ゾイドワイルドヴァーサス‐不良がゾイドで抗争する学園都市で自分達を守るためにゾイドに乗る事を選んだ陰キャ学生の話   作:アイアイホイホイおさるさん

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#22

 その時であった。そんないい雰囲気を切り裂くように、レベッカの携帯(スマートフォン)がけたたましく鳴ったのは。

 

「………会長さんから?」

「えっ、ハイト会長?」

 

 問題は、その着信先である。緊急連絡先として設定した生徒会長ダイスケ・ハイトの名が、画面に大きく表示されていた。

 これは只事ではない。そう、タスクとレベッカは判断し、二人に聞こえるようスピーカーをONにして電話に出た。

 

「………もしもしレベッカ先生。タスク君もそこにいるね?」

「はい、会長」

「よかった、なら話は早い」

 

 スピーカー越しのハイトの声は、平然を保とうとはしているが若干の焦りと震えが感じ取れる。

 あの、切れ者生徒会長がこうまでなる。タスクはそれだけで、何か自分達にとってよくない事が起きている事を感じ取った。

 

「緊急事態だ………アルバ校が動いた」

「なんですって!?」

「グァンマ校からの確かな情報だ。奴等はヴィーダ校を制圧し、支配下に置いたらしい」

 

 ハイトが、ミゾレから聞いたという情報はこうだった。

 先の大規模戦闘以来、互いの戦力を大幅に消耗したアルバ校とヴィーダ校であったが、戦力の再建もままならない内にアルバ校が………

 

「それも、ファング一人で」

「一人で………!?」

 

 ………というよりかは、その総長たるファング・サイドワインドが、単身ヴィーダ校に対して攻撃を仕掛けたという。

 いくら打撃を受けたとはいえ、ファング一人でヴィーダ校に攻撃を仕掛けるなど目に見えた自殺行為。特攻・奇行ともいえるこの行動は、誰もが失敗すると思っていた。

 

「あり得ない話だが、ファング・サイドワインドはたった一人でヴィーダ校を壊滅させた。そして、たった一人でリヒト市の勢力図を大きく書き換えてしまった」

 

 だが、ファングはやり遂げた。

 己の操る黒いライガー・ノワールライガーの圧倒的な戦闘力により、ヴィーダ校の兵器ゾイド軍団を単身制圧。

 そしてヴィーダ校総番たるシロー・キタジマの操るクリムゾンホーンを撃破し、ついにヴィーダ校をその配下に置いたという。

 

「いや………奴ならやりかねません。まさか、本当にやるとは思ってませんでしたが………」

 

 タスクは驚いていたが、同時に納得もしているようであった。

 直接ファングと戦い、その強力無比さと内に秘めた狂気を一身に向けられた身だからこそ解ったのだろう。あいつならやりかねない、と。

 

「現在我が校も緊急警戒態勢にある。先生達(うえ)は学校の一時閉鎖も検討しているようだが………」

「意味ありませんよ、奴等のターゲットは生徒(ぼくたち)を含めた学校そのものです」

「ああ………そうだな」

 

 そして、こんな非常事態においても教師陣、いわゆる大人の対応というのは得策とは呼べない物だった。

 最初からそうであるが、ゾイドまで持ち出されているにも関わらず、生徒間のトラブルの延長線としてしか考えておらず、警察を呼ぶ素振りすら見せないのだ。

 ゼネバステックが背後にいる為とも言い訳はできたが、タスク達子供の目線からすればそれは無責任そのものであり、聞いたレベッカも呆れて頭を抱える程だ。

 

「何にせよ、勢力図が大きく崩れた今、何が起きてもおかしくない。ソニックレイダーの調整を手早く済ませて帰ってきて欲しいというのが、私から伝えたい事だ」

「ええ、善処します。会長も気をつけて」

「………頼むぞ、ゾイド部」

 

 電話が切られた。その場には変わらぬ静寂が広がっていたが、以前のような清々しさはもう無かった。

 事態は刻一刻と変動していたのだ。本来学校を守らなければならないゾイド部が、合宿で学校を空けている間に。

 

「………レベッカ先生」

「ええ、バケーションは終わりにしないとね」

 

 ならばゾイド部も急がなくてはならない。二人はソニックレイダーの元へと急ごうとした。だが、その時。

 

「先生あれ!」

「えっ!?」

 

 タスクが気づいた。山の上から見えたのだが、ハーマン島への正面ゲート方面で爆発が起き、煙が上がっていた。

 そう、事態は刻一刻と変動していたのだ。

 

 

 ***

 

 

 ハーマン島正面ゲートには、島を守る為の私設の防衛部隊が待機している。ゾイドの保護区域であるが故に、狙われる可能性は大いにあるからだ。

 だが幸運にも、これまで島に武装勢力の類が攻め入った事は無かった。日々のパトロールをするだけの日々が続く平和な物だった今回までは。

 

「A班応答しろ!何があった!?」

 

 正面ゲートを警備していた防衛部隊は、「ラプトリア」と呼ばれる、ラプトールの近縁種でありより強力なヴェロキラプトル型小型ゾイドを主力とする部隊であった。

 民間組織の戦力としては過剰なぐらいであったが、それでも今回襲ってきた「敵」は強大すぎた。

 

「ほっ、報告する!敵戦力はファングタイガー改が三機!繰り返す、敵戦力は………!」

「うるせえよ」

「ぎっ!!」

 

 半壊したラプトリアを、その黒い牙が噛み潰した。

 周囲には同じく破壊されたラプトリアの残骸が無残に転がり、正面ゲートを防衛していた私設防衛隊は、その黒いゾイドにより死屍累々の壊滅状態に追い込まれた。

 私設警備基準での過剰戦力では、その兵器ゾイドを止める事はできなかったのだ。

 コックピットに座るアルバ校三虎が一人・イチトラは、その圧倒的な力を前に笑いをこぼしていた。

 

「ハハハッ!いいもんだなぁ、兵器ゾイドってやつは!ヴィーダの連中はこんないい機体を使っていたのか!」

 グルガァアア!

 

 そのゾイド「ファングタイガー改」は、名前の通りファングタイガーをベースに兵器ゾイドとして改造を加えた機体で、色は黒く、真っ赤なZ-Oバイザーが目を覆っている。

 本来、兵器ゾイドはヴィーダ校の専売特許であった。だがヴィーダ校はアルバ校との勢力争いに負け、その傘下となった。

 これにより、アルバ校も兵器ゾイドの生産・運用が可能となってしまったのである。

 

 

 ***

 

 

「アルバ校のゾイド部隊が!?」

「ええ、奴ら自分でそう名乗ったらしいわ」

 

 ソニックレイダーの居る格納庫へ急ぎながら、タスクはレベッカが電話越しにここの職員から聞いた話を聞き、驚いた。

 今この国立ゾイドセンターに襲撃をしかけているのは、なんと先の話でも話題に出たアルバ校のゾイドとの事だ。

 タスクは連中の事はろくでなしだと思っていたが、まさか国の関わっている施設に襲撃を仕掛ける程だとは思っていなかった。これでは不良を通り越して立派なテロリストである。

 

「なんで不良がこんな所に襲撃を仕掛けて来るんですか!?」

「連中はヴィーダ校を吸収して気が大きくなったと考えたら、連中はこういう事をやるわ………!」

 

 古来より数多の政治や組織が狂気を見せてきたように、人間というのは集団になればなるほど気が大きくなり、暴走する。

 加えて、今のアルバ校はヴィーダ校を制圧した後であり、おまけに国際禁止兵器(かでんりゅうしほう)を持ったノワールライガーまでいる。

 勝利体験、超兵器、集団の増加、もはや役満である。これでは、自分達が国に喧嘩を売れるほど巨大な組織だと勘違いしてもおかしくない。

 

「おおよそ、より強大になる為にこの施設のゾイドを奪うつもりよ。ソニックレイダーも狙われるわ!早く回収しに向かわないと………!」

 

 各地で戦火が上がる中、タスクとレベッカは施設に続く大きな道に出る事が出来た。ここまで来ればあと少し。

 だがその時、彼等の前に立ち塞がるように黒い影が………三体いるファングタイガー改の内の一機が飛び出してきた。

 

「悪いが、テメエらを行かせるわけには行かねぇなあ!」

「その声………ミトラか!?」

「ハハッ!覚えていてくれるとは嬉しいなァ!!」

 

 ファングタイガー改の姿を見てまさかと思ったタスクであったが、やはり今回の襲撃を仕掛けたのは三虎(タイガース)であった。

 その内の一人であるミトラが、ファングタイガー改のコックピット越しに、生身のタスクとレベッカを見下ろしてニヤリと嗤う。

 

「テメエらタルデのゾイド部がここに居るのは事前に調査済みだったんだ!ここで会ったがなんとやら、この場で殺してやるよォー!」

「ゾイドで生身の人間の相手をするのか!?」

「ハッ!底辺が一丁前にほざいてんじゃねえ!テメエは大人しく殴られてりゃいいんだよ!」

 

 重ね重ね言うが、ミトラを含めた三虎は不良である。見下した相手なら何をしてもいいと考える、法や倫理観よりもその場のノリを優先し、簡単に人さえ殺す。そんな人種である。

 

「つーわけで死ねぇぇ!!」

 グルガァアアッ!!

 

 それがファングタイガー改という圧倒的な力を手にし、かつて自分に二度に渡り辛酸を舐めさせてきたタスクを前にして、手を出さずにいられる訳がなかった。

 だがファングタイガー改の鋭い牙が、生身のタスクを切り裂かんと迫った、その時である。

 

 ………グルガァッ!!

 グォルルッ!?

 

 突如、一閃が飛来した。鋭い頭突きの一撃が、ミトラのファングタイガー改を吹き飛ばした。

 

「なっ、何だ!?何だってんだよ!?」

 

 そしてミトラだけではない。タスクも、レベッカも、そこに現れた一体のゾイドを見て驚愕した。イエローの装甲、サーベルタイガーそのもののシルエット。

 それは紛れもなく、ヤツだった。

 

「ファングタイガー………!?」

 グルルルッ!!

 

 タスク達を守るように立っていたのは、改ではないありのままの姿のファングタイガーであった。

 ミトラのファングタイガー改を睨みつけ、牙を剥いて唸っていた。まるで、ここから先は通さないと言うかのように。

 

「お前………やっぱり、あの時のファングタイガーだったんだな………」

 ………グルッ!

 

 タスクが、そのファングタイガーがかつての主人と相対しているのだと確信した瞬間、それはタスクの方を見て短く唸った。

 俺に任せて先に行け。ファングタイガーが、その水色の瞳を光らせて語りかけていた。

 

「………行きましょう!レベッカ先生!」

「え、ええ!」

 

 タスクとレベッカは、施設に続く道を一心不乱に駆ける。

 すぐにでも追いかけたかったミトラだが、その先にはファングタイガーが門番として立ち塞がっていた。

 

「何だァ?こいつは、なんで操縦者(ライダー)のいない保護ゾイドが奴等の味方してんだ?え?」

 

 よもや、それが自分の乗り捨てたファングタイガーだとはミトラも思わなかった。ミトラがゾイドにかける感情など、その程度だった。

 だから、ミトラは厭わない。目の前のかつての愛機の命を奪う事さえも。

 

「まあいい、俺様の邪魔をしたんだ。タダで済むわけねぇよなぁ!!」

 ………グルガァアアアアッ!!

 

 そして、自我を抑制された兵器ゾイド・ファングタイガー改もまた、自分の"元"先輩ゾイドに牙を剥く事に対して、何の抵抗も持たなかった。

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