起きたらTSしてたし、なんかデスゲームに巻き込まれたので、儚げミステリアス少女ロールプレイで敵を魅了していこうと思う。うん、いけたらいいな。 作:挑戦マン
自然に囲まれたここを見渡せば、何の変哲もない森。
普段から自然と触れ合うことがなかったからか、やけに土の香りが漂う。森や川自体は好きだけど、その中に生息する生物が嫌いなので、近づくことはこれで終わりにしたい。例えば、毒蛇なんかいたら即死ぬ。ほんとに勘弁して欲しい。
ちなみに、俺たちの手には何もないし、ゲームで定番な装備なんかもない。つまり、丸腰で危険な森の中に放り込まれたということになる。だが、ゲームの説明もなしに行動しろだなんて鬼畜はさすがにないと思いたいから、あのブルースクリーンが映し出されるのを座して待つのみ。
まあ、草がくすぐったいから座らないけど。
「……えっと、まずはゲームの説明を待った方がいい、ですよね?」
「そうね、アンタらが誰なのかは気になるところだけど……あのバカジジイの説明もなしに進むのもわからないし、待ちましょ」
……バカジジイって言ったのバレたら殺されない?大丈夫?
とにかく、凛とした表情と佇まいをしている女と、すごく胡散臭い男を前に、とりあえずなにか言ってみた。
控えめな声量で、最後に至っては言葉が消えかけていたのに、どうやら伝わったようだ。胡散臭い男に限っては聞いているかわからないが。
いくら性別が変わったといえ、心は男のままだ。正直、女の子の振る舞いも、どう対応したらいいかも分からないし、色々考えることが多い。いっそのこと心まで変えて欲しかった。肌にそよ風が当たる度に、ワンピースの中にまで風が通って違和感がすごい。女の子はいつもこれに耐えてるのか……?
「来た、バカジジイが。」
そう頭を回していると、女が空を指して忌々しそうに呟いた。
視線を上げると、さっきのようにブルースクリーンが大きく空に浮かんでいた。空の青色と同化していて見づらい。
「じゃあ、ゲームのルールについて説明しよう。」
「第一ゲーム【トライアド】──三人一組のチームを組んで、広大なマップ内にある、沢山のヒントを頼りにゴール地点に到達することが目標だよ。ゴール地点に到達出来たチームのみ生存だ。制限時間は一週間以内! なかなか良心的だろう?」
アイツは悪びれた様子もなく笑顔で語っているように見えた──人型を模倣した黒い何かにしか見えないが。まあ、確かに思ったよりかは制限時間に余裕があるかもしれない。もっとこう、デスゲームは一日とかのイメージだった。
そういえば、ガイドブックは?
「ああ、そうそう。ガイドブックについてだけど、スタートすれば降ってくるから上には気をつけてね。……じゃあ、スタート!」
号砲の音と共に、スタートの合図が聞こえた。次に耳元で風を切る音が通り過ぎたかと思えば、分厚い本がずしりと地面に落ち、土煙が上がった。一歩でもズレていれば、超序盤でお陀仏になる雑魚になるところだった。
「ガイドブックを読むことも大事だけど……まずは自己紹介しない?俺はリョウだよ、気軽に呼び捨てで呼んで欲しいな」
「アデレード・オフィーリア……そうね、アデレードと呼んでちょうだい」
胡散臭い男──リョウは妙に慣れているような仕草で自己紹介をした。陽光が当たったリョウの姿は、胡散臭くはありつつも確かにイケメンだ。大学にいたらモテるタイプだと思う。名前からしてモテそうだもんな。
ダークグレーの半袖シャツに半ズボンとか、俺が着たら絶対にダサいのに、悔しい。
アデレードはファンタジー漫画でありそうな冒険者の服──森に擬態することができそうな緑のローブを身に着けていて、中の服も黒という目立たない格好をしている。概観すると、まるで、日頃から何者かと戦うことが当たり前とも言えるように、使い古されている。
風情がいかにも大人の女性って感じだ。
「俺は……わたしの名前は、えっと、……あれ?」
自分の名前を言おうとしたところで、あることに気づいた。
ここに来る前のことを、思い出せない。
正確に言えば、男だったことや、あることをしたことがあるなどの、抽象的な記憶については薄らと覚えている。
それなのに自分の名前が、俺だけが分からない。
あの白い空間に連れてこられる前は、何をしていたんだっけ?
「おれの、名前は……」
もしかしたら、疲れているだけなのかもしれない。
それはそうだと思う、気づいたら女の子になって、デスゲームをさせられているんだ。ちゃんと食べて寝れば、疲れも回復するはずだ。
「どうしたぁ?」
「や、……疲れてるだけだと思う…ます。わたしの名前は、ましろ。わたしも呼び捨てで大丈夫です」
ましろ。
咄嗟に思いついた名前だけど、この体に相応しい名前だとは思う。
白髪に細い体、そして白いワンピースを纏う姿は、儚くて今にも崩れ落ちそうだとも思う。実際はそれが自分だと言うのは、事実として受け入れることができても、実感は湧かない。
「やりづらかったらタメ口でいいわよ?」
「……いいの?じゃあ、そうさせてもらおうかな。リョウ、アデレード、よろしく」
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自己紹介を終えたところで、各自ガイドブックを読むことになった。
本のサイズは片手で持てるほどではなく、装丁が赤い皮で出来ていて上質な感触だ。なので、しかたなく膝をついた。そして、地面を机として本を見下ろす形になった。
表紙には「ガイドブック」と、なんとも分かりやすいタイトルが記されている。リョウが既にガイドブックを読んでいるのを横目に、素早く動かなければ、とガイドブックに再度目を移す。ページをめくれば、目次が最初に目に入る。
ステータスについてや、第一ゲーム第二ゲームと……第五ゲームまである。
この先のゲームの細かな内容についても読めるのかと思えば、ステータスと第一ゲームのページしか記載されていない。第一ゲームに至っては、簡潔なルールと「人を信じるのはよくないよ!あと、よく探索するといいよ!」とかいう軽いアドバイスのみ。
見た目はハリー〇ッター並に分厚いくせに、どうなってんだ、コラ。
「まずは……ステータスがあるんだね、ステータスって唱えるとウィンドウが表示されるみたい」
「げえむ?……そうね、確かに。」
「そうみたいだね、やってみようか。ステータス!」
ふむふむ、と言うように頷くアデレードに目を向けたのち、リョウは少し声を張り上げて「ステータス」と唱えた。だけど、
「アレ?見えないね?」
「いや、多分自分にしか見えないんだと思うよ……ほら、この先に書いてあった」
「ホントね、ふぅ〜ん…。不思議……」
ふしぎだよね〜。
名前、レベル、経験値、体力、感覚精度、反射速度……で構成されたステータス画面。数値上限は全て百。デスゲーム内で経験値を取得するか、どれかに該当する力を使い続けるとレベルアップをするらしい。
体力、感覚精度、反射速度に関しては、人によって違うと書かれていた。例えば、軍人や警察だと全体的に数値が高めなんだと思う。う、うーん…所々曖昧だ……。
スキルという概念もあるらしいが、取得しても内部情報として保留され、さいごまで見ることができないそう。名前欄のみノイズで塗れているが、ましろという文字に変換されつつある。目を細めないと見えないほど薄いけど。
「あんたたちはどうだった?ステータス」
「俺の方は体力が高めだったかな、……やっはり、平均値は書かれてないよね」
「わたしの方はちょっとだけ反射速度が高め?」
「そう……ちなみにあたしは全て八十台行ってたわ」
えっ、強。
俺のステータスは体力が五十、感覚精度が五十二、反射速度が八十という数値。平均値が分からないこそ、これを見て低いとも高いとも判断しがたい。
基本的なことは書かれているけど、それ以上のことはない。それについても、これから判明することもあるのだろうか?
「結局、四ページぐらいしか書かれてなかったね」
「そうね、重要な所は書かれてなかったりするし、ガイドブックじゃないわよ、これ」
一通り読み終えたところで、中に書いてあったガイドブック収納の呪文を使い、ガイドブックを仕舞った。どこに仕舞われたのかは不明である。
でもまあ、持ち運べるものではなかったし、地味に助かる機能だ。
「まあまあ……ステータスのことは理解できたし、次は、どうする?」
その次は、これからの行動について二人に問い掛けた。
「あのバカジジイだかハゲジジイだかが言ってたように、ゴールを目指すしかないでしょうね。
その前に、装備や持ち物も整えることも大事よ」
「だから、最初は安全を優先に食糧や寝れる場所を探さなきゃ」
アデレードの言う通り、食糧はあったほうがいいし、なによりも休める場所がないと動けもしないだろう。にしても、慣れたことのように振る舞う彼女の姿に、一体どこに住んでいたんだろう……と疑問を抱かせる。
「アデレードちゃんはサバイバル知識が豊富だね。こういう経験が多いの?」
「なにいってるのよ、常識でしょ?出来なかったら、今頃アイツらにでも食い殺されて無様に死んでるわ」
「え、えぇ……?そんな常識聞いたことないけど……」
「そんなことどうでもいいから!ほら、行くわよ!」
アデレードは呆れた様子で言い放った。いや全然聞いたことないけどね、その常識
たぶん、自然の中で過ごしているんだろう。うん。
いずれにせよ……まずは食糧と寝床を目的にして、森の中を突き進むことになった。
先行してくれるアデレードの背中は、彼女より一回り大きいリョウより、頼もしく見えた。
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