ゾイドワイルドヴァーサス‐不良がゾイドで抗争する学園都市で自分達を守るためにゾイドに乗る事を選んだ陰キャ学生の話   作:アイアイホイホイおさるさん

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第6章「強さの意味は?〜ゾイド部の一足早い夏休み〜」
#18


 ◆◇◆これまでのあらすじ◆◇◆

 ノワールライガーとの戦いに負け、ソニックレイダーは戦闘不能に。ゾイド部も活動不能に陥ってしまう。

 そんな時、三高校の内の一角であるグァンマ学園が突如としてタルデ校に姿を現した!

 グァンマ学園を率いるミゾレ・テンゲンは、タルデ校との同盟と自校女子とのグループ交際を持ちかけて………つまり逆ナンを提案してきた。

 当然受け入れられないタスクであったが、そこにヴィーダ校のヒコマロ・ウメオがドライパンサーとヴィーダ校ゾイド部隊を率いて強襲。

 動けないタスクに代わり、ミゾレは自らの愛機であるガトリングフォックス・ミツネを操り、ドライパンサーを撃滅!

 タルデ校を守るという形で信頼を勝ち取った事により、両校の間で同盟が結成されたのであった!

 

 

 ***

 

 

 季節が春から移り変わり、夏がやって来ようとしていた。桜はいつの間にか散り、青々とした葉が木を彩り、蝉が長い眠りから覚めて鳴き始めた頃。

 ゾイド部部室では、ソニックレイダーの修理と休養がもうすぐ終わろうとしていた。

 受けたダメージは大きかったが、そこはゾイド。高い生命力で、戦える程に回復するまでそこまで時間は必要としなかった。

 しかし、そんな何もかもが順調に進む中、タスクの心は沈んだままだった。

 

「………僕、負けたんだ………」

 ギャウ………

 

 あのアルバ校での戦い以降、タスクは自分が胃のなかの蛙だった事を痛烈に突きつけられ続けたた。

 ファングの操るノワールライガーに完敗し、眼前でミゾレとミツネフォックスの強さを見せつけられた事で、操縦者(ライダー)としての自分の力量をこれでもかと思い知らされた。

 このままでは勝てない、強くならなければ。そんな焦りがタスクの中に生まれた頃だった。

 

「タスク君、合宿に行くわよ」

「合宿………ですか?」

 

 ゾイド部部室にて、タスクがソニックレイダーのパーツを交換していた時、レベッカがそんな事を言い出した。

 合宿。それはスポーツの部活ではお決まりのイベントである。それを考えると、ゾイド部であっても可笑しくない。

 

「合宿って言っても、夏休みはまだですよ?」

「授業は免除して貰えるんでしょ?だったらいいじゃない。心配しなくてもあっちでも勉強はして貰うから」

 

 授業の遅れをカバーして貰えるとはいえ、教師が言うにはいささか不適切な説得内容である。しかし、タスクは敢えてツッコミは入れなかった。タスクはまあまあ空気の読める男なのだ。

 

「でも、僕達がいない間学校は誰が守るんですか?合宿に行ってる間にアルバ校やヴィーダ校が攻めてきたらどうにもできませんよ?」

「そこはグァンマ学園が守ってくれるわよ、なんせ同盟結んでるんだから」

「あ、そうでしたね」

 

 そういやそうだったと、タスクはミゾレ・テンゲンの甘い香水の香りと一緒に思い出した。

 それまでは基本タスクとソニックレイダーによるワンオペが基本だったが、これからはグァンマ校のゾイド部隊にも頼る事ができるのだ。

 三高校の内の一角であり、ミゾレとガトリングフォックス・ミツネもいると考えると、心配事は無い。

 

「合宿、かぁ………」

 

 そして、タスクは考える。

 自分はファングとノワールライガーに負けた。徹底的に、操縦者(ライダー)としての腕の差を示されて負けた。それはどう言い訳しようと揺るぎない事実である。

 そしてタスクの中には炎のように燃え上がる闘志も生まれていた。圧倒的な敵、ライバルに出会ったがゆえに生まれた、勝ちたいという闘争心である。

 そして、次ファングとノワールライガーに負けない為にはどうすればいいか?答えは簡単。強くなればいいのである。ゾイドもそうだが、自分自身も。

 

「ソニックレイダーの強化改造の為にある場所に行かなくちゃならなくてね、ついでにそこで私達も合宿しようって思ったのよ」

 

 そんなレベッカの発言からしても、今から行くのはゾイド部としての強化合宿以外の何でもないとタスクは認識する。

 そうだ、今の自分に必要なのは強さ。ソニックレイダーも強くなるというのだから、操縦者(ライダー)である自分も強くならなくてはならない。

 

「………いいですね、行きましょう」

 

 僕はあの人(ファング)に勝ちたい。だからこの夏で、必ず強くなってやる。

 そう決意したタスクに、レベッカの誘いを断る選択肢など無かった。

 

 

 ***

 

 

 一方、グァンマ学園。

 タルデ校との同盟により男日照りが解消され、生徒達が青春と性春を謳歌する中、ゾイド部合宿の話はこの学校の姫たるミゾレ・テンゲンの耳にも飛び込んできた。

 

「はぁ………合宿?」

「はい。顧問の女教師とタスク・ダイワの二人きりだそうです」

「ふぅん………ええんとちゃうん?」

 

 しかし、ミゾレは冷静であった。

 流石はグァンマ学園のお姉様。狙っている男がそんな状況になっても冷静沈着でいられるもの。ふふんと澄ました顔でティーカップに淹れた紅茶を嗜んでいる。

 

「………所で、今年の水着のトレンドってどんなんがあったかいの?」

「めっちゃ意識してるじゃないですか」

 

 訂正、めっちゃ気にしていました。

 よく見れば空いた方の手には携帯電話(スマートフォン)を握り、高速タイピングで某フリマアプリや某密林で水着を検索している。

 

「というか、お姉様も参加するつもりですか?」

「んー?当たり前やん。合宿に水着で狭まる男と女………これ以上無いほどの憧れのシチュエーションやん?」

「まあそれはそうですけど………」

 

 ミゾレの脳内では既に、合宿で互いの操縦者(ライダー)の腕を高め合う自分とタスク、そしてタスクを優しくリードする自分のイメージも出来上がっていた。

 無論その先、大自然の中での開放感溢れる「その先」を経て、身も心も一つに混ざり合う二人の姿も。

 ………しかし、その為にはどうしても邪魔な存在が一つあった。それは。

 

「それに合宿にはあの乳デカ顧問もおるやろうし、ウチもウカウカしてられへんのよ、フフフフ………」

「乳デカて………」

 

 完全にミゾレは恋敵と認識したレベッカへの対抗心をむき出しにしていた。もう、その闘争心のオーラが視認できそうな程に。

 その理由がスマートでフラットな自身の体形とは真逆のボリューミーなレベッカの体形に対する妬みと嫉みと危険視から来るのは見るに明らかであった。

 

「でも、先生と生徒ですよ?男子争奪戦のライバルになるかどうかは、その、コンプラ的に………」

「甘いなぁ、確かに先生と生徒がそういう関係になるのは有り得へん言うても、普段からデカ乳に見慣れたせいでウチみたいな体型には見向きもせんくなるって事もあり得るんどすえ?」

「性癖を歪まされるって事ですね、なるほど………」

 

 そんな事を話しながら水着のカタログをスクロールして眺めるミゾレ。その時、教室のドアが勢いよく開く。

 クラスの視線が集中する中そこに立っていたのは、ミゾレの側近の女子生徒の一人であり、見開いた目と荒らげた息という文字通り「血相を変えた」顔でそこに居た。

 

「お姉様大変です!アルバ校で動きが!!」

「………なんやて?」

 

 ミゾレは携帯の電源を落とした。一夏のアバンチュールは惜しかったが、そんな場合では無くなったからだ。

 

 

 ***

 

 

 大自然の谷間を縫うように、県境にかけられた高架橋の上を走る高速道路。

 長距離移動をスムーズに行う為の人類の叡智が生み出したものの一つであるが、残念ながらそれは使う者が愚かである事を想定はしていない。

 

「オラオラどけどけぇ!!」

 

 一台の改造自動車が、猛スピードで道路上を疾走していた。

 改造自動車に乗る男の運転は危険そのものであり、その外見もまた危険な運転を反映したかのようにガラが悪い。

 

「へっ、俺が一番(はえ)えんだよ!」

 

 危険運転で迫る改造自動車を慌てて避ける他の車を前に、男はいい気になって煽り散らかしている。

 地方故に警察の動きも遅いこの高速道路において男を止めるものはおらず、まさに我が物顔で車を走らせていた。

 

「………ん?」

 

 その時、ふと視界が僅かに暗くなった。男と男の改造自動車の上に影が落ちたのだ。

 飛行機か?とも思ったが、影が落ちるほどの低空飛行を行うなど考えられない。

 

「何だ………うわっ!?」

 

 一体何か?と男は改造自動車から身を乗り出して空を見た。そして広がる光景に驚愕した。

 

 キュオオン!

 ギャオッ!

 

 ゾイドであった。

 青いスナイプテラが、同じく青いギルラプターのようなゾイドを掴んで空を飛んでいた。

 まさかゾイドが飛んでいると思わなかった男は、その驚愕の光景に気を取られ、カーブが前に迫っている事に気付かなかった。

 

「えっ、あ、うわああっ!!」

 

 こうして危険運転で周囲に迷惑と恐怖を与え続けた男はカーブを曲がりきれず、高架橋を突き破って山の中へと車ごと飛び込むという自業自得の末路を遂げたのであった。

 さて、そんな事などいざ知らずの上空のゾイド二体はというと………。

 

「………飛行機とまでは言いませんけど、せめて運搬用車両とか用意できなかったんですか先生………」

 ギャウ!

「空の旅も悪くないでしょ?渋滞も赤信号も無いんだから!」

 キュオ!

 

 そうは言うが、実際はソニックレイダーの修理による予算不足という原因でする事になった快適でない空の旅を楽しむ二体のゾイド………

 ………こと、タスクとソニックレイダー、レベッカとスナイプテラのゾイド部のご一行。

 部の特権で学校を休ませて貰った彼らは、ある場所を目指し、スナイプテラにソニックレイダーを掴ませて悠々と空を跳んでいる。

 ちなみに、航空法に則って決められた法の範囲内でのフライトの為、この行為が法に引っかかる事はない。

 

「それにしても凄いパワーですね、ソニックレイダーを担いで飛んでるのに全く疲れてない」

「ふふん♪私のプテちゃんも凄いでしょ?」

 キュオッ!

 

 誇らしげに唸るスナイプテラ。そういえばこのスナイプテラは重武装仕様でもケロッとしていたと、タスクは思い出していた。

 

「あっ、見えてきたわよ!」

 

 そんな事を考えながら空の旅を続けていると、やがて彼らの目的の場所が見えてきた。

 そこは、本島から離れた場所にある所謂「埋め立て地」と呼ばれる人工の島であり、陸地とは橋で繋がっていた。

 しかし、その外観は某恐竜テーマパークを思わせる自然あふれる孤島であり、管理センターやお土産屋といった施設以外は太古の世界を思わせる野生の世界だ。

 もっとも、そこに居るのは恐竜ではなく、メカ生体ゾイドであるが。

 

「ここが………」

「ええ、国立ゾイドセンター。私達の合宿先よ」

 

 国立ゾイドセンター、名を「ハーマン島」。

 そこは、この国のゾイド研究の最先端を担う巨大研究施設である。

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