一方、地下施設の独房区画。
迷路のように入り組んだ通路を、Bチームの面々は疾走していた。
「コッチダ! カラスノ反応ト、ソナーガ一致シテイル!」
先頭を行くマイケルが叫ぶ。
その肩には、
「急ごう。……葛車さんのチャクラ反応が弱っている」
最後尾で
彼の右腕には、破壊された『阿修羅』の残骸から急造した、武骨な傀儡籠手が装着されている。
突き当たりにある、一際厳重な封印が施された鉄扉の前で、一行は足を止めた。
「ここですね。……結界が幾重にも張られています」
七丹が扉を分析する。由良恵が影の中から苦無を取り出すが、通常の物理攻撃で破れる代物ではない。式神を呼ぶか。
そこで、与が前に出た。
「俺がやる!」
与が掌を扉にかざす。
内蔵されたチャクラ増幅回路が唸りを上げ、掌の噴出口から青白い炎の刃が形成された。
「機巧忍法・
高熱に収束された火遁のビームが、分厚い鉄扉とそこに刻まれた術ごと焼き切っていく。
溶断された鉄板が、ズドンと重い音を立てて内側へ倒れ込んだ。
「葛車さん!!」
与が真っ先に飛び込む。
薄暗い部屋の奥、拘束具に繋がれた状態で、
全身に拷問のような儀式の痕跡があり、衰弱しきっている。
「……う、あ……」
駆け寄った与に抱き起こされ、葛車は薄く目を開けた。
「与……君、か……」
「はい、助けに来ました! すぐにここから脱出しましょう!」
だが、葛車は安堵するどころか、絶望に顔を歪めた。
「すまない……。私が、奴を……『
「え……?」
「もう、手遅れだ……」
葛車はそれだけ言い残すと、糸が切れたように再び意識を失った。
「葛車さん! しっかりしてください!」
その時だった。
ズズズズズン……!!
地鳴りのような振動と共に、施設全体が脈動した。
空気の密度が変わるほどの、圧倒的な重圧。
感知タイプでなくともわかる気配。全員の肌が粟立った。
「なんだ、この寒気は……!?」
「チャクラノ桁ガ違ウ……! 化ケ物ガ、目覚メヨウトシテイルノカ!?」
奥から伝わってくるのは、生物としての格の違いを見せつけるような、絶対的な捕食者の気配だった。
◆
場面は変わり、地下広間。
Aチームと
「ッ……!?」
廻仟、東導、菅原、そして夏目。
全員が動きを止めた。
広間の奥、さらに深い場所から溢れ出してくる、強烈な陰陽遁チャクラの奔流。
あまりにも強大な存在の復活が近いことを、本能が理解していた。
「……どうやら、順調に進んでいるようですね」
脳噛は、揺れる地面の上で平然と微笑んでいた。
その余裕に、夏目傑が一歩前に出た。
「答えろ。……お前は、『賀茂憲倫(かも のりとし)』だな?」
夏目の問いに、廻仟たちが息を呑む。
過去の文献にあった、呪術師の名。
脳噛は少し驚くような様子を見せたあと、フッ、と笑った。
「ええ、そうです」
あっさりと肯定した。
廻仟が眉を寄せて叫ぶ。
「じゃあ、脳噛じゃないのかよ!?」
その問いに、男は首を振り、面白そうに答えた。
「いいえ。私は『
男は首をコキリと鳴らすと、纏っていた堅苦しい空気を脱ぎ捨てるように、ふぅーっと長く息を吐いたあと、破顔した。
「……あははは。そう、この身体の持ち主は確かに『賀茂憲倫』だ。けどね、中身は違う。……私はこうして他人の肉体を乗っ取り、その時の都合で身体を替え続けてきたんだよ」
男は自身の額、環状に打ち込まれた黒い棒をトントンと指差した。
「……賀茂憲倫の身体には随分と長く居座ってしまってね。この時代、もはや彼を知る者もいなくなった」
脳噛は語り始める。今までの印象とは打って変わって、固い雰囲気を崩していた。
「この肉体は捨てがたくてね。……六道の力……私の造ったこの『輪廻眼』と、賀茂憲倫の肉体は相性が良かった。次があるかわからないから、乗り換えずに使い続けていたんだよ」
まるでネタ晴らしを楽しんでいるかのように、廻仟たちに目をやりながら、わかりやすく説明をする脳噛。
「名前については……わざわざ死んだはずの歴史上の人物を名乗って、君たちのような勘のいい連中に調べられるのも面倒だろう? 『大昔の人間がなぜ生きている?』と怪しまれるのは避けたかったからね」
男は人差し指を立てて、にっこりと笑う。
「だから、ある時から『賀茂憲倫』のフリをするのはやめていたんだ。今はもう、私本来の名前を名乗っている」
──偽りだったのは、その身体のほうだった。
男は、あっそうだ、という風に居なおり、廻仟たちに挨拶をする。
「改めて皆さん、はじめまして。私は