ゾイドワイルドヴァーサス‐不良がゾイドで抗争する学園都市で自分達を守るためにゾイドに乗る事を選んだ陰キャ学生の話 作:アイアイホイホイおさるさん
#1
Zoic android………略して
その、異星文明を起源に持つ巨大な鉄の獣が地球に満ち、長い長い年月が過ぎた。
ゾイドと人間の関係は様々な様相を見せた。
時に、共に喜びを分かち合う相棒として。
時に、その力を振るう兵器として。
時に、ビジネスパートナーと割り切る道具として。
そしてこの時代………その、いつの事かは定かではないが、狂った
近未来と言える程には発展したその時代は、戦乱も大きな事件もなく、平和だった。
そう、世界は平和だったのだ。
***
してそこは、とある街の一角である。
しかし破壊されていた。否、破壊されたまま放置されていた。
いつの頃からか人も寄り付かぬ廃虚となったそこは、人が住む場所ではなく「彼ら」のバトルフィールドとして機能していた。
「アルバの奴らに後れを取るな!俺たちヴィーダの底力を見せたれや!」
そんな場所に瓦礫を押しのけ現れるのは、戦闘機械獣・ゾイドの部隊。
長い角を持ったカブトムシのような姿をした小型機「カブター」が数体と、それらを率いる、バッファローが戦車の装甲と砲台を着込んだような姿の「キャノンブル」。
「ヴィーダの奴らにビビってる奴ら居るゥ?居ねえよなあ!?」
対するも、やはりゾイドの部隊。
戦闘ヘリがごとく空を舞い、浮遊するクワガタ型の「クワーガ」と、それに護衛されるように現れた巨大なワニのような外見をした凶悪な機体「ガブリゲーター」。
「殺せぇっ!!」
「潰せぇっ!!」
「今日こそタマ取ったるどぉ!!」
その
それに呼応するかのように、ゾイドのボディに取り付けられた違法改造パーツの数々がブルンブルンドギャギャと派手な唸りを上げた。
それが、彼らの威嚇でありゾイドなりの「ガンの飛ばし合い」なのだ。
「おっ
キャノンブルの背中に取り付けられたランチャー砲が火を吹いた。放たれた火線が大地を焼き、砕く。
爆発による粉塵が広がり、ガブリゲーター達の姿が見えなくなると同時に、今だと言わんばかりにキャノンブル達は突撃する。
「今だ!」
「行けェ!!」
「ぶっ飛ばせェ!!」
しかし、それで勝てるワケがない事ぐらい、キャノンブルの
爆炎の向こうから、ギチギチと刃を鳴らすクワーガの群れが戦闘本能をむき出しにして突っ込んできた。
「なめんじゃねえぞゴラァア!!」
と、同時に砲撃の直撃を受けたにも関わらず無事だったガブリゲーターも、その大きな顎を開いてキャノンブルを食らわんと肉薄する。
ブモォオオ!!
ギシェアア!!
空中でカブターとクワーガが交差し、斬り合う。
と同時に、キャノンブルとガブリゲーターも互いの角と牙をぶつけ合い、金属がぶつかる火花と金属生命体の咆哮が、夜の廃墟に響き渡った。
まるで、それは大昔に行われたというゾイドを使った戦争の再現であった。
………学園都市リヒト市。
とは言っても、そこは某ライトノベルのように街全体が一つの学校になっている訳ではなく、複数の学校が一つの街に集まり、その学区やそれを中心に形成される街がそう呼ばれているだけだ。
そしてリヒト市は現在、戦場と化していた。
東の一帯を勢力圏に置く「私立アルバ高校」。
西の工業地帯を支配する「ヴィーダ工業高校」。
南の港町にある「グァンマ学園」。
市を三分して勢力圏に置き支配するこれら三つの学園は、それらを牛耳るゾイドを操る不良達によって支配されていた。
そして彼等は日々街の
………その一方、別の時間と別の場所。同じ街。
学生服を着た一人の少年が、街の中の路地裏を逃げていた。
まず断っておくが、この少年は盗みを働くような悪事に走った訳でもなければ、悪人に貸しを作るようなドジを踏んだ訳ない。
「はあっ、はあっ、はあっ………!」
そう彼は、胸を張って何もしていない善良な一般市民と言えるような優等生である。
しかし、悪いことをしなければ何もないという理屈は通じない。少なくともこの
「そーら捕まえた!」
「ああっ!!」
やがて彼を追いかけていた鉄の足音は、彼を袋小路に追い詰めた。そこに現れたのは、鋼鉄の獣脚を持つ機械の獣………ゾイドである。
ヴェロキラプトル型ゾイド「ラプトール」。その、小型ながらも鋭い足は少年を容赦なく追い詰め、踏みつけた。
少年が押さえつけられたのを確認すると、ラプトールの背中のコックピットが展開し、別の少年が降りてきた。
別の学生服………明らかに着崩したそれを着て、髪を派手に染めたそれは、見るからに不良のそれである。
不良は動けない少年に近づいてくると、彼のポケットから財布を抜き取った。
「ほい、もーらいっ!」
「あっ、返して!僕の財布!」
「うるせえよ!」
抗議する少年の顔を蹴飛ばして黙らせ、財布から紙幣を全て抜き取ると地面に投げ捨てる。
そう、これはカツアゲ………いや、兵器たるゾイドを使っている以上はそんな生易しい言葉ではなく、きちんと「強盗」と呼ぶ方が相応しいだろう。
「恵んでくれてありがちょ!じゃあなぁ〜!」
そしてラプトールのコックピットに戻ると、悠々とその場を走り去っていった。
財産のほとんどを取られ、その場に残された少年は、倒れたまま泣いていた。
「ううっ………ううっ、うう………」
恐怖、痛み、理不尽、そして悔しさが少年から立ち上がる気力を奪っていた。
ラプトールに踏みつけられた背中がズキズキと痛んだが、彼にはもう病院に行く金もないのだ。
………そう世界は、学園都市リヒトは平和だった。
この街においては、ゾイドによるカツアゲの類は日常なのだ。
故に人々は、街は、兵器を使った学生の戦争が横行するこの街の異常生を、平和と認識していた。
ゾイドが現れる以前の歴史を歩んだ古代の人々が、戦争や差別が横行する世界においても「平和だ」と言ったように、自身に被害が及ばなければいくら世が乱れていようと、それが平和だと認識していた。
そしてこの物語は、そんな学園都市リヒトから始まる。
とはいっても、これは街の
物語が始まるのはアルバでも、ヴィーダでも、グァンマからでもない。
物語が始まるのは「タルデ高校」から。
「うう………ううっ………ううっ、うう………」
今丁度、有り金のほとんどを奪われ、ゾイドに負わされた怪我に震えている、哀れなこの少年が着ている制服の学校からである。
***
タルデ高校は全寮制の男子校である。
規模としてはそこまで大きくなく、学校の中だけで社会が形成される程閉鎖的ではない。
そして、この激戦区である学園都市リヒトにあってそこは、喧嘩もしなければ街の覇権にも興味のない、どちらかと言うとオタク気質の優等生達の通うごくごく普通の進学校という立ち位置を保っていた。
「ゾイドなんてダサいよ」
「いきなりどうしたよお前」
この物語の主人公「タスク・ダイワ」は、そんなタルデ高校に通う、どこぞの若君を彷彿とさせる
今日も彼は、同じタルデ高校に通う友人と、新作ゲームを買いに街に繰り出していたのだが、唐突に毒を吐いた。その理由が、街頭テレビに流れていた映像である。
『本日のバトルはアルバ高校の勝利!ガブリゲーターの野性味溢れる牙の一撃が、キャノンブルをねじ切りましたぁ!!』
街頭テレビでは、少し前にあったアルバ高校とヴィーダ高校のゾイドを使った抗争の様子が、まるでプロレスの中継のように流されていた。
おそらく、どちらかの学校の動画配信者が録画していたのであろう。ネットに配信されるそれらは、プロパガンダという形で其々の学校の支持者を集めるのに役立っている。
「強い機械に乗って、自分が強くなった気になって、それでやる事は喧嘩して社会に迷惑かける事………ほんとダサいよ、ゾイドも、
そしてタスクには、それが気に食わなかった。
しかし、そう思っているのはタスクだけではない。少なくともタルデ校や、同じような立場にある学校の生徒なら、大なり小なりそんな考えは持ち合わせている。
そもそもの話、街を三分している三高校のような不良達というのは、タルデ校に通う優等生・オタク気質の生徒からすれば不倶戴天の敵であり、相容れない存在なのだ。
「そもそもあいつらのゾイドだって、僕達の学校の生徒からカツアゲしたお金で強くしてるんだよ?そのクセ、まるで修行して強くなったみたいな顔してさぁ………」
現に、タルデ校の生徒が三高校やそれらの配下の学校の生徒達からカツアゲや暴行を受けたなんて話は常々聞くし、ゾイド抗争に巻き込まれて怪我を負ったというクラスメートをタスクは見てきている。
そんな実害を受けている状態で、三高校や彼らが戦力として運用しているゾイドにいい感情を抱けという方が、タスクにとっては無茶な話である。
今画面内で暴れているキャノンブルの砲身が次に狙うのは、自分かも知れないのだから。
「ははは、そんなキレんなよ」
「だってさぁ………アレ」
タスクが指差した。
そこには、街頭テレビに集まっている複数の女子生徒………おそらく他校の生徒だろう。彼女達はゾイド抗争の脅威に怯えて不安がっている訳ではない。むしろ………。
「アルバ校マジで推せるわぁ〜、みんなイケメンだし!」
「わかるー!アルバマジで推し校だわぁ!」
「あー!イケメン最高ー!」
………これが、タスクを始めとする優等生達が三高校を嫌う決定的な理由である。
不良達はタスク達の安全と平和を脅かし、多くの人々に迷惑をかけている。
しかし世に溢れる女子達が選ぶのは、そういった「ワイルド」な男であった。世間に迷惑をかけ、人を平気で傷つけ、横暴に振る舞う。そんな不良が自分だけ特別に愛し、守ってくれる。そんなシチュエーションに、彼女達は「メロつく」のだ。
その裏で、いじめられ潰されてゆく真面目な男達の犠牲など、彼女達は知ったことではない。そもそも、そういった男達は彼女達の視界にすら映らないのだから。
「………絶滅すりゃいいんだよ、不良も、ゾイドも………」
精一杯の呪詛を込めて、タスクは吐き捨てた。
そしてこれが、タスク達タルデ高校の、もっと言うと三高校のヤンキーバトル漫画な物語の裏で迷惑を被る優等生達の日常である。
彼等は物語の表舞台に立つ事は無く、不良達の熱い物語の裏の、一部の捻くれ者のオタクしか指摘しないような裏設定として、踏み潰されて消えてゆく。
そんな灰色の日常が、これからも続く。少なくとも、この時のタスクはそう思っていた。
百億年ぶりにゾイドの二次創作したわ