ゾイドワイルドヴァーサス‐不良がゾイドで抗争する学園都市で自分達を守るためにゾイドに乗る事を選んだ陰キャ学生の話   作:アイアイホイホイおさるさん

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#19

 ハーマン島。

 国立ゾイドセンターが設置されたそこは、ゾイドの研究調査を行う施設であると同時に、その保護といった活動も行う為の人工の島である。

 動物で言う所の自然公園だとか動物園に近い施設であり、地下や一部が地上に出た管理施設以外は、ゾイドの生息していた自然環境が再現されている。

 またヘリック大学やZCF(ゾイドコマンドフォース)をはじめとした様々な研究機関・組織とも協力関係にある、ゾイド研究の最先端である。

 また施設の一部はゾイドとの触れ合いや大自然の中でのキャンプを楽しむためのレジャー施設として開放されており、そういった目的での使用客も多い。

 

「あっ、あいつは………」

 

 受付で施設の使用許可を終えたタスクは、早速施設に入っていく。そして島の森の中に懐かしい顔を見つけた。

 ガサガサと森をかき分けて緑色の甲羅が顔を出す。ガノンタスだ。が、ただのガノンタスではない。

 

「お前もしかして、グスタフ公園に居たガノンタスか?」

 ギュウウッ!

 

 それは、ゾイド部が本格的に活動を始めた時に保護したガノンタスであった。

 

「やっぱり!はは、元気にしてたか?」

 ギュウッ!

 

 グスタフ公園に迷い込んでいた所を更にヴィーダ校に戦力として狙われたが、ゾイド部の活躍により保護された個体だ。

 発見当初は飲まず食わずで弱っていたが、大自然の中でのびのびと健康に暮らしているようだ。

 

「………っと、そんな事をしてる場合じゃなかった」

 

 ガノンタスが無事で安心したタスクだが、ハーマン島に来たのはそんな同窓会をする為ではないと、気を引き締める。

 これから、自分は強くならなくてはならないのだと。

 

 ………ギャウ

 

 そんなタスクを、ソニックレイダーとレベッカは心配そうに見守っていた。

 

 

 ***

 

 

 ソニックレイダーとスナイプテラは、地下の研究施設に預けられる事になった。そこで、様々な検査をした後に強化改造が施されるとの事。

 施設にはプロのエンジニアが揃っており、ソニックレイダーの強化は任せていいだろう。後は。

 

「ゾイドの事は専門家に任せて、私達は私達のやるべき事をしましょう」

「はっ、はい!レベッカ先生!!」

 

 相棒ゾイドと離れ、今タスクが立っているのはそのハーマン島に広がる大自然の世界。そして隣に立つのはレベッカ。

 川沿いの水源が確保しやすい場所に、施設で借りたテント一式を持って二人立っていた。

 これから始まるのは、きっと苛烈な特訓だとタスクは覚悟する。どれ程の試練が待ち受けていようとタスクは乗り越える覚悟をしていた。

 

「じゃあ、まずは薪を集めましょうか」

「はっ、はい!」

「いい?乾いた枯れ木を集めて来るのよ?生木だと煙出ちゃうから」

 

 そして最初に命じられたのは薪集め。

 なるほど、大自然の中でのサバイバルをやるのだとタスクは解釈した。なるほど、軍の訓練においてもサバイバルは鉄板である。

 

「じゃあ行ってきます!」

「あまり森の奥へは行かないようにね、強力なゾイドが居たりするからぁ!」

 

 タスクは薪を集めるための籠を背負うと、意気揚々と森の中に入って行った。そして歩きながら地面を注意深く観察し、良さそうな枝や木を探していく。

 

「はっ、あった……!でももっと大きいのが良いかな?……ん、あれは」

 

 その時、タスクの耳が地面に落ちている小枝とは別の音を拾う。それは何か、重たい物が歩いてくる足音だった。

 

「もしかして、大型種のゾイドか!?」

 

 タスクは慌てて身を隠す。このハーマン島には危険な猛獣種のゾイドも居るらしい。もしも襲われたらひとたまりもない。

 そう思ってタスクは身を隠しながら、音の主が何なのか確認しようとする。すると現れたのは。

 

 グルルッ!

「ファ、ファングタイガー!?」

 

 サーベルタイガー型ゾイド・ファングタイガーだ。

 レベッカの警告していた肉食獣型のゾイド。それが、森の茂みを掻き分けて、鋭い牙をギラリと光らせて姿を現したのだ。

 

 ………グルッ

「へっ?」

 

 襲われる。そう思った直後、ファングタイガーは一礼するように唸ると、そのまま走り去って行った。

 見れば、その先には同じファングタイガーがもう二体居た。最初のファングタイガーは合流すると、そのまま走り去ってゆく。

 その場には、呆然と立ち尽くすタスクのみが残された。

 

「三体………もしかして、あの時のファングタイガーだったりして………なんてね」

 

 後で知った事だが、タスクのこの予想は当たっていた。あのファングタイガー達は、かつてイチトラ達が乗ってタスクと交戦した際に使っていた個体達であった。

 彼らもまた、このハーマン島の大自然の中でのびのびと生活していたのだ。が、今のタスクにとってそれは重要ではない。何故なら。

 

「しめたっ!この木は薪に使えそうだぞ」

 

 ファングタイガーが走り去った後に、枯れ木を見つけたからだ。程よく乾いており、薪として使うなら丁度いい。

 

「へへっ、幸先いいぞ………!」

 

 タスクは迷うことなく、転がっている枯れ木を籠に入れてゆく。しばらくすると籠はすぐ満杯になり、タスクは悠々とレベッカの元へと帰っていった。

 その背後で、密かに枯れ木を集めてきていた三体のファングタイガーは、タスクが無事に森を出られるまで見守っていたという。

 

「先生ー!薪集めてきましたー!」

「サンキュー、タスク君!」

 

 タスクが森から戻ってくると、レベッカはテントを組み立てている最中であった。彼女は一人で作業していた筈だが、野営用の簡易テントがもう立ってしまっている。

 タスクは、女性一人で器用なものだと感心してしまう。ゾイド部顧問を引き受け、スナイプテラを個人所有してるだけはあり、そういった知識も明るいのだろう。

 

「次は何をしたらいいですか?僕なんだってします!」

 

 さあ次のサバイバル特訓は何だ?とタスクはやる気を出している。どんな試練を受けようと、強くなれるなら喜んで引き受けるつもりでいた。

 そんな修行モードのタスクに対して、レベッカが下した判断は。

 

「はい」

「………釣り竿?」

 

 釣り竿と釣り針、バケツ、餌の虫の入ったケース。施設でレンタルしている川釣り一式セットである。

 

「次はお昼ご飯確保ミッションよ、私も一緒にやるわ。どう?」

「はい、よろこんで!」

 

 なるほど、サバイバルなら食料確保は必須。そう考えたタスクは、レベッカと並んで川辺に釣り糸を垂らす。

 タスクは真剣な目付きで、川の流れを観察しながら待った。

 

「………」

「………」

 

 時は流れる。しかし魚は来ない。何も起こらない。

 

「………」

「………」

 

 タスクはまだ諦めない。根気よくチャンスを待っているのだ。たとえ何度空振りしようと、必ずヒットさせて見せると奮起する。

 

「………」

「………」

 

 しかし、まだ何も起こらない。何が起こる気配もしない。だが、タスクは耐える。レベッカからの修行に、自分は耐えなければいけないのだと。

 

(あれ………?)

 

 その時、タスクの脳裏にひとつの疑問が浮かび上がる。

 

(もしかして僕、今………何もしてない?)

 

 そう。タスクは今、釣りをしているだけである。それも上手くいってないから何もしていない。

 その事実に気付いてしまうと、タスクは焦りを感じてしまう。自分が強くなるためにやるべきことを、一切こなせていないのではないかと。

 その直後である。

 

「はい、獲れた!」

「あっ!」

 

 レベッカが一気に釣り竿を引き上げた。空中に舞う釣り糸の先には、大きなニジマスが一匹食いついて、太陽光を身体で反射させて光っていた。

 

「ほら、タスク君も!」

「あっ………はい!」

 

 タスクの方も、浮きが水中に引っ張られていた。魚が掛かったのだ。

 水中に引く魚の力を感じながらリールを引き上げると、レベッカが捕まえた個体よりは小さかったが、それなりに大きさのあるニジマスが一匹釣れた。

 

「やった、釣れた………!」

「お昼ご飯までにはもう少し欲しいわね、もうちょっと頑張るわよ」

「はい!先生!」

 

 達成感と喜びで、タスクの頬が緩んだ。そんなタスクを見ていると、レベッカも思わず笑顔になってしまう。

 楽しそうで良かった。と、レベッカが考えているとは露知らず、タスクは次の魚を求めて再度釣り糸を垂らした。

 そこからは、釣りが波に乗ったらしく次々とタスクもレベッカも釣果をあげていく。

 

「はい、また釣れた!」

「やった!大きいの来ましたよ!」

「ふふっ、やるわねタスク君!」

 

 レベッカは大喜びである。タスクはそんなレベッカを見て少し安心する。

 ………しかし、こうも連続で獲れるものなのだろうか?などと考えていると、気がつけばバケツはニジマスで一杯になっていた。

 

「これなら大分お腹も膨れそうね、よくやったわタスク君」

「はい、ありがとうございます!」

 

 釣りも成功し、食料確保というサバイバル第二関門もクリアした。だが、当然ながらこれで終わりではない。

 魚を釣ったならそれを食べられるよう調理しなくてはならないのだ。タスクもレベッカも野生児ではないので、生のままバリバリ行くわけにはいかない。

 

「じゃあ、この焚き木台の上に木を組んでいくわよ」

「地面に直接じゃないんですか?」

「最近はそういうの色々と厳しいのよ」

 

 そう言ってレベッカは、用意した金属製の焚き木台の上に、着火剤となる杉の葉と小さな枯れ木を置いてゆく。

 そしてやはりと言うか、慣れた手つきで手際がいい。

 あっと言う間に程よい隙間と密度で木を組み終えると、杉の葉に火を付けてみせた。パチパチと火が燃え上がり、枯れ木に燃え移ってゆく。

 

「じゃあ私は魚を調理してくるから、タスク君には火の番を頼めるかしら?」

「はい、任せてください先生!」

 

 魚の入ったバケツを持ち、テントの近くに向かうレベッカ。調理器具一式もレンタルして貰っているのだ。

 残されたタスクは、火が消えないよう見守りながら、必要があれば薪を焚べて火を「育てて」ゆく。幸い取ってきた薪は多く、足りなくなるような事は無いように思えた。

 何もかもが順調に進んでいた、その時。

 

「うん?」

 

 川を挟んでの向こう岸。森の中に人影を見つけた。

 見れば、それは父親と母親、そして幼い子供が二人という家族連れである。キャンプ用具を背負い、和気あいあいと話しながら歩いている。

 それ自体は別にどうという事はない。そもそもこのハーマン島は、キャンプ場としても使われているのだから。

 しかし、だからこそ、タスクは不安になる。

 

「………これ、本当に強化合宿だよな………?」

 

 勝手に、これがサバイバル訓練だと脳内補完していたタスクであったが、同じ場所でレジャーを楽しむ家族連れという「日常」を見ると、目を逸らしていた疑念がふと過ぎる。

 そもそもこれ、訓練どころか「強化」合宿でも何でも無いのではないか?と。

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