起きたらTSしてたし、なんかデスゲームに巻き込まれたので、儚げミステリアス少女ロールプレイで敵を魅了していこうと思う。うん、いけたらいいな。 作:挑戦マン
木々の葉の隙間から、陽光が見えなくなってきた頃──数日間探索したが、その中で得たものは、よく分からないまあまあ美味しいキノコと、息絶えたばかりの新鮮な魚。石をそこら辺の大岩にぶつけて出来た、簡易ナイフ。ナイフは一人ずつ携え、護身用としてそれぞれ取り出しやすい位置に、熊から剥いだ皮で固定してある。
ゴールへ進められるような情報の収穫はなく、とりあえず森の中を突き進んでいる。
長いこと穴ぼこだらけの道を踏みしめた結果はというと、足の裏やふくらはぎが瀕死になった。
いや仕方なくない?日本って平和なんだから、デスゲームする経験なんて普通ないから!!!
比例して、アデレードとリョウはまだまだ歩けそうな様子だった。
やっと愛着が湧いてきた白いワンピースも、新品同様に見えた布は土や砂で汚れてしまった。さらに枝に引っかかったり、転んだことによって一部切れてしまっている。ほんま自然とかいうやつゆるさんからな。
……ところで、あの、そろそろ休みたいです。
「づ、づがれだ…………」
「おんぶしようか?」
「おねがいしま〜〜す……」
「えっ、……女の子でそれは良くないんじゃあないかと思うけど。まあ、いいか……」
「もうっ、体力ないわねぇ」
疲労全開の俺の体を労るように、リョウがおんぶをしてくれる。
先行して道を開いてくれるアデレードは、前を見たまま俺たちの様子を呆れた声で反応する。
ゲーム開始から数日間といえども、俺の体感で言えば一週間の感覚だ。実際のところは三日経っているらしい。アデレードの時間把握能力と、〜ゲーム終了のお知らせ〜がないから何とかやれている。
そういえば、中々女の子らしい振る舞いを身につけることができたと思う。ワンピースも微妙に慣れたかな……それに、二人と仲良くなることもできたと一方的に感じている。一方的にね。はい。
さすがに、俺が男だなんてことは言えるほどではないけれど。
昨日なんか、魚の調味料は何がいちばん美味しいかと議論していた。
「いや、味噌だね、味噌一択だね」
「なーーーーーにいってんの!!魚はレモンでしょッッッッ!!!!」
「わたしは塩派かな、定番だと思う」
といったもの。
くだらない話だけど、迫真すぎるアデレードと、ゲンドウポーズを取って冷静に言い放つリョウが面白おかしかったんだ。
デスゲームの真っ最中と忘れるくらいに、心が満たされた。
前のことはあまり覚えてないと言っても、こんな風に人と会話するのは久しぶりだと、体がそう感じてる。
「たくさん歩いたけど、ヒントらしきものは全然見つからなかったね」
先程も言ったように、ゴールのヒントになるようなものは一切見つかっていない。
ガイドブックを見返しても『マップのどこかにある』とだけ。
「そうねぇ……もしかしたら、他のチームが既に見つけてる可能性もあるわ」
「そうなると見つけられなくて脱落する、なんてことも絶対に起こるだろうね、や〜……厄介だなあ。もう、人に会ったら殺しちゃってもいいんじゃない?」
「え……なんで、」
リョウの背中に身を預けていたところ、耳によく響いたその言葉の意味を、一瞬理解することが出来なかった。
反射的に漏れた声は、単に聞こえてなかっただけか、返答はなかった。
抑揚のない声色でも、心底くさそうにしているのは感じられた。軽々しく「殺す」と言い放つリョウの表情は見えない。
俺が、おかしいのだろうか。
「まあ、それもありっちゃありね。デスゲームだもの、きっと殺しに来るチームもいるでしょうし、先手必勝でやっても……」
アデレードも肯定的意見を見せる。
デスゲームだからって、普通に生きてきた人間が、こんな思考に思いつくのか?
「まって。殺すの?見かけたチーム全員……?」
「一応、全員命が掛かってるしね〜。
他のチームがヒントを持っている可能性だってあるし、それ以外にも、物資補給ができる。ま、見かけた人全員とは言わないよ。現実的じゃないし」
現実的だったらやる、とも捉えられた。
理屈では分かっているし、合理的だとも思っている。実際、何が起こるか分からないのはわかってるつもりだけど……。
「……リョウの言う通り。でも、『そういう手段』もあるって話なだけ。あたし達だって人間だもの、ポンポン人殺せないわよ」
「そう……か。うん、わかった。」
よく考えれば、人を殺す手段に至ることも理解できるし、コレがデスゲームなんだってことも、理解できる。
けど、平然とそんなことを言える二人に少しだけ、やるせなく思う。
俺が平和ボケしているだけなのかな。
話は既に終えていても、胸が渦を巻く感じがする。
その感覚がしばらく落ち着くことはなかった。
〜〜〜
しばらく歩き、空は橙色が混じっていることもなく、完全な暗闇だった。
夜を越せそうな空間があまり見つからず、敵に見つかる危険性から灯りもなしに歩き続けていた。
「……アデレードちゃん、あっちさ、なんか光が見えない?」
「そのアデレードちゃんっての、やめて。……光?」
暗い分、光り物はよく見える。リョウが指した方向に視線を向けてみると、茂みや葉の隙間から微かに光を放つ『何か』が遠方にあった。目を凝らしても中々正体が見えないが、生き物ではないことは確かだ。とはいえ、炎かと言われると違うような気もする。
「確かに、なにか……他のチームかしら…?」
ガサ。
途端、どこかの葉が大袈裟に揺れる音がする。
パキッ。
その音を合図に、枝が折れるような音も。
「え、な、なんかいる……?」
こんな不自然な音、なにか生き物が居ないとおかしい。
「……多分、人間ね。」
「誰? 出てきなさい。今すぐ出てこないと殺すわよ。」
躊躇することもなく、アデレードは簡易ナイフを取り出し、何者かに脅しをかけた。
……味方でよかったと心底思います。
「に、兄さん……出た方がいいよ……あの人怖いよ……」
「なんで、ここら辺に人は滅多に来ないってきいてたのに……でも、僕たちは人に姿を見られちゃダメって……」
「そんなん気にしてても殺されちゃうよお!!!!」
茂みの中から聴こえてくる声は、声変わり前と感じられる二人の男の子。話の内容から兄弟なのだろうか?
隠れる気がないのか、はたまた隠れるのが苦手なのか……絶対に後者。
ガザザッ。
「こ、こ、こ、ここんばんは!えっと、僕たちはあそこの村で過ごしている子供Aと子供Bです」
「ごめんなさいぃ!殺さないでください!」
案の定、中から出てくるのは早かった。
音の張本人たちは、俺よりちょっと身長が高いぐらい……それでも小学生ぐらいに見える。二人とも質素な茶色の衣服を身に着けていて、顔立ちがよく似ている。木々で生まれた影が落ちておぼろげながらも、俺たちに怯えているのは感じられた。
「……子供AとB?珍しい名前ね? ところで……あなた達はデスゲームの参加者?返答次第で、殺すか殺さないか決めるわ」
「ヒッ……で、ですげえむ?……知ってる?」
「ううん、知らない……僕たちは、おばあちゃんの頼みで木の実を取ってこいって言われて……ちょっとサボって遊んでたら、こんな時間になっちゃったんだ」
「そうだ!帰ったら絶対怒られるやつだよ……」
そりゃそうだ。お母さんにちゃんと謝ってきなさい。
……じゃなくて、デスゲームを知らない?
「そう、……ねえ、二人とも。デスゲームの参加者じゃない人間が居るって聞いてた?」
聞いた事のない情報に、アデレードは子供たちに聞こえないよう、小声で尋ねる。
「や、聞いたことないねえ。参加者というか、名前からしてNPCなんじゃないかなぁって思うかな」
確かに、子供AとBなんて典型的なNPCの名前だ。本物の命を賭けているだけで、ゲームというのは共通している。何らかの技術で、限りなく人間に近く見えるNPCだって存在していてもおかしくはない。
今の時代、AIが普及しつつある……AIのVTuberだって居るんだ。
……そうだったか?まあいいや。
「えぬぴーしー?なによそれ」
「アデレードちゃん、ゲームやったことないの?まあ、簡単に言えば、人間に見えるけど人間じゃない感じ?機械みたいな……たぶんこの子達は無害だと思うよ。」
「あたしだってお手玉とか銭打ちとかしたことあるわよ! ……あと、『ちゃん』やめて。とにかく、機械?なら大丈夫かしらね」
アデレードは、やや疑いの目を子供たちとリョウに向けながらも、簡易ナイフを懐に戻した。
それでも、怖がらせてしまったことには申し訳なく思ったのか、少し屈んで子供たちの目線を合わせたのち、素直に謝罪をした。
「怖がらせてごめんなさい。あたしたちはあなた達を殺さない、なにもしないわ」
「よ、よかったです!ありがとうございます!はぁ……!僕たちはまだ死ぬときではなかった、ありがとう、赤龍様……」
その言葉を聞いた子供たちは、少し体の力を抜いて、安堵したように微笑み手を組んだ。まるで、神に祈る信徒のような……赤龍……?
……それも気になるけれど、子供たちは村があると言っていた。運が良ければ、寝床を貸してもらえるかもしれない。だって疲れてんだもん、休ませてくれ〜い!
だが、俺の見た目は子供とはいえ、さっきまで殺そうとしていたアデレードの仲間ではある。そう簡単に「イイヨ!」と言ってくれるかどうかはわからないけど……言わない理由にはならないよな。
「ねえ、子供Aさんと子供Bさん……もし良かったら、村に案内してくれないかな?わたしたち、寝る場所がなくって……」
最大限、困ったように表情を作って見せた。実際困っているのだから、嘘は言っていない。
「なッ、ましろ……軽率すぎるわ。何が起きるか……」
俺の言葉に、即座に異議を唱える。だが、子供たちに聞こえそうだったのか、すぐに口を噤んだ。
「……『ヒント』があるかもしれないでしょ。野宿を続けても、体力が持たないと思うんだ。アデレードはまだしも、わたしはちょっと限界……リョウも疲れてる。」
「……人をよく見てるんだねえ、ましろちゃんは。」
そう、俺だけではなく、リョウも。
一目、余裕そうな顔はしているが、最初に出会った頃より覇気がないように感じている。お節介かもしれないし、実際はそんなことはないかもしれないけど、体力の回復にはちゃんとした環境が必要なのは変わらない。
「それにさ、きっと大丈夫だよ。なにかあっても、ゲームの参加者じゃないんだったら、まだ分かり合えると思う」
ね?と言ってみせるように、俺は微笑んだ。
「ッそう簡単に行くほど、人間は……いえ、…わかったわ。だけど、危険そうだったら離れるから。」
「……!うん! ありがと。アデレード」
「ん。」
その様子を見ていた子供たちは、未だ悩んでいるようだった。
子供Aの方は、腕を組んでうーんうーんと唸っている。
「……どうする?兄さん」
「村長さまに言ってみないと分からないし……一旦連れて行こっか!」
「だって!姉ちゃんたち大変そうだし、村に案内してあげる!」
やったー!
〜〜〜
村は二メートルほどの木塀で囲われていて、中に入れば、藁や木で出来た簡素な家が一番に目に入った。この村はどうやら規模が小さいようで、人口も二桁ほど。どうやって暮らしているかと言うと、畑で野菜や果物を育てたり、稀に来る旅人や冒険者の『恩恵』で何とか暮らしているらしい。
村の位置と言うと、このマップは比較的大きい島であるみたいで、島のど真ん中にある『赤龍の巣』の近くにあるらしい。そこでは赤龍が眠っているだとか。
ちなみに、あの謎の光も村の家から漏れ出ていたものっぽいです。
ある程度話を聞いて思ったことがある。デスゲームは、本来人と人を殺させたり…疑わせたりするものと解釈している。何を言いたいかといあと、それにしては設定がしっかりしているということ。まるで、本当に人間が住んでいるように感じてしまう。
もしかして、これがヒントだったりするのだろうか?
という経緯を話したところで、俺たちは村長の家の中で相談をさせて頂いてる真っ最中だった。
村長さんに人数分の椅子を用意してもらい、俺たちはそこに腰掛けている。
「おお、これはこれは……久々のお客様でございますなぁ」
柔らかい表情を浮かべ、村長さんはそこに居た。
下半身まで伸びている立派な髭を生やした、どことなくたくましく感じる立ち姿。
頭部は……とてもキラキラしていて、側面にまだ髪が残っていた。赤いマフラーとローブを身に纏っており、布自体はとても薄そうだというのに、高級感を漂わせていた。
そして、村長さんの隣には、優しそうなお兄さんが隣に居た。お孫さんかな?
「急なご訪問、申し訳ございません。私の名前は、アデレードと申します。こちらはリョウとましろ。私たち、ここら辺で旅をしているもので……先程偶然知り合った、子供Aくんと子供Bくんに案内していただいたんです」
ここは一番大人に見えるアデレードに、村長さんへの説明を任せた。
それにしても、アデレードが敬語を使えるなんて……びっくらこいた。
「ご丁寧にありがとうございます、私は村長と気軽にお呼びください。それにしても、こんな危険な森で旅を……?みなさん、珍しいですね。それに、……いえ、この村にいらっしゃったのは、旅の一環ですかな?」
「はい、ご迷惑でなければ、ここの村で少し滞在させていただきたくて……どうでしょうか?」
「……ふぅむ。そうですね。お恥ずかしながら、この村も財政が厳しく……明日、代わりにこの周辺を荒らしている魔物を討伐して頂ければ、数日空き家をお貸ししましょう」
現在、ゲーム開始から三日が経っている。
確かに、無料で泊まらせてくれるだなんていい話はない。
でも、魔物討伐だなんて時間の掛かることをすれば、クリアできなくなるんじゃ……?
「……わかりました。魔物討伐、させてください。」
「……! 本気?アデレードちゃん…」
「本気。それにましろが言った通り、『ヒント』が手に入るかもしれないでしょ?」
……!
俺の言葉を、少しでも信じてくれたのだろうか。
「それに、ましろはまだ育ち盛り……ちゃんとした環境で睡眠を取らないと」
「ホホホっ、そうですな……ましろさんもいることですし、ここらで質の高い空き家を用意させます……ほら、お兄さんA!案内してやんな!」
「わかりました、村長。皆さん、ついてきてください」
ア、アラ?急な子供扱い?
ともかく、村に滞在させてもらえることになってよかった。
それに、自然以外のものを見るのは久々で、少し安心した。
今夜は遠慮なく爆睡させてもらうとしよう。すやりんこ。おやりんこ。