ゾイドワイルドヴァーサス‐不良がゾイドで抗争する学園都市で自分達を守るためにゾイドに乗る事を選んだ陰キャ学生の話   作:アイアイホイホイおさるさん

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#28(終)

「今………なんと?」

 

 ゼネバステック本社ビルにて。ファングの父親であり、この会社の社長であるサイドワインド社長は、携帯電話(スマートフォン)越しに伝わった話を聞いて呆然とした。

 

「聞こえなかったか?リヒト市での実験は十分に果たした。お前との関係はこれで終わりだ」

「そっ、そんな!では私はどうなるんです!?」

 

 そも、リヒト市において民間にあれだけゾイドが溢れたのも、軍隊のような装備で暴れ回ったのも、それでZCFが動かなかったのも、その協力者が手を加えていたからだ。

 そしてその協力者は、サイドワインド社長を用済みとし、その関係を切ろうとしていた。

 

「当然貴様も法の裁きを受ける事になるだろう………が、その前に、貴様ら一族に用がある連中がいるようでな」

「そっ、そんな………!」

「では、さらばだ。せいぜい生きているといいな」

「そっ、そんな!デイビス・マイルス様ぁっ!!」

 

 協力者は無慈悲にも電話を切った。呆然と立ち尽くすサイドワインド社長には、もはや何の後ろ盾もない。

 そんな彼の耳に、ガシャンガシャンと遠くから聞こえる足音。背筋が凍る感覚と共に顔を上げると、その視線の先に「それら」は居た。

 

「ひ………ッ!!」

 

 本社ビルのすぐ前に現れた、赤い髑髏のような旗を立てた妙な仮面をつけた男達の一団。それらが操る赤いラプトールの軍団。

 そして、それらの中央に立つ、黒く巨大なティラノサウルス型ゾイド………

 ………かつて先代の社長、彼の父がワイルド大陸を出る際に裏切ったとある家系から持ち出した荷電粒子砲のデータ。その、オリジナルである「オメガレックス」。

 何が起きているか、何の目的かは考えなくともすぐに分かる。彼等は「落とし前」をつけに来たのだ。一族規模での「落とし前」を。

 

「ひいぃぃぃッ!!!」

 

 恐怖する、そして時すでに遅し。

 親の因果を子に報いさせるべく、ワイルド大陸からやってきた死鋼(デスメタル)の末裔たるその軍勢が、ゼネバステック本社に殺到した。

 

 その日、ゼネバステックは文字通り「消滅」した。

 そして、一連の事件の裏にいた「協力者」がその本懐を遂げようと動き出すのは、もう少し先の話である。

 

 ………

 

 

 ………リヒト市を三分割した不良同士による国取りならぬ都市取り合戦は、最終的にZCFの介入により幕を閉じた。

 これによる検挙数は数千人規模にも及び、その中核であった私立アルバ高校とヴィーダ工業高校は全校生徒が逮捕されるという異例の事態に陥り、閉校を余儀なくされた。

 そして、この大惨事になるまで何の対策もしなかったとして、政府はリヒト市の教育委員会に対して解体の後の再編を勧告。多くの学校の教職員が入れ替わる事になった。

 そうして、リヒト市を長く覆った戦乱の嵐は、国歌権力の遅めの介入により、ようやく終わりを告げたのであった。

 

 ………そして、彼等は。

 自分達の身を守るため、不良達と同じようにゾイドを操り、戦いに身を投じたゾイド部は、タルデ高校は………。

 

 

 ***

 

 

 それから、しばらくの時が流れた、タルデ高校生徒会室にて。卒業を控えたダイスケ・ハイトは、引き継ぎ業務を進めながら、あの日の戦いに思いを馳せていた。

 

「………まるで昨日の事のようだ」

 

 結論から言うと、ハイトは停学処分はされなかったし、生徒会長の椅子も取られなかった。

 というのも、上記の通りZCFや警察は「こうなるまで生徒を守らず、自衛を子供任せにした大人に問題がある」として、リヒト市の教育委員会や各校教職員を糾弾。

 教育委員会の解体・再編に合わせてタルデ校教師も総入れ替えが行われ、気がつけばハイトやゾイド部への処分もうやむやになった。

 あくまで自分達を守るために戦った子供達を処分する事への、世間からの批判を恐れての采配であろう。

 だが、ハイト達としては結果オーライだ。

 

「会長、電話です」

「どうも」

 

 そんな、愚かな大人達の巻末に思いを馳せながら、生徒会員から渡された固定電話の受話器を取るハイト。気になる電話の先は………。

 

「もしもし?」

「ああもしもし会長さん?卒業生を送るゾイド部対抗バトル大会の話やけどぉ………♪」

 

 電話の先は、グァンマ学園のゾイド部現部長となった、ミゾレ・テンゲンであった。

 三高校の一角として街を支配していたグァンマ学園であるが、こちらも自衛のみを目的に戦っていた事と、上記と同じく世間体を考慮した結果か、大々的に処分される事はなかった。

 そして、タルデ校とグァンマ校の交流も引き続き続いている。

 

「参加チームは………多いな」

「当然やよぉ、天下のタルデ校ゾイド部が出るんどすから♪」

 

 そしてリヒト市の各学校にも変化が見られた。

 タルデ校ゾイド部が不良達から学校を、ひいては街を守り抜いた事が影響してか、同じようにゾイド部を立ち上げる学校が数多く出てきたのだ。

 その勢いは今やリヒト市の外にも波及しており、近い将来某アニメの戦車道になぞらえてゾイ(どう)でも生まれるのではないか?という程である。

 ミゾレが部長を務めるグァンマ校ゾイド部もそうした流れで出来たものだ。

 

「そんで、そのタルデ校ゾイド部のエースはんは今どこに?」

「タスク・ダイワ君なら今頃ハーマン島だよ」

「ハーマン島………ああ、せやったねえ」

 

 そして、そんな変革の中心となったタルデ校ゾイド部は、今学校を離れていた。

 

 

 ***

 

 

 ハーマン島。そこは、国立ゾイドセンターの顔を持つと同時に、野良の状態から保護されたり行き場の無くなったゾイドの保護施設も兼ねている、海に浮かぶ巨大な人工島である。

 そんなハーマン島に、タスクとレベッカは合宿以来久方ぶりとなる来訪をしていた。その理由は。

 

「タスク君、本当にいいの?」

 

 ゾイド保護区の森林にて、心配そうに問うレベッカ。

 タスクは少し寂しそうな顔を浮かべていたが、レベッカに余計な心配をかけまいとまた少し無理をして笑顔を浮かべていた。

 

「ええ、いつかはこんな日が来るって覚悟はしてましたから………」

 ギャウウ………

 

 目の前には、寂しそうに唸るソニックレイダー。その首筋には、いつもタスクが乗り込んでいた場所が、コックピットが取り外されていた。

 当然だ、これからの彼にコックピットは必要無いのだから。

 

「今のゾイド部に、ソニックレイダーは強力過ぎます。一緒に居ても持て余すだけだし、僕だって不良達みたいに過ぎた力を手にして調子に乗らないとも言い切れません」

 

 ………周囲が変わった事により、ゾイド部も変わった。

 かつてのような大規模な戦闘が行われなくなり、ゾイド部という存在も、自衛組織から単なる学生の部活動へと変わっていった。

 そんな今のゾイド部において、荷電粒子砲を切り裂き跳ね返す程のソニックレイダーは、過剰な戦力でしかない。

 そうした状況を鑑みてタスクが出した答え。それは、ソニックレイダーをゾイド保護施設であるハーマン島に預けるという決定であった。

 ソニックレイダーを愛しているからこそ、その力が誰かを傷つけないようにする為にタスクが選んだ選択であった。悲しい話だが、平和な時代において強者(つわもの)の居場所は無いのだ。

 

 ギャウ………

「そんな悲しそうな声を出すなよ、ソニックレイダー………」

 

 別れの悲しみを表すかのように、寂しそうに唸るソニックレイダー。絆を結んだ相棒との別れだ、寂しくない訳が無い。

 タスクは、そんな悲しげなソニックレイダーの頬を、なだめるように優しく撫でた。

 

「もう二度と会えないって訳じゃないんだからさ」

 ギャウ?

 

 離れたくないのは、タスクも同じだった。けれどもその表情には寂しさや悲しさではなく、希望も籠もっていた。

 

「………僕、勉強して将来ゾイドに関わる仕事につく事にしたんだ。簡単な道じゃないのは分かってるけど」

 

 戦いを経て、タスクは自分の将来について明確なビジョンを得る事になった。これからも、正式な手段でゾイドに乗り続けるという選択肢である。

 実際、今回の一件でタスクにはZCFからのスカウトも来ていた。無論、高校卒業後という条件付きであるが。

 それにそうでなくとも、絆を結んだ相棒ゾイドと別れるという選択肢など、タスクには無い。

 

「だから、その時まで………」

 

 見つめ合い、タスクはソニックレイダーとの日々を思い出す。

 初めて出会った初陣の日、強敵との戦いの日々、初めての敗北、そこからの再起、そして再戦………。

 ソニックレイダーと歩んだ時間は、タスクの学園生活全体で見るとごく僅かだ。しかし、その僅かな戦いの日々ま間違いなくタスクの青春、その象徴として胸に刻まれていた。

 

「………またな、相棒!」

 

 繋いだ絆は、そう簡単には途切れない。そして、人とゾイドの歩む道はこれからも続いてゆく。

 タスクの持つゾイドキーが、太陽光を反射して宝石のように光っていた。

 

 

 Zoic android………略してZOIDS(ゾイド)

 その、異星文明を起源に持つ巨大な鉄の獣が地球に満ち、長い長い年月が過ぎた。

 ゾイドと人間の関係は様々な様相を見せた。

 

 時に、共に喜びを分かち合う相棒として。

 時に、その力を振るう兵器として。

 時に、ビジネスパートナーと割り切る道具として。

 

 そしてこの時代………その、いつの事かは定かではないが、狂った死鋼(デスメタル)の王の暴虐も、帝国と共和国の対立も、古代ゾイド人の暗躍も無い時代があった。

 近未来と言える程には発展したその時代は、戦乱も大きな事件もなく、平和だった。

 そう、世界は平和だったのだ。

 

 そしてこれは、ゾイドが好きな一人の少年と、その相棒たる一体のギルラプター。

 一人と一体、一組の人間(ヒト)相棒(ゾイド)が歩んだ、青春という名の戦いの記録である。




・今日のゾイド
グラキオサウルス(ZCF仕様)
分類:ブラキオサウルス型
ZCFが保有する指揮官用超大型ゾイド。ゾイド一個部隊の司令塔として運用される。
ワイルドブラストにより発動する「グランドハンマー」に加え、背中に装備したロングレンジ二連装キャノンから放つ制圧兵器「グラビティーキャノン」を搭載している。
一説には、グラビティーキャノンを安定運用するための「発射台」として抜擢されたとも云われている。
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