ゾイドワイルドヴァーサス‐不良がゾイドで抗争する学園都市で自分達を守るためにゾイドに乗る事を選んだ陰キャ学生の話   作:アイアイホイホイおさるさん

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第8章「またな、相棒〜青春と空とゾイドと〜」
#24


 ◆◇◆これまでのあらすじ◆◇◆

 ヴィーダ校を傘下に置いた事で肥大化・増長したアルバ校は、因縁の相手であるタスクの抹殺を兼ねて、ハーマン島国立ゾイドセンターにイチトラ達三虎(タイガース)を送り込む。

 絶体絶命に陥ったタスクを、かつて三虎が乗っていたファングタイガーが救う。しかし、三虎の乗るファングタイガー改の前に追い詰められるファングタイガー。

 そこに、パワーアップを果たしたソニックレイダーが助けに現れた!

 性能頼りで戦う三虎は、もはや、幾度もの戦いを経てゾイドと絆を育み成長したタスクの相手ではなかった。

 そしてソニックレイダーはファングタイガー改を見事撃破!しかし、最大の決戦はすぐ近くへと迫っていたのであった!

 

 

 ***

 

 

 ダイスケ・ハイトは、生徒会室の机に座り深くため息をついた。

 こんな事をしている場合ではない事ぐらいハイト自身も解っている。

 ヴィーダ校を撃破し、勢力を拡大したアルバ校が今すぐにでもこの学校に攻め込んでくるかも知れない上に、頼みの綱のゾイド部は今この学校に居ないのだ。

 

「本当なら、今すぐにでも全校生徒を避難させたい気分だよ………」

 

 ゴクリと麦茶を飲みながら、不気味な程に青い青空に向けて呟いた。

 その想いはハイト一人のものでは無く、タルデ高校に通う全校生徒は、本当なら今すぐにでもここから逃げたいと思っていた。

 しかし、彼らは今日も変わらず学校に通い、校舎で授業が終わるまでを過ごしている。危機が迫っているにも関わらずだ。

 

「こういう時、学生という身分の不便さと大人の無責任さを嫌でも感じるよ………」

 

 理由は二つある。一つは彼らが学生である事。もう一つは、この学校の教師達………つまる所の大人が、この事態を生徒間トラブルの延長線としてしか考えていなかったからだ。

 地震や台風じゃないんだから学校に来い、というのがこの学校の大人達の、アルバ校という危機に対する返答であった。

 そも、ゾイド部を立ち上げた当時から危機感というのがまるでなく、生徒をわざとかと言う程危険に晒していた大人達であったが、まさかここまでとはハイトも思わなかった。

 

「せめて………ゾイド部が帰ってくるまで何も起きなければいいが………」

 

 そんな平和ボケした大人達に代わり、全校生徒の身の安全を案じるハイトの切なる願いであるが、それを引き裂くように生徒会室の電話がプルルルと鳴った。

 ハイトは、嫌な予感しかしなかった。こういう時の嫌な予感というのは当たるものだから。

 しかし無視する訳にもいかず、どうか何もありませんようにと念じながら、ハイトは電話を取る。

 

「………もしもし?」

「もしもし、会長さんどすか?」

 

 電話の主は、この学校を同盟を結んでいるグァンマ学園を率いる"お姉様"こと、ミゾレ・テンゲンからだった。

 いつも飄々とした態度の彼女であるが、電話の向こうから聞こえる彼女の声には一切のおふざけはなかった。

 

「今すぐ、全校生徒を避難さしておくれやす。アルバ高校のゾイド部隊が、そっちに向かってますえ」

「………わかった、先生方に呼びかけてみる」

 

 こんな時に何を言っているのだという事は、ハイト自身が一番言いたかった。今更呼びかけた所で遅いという事も解っていた。

 しかし、生徒会長にアニメや漫画のような権限が無い以上、先生の判断を仰いでからでないと何もできないのもまた事実。そして、その先生方も的確な判断は望めない。

 

「………お互い、苦労しはりますなぁ」

 

 そう言い残して、電話は切られた。京言葉らしい皮肉と同時に、一種の同情や哀れみも込められているように感じた。

 そんな言葉を投げかけられたハイトは、自分の今の気持ちを「惨め」と認識した。いくら生徒を守るために奔走したとて、自分は所詮は「子供」なのだと。

 

「………始まったか」

 

 遠くで、爆発と光が見えた。地理知識に照らし合わせてそこがアルバ高校のある方角である事を考えると、それが何を意味するか解らないハイトではない。

 少し思い詰めた後、ハイトは駆け出した。無駄だと分かっていようが、自分はやらなければならないと思ったからだ。

 

 

 ***

 

 

 グァンマ校とタルデ校の同盟が締結した事により、タルデ校の周囲にはグァンマ校のゾイド部隊による防衛線が敷かれていた。

 ここにアルバ校やヴィーダ校のゾイドが踏み込めば、専用の金属探知機により直ちにグァンマ校に連絡が行き、防衛部隊が出動する手筈になっている。

 今回も、防衛線に敵対校のゾイドが踏み入った事により、戦いは始まった。

 

「第3防衛ライン、もう限界です!」

「駄目ッ!数が多すぎるわ!」

 

 問題は、相手の数と質であった。

 そこに侵入したのはアルバ校の部隊である。しかし、いつものちょっかいを出すような感覚で来る、一個小隊レベルの戦力ではない。

 街を埋め尽くすようなラプトールとグソックによる小型ゾイドの大群。それと、何機もの中型ゾイドの軍団。

 そう、軍団だ。ヴィーダ校を支配下に置いた事で実現したゾイド大隊レベルの戦力が、タルデ校に向かっていた。

 

「こちら第8小隊!もう持たない!」

「援軍は!援軍はまだなの!?」

 

 それはもはや、不良校の不良集団を通り越して一つの国家の軍隊レベルの勢力であった。

 グァンマ校サイドも事態を重く見て、戦力を次々と投入している。しかし、相手は多すぎた。

 スコーピアを中心とする小型ゾイドで戦力を構成していたグァンマ校側は徐々に追い詰められ、いよいよ防衛線は破られようとしていた。

 

「進化解放………エヴォブラストぉ!!」

 クォオン!!

 

 ミゾレを乗せたガトリングフォックス・ミツネが背中のガトリング砲と全身のコンパクトエレクトリックキャノンを放ち、敵ゾイド部隊を圧倒する。

 撒き散らされた弾丸により、ラプトールとグソックを数十体撃破した。が、それでも戦力差は圧倒的が過ぎた。

 

「チッ、撃っても撃ってもキリが無いどすな………」

 

 目の前には、相も変わらず大地を埋め尽くすアルバ校のゾイド軍団。

 ラプトール、グソック、キャノンブル、ガブリゲーター、ステゴゲーゼ、ナックルコング、ディメパルサー………もうミゾレは、相手を認識して数える事すら面倒になっていた。

 

 クゥン………

「よしよし、堪忍なミツネ………辛いやろうけど、もうちょい頑張ってな」

 

 ミツネフォックスも、連戦が続き限界が近づいていた。それでも、敵は何百とこちらに向かってきており、一休みすら許してくれそうにない。

 さてどうするか?ミゾレの脳裏に、とりあえずこの場を切り抜けるための作戦が練られようとしたその時、飛来した弾丸が思考を邪魔した。

 

 クォン!!

「なんやっ!?」

 

 寸是で避けたミツネフォックスは見た。自らに向け迫る黒い刃を。

 そして降り立ったのは、忘れるはずもない。あの黒い豹型ゾイド・ドライパンサーである。

 

「ミゾレぇ!!久しぶりやのぅワレェ!!」

 フシャアア!!

 

 案の定、コックピットに座っていたヒコマロ・ウメオがミゾレに向けて吠える。

 ………そう、ヴィーダ校はアルバ校との抗争に負け、その支配下となった。なら、ヴィーダ校の生徒とゾイドが戦力として徴収されていてもおかしくない。

 そして連戦で疲弊している所に不愉快なダミ声が聞こえてきて、ミゾレも流石にあからさまに顔をしかめた。

 

「またあんさんかいな!ほんま懲りへんどすなぁ?」

「じゃかあしいっ!!ワシに恥かかした事を後悔させたるわワレェッ!!」

 

 そしてウメオは相変わらず、男らしいのは見た目だけの女々しい男であった。

 仕えるべき総番(キタジマ)が倒され、敵であるアルバ校の軍門に下っても尚、やる事は自分をフッたミゾレに対する的外れな仕返しであった。

 あるいは、そんな生き恥にまみれた自分を誤魔化すため、あえてそうしているのか?どっち道、女々しい事には変わらないが。

 

「ワレェ!ワレェ!!ワレェェ!!!」

 フシャアアアアッ!!

 

 そんなヤケクソなウメオを投影したかのように、兵器解放(マシンブラスト)したドライパンサーががむしゃらな攻撃を仕掛けるも、ミツネフォックスには通じない。

 繰り出される爪や回転ブレードによる連撃を、紙一重でヒョイヒョイと踊るように避けてみせている。

 

「ふん、そんなもん目を瞑ってても避けられますえ♪」

 クォン!

 

 元よりウメオの腕前ではミゾレとミツネフォックスの動きを捉える事は難しかった。

 しかし、今回はタルデ校での激突とは勝手が違った。今回は、複数体のゾイドが入り混じる混戦なのだ。

 

「今じゃお前らァァ!!」

「「へいっ!ウメオの兄貴!!」」

 

 直後、二体のクワガタ型ゾイド・クワーガが飛来した。そしてウメオ相手に集中して油断していたミゾレの隙をつき、ミツネフォックスをその大顎で捕らえてしまった。

 

「な、なんやっ!?動けへん………!」

 クォオン!?

 

 連戦でミツネフォックスが疲労していた事もあり、クワーガ二体による拘束は強固な物となった。

 中々動けずにいる所、この隙を逃してなるものかとドライパンサーが回転刃を唸らせて迫る。

 

「そうじゃあ押さえてろ!!これで(しま)いじゃミゾレワレェーーーーッッッ!!」

 フシャアアアッ!!

 

 ウメオの作戦は上手く行った。自分を慕う不良をクワーガに乗せ、隙をついてミツネフォックスを拘束させ、動けなくなった所を仕留める。

 確実にミゾレを始末する為の、男らしさの欠片もない汚い作戦であった。

 

「ウメオォッ!!そこまでしてウチを倒したいかァ!?」

 

 これには流石のミゾレも声を荒らげて怒りを露わにした。しかし今更、落ちるところまで落ちたウメオにそんな言葉は通じない。

 狂気の笑みを浮かべたウメオが、ドライパンサーという暴力の刃を振りかざして迫ってくる。

 絶体絶命。ミゾレも、もうダメだと全てを諦めかけた。

 

 

 ば き ぃ ッ

 

 

 その直後である。突如、空より「蹴り」が飛来した。

 バネ状の機構を持つ瞬発力に優れた鋭い「蹴り」が、ミツネフォックスを斬り裂こうとしたドライパンサーを右斜め上から蹴飛ばした。

 

「な、なんじゃワレェアアッ!!」

 

 凄まじい一撃は周囲に衝撃波と土煙を撒き散らし、ドライパンサーは吹き飛ばされ、装甲と武装を破損させながら何度も地面にバウンドし、転がった。

 

「なッ!?何だ!?」

 

 突如兄貴分の乗るゾイドを撃破され、狼狽えるクワーガの操縦者(ライダー)達。

 直後、次はビームガンが火を吹いた。ミツネフォックスを拘束するクワーガだけを正確に撃ち貫き、火花と共にクワーガを無力化してみせた。

 撃滅されたクワーガが落下し、ミツネフォックスが解放される。

 

「………あははは、遅いねん」

「ごめん、早めの夏休みを切り上げて来たんだ」

 

 そしてミツネフォックスを守るように、その青きゾイドは二本の獣脚を大地に突き立てる。

 相対するアルバ校のゾイド軍団は、その姿を前にしておののき、恐れた。たった一体のゾイドにだ。

 そう、それはただの一体ではない。アルバ校は勿論の事、その場にいたヴィーダ校の者にも辛酸を舐めさせ続けてきた、彼らの共通の敵でありタルデ校の象徴たるそれは。

 

「さあ………行くよ、ソニックレイダー!!」

 ギャオオオオーーーーッ!!

 

 ヴェロキラプトル型ギルラプター、カスタムメイド機・ソニックレイダー改。

 タスク・ダイワの駆る蒼き竜が、再び戦場に舞い降りた瞬間であった。

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