ゾイドワイルドヴァーサス‐不良がゾイドで抗争する学園都市で自分達を守るためにゾイドに乗る事を選んだ陰キャ学生の話 作:アイアイホイホイおさるさん
タスクは走った。レベッカも走った。そして飛び込むようにハーマン島・国立ゾイドセンター地下施設へと向かった。
当然であるが、そこはアルバ校の襲撃により大騒ぎになっていた。施設を利用していた客の避難や、保護しているゾイドがパニックに陥って暴れたりと、人が慌ただしく移動している。
その合間を縫うように、タスクとレベッカはソニックレイダーが居る場所へ………パーク・カタヤマのいる格納庫へと飛び込んだ。
「カタヤマ博士!」
「君達か!待っていたよ」
案の定、そこも研究員や技術者達が慌ただしく対応に追われていた。しかし、外とは少し事情が違っていた。
「君達のゾイド、ソニックレイダーは調整の為眠らせていたんだが………それがつい先程から急激に覚醒しているんだ」
「なんですって!?」
見れば、格納庫に固定されていたソニックレイダーが暴れ出し、拘束具をガンガンと叩いて逃げ出そうとしている。
緊急事態を知らせる警報がけたたましく響き、担当していた研究員達は、今まさに拘束を破壊しようとするソニックレイダーを前に成す術もなかった。
「………拘束を解いてやってください」
「何!?」
「大丈夫です、僕に任せてください」
しかし、タスクは冷静だった。ソニックレイダーが、巨大なゾイドが興奮状態で解き放たれようとしているにも関わらず。
当然、カタヤマとしてはそんな突拍子も無い皆を危険に晒すような提案は飲める訳がない。ダメだと言おうとした、その時。
「拘束具が破壊されるぞ!!」
研究員の一人が叫んだ。直後、バキバキという金属がひしゃげる音と火花が散り、ソニックレイダーを押さえていた拘束具が破壊される。
ヴェロキラプトル型中型ゾイド、それなりの大きさに獰猛さを兼ね備えたソニックレイダーが、格納庫の中に解き放たれてしまった。
「あっ、タスク君!」
そしてタスクは、暴れて拘束を解いたソニックレイダーのすぐ前に立っていた。
眼前には、興奮状態らしくグルグルと唸るソニックレイダー。通常なら誰しもが恐怖に固まる中、タスクは怯える様子すら見せず、じっとソニックレイダーを見上げている。
………ギャオオオッ!!
そして次の瞬間、ソニックレイダーは鋭い牙の並んだ口を開き、タスクに向かい迫る。
危ない、食われる。誰もがそう思い、目を覆った。そして。
………すとん………
1秒後。タスクは、ソニックレイダーの操縦席に座っていた。
結論から言うと、ソニックレイダーはタスクを食べなかった。首元をくわえ上げ、空中に投げて放り込む形で自分のコックピットへと乗せただけだった。
「………わかるよ、ソニックレイダー。僕を心配して、ここから出ようとしていたんだね?」
ギャウ
「ありがとう、本当に………」
まるで我が子を慈しむ母親がごとく、コックピットを優しく撫でるタスク。それに応えるようにソニックレイダーも短く唸った。
「………聞こえますか、カタヤマ博士。今からソニックレイダーで島を襲ってる奴らを制圧します。正面ゲートを開けてください!」
「………その様子だと暴走の心配は無さそうだな」
ソニックレイダーにもわかるのだ。タスクが今どうしたいか。今ここで自分がやるべき事は何かが。
「丁度いい、最終調整も兼ねて実戦テストを行う!だが無理はするな、君はあくまで民間協力者という立場だ」
「ありがとうございます!」
やがて、格納庫の正面ゲートがゆっくりと開く。
地上に出る道が開かれ、ソニックレイダーは自らを鼓舞するかのように大きく吠えた。
ギャオオオォーーーーッッ!!
巨大な足と鉤爪が大地を踏みしめて、新生した青き竜は新たな戦場へ向けて歩を進める。
目指すは、
***
グルガァッ………!
ファングタイガーが吹っ飛び、地面に叩きつけられる。
単騎で千体の敵を相手にするという強豪ゾイドがこうも一方的に嬲られる理由は、ひとえに「相手が悪い」からに他ならない。
「まったく手こずらせやがって!」
「わかんねーのか?改の分こっちが上なんだよ!」
「いい加減くたばれよ!ギャハハハハ!」
ミトラに加え、途中から合流したイチトラとフタトラのアルバ校
自分の上位互換を三体同時に相手をしているのだ。当然、不利なのはファングタイガーの方である。
グル………ガッ………!
しかし、全身の装甲にダメージが入った状態にも関わらず、ファングタイガーは尚も立ち上がり、牙を剥く。
ミトラ達が、相対しているのが自分を乗り捨てた相手だというのもあるが、一番の理由はそいつらから解き放ってくれた相手が、今自分の後ろにいるからである。
「だったら、俺トドメ行っちゃおうかなぁ〜?」
「ヒューッ!やっちゃってください!イチトラの兄貴!」
しかし、そんなファングタイガーの義理堅さも三虎には関係ないし、自分たちが元愛機にした仕打ちも、イチトラ達は既に忘れ去っていた。
今あるこの力に、ファングタイガー改の力に酔うイチトラは、操縦席のレバーを思い切り引っ張った。
「そぉら!
グルガァアッ!!
イチトラのファングタイガー改の背中に格納された、ジャックナイフのような二本の刃が前を向いた。
それは原型機であるファングタイガーにも搭載してある武装「ツインドファング」だ。
ヴィーダ校より齎された耐Bスーツを着る事により、イチトラ達もワイルドブラストの発動が可能となった事を、その鈍く光る刃が示している。
「ギャハハッ!これで終わりだ………」
その一撃が、自分を捨てた主人の刃が、無慈悲にもファングタイガーに突き立てられようとした、その刹那。
「………アッ!?」
「いっ、イチトラの兄貴ぃーッ!?」
閃光がファングタイガー改を吹き飛ばした。衝撃と共にビームが炸裂し、その黒いボディは無様にも地面を転がった。
明らかな不意打ち。それも飛び道具である。誰だ?何処から?周囲を見渡す三虎はついに、その主を見つけ出す。
「あっ!あそこ!」
「何処だ!?」
「あそこです!丘の上にゾイドがッ!!」
そう、それは丁度彼らの真上。丘の上から見下ろすように緑色の瞳を光らせ、先程撃ったレーザーガンの銃口を向けている。
青いボディはそのままに、銀に光る二振りの
「そ、ソニックレイダー!?」
「やっぱり出てきたか!」
そう、それはソニックレイダーだ。タスク・ダイワを乗せた、タルデ校ゾイド部所属の青いカスタムメイド・ギルラプターだ。
カタヤマ博士により宿敵ノワールライガーを討つべくパワーアップしたその姿は、Z-Oバイザーこそ無いものの、言うなれば「ソニックレイダー改」とでも言うべきか。
「よく頑張ったね、ファングタイガー。後は僕達に任せて」
ギャオッ!!
グルッ………
満身創痍のファングタイガーの前に颯爽と降り立ち、ソニックレイダーは
そんなヒロイックさの具現化たる登場を、何度も自分達に辛酸を舐めさせてきた相手がした事により、イチトラ、フタトラ、ミトラは完全にキレた。
「しゃしゃんじゃねえぞタルデのカスがァ!!フタトラァ!!ミトラァ!!こいつブッ殺すぞ!!」
「言われるまでもないぜイチトラの兄貴!!」
「俺達も
イチトラ機に続き、フタトラ、ミトラのファングタイガー改までもマシンブラストを発動した。二体の身体能力が大幅に向上し、背中のツインドファングが展開する。
グルガァアアアア!!
グルゥウウッ!!
ガァアアア!!
殺意と悪意を刃に乗せたファングタイガー改の群れが、獲物を狩る肉食獣がごとくソニックレイダーに向け殺到する。自分達は三体。逃れる術はないと三人は確信する。しかし。
………ギャオッ!
グルガァ!?
ソニックレイダーが消えた。飛び上がった。
先陣を切ったイチトラのファングタイガーが、何もない地面に向けツインドファングを空振る。
「避けただと!?何処へ行きやがった?!」
グルガァア!!
「ここだよッ!!」
ギャオオッ!!
瞬間、今度はフタトラのすぐ隣にソニックレイダーが現れた。そしてビームガンを一撃。
爆発が起き、ファングタイガー改が吹っ飛んだのを確認すると、再びソニックレイダーは飛び上がり、消える。
「なんだよ、何なんだよッ!?」
イチトラ、フタトラ、ミトラはパニックに陥った。
現れる、攻撃、消える。現れる、攻撃、消える。さながら忍者か軽業師が相手を翻弄するがごとく、ソニックレイダーはヒットアンドアウェイを繰り返している。
対するファングタイガー改達は、攻撃を一撃も当てる事ができず、一方的な戦況が続いていた。
「こっちは
イチトラは理解できなかった。ゾイドの性能ならこちらが勝っているハズで、こっちはワイルドブラストまでしていて、そもそも相手はタルデ校の陰キャが乗っている。
何もかもこちらが有利なハズだ。それなら、この状況は何だ?と。
「………わかってないな」
ギャオッ
分からないなら教えてやる。そう言うように、三体のファングタイガー改の頭上にソニックレイダーが現れた。そしてビームガンを向け、エネルギーを充填し、発射。
グルガァ!?
「ぎゃああっ!!」
まずはミトラのファングタイガー改がやられた。ビームガンの一撃によりツインドファングごと背部ユニットを破壊され、倒れる。
「ミトラ!?うわああっ!!」
「フタトラぁ!!」
次に、フタトラのファングタイガー改が同じようにやられた。あっという間に三虎の内二機が撃破され、残るイチトラのファングタイガー改のみになった。
そして、ズシン。と地鳴りがする。ソニックレイダーがファングタイガー改のすぐ隣に降り立った。
………何故、ここまでタスクが有利に立ち回れるのか?というのは、タスク本人が努力して強くなったからというのは勿論ある。
しかし一番の理由はやはり、イチトラ達のファンクタイガー改との………というよりは、ゾイド全般との関わり方の意識の問題だろう。
彼らはゾイドを力を振るう手段、言ってみれば喧嘩に使う凶器の延長線上としか考えて居なかった。役に立たないなら乗り換えるし、我が身可愛さに平気で乗り捨てるような。
だが、ゾイドは生き物だ。意思もあれば感情もある。
そんなゾイドと力を合わせ、想い合い、互いに高め合う。そうして、愛機ソニックレイダーの性能を十二分に引き出すタスクに勝てる道理など無かったのだ。
ギャオオッ!!
直後、ソニックレイダーの脚が。バネ状の内蔵機構により爆発的な瞬発力を生み出す脚から繰り出されるキックが、イチトラのファングタイガーに炸裂。
金属の砕ける鈍い音と共に、勢いよく吹っ飛ばされたファングタイガーが、近くに聳える山の斜面に激突した。
「あが………ッ!!」
直後、爆発するような衝撃を味わったイチトラの意識が途切れる。ファングタイガー改もまた、コンバットシステムの停止と共に、糸が切れたかのように倒れた。
「………ゾイドは心で乗るんだよ、心で」
そんな、昔のゾイド乗りが言ったらしい言葉を、タスクは伸びているイチトラに向けて投げかけてやった。
見れば、島の私設防衛隊のラプトリア隊がこちらに向かっているのが見えた。後は彼らに任せておけばいいだろう。
戦いは終わった。だが、あくまでこの場の戦いだけだ。
「………先生」
「聞こえてるわタスク君、ラプちゃんも一緒よ」
「なら、学校に戻りましょう」
「ええ!」
この戦いは、まだ始まったばかりである。先も言ったが、事態は刻一刻と変動しているのだ。
遠きリヒト市で待つ戦場を、生まれ変わったソニックレイダーの翠眼が見つめていた。
・今日のゾイド
ソニックレイダー改
分類:ディノニクス型
対ノワールライガー用にパーク・カタヤマ博士により強化カスタマイズを受けたソニックレイダーの姿。
A-Z超電磁ブレードと追加バーニアにより、相手が攻撃を仕掛けるより早く接近し、攻撃する速攻戦法を得意とする。
ワイルドブラストする事でブレードにエネルギーを纏わせて相手を斬り裂く「ナイト・オブ・ブレード」を発動する。