ゾイドワイルドヴァーサス‐不良がゾイドで抗争する学園都市で自分達を守るためにゾイドに乗る事を選んだ陰キャ学生の話   作:アイアイホイホイおさるさん

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#10

 水底を蹴り、ギルラプター特有のバネ性の強い脚と背中のブースターが、ソニックレイダーを一気に池の外へと押し上げた。

 水柱を立てて空中から迫る音速の襲撃者(ソニックレイダー)を前に、残されたグソックは何も出来なかった。

 

「喰らえッ!」

 ギャオオッ!

「なんやとォ!?」

 ギャワァ!

 

 ナイフのように尖った爪と、強靭な脚から繰り出される蹴りの一撃が、グソックを蹴り飛ばした。

 グソックはサッカーボールのように地面を転がり、やがて動きも手綱(コンバットシステム)も停止。戦闘不能に陥った。

 

「後はお前だけだ!」

 ギャオオッ!

 

 後は僚機を全て失ったバズートルを始末するだけ。そう考えたタスクは、やはり才能はあれど実戦経験は不足していたと言える。

 

 ギュオオッ!

 ギャウッ!?

 

 バズートルは短い足で大地を蹴り、距離を詰めたかと思うとソニックレイダーの脚に噛み付いたのだ。一瞬の出来事であり、タスクは完全に油断していた。

 

「油断したなぁ!バズートルはワニガメ!狡猾なハンターなんや!お前はバズートルの仮の範囲内に来てしもうたって事や!!」

 

 そしてバズートルはその重さを利用し、ソニックレイダーごと再び池の中へと飛び込んだ。二体のゾイドが落ちるように飛び込み、ざばぁ!と大きな水飛沫が上がる。

 

 ギャオオッ!

 

 ソニックレイダーが水上に立ち上がった。バズートルの噛みつきからは既に解放されていたが、幸運とも好転とも言えない状況にある。

 バズートルは水上を滑るように泳ぎながら、遠方からソニックレイダーに迫って来ていた。陸での鈍重な動きがまるで嘘か演技のようである。

 

「だはははっ!水はバズートルのホームグラウンドや!お前には万が一の勝ち目は無いんやでぇ!!」

 ギュオオッ!!

 

 バズートルが水上を進みながらミサイルを撃つ。誘導式である事を加味しても、グソックよりも正確な射撃だった。

 一方のソニックレイダーの回避は間に合わなかった。水上という陸上生物(ディノニクス)型には不利な地形は、いつもの俊敏な動きをソニックレイダーから奪っていたからだ。

 

「ぐああっ!?」

 ギャオオッ!

 

 ミサイルが直撃する。反撃としてソニックレイダーもレーザーガンを撃つが、バズートルはそれをスイスイと嘲笑うように回避する。

 そして再びバズートルが放ったミサイルが、ソニックレイダーを襲う。そんな事の繰り返しであった。

 

「ぐわっ!こ、このぉ………このままじゃジリ貧だ!どうしたら………!」

 

 タスクは必死に思考する。けれども、この状況から逆転する方法は、どう頭を捻っても出てきてくれなかった。なんせ、水から上がる隙すら、バズートルは与えないのだから。

 

「だはははっ!噂のソニックレイダーも大したこと無いなぁ!どうや、お前のゾイドも倒してガノンタスごと俺らの学校で運用したるわ!」

 ギュオオオッ!!

 

 再び、バズートルが一撃を加えんと迫る。今度は確実に仕留める為か、ミサイルではなく背中の二門のキャノン砲を向けてきた。

 このままではやられる。タスクとソニックレイダーに危機が迫った、その時である。

 

「目標距離1000、風速5メートル右から、温度補正、湿度補正、コリオリ効果微調整、照準固定、トリガーロック……一発必中!」

 

 バズートルに衝撃が走った。水上を駆けていた甲羅は大きく横に倒れ、相手に直撃するハズだった砲撃は大きくそれて、そのソニックレイダーの背後に着弾。水柱を立てた。

 

「今のは………長距離射撃!?」

 ギャウッ!?

 

 それが長距離からの狙撃である事をタスクはすぐに分析した。だが問題は、誰が撃ったか?という事である。

 

「何や今のは!?どこからや!?」

 

 バズートルの体制を立て直させたニシガシは、自分の勝利に水を差した奴は誰だと、バズートルに装備したセンサーで狙撃の主を探す。

 して、その狙撃の主であるが、結論から言うと公園内には居なかった。公園「内」には。

 それが居たのは、池から1キロ離れた地点。公園の上空から池を真っ直ぐ見据えた、一体の翼を羽ばたかせた機械獣。

 

「ふふふ………私よ」

「レベッカ先生!!」

「どう?私の「プテちゃん」は♪」

 

 通常と違いブルーに塗装された「インペリアルガード仕様」と呼ばれる昔に存在したバリエーション………のレプリカ機である、ワイルドブラストにより長距離射撃を行うプテラノドン型ゾイド「スナイプテラ」だ。

 そしてコックピットに座るのは、何を隠そうレベッカ・スチュワート。青いウェットスーツにも似た耐Bスーツと呼ばれる、ワイルドブラスト対応のパイロットスーツに身を包み、遥か上空からバズートルに狙いを定めている。

 

「この(アマ)ァ!!上空から狙うとは卑怯やな!!降りてきて戦えや!!」

「あら、卑怯?三体一でタスク君をリンチしようとした上に、自分が有利な水中戦に持ち込んでまで勝とうとした奴に、そんな事言う資格があるのかしら?」

「テメェ!!言わせておけばァ………!!」

 

 レベッカに煽られたニシガシは歯を食いしばって怒りを露わにする。そしてバズートルの砲身を、上空のスナイプテラへと向けた。

 

「この(アマ)ぁ!!こうなりゃこのバズートルの兵器解放(マシンブラスト)で叩き落したるからなぁ!!今更後悔したって遅いでぇっ!!」

 

 バズートルはワイルドブラストの一種である兵器解放マシンブラストする事で、全身の火器に加えて甲羅の内部と後方に分けて格納した巨大な砲・A-Z680口径バズーカ砲が展開。

 その全てを発射する「全弾発射(アヴァランチファイア)」と呼ばれる本能解放技を使う事が出来る。

 空中戦用機であるスナイプテラからすれば、バズートルの全火力による攻撃などひとたまりもないだろう。

 

「さあ行くでぇ!!兵器解ほ………」

「やらせるかぁ!!」

 ギャオオオッ!!

 

 しかし、ニシガシは上空のスナイプテラに気を取られて忘れていた。ここにはタスクと、ソニックレイダーも居るのだ。

 

「うわあっ!!何するんや!!離せ!!必殺技の最中に攻撃すなっ!!」

 ギュオオッ!!

 

 ソニックレイダーがバズートルに飛びかかり、甲羅の上にその爪を食い込ませるように掴みかかった。

 これではワイルドブラスト所ではなく、バズートルは必死にソニックレイダーを振り落とそうとするが、背中の砲身………A-Z680口径バズーカ砲の前部分に噛み付いて離れない。

 

「う、お、りゃあああ!!」

 ギャオオオッ!!

 

 ばきゃあっ!と、嫌な音が響いた。気がつけば、ソニックレイダーはバズートルから離れていた。根本から折れた、A-Z680口径バズーカ砲の前部分と一緒に。

 

「あ、ああああっ!!俺のA-Z680口径バズーカ砲がぁ!?」

「レベッカ先生今です!!」

「サンキュータスク君!」

 

 生徒が体を張って反撃のチャンスを作ってくれた。ならレベッカには先生としてそれを最大限活かす義務がある。

 

「さあ行くわよプテちゃん!ワイルドブラストッ!!」

 キュオオンッ!!

 

 レベッカがコックピットのレバーを思い切り引っ張った。スナイプテラにパワーが満ち、変化が始まる。

 背骨と頭骨が直列し、嘴が開き、紺色の翼竜は翼の生えた巨大な狙撃銃(スナイパーライフル)へと変わる。

 

「絶対狙撃ッ!アブソルートショット!発射(ファイア)!!」

 

 兵器解放(マシンブラスト)により嘴から展開するA-Zスナイパーライフルから放たれるスナイプテラの本能解放技「絶対狙撃(アブソルートショット)」が、空中から地上に向け放たれる。

 大気を切り裂き飛来した弾丸は、そのままバズートルを直撃。その装甲を貫き、破壊………

 

「………は………だはははっ!残念やったな!この通り俺はピンピンしとるで!!」

 

 ………しなかった。

 前面装甲(フロントシェル)こそ破壊したが、完全破壊には至らなかった。内部のコックピットが露出し、そこにいるニシガシが引きつった顔で笑っている。

 

「ちょっとだけションベン漏らしたけどコックピットハッチを吹き飛ばしただけや!!お前なんか主砲が無かろうとミサイルさえありゃ十分やで!!覚悟しいや!!」

 

 残ったバズートルのミサイルで空中のスナイプテラを狙うニシガシ。だが。

 

「十分よ」

「何やと?」

「貴方、今自分が何処にいるか忘れたのかしら?」

「何を言うと………うわぁっ!!」

 

 ここでようやくニシガシも気付いた。コックピットが浸水していたのだ。池の水が、バズートルのコックピットの中を満たすように流れ込んできている。

 

「バズートルの装甲の厚さは私も十分知っているわ、いくらスナイプテラのワイルドブラストでも装甲一枚を破るのがやっとなのもね………でも、それだけで十分よ。そこは水上なんだから」

 

 スナイプテラの特性、そして水上という地の利を活かしたレベッカの作戦勝ちであった。

 コックピットが浸水し、操縦システムがショートしたのか、バズートルはガタガタと震え出す。

 

「うわあああっ!!バズートル!!早う池から上がれええっ!!」

 

 それ以前に、ニシガシは水責めにあっている状態にある。なんとかバズートルを操作し、そそくさと水中から逃げてゆく。

 こうして戦いは終わり、池にはソニックレイダーと、そして。

 

 クワッ

「あっ、入った」

 

 気がつけば立ち上がり、戦闘から逃げるように無事箱罠に入って行った、ガノンタスだけが残された。

 

 

 ***

 

 

 捕獲作戦は成功した。この後ガノンタスはかつてのソニックレイダーがそうであったように、ヘリック大学の研究チームによって保護されるとの事。

 こうして、公園は再び平和な市民の憩いの場に戻ることが出来たのであった。

 

「それにしても意外だったな………レベッカ先生がゾイドを個人所有していたなんて」

 

 眼前に降りてくるスナイプテラを見て、タスクはレベッカの意外な一面に驚いていた。

 大学でゾイド研究をしている事は最初から知っていたが、まさかゾイド自体を持っているとまでは思わなかったからだ。

 やがてスナイプテラのコックピットハッチが開き、一仕事終えたレベッカが降りてくる。

 

「ナイスアシスト、タスク君!」

「せ、先生ッ………!」

 

 ………さて、今レベッカは耐Bスーツというものを着ている。これはワイルドブラスト時の負担を軽減する為の、軍でも採用されている装備である。

 してその外見は典型的なロボットのパイロットスーツ。

 すなわち、全身タイツやウェットスーツのようなぴっちりスーツなのである。それを、思春期男子を刺激するナイス・バディのレベッカが着ているのであれば。

 

「(デッッッッッッッッッッッカ!!!)」

 

 タスクの眼前には、ピチピチスーツによってどゆんと強調された、超弩級に実ったたわわなメロンが二つ。

 

「………んん〜?どこを見ているのかなぁ〜?」

「見てません!!何も!!」

 

 突き刺さる視線を知ってか、わざとらしくずにゅんと両腕に挟んで強調してからかってみせるレベッカ。

 タスクはコンプライアンスやらセクハラやらの観点から、死に物狂いで必死に否定するしか無かった………が、しっかり目には焼き付けていた。




・今日のゾイド
スナイプテラ(レベッカ機)
種別:プテラノドン型
かつて帝国軍で運用されたスナイプテラの内、皇族の親衛隊に使われたインペリアルガード仕様………の再現レプリカ機。
レベッカの改造により機体パワーが向上しており、空戦ゾイドながら重武装にも対応可能。
ワイルドブラストする事でクチバシの奥に仕込んだA-Zスナイパーライフルを展開し「絶対狙撃(アブソルートショット)」を放つ。
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