ゾイドワイルドヴァーサス‐不良がゾイドで抗争する学園都市で自分達を守るためにゾイドに乗る事を選んだ陰キャ学生の話   作:アイアイホイホイおさるさん

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第5章「グァンマ学園のお姉様〜推参、ガトリングフォックス・ミツネ〜」
#15


 ◆◇◆これまでのあらすじ◆◇◆

 タルデ校を守るべく、これまで様々な不良ゾイド乗りを相手に連戦連勝を重ねてきた、タスクとソニックレイダー。

 だがある日彼等は捕まり、三高校が一つ・私立アルバ高校へと連れ去られてしまう。

 逃げ出した彼らの前に立ち塞がったのは、アルバ高校総長ファング・サイドワインドと、彼の操る漆黒のライオン種・ノワールライガー!

 ファングとノワールライガーの圧倒的な戦力を前に、タスクとソニックレイダーは手も足も出ず、ついにその必殺の荷電粒子砲を受けてしまう。

 瀕死の重傷を負ったソニックレイダーは、レベッカとスナイプテラが寸是で救助に入った事で見事脱出。

 心躍る戦いを邪魔されたファングの怒りは、丁度カチコミを仕掛けてきたヴィーダ校の兵器ゾイド部隊に向けられたのであった!

 

 

 ***

 

 

 ソニックレイダーの受けたダメージは大きく、再び戦えるようになるまでには回復を待たなければならない。

 そんな状況において、アルバ校とヴィーダ校の間で大規模な抗争が起き、双方が戦力の大部分を失ったというのは幸運の知らせであった。

 しばらくは双方派手に動く事はできないだろう。その間、ソニックレイダーは羽根を休める事ができる。

 そして、操縦者(ライダー)たるタスクも。

 

「調べて解ったけど、私達はとんでもない相手と戦っていたようね………」

 

 ゾイド部部室にて、愛用のタブレットで集めた情報をまとめていたレベッカは戦慄した。

 その理由は、ついこの間ソニックレイダーに対して対決という名の一方的な蹂躙を展開した、ノワールライガーのファング・サイドワインドについて。

 彼はアルバ校の不良達の頂点に立つ総長であり、アルバ最強のゾイド操縦者(ライダー)であり、そして………

 

「まさかファング・サイドワインドが、ゼネバステック社長の息子だったとはね」

 

 ゼネバステック。

 それは、ワイルド大陸という場所から来たらしい一族により経営されている巨大企業である。

 大陸由来の技術力を応用して主にゾイドに使われている様々な武装を販売し、独自にゾイドの改造も行っている。

 そしてファングは、そのゼネバステック社の社長の子息なのだ。ノワールライガーの徹底したカスタムも、国際禁止兵器である荷電粒子砲を積んでいたのも、そういう事だろう。

 

「あのワイルドブラストに似た力………デスブラストって言ったかしら?あれも恐らく、ゼネバステックの持つ技術によるものでしょうね」

 

 それ以前に、アルバ校がゾイドを潤沢に用意できているのも、ゼネバステックの力添えあっての事と言えるかも知れない。

 

「だったら、尚更放っておいちゃダメでしょ!?」

「タスク君………」

「一個人が荷電粒子砲を積んだゾイドを好きに使ってるなんて、警察は………いやZCF(ゾイドコマンドフォース)は動かないんですか!?」

 

 タスクの怒りと主張は最もである。実際、ファングは荷電粒子砲の運用という法を犯している。

 なら、法の番人たる警察もそうだし、何よりゾイドを使った犯罪行為なら然るべき組織が然るべき対応をするのが普通だ。

 

「………動いてはいるわ」

「じゃあ………」

「ただ、直ぐには動けないのよ」

「それって、どういう………」

 

 そう、普通なら。

 今回は相手が大企業なのだ。それも、軍も世話になっているような。

 ましてや、独自にノワールライガーのような強力なゾイドを開発できる企業だ。それを摘発するというならそれ相応のリスクは背負う事になる。

 政治的にも、軍事的にも。

 

「ゼネバステックという大企業を敵に回す責任を、誰も取りたくないのよ」

「………またそのパターンですか」

 

 しかしタスクにとって、それは想像のついた結果であった。

 不良の脅威に晒されている一般生徒として、普段から突きつけられていた現実。その、延長線上でしかない。

 

「大人ってのはいつもいつも加害者の味方ばかりする!面倒だから、責任を取りたくないから、そうやって大人のやるべき事をしないで!」

 

 そもそもの話、ゾイド部自体が不良達の脅威からタルデ校生徒が自衛のために………ようは大人が子供を守ろうとしないので、代わりに子供が主体となり立ち上げた組織である。

 

「そして子供が身を守ろうと力を振るったら、暴力はよくないとか言ってこっちを罰してきて!もうどうしろって言うんですか!僕達は一方的に殴られて、それで黙っていろって言うんですか!!」

 

 それも、関係各所に何度も頼み込み、ようやく立ち上げたとタスクはハイト生徒会長から聞いていた。

 そこには、道徳や正しさを振りかざして、被害者を黙らせて「丸く収めよう」とする大人が何人もいた事も聞いていた。

 そしてタスク自身も、そういった卑怯な大人に口を塞がれ続けた被害者の一人である。

 

「………ごめんなさい」

 

 そんな、悲鳴をねじ伏せられた子供の叫びを前にして、レベッカはただ一言、謝るしかなかった。

 そして恥ずかしかった。一人の大人として、もしかしたら自分もそうした「社会」に加担しているかも知れないと思うと、レベッカはタスクの顔を直視できなかった。

 

「………解ってるんです、レベッカ先生に何を言ったって、しょうがない事ぐらい………でも………でも………!」

 

 誰も、何も言えなかった。この件に関しては八方塞がりだった。

 世間も、社会も、大人も、ゾイド部とタルデ高校の味方は、誰一人としてここには居なかった。

 

 ギャウ………

 

 弱々しく鼻を鳴らすソニックレイダー。

 数多の敵ゾイドを打ち砕いてきたその勇姿も、重傷を負って修復中である事を除いても、どこまでも頼りなかった。

 何故なら、ゾイド部が相対している「敵」はどんなゾイドよりも強力かつ、凶悪だったからだ。

 

 

 ***

 

 

 ゾイド部・活動不能。その非常事態に頭を抱えているのは当事者であるゾイド部だけではない。

 再び不良達の脅威に晒されるのではないかと怯えるタルデ校の生徒達もそうであるし、その立ち上げに関わった彼も。

 

「まずい事になったな………本当に」

 

 生徒会長ダイスケ・ハイトはいつも通りに麦茶を飲みながらも、その胸中は穏やかではない。

 レベッカによって書かれた活動報告書の内容の悩ましさは、ソニックレイダーの回復にまでかかる予算もそうであるが、何よりゾイド部が動けないという現実問題である。

 

「当分はレベッカ先生がスナイプテラを動かせるからカバー出来るとして、ソニックレイダーを出せないのは痛いぞ………」

 

 タスク・ダイワとソニックレイダーはゾイド部の象徴でもあった。

 それがアルバ校のゾイドにやられたとあっては、純粋な戦力もそうだが、タルデ校生徒の精神的ショックも計り知れない。タルデ校は負けたと言っているようなものだからだ。

 

「そしてこんな状況にあっても、我が校の教師も教育委員会もダンマリ………どうするか、本当に」

 

 そして案の定我が身可愛さに動かない大人を前に、ハイトはどうするかを考えなければならなかった。

 異様な光景であった。本来子供を守るために動かなければならない大人が何もせず、子供であるハイトが頭を捻っているのだから。

 そんな、本来守られるべき子供が自衛の為に悩んでいたその時、静寂と停滞を遮るようにプルルルと電子音が鳴った。

 

「電話………?」

 

 ハイトの私物の携帯ではなく、生徒会室に置いてある古い固定電話だった。普段は他校の生徒会か、学校関係者からしかかかってこない電話が鳴っていた。

 恐らく、ゾイド部の受けた損害についての話だろう。そう考えながらハイトは受話器を取った。

 

「もしもし?」

「もしもしぃ〜?タルデ高校生徒会さんどすかぁ?」

 

 聞き知らぬ、京言葉のような口調の若い女の声が聞こえてきた。

 男を惑わす甘ったるい媚びた声であったがハイトは知らない相手からの電話、それもイタ電の類ではなくこちらをタルデと知ってかけて来た確実さに対する恐怖が勝った。

 

「………誰だ?何故この番号を知っている?」

「そんなんどうでもええやないのぉ、ウチは生徒会長であるあんさんにちょーっと頼みたい事があるんよぉ」

 

 受話器の向こうにいる女の正体を推理しつつ、音声を録音しているハイトは、無論であるが見ず知らずの彼女の言う「頼みたい事」に答えるつもりは無かった。

 

「………何が望みだ?」

「ゾイド部のタスク・ハイト君に用があってなぁ、ちょっと繋いでほしいんよぉ♪」

「断る」

 

 内容を聞き、余計に答える訳にはいかなかった。今のゾイド部に用があるとなるとどう考えても碌な存在じゃない。

 それ以前に生徒会長として、こんな訳の解らない何者かに自校の生徒を差し出す訳にはいかなかった。

 

「部外者に自校の生徒の個人情報を提供する訳にはいかない。申し訳ないが、どうしても用があるなら生徒会(われわれ)ではなく先生に話を通してほしい」

 

 ので、毅然とした態度でノーを突きつける事にした。何より、自分の立場でどうこうしていい話ではない。

 詳しくは教師陣(うえ)に話を通してくれと当然の反応をつけて。

 

「………はあ、そうでっか」

「解ったか、なら………」

 

 諦めてくれた。そう少しの希望を抱いたハイトであったが。

 

「じゃあウチらの方から来ますえ♪」

「は?」

 

 瞬間、タルデ校の周囲に無数の機影が立ち上がった。

 ハイトは己の迂闊さを責めた。これは要求ではなかった。今から行くぞという犯行予告でしかなかったのだ。

 

 

 ***

 

 

 外が騒がしくなったと思い、何が起きたと部室の外に飛び出したタスクとレベッカ。

 二人はすぐにその騒ぎの正体を知ると同時に、自衛の為の索敵センサーを購入する予算を出さなかった教育委員会を恨んだ。

 

「ゾイドだあっ!!」

 

 生徒の一人が叫んだ。そこに居たのはゾイドだった。

 鎌首をもたげるように毒針のついた尾をこちらに向けているのは、サソリ型の小型ゾイド「スコーピア」。

 それが一体ではなく複数、何体もの数がタルデ校を囲んでいた。

 

「タスク君!これは………!」

「スコーピア、こいつは………!」

 

 ゾイドの群れに取り囲まれているというのも無論緊急事態である。しかしタスク達が目を引いたのは、それがスコーピアの群れという事だ。

 

 知っての通り、三高校は其々ゾイドを使った軍を用意している。

 三虎やニシガシと言った実力者は強力な専用機を有しているが、それ以外の生徒………

 ………失礼な言い方になるが「雑兵」に分類されるようなその他大勢には、安価で用意しやすいゾイドを与えられる。言うなれば「量産機」または「主力機」と呼ばれるそれだ。

 アルバ校であればラプトール。ヴィーダ校であればグソック。そしてスコーピアもそうした「主力機」の一つ。

 

「グァンマ校の主力ゾイドだ!なら、こいつらは………!」

「ホホッ!その通り!」

 

 予想する中で最悪の未来が来てしまったと、その専用カラーの白いスコーピアから身を乗り出して嗤う女子を前にしてタスクは思った。

 ソニックレイダーがまともに戦えない中来襲したのは、アルバ校とヴィーダ校が武力衝突により疲弊する中唯一無傷だった最後の一校。

 

「グァンマ学園の姫、ミゾレ・テンゲン!馳せ参じましたええ〜♪」

 

 グァンマ学園が、ついにタスクの前にその姿を現したのだ。

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