ゾイドワイルドヴァーサス‐不良がゾイドで抗争する学園都市で自分達を守るためにゾイドに乗る事を選んだ陰キャ学生の話   作:アイアイホイホイおさるさん

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第4章「黒いライガー〜好敵手接近警報!〜」
#11


 ◆◇◆これまでのあらすじ◆◇◆

 グスタフ公園の巨大池に、野生化したゾイドのガノンタスが迷い込んだ。

 タスク達ゾイド部はレベッカの古巣であるヘリック大学のゾイド研究チームと協力し、ガノンタスを捕獲作戦を展開する。

 だがそこに、同じくガノンタスを狙うヴィーダ校のニシガシが、兵器ゾイド・バズートルを駆って現れた。

 タスクとソニックレイダーが果敢に立ち向かうが、水上という地の利を活かしたバズートルの戦法に追い詰められてしまう。

 だがそこに、レベッカが狙撃ゾイド・スナイプテラに乗って現れた事で形勢逆転。見事バズートルを撃退し、ガノンタス捕獲を成功さはせるのだった!

 

 

 ***

 

 

 針の筵(はりのむしろ)、という言葉すら生易しかった。

 かつての仲間達は自身を見下し、仲間とすら思わず、なんなら痛めつける事も厭わない、無慈悲な裁判官と化していた。

 イチトラ、フタトラ、ミトラ。かつてはアルバ校三虎(タイガース)と呼ばれた彼等は、かつての栄光が嘘のように、その失態を裁かれようとしていた。

 

「タルデのゾイドに二度も敗れた上に、総長(カシラ)から貰った貴重なファングタイガーを失い逃げ帰る………アルバの男の姿か?これが」

「もっ、申し訳ありませんっ!」

 

 イチトラは、弟分二人と一緒に全力の土下座をしていた。

 彼ら不良にとって、ナメられる、すなわち恥をかく事は死よりも重い。ましてや、陰キャ学校であるタルデ校に負け、アルバの名に泥を塗ったのであれば尚更だ。

 

「この落とし前はどうつけるつもりだ、コラ」

「ひっ………つ、次こそは、次こそは必ず………!」

「その次はもう無いんだよ、負け犬に相応しいエンディングの時間だよコラ」

 

 彼らは不良である。現実の不良がそうであるように、彼らはいじめの延長線で平気で人を殺す残忍な人種である。

 そんな不良が、一度見下した………「何をしてもいい」と判断した相手に何をするか。イチトラ達は彼等自身も不良のため、身に染みて理解している。

 

「………待ちな」

総長(カシラ)?しかし、こいつらは………」

(オレ)が"待ちな"と言った」

「………はい」

 

 しかし、そんな弾劾裁判に待ったをかけた者がいた。

 それは、この輪の中心にいるもの。イチトラ達は勿論、この場にいる誰しもの不良から見ても上に立つ存在。

 このアルバ校の頂点に立つ、この裁判の裁判長に当たる男である。

 

「………おい、イチトラ」

「は、はいっ………」

「………テメーとその部下二名にディロフォスとクワーガを貸してやる。それでそのタルデ校のゾイドと操縦者(ライダー)を連れてこい」

「えっ………?」

 

 それは助け舟であった。予想だにしない所から差した希望の光に、イチトラも、フタトラもミトラも、信じられないという表情を浮かべていた。

 

「そいつに興味が湧いた………是非(ツラ)を見てみたい」

「は………はいっ!謹んでお受けします!」

「ありがとうございます!総長(カシラ)!」

 

 イチトラ達は最大限の感謝を込めて、地面にめり込むような勢いで頭を下げた。他の不良たちは困惑しつつも、いつもの事のように顔を見合わせている。

 そして、この騒動の中心たる男は、終始口角をつり上げて笑っていた。

 まだ見ぬ相手に対して、自分と、自分のゾイドをせいぜい楽しませろ、と。

 

 

 ***

 

 

 アルバ校に「イヌイ」という操縦者(ライダー)がいる。

 返り血のついたカッターシャツに金髪のオールバックといういかにもな見た目の彼は、容赦のない喧嘩から「狂犬」の渾名で呼ばれている。

 そんな彼は、自身の戦闘スタイルを反映したように、狩人のように戦うオオカミ型ゾイド「ハンターウルフ」を乗機とし、敵対する不良を震え上がらせていた。

 そんな、イヌイとハンターウルフのコンビは。

 

 ギャオオオッ!!

 グルガァアア!!

 

 タルデ校ゾイド部のタスク・ダイワと、その相棒ゾイドであるソニックレイダーの前に追い詰められていたという。

 事の発端は、イヌイが手下の不良を引き連れてある場所でゾイドを使って、タルデ校生徒をターゲットにした「狩り」………という名の恐喝、つまりカツアゲをしていた事だ。

 それまではタルデ校生徒は泣き寝入りするしか無かったが、今は違う。彼らにはタスクとソニックレイダーがいるのだ。

 

「嘘だろ!?この俺がこんな奴に………!?」

 ガルルォッ!?

「今まで弱いものイジメしかしてこなかったんだろ!格上との戦い方を忘れていたな!?」

 ギャオオンッ!!

 

 イヌイの苦戦は、戦いをくぐり抜けてタスクが操縦者(ライダー)として成長していたというのも勿論あるだろう。

 しかし一番の理由は、今までイヌイが格下をターゲットにしたカツアゲばかりで、同格の相手=同じゾイドと戦う技能が鈍っていたからに他ならない。

 実際、ハンターウルフに装備したレーザーガンもガトリングも回避され、ソニックレイダーの放つレーザーガンは全て直撃するという試合運びになってしまっている。

 

「お前ごときがナメやがって!!ウルフ!ワイルドブラスト・セカンドギアだァッ!!」

 グルガァッ!!

 

 しかし、イヌイには切り札があった。アルバ校で数少ない耐Bスーツ着用者である彼には、ワイルドブラストが使えるのだ。

 イヌイがレバーを引くと同時に、ハンターウルフの背部に格納されたソニックブースターが前方に展開。

 二段階あるハンターウルフのワイルドブラストの第二段階(セカンドギア)、咆哮と共に放つ衝撃波「ハウリングシャウト」が、ソニックレイダー向け放たれる。

 

「だったら………!」

 

 しかし、イヌイは見落としていた。ワイルドブラストが使えるのは自分だけではない。

 活躍に応じて市から受け取った資金で、軍から型落ち品として貰った耐Bスーツを購入したタスクは、最早ワイルドブラストの為のレバーを引く事を躊躇する事はない。

 

「ソニックレイダー!こっちもワイルドブラストだ!!」

 ギャオオオッ!!

 

 背中と尻尾の、剣のようなウィングスタビライザーが展開。背部ブースターが火を吹き、腕と足の爪がエネルギーを宿して光を灯す。

 ブースターにより加速した走力で、ソニックレイダーは何の躊躇もする事なく前方のハンターウルフと、ハンターウルフが放った衝撃波(ハウリングシャウト)へと突っ込んでゆく。

 

「バカが!直撃コースに自分から飛び込んだか!」

 

 それを見たイヌイは、嘲った。衝撃波の直撃を受け、ソニックレイダーが切り刻まれると思ったからだ。だが。

 

「なっ………衝撃波を、逆に斬り裂いた!?嘘だろ!?」

 

 刃のようなウィングスタビライザーが、ハンターウルフの放った衝撃波を逆に斬り裂いた。衝撃波は二つに分かれて大気に溶けて消えた。

 こうしてハンターウルフ渾身のワイルドブラストは無効化に終わり、ソニックレイダーのレーザーを纏った爪が迫る。

 

「ストライクレーザークロォォーーーッ!!」

 ギャオオオオッ!!

 

 勝負は一瞬でついた。ソニックレイダーの本能解放技・ストライクレーザークローが、ハンターウルフの背部ユニットを破壊した。

 一撃を食らわせ颯爽と地面に降り立つソニックレイダーの背後で、大ダメージを受けたハンターウルフが倒れるように地面に叩きつけられた。

 

「クソッ!コンバットシステムがイカれやがった!」

 

 イヌイは戦闘を続行しようと操縦桿をガチャガチャと前後に動かすが、背部ユニットもプライドも破壊されたハンターウルフは怯え、モニターにはERRORの文字が浮かぶだけ。

 振り返れば、ソニックレイダーが「まだやるか?」と言いたげに、こちらを睨みつけていた。勝敗は誰の目に見ても明らかだった。

 

「………クソがッ!!」

 

 数秒の沈黙の後、ハンターウルフはそのまま駆けて行った。イヌイにとっての屈辱的な敗北であり、タスクとタルデ校の仲間達にとっての輝かしい勝利だった。

 

「ありがとうダイワ!これで安心してこの道を使えるよ!」

「どういたしまして!」

 ギャウッ!

 

 ハンターウルフが回復するまでかなりかかるだろう事を考えると、もうここでイヌイがカツアゲをする事はないだろう。

 安全な道を取り戻してくれたタスクとソニックレイダーに、タルデ校の生徒達は深く頭を下げた。

 この頃になると、タルデ校はゾイドへの苦手意識よりも、不良を倒して治安を守ってくれるゾイド部への賞賛の声が強くなり、こうしてお礼を言ってくれる程になっていた。

 タスクとソニックレイダーも連戦連勝を重ね、タルデ校の守護者として、同校生徒の安全と平和を守り続けていた。

 

「さてと………僕達も帰ろうか」

 ギャウ!

「えーと、ここは………」

 

 タスクは手元から携帯電話(スマートフォン)を取り出し、地図アプリを開いた。市から出てこそ居ないが、いつもの活動範囲からかなり離れた場所にいる。

 通信越しに戦いを支援(オペレート)してくれているレベッカのいるゾイド部の格納庫(ぶしつ)からも、かなり離れてしまっている事が解る。

 

「レベッカ先生、聞こえますか?」

「ええ、通信感度はバッチリよ」

「ハンターウルフ撃退しました、今から帰還しま………」

 

 とはいえ戦いは終わった。後は帰るだけ。

 そう思ったタスクは、レベッカに帰還を知らせる通信を入れようとした。だが、その時である。

 

「………ッ!!待ってタスク君!」

「先生?」

「ゾイドの反応が三機近づいているわ!すごいスピード………」

 

 その直後、通信は途切れた。

 

「先生?ちょっと、先生!?」

 

 そして事態は、タスクに混乱する時間すら与えなかった。ソニックレイダーに背後から一撃が浴びせられたのだ。

 

 ギャウウッ!?

「ぐっ、クワーガ!?」

 

 攻撃してきたのは、クワガタ種ゾイド・クワーガ。それも二体。

 不意打ちを浴びて体勢を立て直そうとした所、もう一体のゾイドが目に入った。敵は三体居たのだ。

 

「あれはディロフォス!?通信が途切れたのはこいつのせいか!!」

 

 三体目は、ラプトールにトサカと襟巻きをつけたような見た目をした、ディロフォサウルス型小型ゾイド「ディロフォス」だ。

 電子撹乱(ジャミング)機能を持ち、襟巻きから放つ妨害電波で敵の通信を狂わせる。通信が途切れたのはこいつの仕業だろう。

 

「だったらお前から叩く!!」

 

 先に面倒なのを叩こうと、タスクはソニックレイダーをディロフォス向けて突撃させる。

 この時、通信を妨害されて慌てていたのもあるのだろう。タスクはそれすら罠だと気付けなかった。

 

 キシャア!!

 キシャッ!!

 

 ディロフォスに飛びかかろうとしたソニックレイダー向けて、二体のクワーガが何かを投下した。

 それは、ゾイドを包むほど大きなサイズの投網である。動きが止まるのも面倒だが、タスクが危機を感じたのは、それがゾイド捕獲用であった事。

 

「捕獲ネット!?しまっ………!」

 

 罠だと気付いた時にはもう遅かった。捕獲ネットはソニックレイダーに覆いかぶさると、金属によく通る電流でタスクとソニックレイダーを攻め立てた!

 

「うわあああ!!」

 ギャオオオッ!?

 

 やがてソニックレイダーは電気ショックに耐えかね、タスク諸共意識を手放した。

 ズン、とその巨体が倒れたのを見届けたクワーガは捕獲ネットの電流を切ると、そのままネットに包まれたソニックレイダーを空中へ持ち上げる。

 

「まさかパイロットは死んでないよな………」

「安心してくださいイチトラの兄貴、ちゃんと気絶してます」

総長(カシラ)からは生け捕りにしろと言われているからな、殺すのはまずい」

 

 やがて、誰にも知られぬまま、タスクとソニックレイダーは何処かへと運ばれていった。平和を取り戻したハズの道には、誰もいなくなった。

 そしてタスクは………。

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