幕末に生きる   作:フューチュラ

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試衛館

大老井伊直弼など幕府の者達により、勅許無しで日米修好通商条約を調印し、また、将軍継嗣を徳川家茂に決定した。

 

幕府の勝手な調印や決定に反対する者たちが出てきた。

 

これに対し幕府は、反対した者達を弾圧した。

 

弾圧された者は、尊皇攘夷派や一橋派の大名•公卿•志士(活動家)らで、連座した者は100人以上にのぼった。

 

形式上は第13代将軍徳川家定が命令し、全ての処罰を行ったことになっていたが、実際は、大老井伊直弼が命令していた。

 

これを『安政の大獄』という。

 

弾圧し死んだ者の中には、『桂 小五郎』•『高杉 晋作』のいた塾の師、長州藩の尊皇攘夷の思想家『吉田 松蔭』がいた。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

圭吾は小平次に腕を引っ張られ、先ほどまでいた草っ原から、町の方に歩いていた。

歩いている中で、圭吾は先程まで意識を失う直前まで殴られており、頭が上手く働かなかったが、徐々に回復してきていた。

 

『とりあえず……慌ててもしょうがない、落ち着いて考えるか』

 

回復したことにより、冷静になって現状を整理し始めることにした。

 

『ここは確実に意識を失う前にいた、寿徳寺やその周辺ではないこと。それと、俺がいた時代とは違うのも確かだな。』

 

場所は意識を失う前といた場所が違うのは、目を覚ましたときに気づいていた。だが、時代については移動して初めて気づいた。

 

町に向かう中で何人かの人とすれ違ったが、全員きている服は着物。しかも、中には刀を挿している人がいた。

 

『あれが本物、偽物に関わらず、俺がいた時代なら腰には挿さず何かに入れる。それにあんなもん腰に挿していたら確実に周りの人は慌てる、だがここの人たちは慌てず、まるで当たり前のようにしている。』

 

時代についてもう一つ気になることがあった。

 

『小平次がさっき言っていた道場の名前、『天然理心流剣術道場•試衛館』て、言っていたな…』

 

この道場の名には聞き覚えがあった。歴女の姉ちゃんがよく話していたある戦闘集団の名前と一緒に出てきていた。

 

『新撰組』

 

確か、新選組局長『近藤 勇』、副長『土方 歳三』、一番隊組長『沖田 総士』

新撰組の中心的人物達がいる道場が、天然理心流剣術道場•試衛館。

 

 

『確か、試衛館は江戸、現在の東京にあったはず…だけど現在試衛館は跡地として残っているはずだ………』

 

圭吾は考える中で、あることを小平次に聞いた。

 

「なぁ…今道場で一番偉いのは誰だ?」

 

小平次はこちらを見て

 

「あんた‼︎何言ってるの⁉︎」

 

驚きながら言う。

 

それを見た圭吾は先程の二の舞を踏むを嫌なので、

 

「いやな…さっきいた草っ原で転んで頭を打ってさ、記憶が……無いんだよ。」

 

子供でも分かるような嘘をついた。

 

だが、

 

「それ本当なの⁉︎」

 

俺の腕を引っ張って歩いていた、小平次は急に止まり驚きながらこちらを振り向く。

 

「あぁ…そうなんだよ!思い出そうとしても小平次とさっき会うまでの前のことは思い出せないし、自分の名前しかわかないんだよ‼︎」

 

嘘が通じたことが分かり、慌てながら更に嘘の話を作った。

小平次は心配しながら

 

「………大丈夫なの?」

 

上目遣いで言う。

 

「身体は大丈夫だと思う。記憶だけが無いんだよ…」

 

ここで圭吾は、記憶がないことを中心的に話し、ここに来る前の現状を確認すことにした。

 

「記憶だけないんだね?…………う〜ん、どうやったら記憶戻るかな?」

 

小平次は腕を組み考え、何か閃く。

 

「そうだ‼︎殴れば思い出すかな?」

 

笑顔でこっちを向いて言う。

 

「更に記憶が無くなるわ‼︎」

 

先ほどのように殴られるのは嫌なので、全力で否定する。

 

「チッ‼︎」

 

小平次は盛大に舌打ちをした。

 

『そんなに俺を殴りたいのかよ⁉︎』

 

心の中で再び突っ込んだ。

 

「で…どこまでの記憶がないの?」

 

「名前以外全部思い出せない。」

 

小平次の質問に普通に答える。

 

「ハァ‼︎冗談でしょ⁉︎」

 

「マジです。」

 

「じゃあ…私のことも分からないの?」

 

「全く分からん。」

 

「あんなに世話焼いたてあげたのに‼︎」

 

小平次は少し怒りながら俺に言う。

 

「しょうがないだろ、忘れちまったんだから。」

 

「とりあえず一度落ち着いて話がしたい。」

 

圭吾は現状の確認のため、話すことを提案した。

 

「確かに…何処かで一度話べきね。そうすれば、記憶も少しは戻るかもしれないし…」

 

小平次は少し考え、

 

「分かった。記憶が戻るかもしれないし、あそこの茶屋で話をしようか。」

 

「了解。それじゃ、行きますか。」

 

二人して茶屋に向かう途中圭吾はあるものを見つけ、立ち止まる。

 

「…………鏡。」

 

圭吾が見た先には小さな露店があり、そこには小さな手鏡が売られていた。

鏡を見つけた圭吾は、大事なことに気付き鏡に走って近づき、自分の顔を鏡に写した。

 

「…………俺の顔だ。」

 

圭吾が確認したかったのは、今の自分の顔だった。

身体は見て確認することができたが、顔は見ることができないため、『自分の顔が全然違っていたら』という不安があった。

 

鏡に写っていたのは今までと同じ顔。どこも変わっておらず、髪型も同じだった。

 

「…良かった〜」

 

不安が一つ解消され、少し安心した。

 

「どうかしたの?鏡なんかみて。」

 

声をかけられ振り向くと、小平次がいた。

 

「自分の顔がどんなのか見たかったんだ。」

 

「前と変わってないわよ。その情け無い顔と変な髪型。」

 

「ひどい言いようだな。」

 

鏡を戻し、再び茶屋に向かう。

 

茶屋に入り向かい合って座る。

 

「すいませ〜ん。お茶と団子ください。」

 

小平次は注文を言いこちらを見る。

 

「さて…どこから話せばいいのかな?」

 

「とりあえず…知ってること全部で…」

 

「全部ね…めんどくさいけどしょうがないわね…」

 

小平次は一瞬渋る顔をしたが、ゆっくりと話し始めた。

 

「まず…アンタの名前は『岩村圭吾』。そこは良いわね?」

 

「ああ」

 

『名前は同じか…』

 

名前が同じことに安心しながらも話は続き、

 

「産まれは覚えてる?」

 

「いえ…全く覚えてないです」

 

「そこもなのね…前に聞いた時確か…産まれは会津にある村って言ってたわ」

 

「会津…」

 

『確か…会津って今の福島の西部と新潟、栃木の一部を治めてた藩…』

 

俺は姉ちゃんから一方的に言われた、歴史の知識を思い出しある程度の場所を特定した。

 

「アンタは次男で父から性格を直すためと武士としての力をつけるために道場に来たのよ」

 

「性格?武士としての力?」

 

「虫一匹も殺せない臆病な性格。そんで、刀を振るっては自分に当てるって言う、武士とは思えない性格、力を矯正するためにここに来たってわけ」

 

『虫一匹も殺せない…自分が振るった刀に自分が当たるって…』

 

小平次が言う『自分』に乾いた笑いが出かけた。

 

「お待たせしました」

 

その間、注文したお茶と団子が出てきた。

 

「頂きます‼︎」

 

小平次は笑みを浮かべながら団子を食べ、

俺は、

 

「ズズ…」

 

ゆっくりとお茶をすすった。

 

『さて…今んところ名前とツラは同じ…んで…産まれと何故ここに居るのかが分かった………後は…』

 

俺は茶をすすりながら、今分かっていることを整理して、再び小平次に聞いた。

 

「なあ…今って何年だ?」

 

「うん?今は…」

 

小平次は団子を食べながら考えて言った。

 

「今は文久2年だよ」

 

『文久2年…確か…1862年だよな…』

 

姉ちゃんから聞いた知識を元に今の時代を考え、

 

『幕末に近いか…スゲー時代に来ちまったな…』

 

自分が今いる時代に焦りが出てきた。

 

『幕末』

 

徳川の泰平の世が終わり動乱が始まった時。

多くのものが己の御家や信念に従い、多くの血が流れ、多くのものが死んでいった時代。

 

今自分がいる時代を確認して不安になるが、もう一つ大事なことを聞いた。

 

「さっき言ってた道場ってのは…」

 

「アグ…もぐもぐ…ゴク。『天然理心流剣術道場•試衛館』だよ。師範は『近藤勇』さん。あ、あとアンタは今道場で私達と一緒に暮らしてるのよ」

 

「近藤…勇…」

 

最悪な予感が的中した。

 

やはり俺がいるのあの『天然理心流剣術道場•試衛館』、しかも、師範は近藤勇。

 

俺は今の自分のいる状況が分かり更に焦りが出てきた。

 

『時を跳んだ理由は分からないが…来ちまった時代は幕末…しかも…住んでる場所はあの試衛館で師範は近藤勇…戦闘集団のリーダーと一緒に住んでるなんて…』

 

「アンタ…大丈夫?」

 

「え?」

 

「さっきから顔色悪いよ?それに団子食べないし」

 

「…団子?」

 

『顔色が悪い理由は焦ってるからで…何故そこで一緒に団子が出て来るんだ?』

 

「アンタ甘いもの大好きじゃない?枕元にお菓子を置いとくぐらい」

 

「………そうなの…」

 

新しい情報が入った。

どうやら甘いものが大好きらしい…

 

「うん。団子食べないの?」

 

「今は食欲ないからいいよ…」

 

「そう?ならもらい♪」

 

小平次は余っていた団子を両手に持ち直ぐに平らげ、お茶を飲み干した。

俺も今の状況を整理しながらお茶を飲み干し、

 

結果、

 

『わけわかんねー』

 

整理しきれなかった。

 

「さてと…私が知ってることはこれぐらい、あとは師範の方が知ってるかもしれないから?」

 

「そうか…ありがとう」

 

「んじゃ…行くよ」

 

小平次はお代を机に置いて立ち上がり俺の手を引いた。

 

「え?どこに行くの?」

 

「さっき言ったじゃない?道場に行くって」

 

「道場…」

 

「私はアンタを迎えに来てたところで、アンタが記憶なくしたって言うからここに寄って話をした。で、話が終わったからアンタを道場に連れ戻すのよ」

 

「道場か…」

 

俺は行くのをためらった。

今から行くのはあの試衛館…

近藤勇、土方歳三、沖田総司…

幕末最強と言われる奴らがいる道場に行く…

しかも、小平次の言い方から俺は多分道場から逃げ出したのだろう…

戻った瞬間三人に殺されるんじゃ…

 

そんな不安に駆られるが、

 

でも…今頼れるのは小平次と試衛館だけ…

ここで逃げ出しても俺には生きていく術が無い…

それに…もしかしたら何か他にも情報があるかもしれない…

なら‼︎

 

俺は覚悟を決めて立ち上がり、

 

「道場に行こう!」

 

道場行く決意をした。

 

 

 

その後、

小平次について行き、時計が無いため正確な時間は分からないが、10分程で道場についた。

 

「それじゃ稽古場に行くから」

 

小平次は先に道場の中に入り稽古場に向かって行った。

俺もその後ろに付いて行き、稽古場の戸の前で止まった。

 

ふぅ〜

 

俺は一度目を閉じて深呼吸をする。

 

「圭吾を連れ戻してきました」

 

その間、小平次は戸を開いた。

戸が開いたのと同時に俺は目を開けて中を見ると、

 

 

 

そこには…綺麗な顔をしているが目付きがキツくまるで俺を殺す様な殺気を放つ女がいた。

 

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