ゾイドワイルドヴァーサス‐不良がゾイドで抗争する学園都市で自分達を守るためにゾイドに乗る事を選んだ陰キャ学生の話 作:アイアイホイホイおさるさん
#21
◆◇◆これまでのあらすじ◆◇◆
ノワールライガーに敗北して以来、強さを求めて迷うタスク。そんなタスクに、レベッカはゾイド部合宿を持ちかける。
こうしてゾイド部一行は、国立ゾイドセンターのある人工島・ハーマン島へやってきた。
相棒ゾイドを島のエンジニアに任せ、タスクとレベッカは大自然の中でのサバイバル訓練………ではなく、釣りに川下り、バーベキューといった自然を堪能する。
焚き木を囲み、自身の持つ強さへの渇望を明かすタスク。そんなタスクにレベッカは告げる。ゾイド部本来の目的を忘れていないか?と。
守るための戦い。その、ゾイド部の本来の意義を思い出したタスクは、レベッカと花火を楽しみ、一足早い夏休みを堪能したのであった!
一方、ファングはヴィーダ校へ向けて単身襲撃を仕掛けていた………
***
外から見れば某ジュラシックなパークを彷彿とさせるハーマン島の自然豊かな姿は、あくまで海上に出ているゾイド保護区でしかない。
その真髄は島の地下、海よりも深く広がる島の管理施設にある。
かつての戦争の時代に共和国のゾイド工場だったそこは、現在は国立ゾイドセンターの本体として、島のゾイド達を管理しつつ、最先端の研究が行われている。
そして民間の
「やあ、君があのギルラプター………ソニックレイダーの
「はじめまして、タスク・ダイワです」
「私は「パーク・カタヤマ」、ここの
そんな研究施設を訪れたゾイド部一行は、ソニックレイダーの強化改造をしてくれるという科学者「パーク・カタヤマ」に会っていた。
白衣にメガネのアジア系男性であり、その雰囲気から一目で「デキる男」であるとタスクは勘で判断した。
「その事なんですけど………」
「皆まで言わなくていい、あの荷電粒子砲を持ったライガーに対抗する必要があるんだろう?」
「ッ!!」
カタヤマのメガネが、照明を反射してキラリと光る。やはり、彼はできる男らしい。タスクが何を求めているか、既に知っているようだ。
「ソニックレイダーの
それでいて、ノワールライガーの存在はカタヤマから見ても驚くべき存在らしい。
普通、荷電粒子砲のような大規模な装備は、その扱うエネルギー量による負担から、ティラノサウルス型のような大型ゾイドにしか積めないというのが一般論だ。
「しかし、あれだけの威力を搭載して、ゾイドにかかる負担もかなりのもの………実現出来ているのはやはり、あのデスブラストが理由だろうね」
ノワールライガーはライオン型。中型だ。そのサイズにまでシステムを縮小しておきながら、通常と変わらない威力を保持している。
その秘密はやはり、デスブラストによるもの。というのがカタヤマの見解である。
「知っているんですか?あのデスブラストについて」
「ああ、古い文献に記録があったよ………ここから離れたワイルド大陸という場所を起源とする技術らしい」
ワイルド大陸。ファングの実家でもあるゼネバステックの由来でもある場所。その名を聞き、タスクもレベッカも「やはりか」と表情を強張らせる。
「デスブラストはワイルドブラストとは似て非なるものだ。ゾイドの意思やスペックを無視して、通常を上回るパワーを無理やり引き出す。当然、ゾイドにかかる負担もかなりのものになる」
「そんな、それじゃあゾイドは………!」
「ああ、長くは持たないだろうね」
「酷い………!」
レベッカは、タスクの手が震えているのを見た。そこには、ゾイド好きとしての憤りが確かにあった。
そしてレベッカもまた、静かに怒りを燃やしている。当然だ、デスブラストの詳細を聞いて怒りを燃やさないゾイド好きはいないだろう。
「デスブラストにより威力を上乗せされた荷電粒子砲………結論から言うとこれを防ぐのは無理だ。正面から受ければどんな装甲だろうと無事では済まない」
「じゃあ、とうしたら………」
「最後まで聞きたまえ、何も対抗手段が無いとは言っていない」
ただでさえ協力無比な荷電粒子砲に、ゾイドの性能を限界まで無理やり引き出すデスブラストまで積んだノワールライガー。
そんな、どこにも隙のない布陣であるが、カタヤマは対抗する手段があると言う。
「簡単な事だ、撃たれる前に攻撃を仕掛ければいい」
「えっ………?」
「実物を見てもらえば話は早いな、ついてきてくれ」
そんな一見すると無茶苦茶な内容を提示したカタヤマは、タスク達を連れて施設の格納庫に向かう。
外部から預かったものや、島内で怪我や病気になった個体を治療のために格納する、ゾイド専用の格納庫。
いくつもある内の一つ、ソニックレイダーが格納され、今まさに強化カスタマイズを受けている最中の所に、タスクは連れてこられた。
「おおっ!これは………!」
そこには、調整の為に全身の至る所をコードに繋がれたソニックレイダーの姿。そんな大規模な調整が必要になった理由は、新たに取り付けられた新装備によるものだ。
「背中にはA-Z超電磁ブレード。以前よりスタビライザーの部分で格闘をしたという情報があったからね、思い切って本格的な近接戦闘武器にしてみたよ」
まず、背中から伸びたブレードスタビライザーの部分。これは切れ味はあってもあくまで高速戦闘のための
しかし、そこには銀色の刀のような明確な「刃」が翼のように伸び、照明を反射してキラリと光っている。
スタビライザー時点でもあった背中から伸びた骨格を駆使し、フレキシブルに可動。これによりあらゆる方向に刃を向け斬り裂く事ができる。
「そして、より高速が出せるよう背中にブースターを増設した。データ上の話だけど、最大加速時には時速305kmは出る計算だ」
そして背部ブースターユニットに新たに取り付けられた全天候型ハイパワーブースター。これは、主に高速戦闘ゾイドに着けられる、推進剤によりスピードを大幅に上げる装備だ。
これにより走行速度も大幅に上昇し、より素早い機動が可能になった。もっとも、操縦の難易度も大幅に上がっているだろうが。
「レーザーガンの威力も上げておいた。これで奴の懐に飛び込み、荷電粒子砲を撃たれる前にトドメを刺す!これが、私の提唱するノワールライガー攻略用カスタムだ」
「なんて滅茶苦茶な………!」
これがカタヤマの言う「撃たれる前に攻撃を仕掛ける」の正体。強力な武器を使われる前に、より素早いスピードで敵の懐に飛び込み、一撃を叩き込む速攻戦法。
攻撃は最大の防御という言葉を体現したようなカスタマイズであるが、レベッカの言う通りそれは無茶苦茶な戦術・戦法でもある。しかし。
「………そこまでしないと奴に対抗はできません」
「タスク君………」
「僕は戦いました、だから………わかるんです」
既にタスクの覚悟は決まっていた。
調整を続けるソニックレイダーを見上げるその瞳には、確固たる意志と燃えるような闘志が宿っている。炎のように熱く、氷のように冷静に。
***
ソニックレイダーの調整はその日の午後に終わる予定だ。その後ならし運転をし、ゾイドと
合宿も終わりが近づいている。タスク達は後片付けを済ませ、借りていたキャンプ道具一式を返すと、それまでの最後の思い出作りに島を巡っていた。
レジャー施設の一面を持つハーマン島には様々な遊びが揃っていた。屋外レストランに、ウォータースライダー付きのプール、ラプトールを使った山走り………
その一つ一つが、タスクが味わないと思っていた眩い夏の思い出として、
そして。
「いい景色ねぇ、タスク君」
「そうですね、先生」
昼食を島のジビエを使ったレストランで済ませたタスクとレベッカは、島を見渡せる山の上に来ていた。
そこには草原が広がり、どこまでも広がる青空には白い雲が浮かび、草原を駆け抜ける風がゾイドの咆哮を運んでくる。
「………タスク君何か考えてるでしょ」
「あっ、分かります?」
「ふふっ、タスク君はすぐ顔に出るからね、わかるわよ」
「あはは………」
雄大な大自然を前に物思いにふけるタスク。そんな彼を前に微笑ましく笑うレベッカ。
しかし、それはあの日の夜に抱いた強さへの渇望とは違った。曇りのない、澄んだ想いがそこにあった。
「………ソニックレイダーと、この先どうするかについて考えてたんです」
「この先?」
「ええ………将来の話、って言った感じの」
「ふうん………」
澄んだ青空の元でそんな将来の話を言い出したタスクを前に、レベッカはただ話を聴く姿勢を見せた。こんな青空の元でやる進路相談も、悪くないと。
「………僕もいつかは卒業して、学校を去る日が来ますよね」
「そうねぇ」
「その時なんですけど………なんというか、ソニックレイダーから降りるのが、何だか嫌だなって思っちゃって」
「あら、ゾイド部OBとして来てくれたりするの?」
「それも悪くないですけどね、ははは」
笑いながらタスクは、ソニックレイダーとの思い出を振り返っていた。
ゾイド部の発足。レベッカとの出会い。不良達との戦いの日々。初めての敗北………。
時間にするなら、たったの数ヶ月ほど。しかしタスクにはそれが遠い思い出のように映り、ソニックレイダーとも過去からの親友だったように思っていた。
「自分で思うんですけど………僕、ゾイドが好きなんだと思います」
「うんうん」
「それで………将来、具体的に何がどうとか分かりませんけど、ゾイドに関わる仕事がしたいなって思ったんです」
将来のビジョンとしては、大人の目線からすれば不鮮明この上ない意見だった。
しかし、確実にそこには信念に基づいた一本の線が走っている事は、タスクの戦いを見守り、時に共に戦場に立ったレベッカは知っていた。
「それでまた………この先も、ソニックレイダーと一緒に居たい」
風と雲と、青空と。雄大な大自然の中に、一人のゾイドを愛する