ゾイドワイルドヴァーサス‐不良がゾイドで抗争する学園都市で自分達を守るためにゾイドに乗る事を選んだ陰キャ学生の話   作:アイアイホイホイおさるさん

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 その時、爆発が起きた。

 タルデ校を囲むように配置されていたスコーピア部隊。その内の一機が、突如飛来した銃撃により吹き飛ばされたのだ。

 

「何や!?」

「敵襲ですお姉様!ヴィーダ校のゾイドが!!」

 

 ズシン。一体のゾイドがヴィーダ校の主力であるグソックを引き連れ、その装甲に包まれたボディを街に降り立たせる。

 赤いバイザーを怪しく光らせて現れたのは、ステルス性能の高い黒い装甲を使い、身を隠して近づいてきたパンサー型のゾイド「ドライパンサー」だ。

 左右に刃を隠した二枚のシールドを持ち、忍者のように敵を狩る黒豹である。

 そんなクールな機体であるが、分類は兵器ゾイドであり、ヴィーダ校の保有機体だ。ので、操縦者(ライダー)も当然。

 

「ミゾレぇええ!!ワシを無視してこんな奴等とグループ交際とはどういう了見じゃワレェエ!!」

 

 ヴィーダ校生徒らしい筋骨隆々の暑苦しい男であった。

 角刈りに眼鏡という某塾の自称インテリを思わせる彼は「ヒコマロ・ウメオ」と言った。一応、専用機を任される程度には腕の立つ操縦者(ライダー)なのだが………。

 

「………知り合い?」

「一方的にウチに惚れてストーカー行為を繰り返しとる勘違い男やよ。はっきり言って迷惑どす」

「はぁ………」

 

 その本質はミゾレの言った通りである。

 態度やキャラが似非熱血キャラなので誤魔化されてしまうが、基本的には女性向けの露悪なコンビニコミックに出てくるような勘違い男なのだ。

 

「そもそもタルデの軟弱モン共のどこがええんじゃワレェ!!女を誑かすタルデのアホ共をぶちのめしてワシが目を覚まさせてやるわワレェエ!!」

 

 ドライパンサーが背中のサイレントガンを放つ。当てずっぽうに撃った為に直撃こそしなかったが、それはタルデ校周囲に着弾し、爆発。

 スコーピアも数体が吹き飛び、グァンマ校の部隊にもダメージが入る。そして明らかにタルデ校に敵意を向けた攻撃。しかし。

 

「どうしよう、ソニックレイダーは出せないし………!」

 

 タスクは動けない。ソニックレイダーは出撃できないのだ。なら、この状況で一方的にドライパンサーに打ちのめされるだけなのか?

 タスクは考える。この状況をどうにかする一手は無いものかと。そこに。

 

「………なぁ、タスクはん?」

 

 助け舟を出す存在が現れた。それは、グァンマ校………タスクが嫌悪し、侮蔑する相手=不良と見なしたミゾレだった。

 

(やっこ)さんの目的はウチや。この状況はウチが招いた………そして、この状況をどうにかできるのもウチ」

「つまり………どういう事だ?」

「もし、アイツをウチがどうにかしたら、あんさんはウチを信用してくれるかの?」

 

 ニヤリ、とミゾレは笑ってみせた。それは蛇のように狡猾な笑みであり、タスクは思わず言葉を詰まらせてしまう。

 

「まあ、ここはこのミゾレ様に任せてくりゃれ♪」

 

 そして笑顔のままウインクすると、仲間の操縦者(ライダー)と共に走り去ってゆく。

 

「"ミツネ"を出すで!準備急いで!」

「はい!お姉様!」

 

 タスクは歯痒かった。本来ならタルデ校を守るために戦わなければならないのは自分なのに、よりによってミゾレ達グァンマに事を任せなくてはならない事が。

 

 

 ***

 

 

 グソック隊が後付けで装備したミサイルランチャーを放つ。対するスコーピア隊も尻尾の先に装備した機銃で迎撃し、街はゾイド同士による市街戦状態に突入した。

 銃弾と弾頭が飛び交う戦場を、ドライパンサーが駆け抜ける。

 

「オラァアア!!どけどけワレェ!!」

 シャアアアア!!

 

 迎撃に出たスコーピアを、ドライパンサーの爪が次々と破壊する。性能差もそうだが、ウメオの操縦者(ライダー)としての腕も相まって、スコーピアではまるで相手にならない。

 

「やいグァンマの女共!大体お前らも気に入らんのじゃワレェ!!ナヨナヨした男に惹かれよって!真の男というのはワシらのような熱い男の事を言うんじゃワレ!!」

 

 ………そこには、まるで女に相手にされない事からの、女子生徒に向けたウメオのルサンチマンも確かにあった。

 硬派で熱い男で通っているヴィーダの生徒でも、モテないというのは辛いし惨めなのだ。

 

「そんなお前らには………兵器解放(マシンブラスト)でみっちり教育したるからなワレェエエ!!」

 シャアアッ!!

 

 ドライパンサーが兵器解放する。肩のシャドウシールドが展開し、A-Zトライブレードが出現。それは、高速で相手を斬り裂く回転カッターだ。

 そしてスコーピアの一機に狙いを定め、一撃で斬り裂かんとウメオは操縦桿を倒した。

 

「させへんよ」

「なんじゃッ!?」

 

 その直後スコーピアを守るように、ドライパンサーの回転する刃を別の刃が受け止めた。見れば、それは重なった毛皮を思わせる刃であった。言うなれば狐の尻尾のような。

 ドライパンサーとは真逆のその白いゾイドは、ドライパンサーを逆に弾き飛ばす。

 

「お姉様!!」

「来てくれたんですね!!」

 

 歓喜するグァンマの女子生徒達。

 降り立ったゾイドは、キツネ型の「ガトリングフォックス」………ではあるのだが、通常の個体とは違っていた。

 その各部には雫を思わせる「コンパクトエレクトリックキャノン」を備え、斬撃武器としても使える尻尾は通常より長く鋭い。

 白に桃色のグラデーションが入り混じった装甲は、さながら舞姫の着物のよう。

 

「ガトリングフォックス・ミツネ………只今参上どすえ♪」

 クォオン!

 

 それは、ミゾレ・テンゲンの家に代々伝わる機体。名を「ガトリングフォックス・ミツネ」と言った。

 

「ミゾレェ!!ようやくワシの(スケ)になる気になったかワレェ!!」

「あらあら、ヴィーダ校では相手の気持を無視する事がええ男の条件って教えとるんどすなぁ?」

 

 コックピットに座るミゾレは、眼前の女心どころか相手の気持ちすら考えていないどこまでも自分本位のウメオに、自分でも血管がピキリと浮かぶのを感じていた。

 タスクの信頼を勝ち取るという意味でも、さっさとこの勝負のカタをつけたいとも思っていた。

 

「だったら嫌でもワシの(スケ)にしたるわワレェ!!やるどドライパンサー!!」

 シャアアアーーッ!!

 

 ドライパンサーがトライブレードを回転させて駆け抜ける。

 力で相手を屈服させるという言わばヴィーダ式コミュニケーション術に則って、ミツネフォックスに強烈な格闘術で迫った。

 しかし。

 

「はい、残念♪」

 クォオン!

「なんじゃあ!?」

 フシャア!?

 

 ドライパンサーが叩き込んだ一撃を、ミツネフォックスはするりと避けてみせた。今まで無数のゾイドを斬り裂いたハズの刃をだ。

 

「こ、このっ!なめるなッ!ワレェッ!!」

 シャアアアーーッ!!

 

 ドライパンサーは何度も、何度もトライブレードを叩き込むが、その度にミツネフォックスはのらりくらり、するりと流れるように攻撃を次々と避ける。

 それは言うなれば、全身を粘液で包んだウナギを掴もうとするような光景だった。まるで操縦者(ライダー)のように、文字通り「掴み所のない」回避ぶりである。

 

「クスクス………そうやって力尽くで相手に迫るから、ウチはあんさんが気に食わないって言うとるんどすえ♪」

 

 攻撃が次々と徒労に終わるウメオを嘲笑い、ミゾレは口角をニンマリと吊り上げた。サディスティックな微笑みであった。

 

 ………ここでミツネフォックスに加えられた特殊装備である、コンパクトエレクトリックキャノンについて説明しよう。

 その名の通り小型のビーム砲であるこの装備であるが、もう一つの側面を持つ。それは、全身を粒子の膜で覆う事で特殊な力場を発生させ、相手の攻撃を受け流すというもの。

 例えるならローションや粘液のような防御性能を持ち、力任せの物理攻撃はミツネフォックス自体のしなやかさも相まってまず通さない。

 柔よく剛を制す。それがガトリングフォックス・ミツネというゾイドなのだ。

 

「ぐぬぅーーーっ!!なぜじゃ!!なぜじゃミゾレェ!!何故お前はワシの(スケ)になろうとせんのじゃ!?というか、貴様らグァンマの女達はワシらの何が気に食わんのじゃワレェ!?」

 

 それでもドライパンサーは攻撃を止めなかった。操縦者(ライダー)のウメオがそうさせているからだ。

 しかしいくら攻撃しようと無駄だった。ドライパンサーの放つ格闘も射撃も、ミツネフォックスは踊るように避けてしまうのだ。

 

 フーッ、フッ、フッ、フッ………

「お、おいドライパンサーどうした!?根性見せんかいワレェ!!」

 

 やがて、ドライパンサーが根を上げた。長時間の兵器解放(マシンブラスト)状態と何度も攻撃をさせられる疲労とストレスにより、全身から煙が上がり始めていた。

 

「クスクス………ゾイドの基本を忘れたようどすなぁ?」

「何だと!?」

「あれだけ無茶な操縦をすれば、先にゾイドの方が音を上げる言うとんねん♪」

 

 ゾイドは機械であるがロボットではない。あくまで生命体(いきもの)だ。

 いくら兵器化されているとはいえ、無茶な操縦を続ければゾイドは疲れてダメになる。操縦者(ライダー)の基本である。

 どこまでも自分本位であるウメオは、それさえ忘れてしまっていた。

 

「ほいじゃ、そろそろここいらで"ぶぶ漬け"でも貰ってもらおうかいな♪」

 

 そして、まともに動けなくなったドライパンサーに対し、ミツネフォックスのターンが訪れた。

 大地に降り立ったミツネフォックスも準備万端。ミゾレは遠慮なく、解放(ブラスト)用のレバーを引いた。

 

「進化解放………エヴォブラスト♪」

 

 ミツネフォックスの背部に倒れていたガトリングとダブルバスターライフルが展開。そして全身のエレクトリックキャノンも一斉に前を向く。

 ガトリングが高速回転し、全身の砲にエネルギーが宿る。身体に満ちる生命エネルギーが狙うのは、眼前に捉えたるドライパンサーのみ。

 

 クォオオオーーーン!!

 

 全身の砲が火を吹いた。実弾とビームの混ざった美しい弾幕の雨が、ドライパンサーに襲いかかる。それはまるで、地上で炸裂した花火のよう。

 

「名付けて、夢想機関法(ミラージュガトリング)………ふふふ、ちょっと気取りすぎやろかねぇ♪」

 

 圧倒的な暴と美、それはまさにミゾレという女を表現するかのような技とも思えた。

 

 

 ***

 

 

 ドライパンサーが倒されると同時に、グァンマ校の部隊と交戦していたグソック達は、リーダーの敗北を悟ったのか一斉に逃げ出した。

 ウメオもまた、行動不能になったドライパンサーを見捨てて部下と共に逃げていった。この戦いは、タルデの………否、グァンマ校の勝利に終わった。

 

「どや?ウチらの事信頼して貰えるかえ?ん?」

 

 そしてタスクとしても、自分の代わりに戦ってもらって、更にタルデ校を守ってもらった。

 そこまでして貰った相手を無碍にする事など出来なかった。

 

「………わかったよ、信じる。ミゾレさんの事」

「あははっ!ようやっと名前で呼んでくれたねぇ♪」

 

 そして、ソニックレイダーが回復するまでの間は嫌でも彼女達の力を借りなければならない。ので、ここにタルデ校とグァンマ校の同盟が結成された。

 ボーイズハントに心躍らせるグァンマの女子達。彼女が出来るぞと沸き立つタルデの男子達。そして、ミゾレも。

 

「とゆーワケで、ウチらも仲良くしようなぁタスク君♪」

「なっ………」

「あははっ♪照れとるやん♪ほんまかわええなぁ♪」

 

 どうやらタスクにターゲットを定めていたらしく、赤面するタスクを前にグイグイ来る。が、それに待ったをかける者がここに一人。

 

「はいはい!不純性異性交友だけはダメだからね!」

「あら?」

 

 ゾイド部顧問レベッカ・スチュワートである。ベタベタとタスクにくっつくミゾレの間に割って入った。

 そう、あくまで教師として、不純性異性交遊をさせないために。あくまで教師として。

 

「………はじめまして、ミゾレ・テンゲンさん。私はゾイド部顧問のレベッカ・スチュワートと申します」

「あらら、嫌やわぁスチュワート先生。不純性異性交遊なんてするわけないやないのぉ♪」

「それなら結構………これからよろしくお願いしますね、お嬢さん(コムスメ)

「こちらこそよろしゅうお願いしますえ、先生(オバサン)♪」

「「うふふふふふふふふ………」」

 

 言葉上でこそ当たり障りのない挨拶であったが、両者の間には荷電粒子砲よりも激しい火花が飛び交っていた。女同士の威嚇と敵意をむき出しにした「圧」が、端からも感じられた。

 

「………やっぱ同盟は結ばない方がよかったかもなあ」

 

 そんな圧力を前にタスクはただ圧倒されながら、身の振り方を考えようと思ったという。




・今日のゾイド
ガトリングフォックス・ミツネ
分類:キツネ型?
ミゾレ・テンゲンの家に代々受け継がれているゾイド。「ミツネフォックス」とも。
全身に「コンパクトエレクトリックキャノン」を装備し、それを使ったビーム砲撃や特殊な力場による防御といったトリッキーな戦い方を得意とする。
ワイルドブラストする事により全身の火器を展開し、「夢想機関法(ミラージュガトリング)」を発動する。
一節には、大昔にこの世界に現れた怪物に対抗する為に作られたと云われているが、詳細は不明である。
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