ゾイドワイルドヴァーサス‐不良がゾイドで抗争する学園都市で自分達を守るためにゾイドに乗る事を選んだ陰キャ学生の話   作:アイアイホイホイおさるさん

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 アルバ校の軍勢の後方。ファング・サイドワインドは退屈そうに、ノワールライガーのコックピットでふんぞり返っていた。

 周囲には自分の指揮するアルバの軍勢が勢揃いし、戦いの状況は逐一彼に報告される。戦況はこちらがかなりの有利。

 勝ち戦は確信であった。これでアルバ校は街の頂点(テッペン)を取る。アルバ校を率いた時から夢見ていた光景が、すぐそこまで来ている。

 

「もうすぐ俺達、街の頂点(トップ)に立てるんだぜ!」

「そうなったら次は全国制覇だ!」

「アルバ鬼強え!逆らう奴ら全員ブッ飛ばして行こうぜ!」

 

 そんな状況を前に配下の不良達は喜び喜び勇んでいた。にも、関わらず。

 

「………燃えないねェ」

 

 逆にそれが、ファングにはたまらず退屈だった。

 そもそも、この状況でグァンマ校ではなく同盟校であるタルデ校を攻めたのも、もしかしたら「彼」が現れてくれるんじゃないかという期待があったから。

 にも関わらず、「彼」は影も形も現さなかった。出てくるのはグァンマ校のスコーピアばかり。

 

総長(ヘッド)!報告いたします!」

「何だよ」

 

 側近の不良からの報告も、どうせ敵防衛線が陥落間近という話だろう。

 そう決めつけ、ファングは足元まで来た側近に対してノワールライガーから降りる事もなく、気だるげにその報告を聞く事にしたのだが。

 

「前線で動きがありました、敵の援軍が現れたとの事です」

「何?」

「なんでも、ソニックレイダーだとか………」

 

 ソニックレイダー。その名を聞きファングの心は高鳴った。そしてその直後、彼が心の底から待ち望んでいた願いは、ついに叶えられる事となった。

 

「敵襲!敵襲ぅぅーっ!」

 

 次の瞬間、遠くで爆発が起きた。

 数秒も数える間もなく、その遠方で起きた爆発はさながら火砕流のように、周囲のゾイドを蹴散らしながらファングの居るアルバ校本丸へと雪崩込んで来た。

 

「どこだぁっ!ファングゥーーッ!!」

 ギャオオオッ!!

 

 大地を埋め尽くす混沌の中に輝く一筋の「青」。ファングがその姿を見間違うハズがない。あれこそ、自分を滾らせてくれる唯一の存在なのだから。

 

「来たかい………タスク・ダイワァァーーッ!!」

 ガオオオッ!!

 

 ファングは、本丸に襲撃を仕掛けてきた宿敵を迎えるべく、ノワールライガーを前進させる。

 何の偶然か、タスクとソニックレイダーも自分達を探しているようであり、ならば出てやる以外の選択肢はファングには無い。

 

「いいか、あいつには手を出すな!あれは、ソニックレイダーはこの(オレ)の獲物だ」

「は、はいっ!」

 

 無論、部下に余計な手出しをしないように釘を刺して。

 大地を蹴り、漆黒の獅子が殺意と闘争本能を乗せ、今まさに敵ゾイドを蹴散らしている最中の青き竜の元に躍り出た。

 

 ギャオッ!?

 ガオオッ!!

 

 ソニックレイダーとノワールライガー。両者の爪と牙がぶつかり合い、火花が散る。

 さながら剣豪が刃をぶつけ合うかのような力比べの後、両者は互いに弾き合い、距離を取る。そして改めて、両者は睨み合った。

 

「ククク………ははははっ!信じていたぞタスク・ダイワ!貴様は必ず来てくれるとなぁっ!!」

「勘違いするな!お前の為に来たんじゃない、お前を倒してこの馬鹿げた戦いを終わらせに来たんだッ!!」

 

 結論としては戦いに来た訳であるが、戦いが目的のファングと戦いが手段のタスクでは、まるで意味合いは違ってくる。

 倒す為には戦わなければならない事はタスクも解っていたが、結果としてファングの喜ぶ選択肢を選んでしまった事を、タスクは複雑に思った。

 

「貴様が相手なら出し惜しみは無しだ!!やるぞノワールライガー!!」

 ガァアアアアーーーーッ!!

 

 ノワールライガーが大きく吠えた。雄々しき雄叫びであったが、そこにはこれから始まる「苦痛」を無理矢理気を猛らせて誤魔化そうとしている側面もあった。

 そしてその予想通り、ファングは懐から取り出した鍵………デスメタルキーを、コックピットに取り付けられた基部に勢いよく突っ込む。

 

「強制開放………デスブラストぉ!!」

 ガァアアアアーーーーッ!!

 

 赤黒い炎のようなオーラがファングとノワールライガーの左目に宿り、背中のブースターが展開し、火を吹く。

 強制的に活性化された生命エネルギーが、ノワールライガー自体が引き裂かれる程に満ちてゆき、悲鳴にも似た咆哮が響き渡る。

 

「ファングのデスブラスト………相変わらず凄い迫力だ」

 

 強制開放・デスブラストが発動した。

 敵対するあらゆるゾイドをねじ伏せ、自身もまた叩きのめされたノワールライガーの殺意の嵐を前に、タスクは思わずたじろく。

 

「だけど、僕達だってこれに勝つ為にやってきたんだ!負けてたまるもんかッ!行くよ、ソニックレイダー!!」

 ギャオッ!!

 

 しかし、そんな本能に訴えかける恐怖を前に、タスクは勇気を出して己を奮い立たせる。

 これに勝つためにやってきたのだと。これを乗り越えるために頑張ってきたのだと。

 そしてその全身全霊の勇気を込め、タスクは手元のレバーを思い切り引っ張った。

 

「ワイルドブラストだぁっ!!」

 ギャオオォォーーーーーーンッ!!

 

 タスクとソニックレイダーの全身にエネルギーの波動が走り、燃え上がる太陽のような生命の炎が、人間とゾイドの全身に満ちてゆく。

 そしてソニックレイダーの背中。改造により新たに取り付けられたブレードが、羽ばたく翼のように広がり、振るう。

 増設されたブースターがより強く火を噴き、そのシルエットはそれこそ青いドラゴンが羽根を広げたかのような姿へと変貌した。

 これが、パワーアップしたソニックレイダーのワイルドブラストなのだ。

 

「行くぞおおッ!!」

 ギャオオオオオーーッ!!

「来おおおいッ!!」

 ガアアアアアアーーッ!!

 

 目的のために戦うタスクと、戦う事が目的のファング。

 そんなタスクと共に戦うソニックレイダーと、そんなファングに操られるノワールライガー。

 何もかもが正反対な人間とゾイドが、その全身全霊を持ってぶつかり合った!

 

「うわぁあっ!」

「なんてパワーだッ!?」

 

 超パワーのぶつかり合いは衝撃波となって、周囲のゾイド達を一気に吹っ飛ばした。

 アルバ校軍勢というギャラリーが吹き飛ばされる中、ソニックレイダーとノワールライガーの二大ゾイドが、広い戦場を縦横無尽に駆け抜けてゆく。

 

 ガァアアッ!

 ギャオオッ!

 

 高速戦闘ゾイドの機動力で飛び回り、両者が交差する度にガキンッ!という金属のぶつかり合う音と共に火花が散る。両者の爪と牙とが互いを斬り合っているのだ。

 周囲の操縦者(ライダー)では目で追うのも辛いスピードで、二つの刃がぶつかり、離れ、ぶつかり、離れ………。

 

「ファングぅぅッ!!」

 ギャオオオッ!!

 

 ソニックレイダーがレーザーガンを連射する。しかしその全てをノワールライガーは回避してみせる。

 

「はははっ!囮だろそれぇ!!」

 ガァアアッ!!

 

 回避した先に、迫るソニックレイダーのブレード。流石によけられない………ハズが、ノワールライガーはそれすら避けてみせる。

 軽々とソニックレイダーの真上に回って見せ、今度は頭上から鋭い爪の一撃を浴びせようとする。

 

「ちいぃッ!!」

 ギャオオッ!!

 

 そこからでは、ソニックレイダーも打てる手は限られた。咄嗟に、ブレードを翳して爪を受け止めてみせた。

 火花が花火のように散り、ガリガリギャギャギャという耳をつんざくような金属音が響き渡った。

 

「はははっ!ははははっ!やはりそうだ!その強さ!テクニック!お前は(オレ)と同じだ!!」

「同じだと!?ふざけるな!お前と僕を同じにするな!!」

 

 タスクは、ファングの言葉を自分を動揺させる為のブラフかと予測したが、通信越しに聞こえるファングの声色は本心からの喜びに満ちているように聞こえた。

 嘘ではない。ファングは喜んでいた。この戦いに、ようやく巡り合えた同類に。

 

「違うだと?何が違う!?強さを求め、己とゾイドを高め合い、勝つためにまたここにいる!!(オレ)とお前の何がどう違うというのだァ!?」

 

 力比べの末、ソニックレイダーがパワー負けした。弾き飛ばされ、青いボディが地面を転がる。

 コックピットで揺さぶられる中、タスクの中ではファングからぶつけられた言葉が反復していた。「(オレ)とお前の何がどう違うのだ?」という。

 ………確かに、冷静になって考えてみればそうだ。

 ゾイドを強くするのは目の前の敵に勝つ為だし、自身の努力も勝利の為。何よりタスクも、戦って勝って嬉しくなかったと言えば嘘になる。

 そんな自分を振り返ってみれば、嫌でも思ってしまうのだ。自分も、あの不良達と本質的には何も違わないのでは?と。

 

「………違う!」

「何?」

「何もかも違うッ!!」

 

 そして、それを自覚しているからこそ言えるのだ。

 立ち上がり、再びブレードを振りかざしてノワールライガーに肉薄するソニックレイダーのコックピットで、それは違うと堂々と言えるのだ。

 

「僕がソニックレイダーに乗っているのは学校の皆を守るためだ!勝つ事はその為の手段に過ぎない!!勝つ為に周りに迷惑をかけるお前達と僕を同じにするなァーーっ!!」

 ギャオオオッ!!

 

 金属がぶつかる鈍い音が響いた。何度も、何度も。

 ソニックレイダーのブレードはノワールライガーの爪を何度も弾き、その装甲を斬り裂こうとしては逆に弾き飛ばされた。

 交差する黒と青。それは端から見れば、二つの流星が地上を舞っているようにも見えた。

 

「何だよこりゃあ………」

「ああ、これは近づけねえ………!」

 

 アルバ校の操縦者(ライダー)達は、手を出すなと言われていたが場合によっては加勢に入ろうとも考えていた。

 いくら強大になった勢力でも、自分達の総長(ヘッド)が倒れてはおしまいだからだ。

 

「はっきり言えるぜ、今あそこにいるのは少なくともリヒト市では最強のゾイドと操縦者(ライダー)達だ………俺達が手を出せる次元じゃねえ………!」

 

 しかし、そこで繰り広げられている戦いは文字通り次元が違っていた。

 介入はおろか、両者が戦っている場所に踏み込もうものなら、戦いに巻き込まれて自分達のゾイドがスクラップにされてしまう事は明白だった。

 これでは、何人たりとも手は出せない。

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