ゾイドワイルドヴァーサス‐不良がゾイドで抗争する学園都市で自分達を守るためにゾイドに乗る事を選んだ陰キャ学生の話 作:アイアイホイホイおさるさん
混迷する戦場に、タルデ校の誇る蒼き竜・ソニックレイダーが現れた。
燃える空を切り裂いて降り立ったその雄々しき姿に、ある者は沸き立った。
「あれは………ソニックレイダー、ソニックレイダーよ!」
「来てくれたのね!」
「信じてたわゾイド部ッ!!」
それは、この戦線を支えていたグァンマ校の防衛部隊。ようやくやってきた援軍が、アルバ校ヴィーダ校を相手に何度も暴れ回ったソニックレイダーだった。
援軍としてはもうこれ以上ない人選。よくやく来てくれた援軍がたった一体とはいえ、不利だった状況がこちら側に傾いたと思うには十分である。
単なる戦力の問題ではない、それは象徴としての意味である。
「あいつは………ソニックレイダー!」
「てめえっ!よくも俺達の前にその面が見せられたな!?」
対するアルバの
それもその筈、ソニックレイダーに象徴としての意味があるなら、その逆も然り。不良達から見れば、そこにいるのは自分達に辛酸を舐めさせてきた怨敵なのだから。
「そうだ!俺の先輩もソニックレイダーの魔の手にかかっはて………!」
「俺の兄貴もこいつにやられたッ!タルデの生徒をリンチしただけで………たったそれだけの理由で!」
「俺の後輩もカツアゲに使ったゾイドを破壊された!」
「俺達はただ底辺をいたぶりたい、それだけなのに!」
「ムカつく奴を殴りたいというささやかな願いすら許さねえのか!」
「許せねえ………許せねえぜ!ソニックレイダー!」
不良の敵をやっているのだから、その不良から恨みを買う事はタスクも覚悟していた。しかし問題はその恨みの内容である。
彼らは逆恨み所か、自分達がやっている事が悪い事という自覚すらなかった。他者に暴力を振るい、金品を奪い、癒えぬトラウマを負わせる事は彼らにとっては「それだけの事」なのだ。
タスクは聞いていて戦慄した。こんな思考の彼らがいずれ学校を卒業し社会に解き放たれたら、この国はどうなってしまうのだろうと。
「お前らノシまえ!こいつは許しちゃおけねえッ!」
「そうやッ!兄貴や後輩達の弔い合戦じゃあ!!」
そしてそんな不良達からすればタスクは「無実の自分達を攻撃した憎き悪」以外の何者でもない。頭にあるのは被害者意識と、そこから来る報復の正当化のみ。
見当違いの怒りを乗せた刃を振りかざし、不良達の駆るゾイドがソニックレイダーに迫る。
「
「ぐえぇっ!!」
その時、迫るゾイド軍団に降り注ぐ弾丸。洗練されたその一撃一撃は、不良の半端なカスタマイズのゾイドを次々と粉砕する。
そう、この戦場にやってきたのはソニックレイダーだけではない。
「………なんや、
「あら?私はゾイド部顧問だもの、来るのは当然でしょ?」
降り立った二体目は、レベッカ・スチュワートの駆るスナイプテラ。ここまでソニックレイダーを空輸して急いで駆けつけてくれた、この援軍の功労者。
そしてミゾレから見てレベッカは恋敵でもあるわけだが、今日は現れた余計なソレが、状況が状況であるが故に嬉しい。
「それに、来たのは私だけじゃないわよ?」
「へ?」
レベッカのそんな意味深な一言の直後である。
彼らの背後、最終防衛ラインの更に後ろから無数の火線が飛来し、アルバ校のゾイド軍団向けて振り注いだ。
「なっ、なんや今度は!?」
「何って………タルデ高校に決まってるじゃない」
現れた、さらなる援軍。
それは、カラーリングを白に変更し、遠距離装備としてパワーライフルを装備したカブトムシ型・カブター数機による編隊。
そしてそれらを率いる、二連装キャノンを両サイドに装備したネイビーブルーのガノンタス………かつて共和国軍で運用されていたという「ガノンタス改」のレプリカモデル。
「ようやく生徒会で追加のゾイドを買う予算が組めた所だ、遅らせながら私も戦列に加えて頂きたい」
「その声………ハイト会長!?」
「安心してくれ、砲台ぐらいにゃなる」
「そういう問題ではなく………!」
そして驚くべき事に、そのガノンタス改に乗っているのは他ならぬタルデ高校生徒会長、ダイスケ・ハイトその人であった。
タスクは驚き、困惑した。そんな立場の人間がどうしてゾイドに乗り、ここにいる?と。
「………心配事は察しの通りだよタスク・ダイワ君、
「じゃあ会長は………」
「ああ、上等だ!と言ってやったよ」
先生に逆らうという、内申点と将来を棒に振るような馬鹿な事をしたハイトであったが、それでも彼は笑っていた。
タルデ校の生徒達を守るためなら、喜んで不良の汚名を被ろう。そんな覚悟を決めた、男の笑いだった。
「そして、彼等も想いは同じだ」
「彼等………?」
「私と一緒に来てくれた彼らだよ」
そして、それはカブターの
その中には普段タスクとよく遊んでいる友人や、ゾイド部を最初馬鹿にしていた生徒の姿もあった。
「今までゾイド部に頼り切りで罪悪感感じてた所だ」
「ああ、俺達も戦うぜ!」
「それに、この前線で戦ってる
「みんな………!」
いわば彼らは、同じように内申点と成績を人質に取られながらも戦う選択をした、決死隊も同然の者達である。
確かに
「負け犬共がゴチャゴチャ話してんじゃねえええ!!」
「ぶち殺せぇッ!!所詮は雑魚の集まりだ!!」
「うがああ!!殺せッ!!殺せッ!!殺せぇええっ!!」
そうこうしている間に、一度は怯んだアルバ校のゾイド軍団が息を吹き返してきた。
違法改造パーツがブルンブルンドギャギャと唸り、それにより興奮したゾイドがフシューッと荒い息を上げる。殺意も戦意も上乗せされ、タスク達を抹殺せんと迫ってくる。
「来るぞ!」
「迎え撃て!!」
「グァンマ校の彼女達にいいトコ見せろ!!」
「行けぇっ!俺達のカブター!!」
対し、カブター達が戦闘を開始する。
パワーライフルを空から乱射して牽制し、自慢の角を勢いよく叩きつけて格闘する。あまりにも荒削りな戦い方だが、その勢いと熱意は熟練の
「タルデ校のボーイ達が来てくれはったで!ウチらも続くんどすえ!」
「はい!お姉様!」
「残存勢力は、各機カブターの援護を!」
そんなタルデ校決死隊の奮戦を見て、グァンマ校の少女達も再び立ち上がった。
ミゾレの指揮の元、彼女達の乗るスコーピアがハサミと対空連射砲を振るい、アルバ校のゾイド軍団に果敢に立ち向かっていく。
「どうなってんだ!?なんでこいつら急に強くなるんだよ?!」
「知るか!チイッ!雑魚のくせにぃっ!!」
やがて、アルバ優勢と思われた戦況は徐々に拮抗していった。
激化する戦場の中、タスクとソニックレイダーも向かってくるアルバ校のゾイド達を千切っては投げの大奮戦の活躍を見せていた。そこに。
「タスク・ダイワ君、ファングを討つんだ!」
「ハイト会長!?」
「奴らを指揮しているのはファング・サイドワインドだ!奴を倒せば、こいつらも戦闘をやめるハズだ!そして、それが出来るのは君しかいない!」
激戦の中、そうハイトが通信越しに語りかけてきた。ファングを、敵の総大将を討てと。
(僕に………僕にやれるのか………?)
一度は惨敗したファングとの再戦。はっきり言ってタスクに勝つ自信はない。だがそれでも今この場でファングに対抗できるのは自分だけと言われたら、断る事も出来なかった。
「私が道を作る、君はそこを行け!頼んだぞ!!」
「ちょ、ちょっと会長!?」
ハイトのガノンタス改が前に出る。
道を作るという大層な事を言い出したハイトであるが、タスクはガノンタスがどのようなゾイドかを知っている。その為の秘密兵器がある事も十分知っている。
しかし問題が一つあった。
「会長、耐Bスーツ着てませんよね!?」
「気合で耐えてみせるさ!」
「そんな無茶な!?」
言うが早いか、ハイトは手元のレバーを全霊を込めて引っ張った。ガノンタスの全身をエネルギーが駆け巡り、ワイルドブラストが発動する。
クワァアアアッ!!
背中の甲羅が展開し、その内に隠されていた巨大な砲身が姿を現す。
そう、ガノンタスは世にも珍しい、兵器ゾイドで無いにも関わらず最初から重火器を身体に装備したゾイドなのだ。して、その名は。
「撃ち壊せ!!
クワァアアアッ!!
ず、ど、んっ!
大地を、大気を揺らすような重たい衝撃と共に、甲羅の中に隠されていた巨大な砲・ガノンキャノンより放たれる一撃必殺の破壊砲「
それは前方にいたアルバ校のゾイド軍団を一撃の元で吹き飛ばし、破壊し………その先へと続く道を作り出した。
「いっ………行け………頼む………」
耐Bスーツ無しでのワイルドブラストという無茶を行ったハイトは、もうボロボロであった。ぐったりと項垂れる姿を前に、タスクは覚悟を決める。
この
「………行ってきます!」
ギャオオッ!
既に覚悟は決まっていた。
ハイトが文字通り身を削って作ってくれた道を、ソニックレイダーは大地を踏みしめ、駆け抜けていく。全ては、この馬鹿げた戦いに決着をつけ、平穏な学園生活を取り戻すため。
ゾイド部の使命を果たすべく、タスクとソニックレイダーは宿敵の待つ場所へと走ってゆく。
「あいつ!行かせるか!!」
「逃げんじゃねえソニックレイダー!!」
そして当然のごとく、不良達はそんなソニックレイダーを逃がすはずもない。
亀光砲の猛威から逃れたゾイド達が立ち上がり、ソニックレイダーへと迫ろうとする。
しかし、そんなゾイド達を前に立ち塞がる者達がいた。それは。
「ここから先は通行止めどすえ♪」
クォオン!
「通さないわよ、あんた達!」
キュオオン!
ミツネフォックスとスナイプテラが、ソニックレイダーを追おうとするアルバ校のゾイド達の前に立ち塞がった。
形勢がこちらに傾いているとはいえ、多数を相手での戦いだ。こちらの不利は変わらない。
「………死ぬんじゃないわよ、貧乳」
「………自分の心配したらどうでっしゃろ?、駄乳」
加えて、互いにライバル関係である。
だからこそ、二人は先に倒れられないという奇妙な絆で結ばれていた。
そして背後を走り去るタスクの健闘を祈りつつ、女達は女達の戦場へと身を投じた。