ。

 

「これですか? 『凍てつく思考(フローズン・ソート)』……なんか強そうな名前ですけど」

 

 乃愛が眼鏡を押し上げながら、スペックを読み上げる。

 

「必要レベル33……高レベル装備ですね。

 でも付いてるスキルが『レベル1のアイスストーム』?

 レベル1って初期魔法ですよね?

 これなら私が使ってるレベル10のファイアボールの方が強いんじゃ……?」

 

「フッ、甘いな、乃愛。

 砂糖をまぶしたキャラメルマキアートより甘いぞ」

 

 俺は笑った。

 これだから「鑑定を持たない凡人」は面白い。

 彼らはスペックの「数字」しか見ていない。

 その裏に隠された「法則(ロジック)」が見えていないのだ。

 

(……まあ、無理もないか)

 

 俺は心の中で独りごちる。

 こいつは『ダンフロ』のバージョン2.0.0パッチで追加された、インフレ環境にもついていける最強格の装備だ。

 知性増加のロール(可変値)が14%か……悪いな。

 本来のマックスは18%だ。

 もし18%の良個体だったら、俺が落札してコレクションに加えたんだが、14%ならスルーでいい。

 欲しければ、あとで俺のユニークスキル【万象の創造】で作ればいいしな。

 

 それに、この装備を愛用している『ダンフロ』のメインキャラクター「氷の女王」は、まだこの時期には登場していない。

 彼女のトレードマークとも言える武器だが、彼女専用というわけではなく、ドロップ自体は今の時期でも低確率で発生する。

 コレクション需要はあるが、今は市場を盛り上げる材料として使わせてもらうか。

 

「いいか、乃愛。

 こいつの真価は、レベル1のスキルが付与されることと、魂のソケット制限を無視した連結数にある」

 

 俺はブログの投稿画面を開いた。

 1000万円で入札されている現状、巷ではその強さが全く理解されていない。

 俺は市場の支配者だ。

 この杖の価値を正しく理解させ、オークションを「適正価格(数億円)」まで暴騰させることこそが、俺のエンターテインメントだ。

 

 それに、今後俺が「知性スタッキング(INT特化)」の装備を売り出す際の宣伝にもなる。

 

「よし、書くか。

 『どうしてこの杖が最強なのか』をな」

 

     ◇

 

ブログ記事:【八代匠のビルド・ラボ】

タイトル:【緊急解説】オークションに出品された「ゴミ杖」が、実は国家予算級の神器だった件について

 

 どうも、八代だ。

 

 今、公式オークションに出品されている一本の杖『凍てつく思考』。

 お前らは、これを見てどう思った?

 

「杖なのに筋力59もいるのかよ」

「付与スキルがレベル1? ゴミじゃん」

「知性14%とか地味だな」

 

 ……そんな感想を持った奴。

 お前は宝くじの一等当選券を「紙切れ」だと言って捨てる気か?

 

 SSS級鑑定スキルを持つ俺が断言する。

 この杖は、現時点で世界最強の魔法武器だ。

 そして10年後も一線級で戦える「インフレ対応型」の化け物だ。

 現在価格1000万円? 悪い冗談だ。桁が二つ足りない。

 

 なぜ、この杖が「間違いなく強い」と言えるのか?

 その理由を、知識のないお前らにも分かるように解説してやる。

 

理由1:魂の限界を突破する「6つのサポート」

 

 まず、この杖に付与されている魔法【アイスストーム】。

 「レベル1」という表記に騙されるな。

 この杖の最大の特徴は、「通常では不可能な数のサポートジェムを連結できる」という点にある。

 

 いいか、基礎知識の復習だ。

 この世界の人間には、魂に「3つ」のソケット(空きスロット)がある。

 E級ダンジョンまで行った奴なら知ってると思うが、スキルジェムに「サポートジェム」をセットすることで、挙動を変更したり威力を上げたりできる。

 だが、魂の器には限界がある。

 どんなに頑張っても、メインの魔法スキルに対してセットできるサポートジェムは、最大でも3つまでだ。

 これが今の常識だ。

 

 だが、俺の鑑定スキルには見えている。

 この世界には、まだお前らが発見していないが、「4つ目の穴を開けるアイテム」や「5つ目の穴を開けるアイテム」が存在する。

 いずれダンジョン深層でドロップするだろう。

 だが、それはまだ先の話だ。

 

 しかし、この杖は違う。

 この『凍てつく思考』は、今、現時点で魂のソケット制限を無視して「6つ」のサポートジェムを認識する。

 唯一無二の特性だ。

 

 分かるか?

 他の魔法使いが「魂の3ソケット」を使って、ちまちまと3つのサポートジェムで魔法を強化している横で、

 この杖の持ち主だけは「6つのサポートジェム」で極限まで強化された魔法をぶっ放せるわけだ。

 

 レベル1だろうが関係ない。

 6つの強化概念(威力増加、範囲拡大、冷気貫通、多重詠唱etc...)が乗った魔法は、もはや戦略兵器だ。

 さらに「装着されたサポートジェムのレベル+1」という効果まで付いている。隙がない。

 

理由2:知性(INT)が火力に直結する

 

 次に、この杖の固有プロパティについてだ。

 鑑定結果を公開しよう。

 

【アイスストーム】の効果詳細:

 氷の矢が指定地点に降り注ぎます。

 着地時に爆発し、近くの敵にダメージを与えて凍傷状態を付与します。

 また、地面の一部に凍った部分を発生させます。

 スキルダメージは知力に依存します。

 

具体的な計算式:

「知性10ポイントごとに5~7の冷気ダメージを一律に追加する」

「知性100ポイントごとにスキルの持続時間が0.1秒増加する」

 

 これが意味することは単純だ。

 「頭が良くなればなるほど、暴力的に強くなる」ということだ。

 

 現在のレベル35前後の魔法使いなら、装備を特化すれば知性(INT)は400~600程度にはなるだろう。

 仮に知性400で計算してみよう。

 400÷10=40。

 40×(5~7)=200~280の追加ダメージ。

 

「200? しょぼくない?」と思ったか?

 比較対象として一般的な氷魔法『フリージングパルス』を出そう。

 

「貫通した敵を凍結させる可能性を持つ氷の投射物を放つ。投射物はすぐに消え始め、完全に消えるまでにダメージと凍結確率が減少し続ける。」

 

 この魔法のスキルレベル11(プレイヤーレベル36相当)の基礎ダメージが、だいたい200~300だ。

 つまり、知性400の時点で、すでに同格の魔法と同じ基礎威力を持っている。

 

 だが、ここで忘れてはならないのが、アイスストームは「氷の雨」だということだ。

 フリージングパルスは「一発」の投射物だ。

 複数の敵に当たることはあっても、一人の敵に多段ヒットはしない。

 対してアイスストームは、指定地点に無数の氷柱が雨のように降り注ぐ。

 一発一発は小さくても、敵の頭上に1秒間に5発、10発とヒットする。

 単体投射物と同じ威力の雨粒が、何発も当たるんだぞ?

 雨のように当たることを考えると、ダメージ量は単純計算で5倍しても良いだろう。

 

 仮に5ヒットしたとしよう。

 1000ダメージオーバーだ。

 これが「多段ヒット」の恐ろしさだ。

 巨大なボス相手なら全弾ヒットして、さらにダメージが伸びる。

 

 現時点で、これほどの馬鹿げたダメージ量を叩き出す魔法は存在しない。

 文字通りの「桁違い」だ。

 

理由3:インフレに置いていかれない「拡張性」

 

 そして最後に、これが最強である最大の理由。

 「知性スタッキングビルド」の完成形だということだ。

 

 普通の武器は、レベルが上がると型落ちしてゴミになる。

「攻撃力100の剣」は、レベル50になれば「攻撃力300の剣」に取って代わられる。

 

 だが、この杖は違う。

 ダメージソースが「武器の攻撃力」ではなく、「プレイヤーの知性」に依存しているからだ。

 お前がレベルを上げ、パッシブスキルで知性を取り、装備を更新して知性を積み上げていけばいくほど、

 この杖の威力は無限に上がり続ける。

 知性を1000、2000と積み上げていくことに意味があるんだ。

 

 知性1000になればダメージは2.5倍。

 知性2000になれば5倍。

 さらに、杖の効果である「知性10につき呪文ダメージ+1%」が乗算される。

 

 知性2000の世界では……

 基礎ダメージ:1000~1400

 ダメージ倍率:+200%(杖効果)+装備補正

 持続時間:+2.0秒(つまりヒット数も増える)

 

 ……計算するのが馬鹿らしくなるほどの破壊力だ。

 この杖一本あれば、10年後でも最前線で戦える。

 まさに「一生モノ」のパートナーだ。

 アイスストームビルドをするなら、この杖を使うだけで永遠に最強でいられる。

 これが知性スタッキングビルドの真髄だ。

 

【結論】

 

 この『凍てつく思考』は、1000万円で買えるような代物じゃない。

 もし100億円で落札できたとしても、安い買い物だと言えるだろう。

 これを装備した魔法使いは、一人で軍隊を壊滅させ、ボスを瞬殺する「歩く戦略兵器」になる。

 

 ただし使いこなすには「知性」が必要だ。

 キャラクターの知性だけでなく、プレイヤー自身の「真の価値を見抜く知性」がな。

 

 オークションの終了まで、あと6日。

 この「未来の神話級遺産」を、誰が手にするのか。

 あるいは、価値を理解できずに見送るのか。

 俺は高みの見物といかせてもらう。

 

 以上。

 

(執筆:アルカディア・ギルドマスター 八代匠)

 

     ◇

 

「……よし、投稿」

 

 俺はエンターキーを強く叩き、記事を世界に放った。

 これで市場は踊るだろう。

 眠れる氷の女王が、オークションという舞台で目を覚ます時だ。

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます! もし「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、ページ下部より【お気に入り登録】や【評価】、感想などをいただけると執筆の励みになります。 作者のモチベーション上昇に直結しますので、是非ともよろしくお願いします!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。