ゾイドワイルドヴァーサス‐不良がゾイドで抗争する学園都市で自分達を守るためにゾイドに乗る事を選んだ陰キャ学生の話   作:アイアイホイホイおさるさん

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#16

 学園都市リヒトを三分(さんぶん)する三高校が一つ、グァンマ学園。

 南の港町に本拠地を構えるそこは、和風ファンタジーの世界から飛び出してきたかのような校風、校舎の姿と、アルバ校やヴィーダ校と比べると大人しめな印象を受ける。

 しかしながら、ゾイドにより行われるその戦闘スタイルは苛烈の一言であり、敵対した相手のゾイドを徹底的に追い詰め、倒す。

 その一方で自分達から積極的に攻撃を仕掛けるといった事はせず、眠れる獅子として他学校から恐れられている。

 そして、グァンマ学園を語る上でのその最大の特徴は………グァンマ校が「女子校」、それもそれなりの立場の女子がほとんどの所謂「お嬢様学園」という所である。

 

「ひ、姫ぇ………?」

「よく言うやろ?総番とか総長とか、ウチらは姫って言うとるんよぉ♪」

 

 そのグァンマ校の頂点に立つのが、タスクの前に現れたこの「ミゾレ・テンゲン」という女子生徒。

 姫カットに黒髪ロング、背も低く貧乳のスレンダー体型くせに妙な色気を漂わせた彼女。噂によればさる財閥の侍女令嬢で、かなりのお嬢様だとか。

 読者諸君的には、某始祖吸血鬼の美少女形態を想像して貰えば手っ取り早いか。さすがに声帯はダンディなイケボではなく、能登で聞こえそうなウィスパーボイスであるが。

 

「ふむふむ、君がタスク・ダイワ君かぁ………♪」

「な、なんだよっ………!」

 

 ニヤニヤと悪戯げな笑みを浮かべながらタスクをまじまじと見つめるミゾレ。

 タスクは精一杯の威厳と敵意を向けようとするが、ミゾレはそんな怒りを受け流すようにタスクの観察を続けた。 さながら、これから食べる肉を吟味する肉食獣のように。

 

「ふふふ………♪」

「な、何がおかしいッ」

「いや、中々めんこい顔しとるなぁって♪」

「はあ!?」

「わからへん?カワイイって言ったんよ♪」

 

 タスクは何度「はあ!?」と驚いたか数えるのをやめる事にした。それほど、ミゾレの言っている事は支離滅裂であり荒唐無稽だった。

 

「一体何なんだ貴女は!?何の用があってここに来たんだ!?」

 

 タスクは混乱しつつも圧をかけようと声を荒げた。

 ミステリアスで色っぽい年上の美女に「カワイイ」と言われて喜ぶ男など、一部のマゾヒストだけ。タスクには男の尊厳も誇りもまだあった。だから怒った。

 

「まあまあ♪そんな怒らんでもええやないのぉ♪」

 

 しかし、そんなタスクの男のプライドを賭けた精一杯の抵抗すら、ミゾレは楽しんでいるようだった。ぐぬぬと睨むタスクに対し、面白そうにニコニココロコロと笑っている。

 

「あんさんの噂はかねがね聞いとるんよぉ♪なんや、アルバやヴィーダのゾイド相手に頑張っとるようやないの♪」

「………それはどうも」

「まあ、この間負けてもたのも知っとるけど♪」

「うぐっ………」

 

 どうやら、敗北の噂も広まっているようであった。グァンマ校の不良達も、ソニックレイダーがまともに動けないと知って来ているようである。

 そうなれば、この状況もどういう事か。タスクには嫌な方向での予想が何通りも浮かんだ。

 

「でも………あんさんが強ぉーい操縦者(ライダー)言うんもまた事実やん?こんな可愛らしい顔もしとってからに………♪」

「………見た目とゾイドの腕前は関係ない」

「ふふふ、それもそうやけどね♪ウチ、強くて可愛い男の子は大好きなんよ♪」

「何が言いたいッ!」

 

 一向に本題に入らないミゾレの態度に、タスクは怒声を浴びせる。しかしやはり、ミゾレはそれに怖気づく様子はなく、蠱惑的な笑みを崩さない。

 

「んもう、ニブいねんなぁ。ウチらグァンマ学園は、あんさん等タルデ高校と同盟を結びたいんよぉ♪」

「なん………ッ?」

「わからへん?仲良うしたいんよ、ウチらは♪」

 

 意味が解らなかった。ミゾレ率いるグァンマ学園は、タルデ高校と同盟を結びたいと言ってきた。

 ファングのように操縦者(ライダー)としてタスク個人の力が欲しいというのはまだ分かるが、弱小木っ端のタルデ校と組んでもグァンマ校には何のメリットもない。

 

「………その顔、ウチの言うとる事が意味わからへんって思うとりますやろ?」

「………当たり前だろう」

「しゃあないなぁ、ウチが手取り足取り教えてあげますえ………そう、手取り足取り♡」

 

 思わずミゾレにドキリとしてしまい、タスクはトキメキの後に悔しさに包まれた。こんな不良女を「かわいい」と思ってしまった事への悔しさに。

 

「ウチらグァンマ学園は女子校なんよ、女の子しか居ませんえ♪」

「それは知ってる」

「そんでなぁ、周りの学校の男子はみーんなウチらの事怖がってもうとるんどす♪」

 

 当たり前だろう。と、タスクは心の中で突っ込んだ。

 普通、不良高校の男子達とゾイドで喧嘩して互角の戦いを演じる女子など、怖くて話しかけようとすら思わない。

 

「わかります?ウチらみーんな彼氏がおらんで男日照りなんどすえ♪」

「自業自得だよ」

「で、タルデ校と仲良うしたい思うとるんどす♪」

「だからなんでそーなるッ!!」

 

 タスクの何度目かわからないツッコミすら、ミゾレはのらりくらりと交わす。

 タスクはまるで、垂れ下がった暖簾(のれん)相手に正拳突きを繰り返すような感覚を覚えた。それほど、彼女は掴み所のない女性に思えた。

 

「ニブいなぁ♪ウチらは同盟ついでにあんさんらと男女のお付き合いをしたいんよぉ♪グループ交際ってやつやねぇ♪」

 

 それぐらい察している。と、タスクは心の中で毒づいた。

 その上で、何故タルデ校の生徒と男女の付き合いがしたいのかが解らないのだ。

 

「そうじゃなくて………何で僕達なんだよ、アルバ校の方がみんなイケメンだし、ヴィーダ校の方がみんな男らしいよ」

「ウチらそういうガツガツしたのは好みとちゃうんよぉ、アッチの方はウチらはリードしたい方なんどす♪」

 

 ミゾレの唇が艷やかに光る。思わず息を飲むタスクの背後でパシュウという音がした。

 それはゾイドのコックピットが開く音であり、タルデ校を囲んだスコーピアから発せられていた。コックピットが開いているのだ。

 そして、コックピットの中には………

 

「ウチら、ルックスにはちょーっち自信はある方なんやけど………♪」

「「おおっ………!」」

 

 タルデ校の男子達が思わず声を上げた。何故なら、そこには美少女が、ギャルが居たからだ。それも何人も。

 雑誌の読者モデルは勿論の事、雑誌のグラビアアイドルすら霞むようなたわわに実った女体を、露出度の高い改造制服に身を包み、ゾイドのコックピットから色香を振りまいていた。

 まさにラノベか深夜アニメか………を通り越して隣国大陸のソシャゲかエロ漫画かと言うべき光景に、タルデ校の男子達は息を呑んだ。

 

「えっ………つまり俺達、あの()達と付き合えるってわけか?」

「あんな可愛い女の子達と………!?」

「あの胸も尻もすごい()達が………」

「俺の彼女に………!?」

 

 そんな、二次元から飛び出してきたかのような美少女達が逆ナンを仕掛けてきたというのだから、当然ながらタルデ校男子達は舞い上がってしまう。

 彼らはルールを守る優等生として真面目にやってきた。だから故に、周辺校の女子達からは「つまらない」として見向きもされなかった。

 そこからおまけに不良校から脅かされて、なおモテない現状。そこにそんな申し出をされれば、さもありなん。

 

「同盟………悪くないんじゃね?」

「確かに………」

 

 タルデ校男子の間に、グァンマ校との同盟を組んでもいいという空気が広がる。男子として、この誘惑に逆らえる者はいない。

 だが、そんなタルデ校にとってメリットしかない同盟締結に対して異議を唱える者が一人居た。

 

「皆騙されるな!!いい加減目を覚ませ!!」

 

 色香に絆されそうになった同級生先輩後輩を一喝したのは、他でもないタスクだった。

 今までソニックレイダーと共に学校を守るために一人前線に立ち、不良達の操るゾイドと戦い続けた、タスク・ダイワその人であった。

 

「皆、こいつらが何か知ってるのか!?グァンマ校だぞ!?僕達からカツアゲして、怪我させて、傷つけてきた三高校の一つなんだぞ!?何故そんな奴らと同盟を組もうと思うんだ!!」

 

 言われて、タルデ校の男子達は踏みとどまった。いくら異性として魅力的な外見をしていようと、グァンマ校は三高校の一角なのだ。

 自分達を虐げてきた不良校の一つと同盟を組むなど、筋の通る話ではないと。

 

「世の中には、誘惑に負ける人間と自分を貫く人間がいる!!お前たちはどっちだ!?ええ!?」

 

 同時に、タスクの言葉には怒りが籠もっていた。自分やソニックレイダーが体を張って守ってきた人間が、美少女の色香ごときに屈するのかという。

 不良と戦い、ゾイドを悪用する人間を許せないタスクだからこその怒り。そう、正義の怒りである。

 

「………ぷくっ!あははははははっ!!」

「何がおかしいッ!!」

「あはは………いやあ、思った以上にあんさんは真面目やなって思ったんよぉ♪」

 

 その時、ミゾレが笑い出した。自身の決意を笑われて怒るタスクであるが、ミゾレにはやはり通じない。

 

「………同時に、中々しんどい生き方をしとるとも♪」

「なッ………」

 

 それ所か、タスクの生真面目さの裏にある物を見抜いたようでもあった。

 そしてタスクが言葉に詰まった瞬間を見計らい、ミゾレは自分達の話を始めた。

 

「あんさんら、ウチらがアルバやヴィーダみたいに他校の生徒を襲っとるような物言いしちょるけど………そもそもウチら、カツアゲの類はやった事ありまへんどすえ?」

「は………?」

「そもそもウチらそんな事せんでもお金には余裕ありますえ?」

 

 そもそもの話、先も述べたがグァンマ校はお嬢様学校。わざわざ他校の生徒から取り上げなくとも十分に余裕があるのだ。

 制服を改造するにしても、ゾイドを改造するにしても彼女達の自費で十分やっていけるのだ。

 

「で、でもお前達はゾイドを使って周囲に迷惑を………」

「ウチらがゾイド使っとるんも、元はといえば身を守る為なんよぉ。ウチらか弱い女子が不良校から身を守る為に、しゃあない事なんよ♪」

「でも………三高校の一角なんて言われてるじゃないか………」

「あれは結果論よぉ♪ウチら、ゾイドに乗ったら強いかんなぁ♪」

 

 タスクは驚いた。もし、ミゾレが嘘や詭弁の類を使っていないのであれば、グァンマ校も元は自衛の為にゾイドを導入したという事になる。

 そして今度は、タスクも何かを言い返す事はできなかった。タスクやタルデ校生徒が嫌悪する要素は無いと言われてしまったのだから。

 

「だったら………」

「よく、ないか………?」

 

 ならば、別に同盟を組むのも悪くないのではないか?と、タルデ校男子にも納得と空気が流れ始める。

 しかし、タスクだけは違った。

 

「………納得いかないよ、僕は」

 

 頭では理解できる。だが、心では納得できなかった。

 今まで不良から学校を守るためにタスクは戦ってきた。その不良の中にグァンマ校も入っていた。

 だから、実態が違ったとしても精神論的に納得できる物ではなかった。これまで敵だと思っていたのだから。

 

「………信じられへんか?ウチらの事」

「当たり前だろう、だってあんた達は、グァンマ学園はアルバ校やヴィーダ校と並ぶ三高校だよ」

「ふぅん………さよか」

 

 その時、爆発が起きた。

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