六道神樹教の施設、その地下深くの隠し区画。
カビと湿気の匂いが充満する石造りの広間に、不気味なチャクラの光が揺らめいていた。
広間の中央には、複雑怪奇な文様を描いた巨大な魔法陣が敷かれている。
その中心で拘束されているのは、全身に傷を負った
意識は朦朧とし、四肢は鎖で繋がれ、不気味な術が刻まれた法陣の中にいた。
「……準備は整いましたね」
「これから、
その隣には、
(いよいよ……か……)
鉄山は呪術師復興の野望が、また一歩、大きく前進していることを感じていた。同時に、一緒に歩むことができなかった仲間のことも思い出していた。
(
二人とも先の里襲撃の際に、忍者との闘いで命を落とした。光海は、南条の手によって。
──あの領域の中、もし南条が最初に儂を狙っていたら、ここに立っていたのは光海のほうだったのだろうか。
それでもいい。鉄山は本心からそう思っていた。
呪術師が忍者を滅ぼし、再び呪術師全盛の時代がやってくるのなら、そこに立っているのは自分でなくともよい。と、そう考えていた。
間の死に目には立ち会うことすら出来なかった。やんちゃで調子に乗りがちな男だったが、才ある有望な呪術師の若者だった。
鉄山の歩みは止まらない。二人の
彼はただ力強くこぶしを握り締め、成り行きを見守っていた。
「さて、始めましょう。……呪いの王の帰還を」
脳噛が印を結ぶ。 同時に、葛車の体から強制的にチャクラが引き抜かれ、陣へと流し込まれる。
地獄道の因子──冥府の王を喚び出すその力は、現世と浄土を繋ぐ扉の鍵となる。
「口寄せ・
地獄道の能力である閻魔の顔の召喚、ズズズと広間に現れた六道の力の一端に、見物している「呪術師復興派」の呪詛師達の間に緊張が走る。
脳噛は続けて印を結ぶ。それは死者の魂を、こちらに呼び戻す六道の奥義。
「
ガパッ……!!
獄閻王の口が大きく開き、その口腔から赤黒い煙が噴き出した。
その煙は、まるで意思を持つかのように渦を巻き、一つの強大な魂魄の形を成していく。
「オオオオ……ッ!!」
「素晴らしい……!」
「呪術師復興派」の呪詛師たちが歓喜の声を上げる。
魂魄だけだというのに、肌を刺すような重圧。濃密すぎる
呪いの王、
脳噛は用意していた硝子の瓶を取り出し、その魂魄を封じ込めた。
瓶の中で、赤黒い霧が暴れまわるように脈動する。
「魂魄の回収は成功です。あとは『器』となる即身仏と、里から奪った呪物による受肉の儀を行うだけ」
脳噛は瓶を懐にしまい、踵を返した。
呪詛師達が慌ただしく脳噛に続く。
鉄山が尋ねる。
「この男はどうする? 用済みなら殺すか?」
鉄山が、ぐったりと項垂れる葛車を見下ろして問うた。
振り返った脳噛は首を横に振った。
「いいえ。彼にはまだ用があります」
脳噛は呪詛師の一人に指示を出した。
「彼を独房へ。拘束しておいてください」
「はっ……! しかし、なぜ?」
「質問は許可していませんよ」
脳噛の瞳が一瞬、冷たく光った。
呪詛師はしぶしぶといった様子で葛車を担ぎ上げた。
「