あのー、剣と魔法の異世界の案件なんですが、元ITコンサルの賢者様なら解決できますか?   作:Ningets

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【あらすじ】
ITの存在しない剣と魔法の世界に、賢者として召喚されてしまったIT企業のコンサルタントが、転生先の少女ともに世界を危機から救い、元の世への帰還を目指す物語――
異世界の少女ラミーシャの第二人格として転生した主人公のマリトは、意識を失ったラミーシャとともに、馬車で拉致されましたが、その状況は病院に残っていた親友のシノハに伝わります。武闘家の一門の師範代も務める彼女は、門下生と共に逃走する馬車の追跡を開始します。


Ⅰ-09 拉致部隊の本陣に突入できますか?

シノハは、馬車の追跡を開始するのと同時に、警備隊にいる道場門下生であるライドウ兄妹に念話で連絡を入れた。

まだ正式な出動命令は下りていないという返事が返ってきた。

――急がないとまずい。

 

病院を出て、急ぎ街道を南に進む。

途中、警備隊所属のライドウ兄妹が合流してくる。

兄のゴウと妹のリクは魔法学園の卒業生であり、現役の警備隊員である。

一方で、シノハは二人が通うカルベ道場の次期当主と目されており、道場でも圧倒的な強さを誇る師範代だ。

 

道場では実戦さながらの戦闘訓練が繰り返されており、シノハ指揮力も抜きん出ていた。

警備隊隊員への正規の指揮権はないが、有事の際には二人はシノハの采配の下で一体的に行動できる。

 

シノハを先頭にして、二騎がその後に続く体制で、馬を駆ること約二時間。

はるか前方に、ラミーシャを拉致した馬車を視認することができた。

土埃の向こうに幌が揺れている。

 

 

工作員たちとマリトが馬車での移動を再開してからは、しばらくは何の変化もなかった。

日が陰りはじめた頃、マリトははるか後方に小さな土煙が立ち上がっているのを見た。

土煙は次第にその姿をはっきりさせ、しばらくすると、こちらに向かっている騎馬らしいものが見えるようになってきた。

 

従者とナースに扮した工作員たちの声が聞こえる。

「少佐、追っ手です」

「先頭に一騎、その後方に二騎が続いています」

「そうか。だが、もうすぐ目的地に到着する」

「スピードを上げるぞ」

さきほどよりさらにスピードが上がる。

そして、ほどなくして止まった。

 

数名が駆け寄ってくる足音が聞こえる。

「追っ手が来ている。急いでくれ。すぐにここに着く」

「この娘を乗船させるのが最優先事項だ」

 

「今見えている追っ手は、騎馬三名だが、その後ろに本隊が続いているはずだ」

「先頭の三名だけはここで止めろ」

「銃を使え。接近戦は避けろ」

「うちの部隊最強のこいつが、一番弱そうな学生相手にこの様だからな」

 

「この娘を運ぶのに一人は必要だが、残りは何人銃撃に回せる?」

「八名います」

「全員で、確実に一人ずつ仕留めていけ」

 

馬車に向かってくる人影は、はっきりと視認できる距離にまで迫っていた。

先頭は深紅の髪色の女性だ。

学生服を着ており、首にチョーカーを付けている。

午前中に見舞いにも来てくれたシノハという女子学生に似ているが、彼女は黒髪だった。

――別人だろうか?

 

先頭の彼女のずっと後方に二騎が続いている。

学生のものと違う警備隊の制服を着ている。

――相手に銃があることは、知っているのか?

 

馬車の後方に銃を構えた八名の兵士たちが、片膝をついて散開した。

指揮官と思しき兵士が、その後ろに立つ。

――この銃の数……だめかもしれない……

マリトは絶望感に襲われる。

 

体格の良い兵士が客車に上がってきて、ラミーシャの身体を車椅子から運び出した。

地面の上に転がされ、両足と両手首が手際よく縛り上げられる。

口も猿ぐつわもかけられ、無造作に肩に担がれた。

 

偽ナース、偽従者、そして新たに加わった体格の良い兵士。

拉致部隊は三名で街道を外れて林の中に分け入った。

負傷者とラミーシャを抱えているため、進みは遅い。

 

 

街道では、救援のシノハたちがついに追いついた。

三騎とも銃を構えた兵士に気付いている。

それでも、速度は落ちない。

先頭のシノハが、一気に距離を詰めてくる。

 

五十メートルほどまで接近した瞬間――

指揮官が腕を下ろしながら、号令を放った。

「ファイア!」

それと同時に、轟音が響いた。

 

 

【挿絵表示】

 

◇参考挿絵:街道を封鎖する兵士に突進する

 

山道の途中で、銃声と馬のいななきが響いた。

救出チームへの銃撃だ。

あれだけの数の銃を相手に、勝てるとは思えなかった。

 

――自分がこの世界に来たせいで、何人も犠牲になった……

申し訳なさで、胸が締め付けられた。

 

山道を超えた先、平原の上空にレモン型の巨大な迷彩色の物体が浮かんでいた。

――飛行船だ!

――あれに乗せられたら、終わりだ。

 

マリトの視界に飛行船の向こうに広がる空が映った。

日没直後の暗めの空、低い位置に白っぽい月が大きく浮かんでいる。

月は、また笑っていた。

 

飛行船と笑う月が浮かぶ異様な光景は、理事長の『世界の終わり』という言葉を否応なく思い出させた。

 

 

【挿絵表示】

 

◇参考挿絵:飛行船の向こうに浮かぶ笑う月




【次回予告】
追跡するシノハ達の前を銃で武装した部隊が阻む一方、ラミーシャとマリトは縛られて林の中へと運ばれていきました。場面は街道から敵陣のある草原地帯へ。次回、近代武装部隊と剣と魔法の技とがぶつかります。
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