ゾイドワイルドヴァーサス‐不良がゾイドで抗争する学園都市で自分達を守るためにゾイドに乗る事を選んだ陰キャ学生の話 作:アイアイホイホイおさるさん
その放課後、タスクは珍しく寮に直帰しなかった。そんな彼が今いるのは、学校に臨時的に建てられたモスグリーンの大きなテントの中。
これは軍が野営する際に臨時の拠点として使う物で、ソニックレイダーの仮の格納庫として持ち込まれたもの。タスクはそこで、ソニックレイダーを
「いいゾイドでしょう?」
すると背後から声が聞こえた。昼間も会ったレベッカ・スチュワート博士だった。
聞けば、ソニックレイダーの整備の為に彼女も学校に滞在するらしい。他の生徒は美人が学校に滞在すると聞いて思春期男子らしく喜んでいるが、ゾイドに関わる人物と思うとタスクは複雑げだ。
「レベッカさん………ええ、僕もそう思います」
「保護してから大変だったのよ、身体の色んな所がボロボロで、ここまで回復させるのに苦労したんだから」
そしてもう一つ、このソニックレイダーは保護ゾイドだと言う。
経緯は不明だが、装甲の大部分を失い骨格にも亀裂が入る程の大怪我を負った状態で、森の中を彷徨っている状態で発見されたのだという。
そこをレベッカのいるヘリック大学に保護され、治療と改修を受けた。そして引き取り手を探している際にタルデ学園がゾイドを探しているという話を聞き、今に至る。
「ねえ、君」
「な、何か?」
「君もしかして、ゾイド好き?」
レベッカとしては、恐らく世間話程度の感覚だったのだろう。こうして他所にスタッフとして派遣される程度にはゾイドの専門家として学とキャリアを積んでいるレベッカ自身、ゾイドが好きだから今こうしている節がある。
「………好きなワケないでしょう、ゾイドなんか」
しかしその問いを投げかけられたタスクは、露骨に不快な表情を浮かべてそれに応えた。
「どうして?」
「だってそうじゃないですか、ゾイドなんて不良の乗る物ですよ」
タスクの意見は、少なくともこのタルデ高校の真面目な生徒のほとんどが抱く、ゾイドへの一般的な意見である。
「ゾイドのせいで怪我をしたり、怖い目にあった生徒が何人もいるんです。それにこの街の不良達はゾイドに乗って、街の人達に迷惑をかけて、そのくせ、それを支持する奴もいて………大嫌いですよ、ゾイドなんて!」
それはゾイドによる暴力に晒される身なら、誰しもが抱く感情である。
こんな事をゾイド研究者であるレベッカやゾイドであるソニックレイダーの前で言うべきでない事は頭では解っていたが、タスクは我慢できなかった。
それ程、彼を始めとするタルデの生徒達は、ゾイドにより怖い思いをしてきたのだから。
「それじゃ君、ゾイド嫌いなの?」
「当たり前でしょう!ゾイドなんて………」
「じゃあさ」
そしてレベッカは大人だった。ここまで言われても表情一つ変えなかった。
「わざわざ放課後にソニックレイダーを見に来たのはどうして?」
「えっ………」
「自分の相棒になるかも知れないゾイドを、わざわざ自分の時間を削って見に来るなんて、嫌いな人はしないと思うけどなぁ?」
それ所か、タスクの心を見透かしていた。
感情的になっていたタスクは、レベッカの問に答えることはできなかった。
「それは………」
答えに詰まるタスクは、自分がどんな考えを持っているのかすら解らなくなっていた。
恥を承知でここから逃げたいとさえ思ったが、その願いは全く望まないカタチで叶えられる事となった。
「大変だ!!」
テントの中に一人の男子生徒が駆け込んできた。血相を変えた様子からは、何かよくない事が起きたという事が伺い知れた。
「アルバ高校のゾイド乗りが攻めてきた!俺達が持ってるゾイドを寄越せって!!」
「何だって!?」
街を支配する三高校の一つが襲撃を仕掛けてきたという。ソニックレイダーの納品は今日、一体どこから情報が漏れたのか。
そしてタスクは思った。だからゾイドの導入なんて反対だったんだと。
ギシャアアア!!
そして………その時だった。先程まで大人しくしていたソニックレイダーが急に立ち上がったのは。
そして咆哮したかと思うと、突撃と共にテントを突き破って外に飛び出した!
「ソニックレイダー!?どうして………!」
何が起きたのか?どうしたのか?急な事の連続にタスクは混乱するしかない。
しかし、レベッカには解った。今までずっとゾイドを見てきたレベッカには、ソニックレイダーが何を感じ、どうしたいのかが。
「戦うつもりよ!」
「えっ!?」
「見て、あれ!」
レベッカが指さした。
その先には、それまで平和だったこの学校についに現れた、不良
***
タルデ校………たまたま三高校の勢力圏が重なる激戦区にあるだけの、ダサい弱い陰キャばかりの雑魚高校。そう認識されている学校が、なんとゾイドを導入するという。
どこからその情報を聞きつけたのかは解らない。が、三高校の内の一角であるアルバ高校。そこに所属する生徒の一人が行動を開始した。
言うまでもないがそれは、タルデ校のゾイド、すなわちソニックレイダーの強奪である。
「はっ!生意気なんだよ!タルデの雑魚どもが一丁前にゾイドなんてな!」
「君!止まりなさい!出ていきなさい!」
「ああ?うっぜーんだよ!!」
「あぎゃあっ!!」
静止しようとしたタルデ校の教師を払い除け、それは悠々とタルデ校の校庭に、臨時の格納庫テントの置かれた場所に姿を現した。
名を「ファングタイガー」。虎のような外見をした、サーベルタイガー種に分類されるパワー・スピードの両方に優れた強力なゾイドだ。
そして
「おおっ?何かと思えば自分から出てきたのか、ハハッ!」
ガゥルルルル………
そんなミトラとファングタイガーの前に、立ち塞がるかのようにソニックレイダーが現れた。当然だが
対するミトラのファングタイガーは、機体上部にレーザーガンを搭載する等の改造を施されている。そしと恐らく、コンディションも万全。戦力差は歴然である。
グルル………ギャオオオンッ!!
しかしソニックレイダーはそんなもの関係ないとばかりに、その足を踏み鳴らしてファングタイガーに向けて一直線に突撃する!
「面白ぇ!
グルォオオオ!!
ミトラもファングタイガーを突撃させ、両者は校庭の真ん中で激突!
ついに、このタルデ校にて、ゾイド同士による戦いが始まった。
「大変だ!」
「みんな逃げろ!」
「早く学校の外へ!」
「うわぁああ!」
「お前らこっちだ!早く!」
突如発生した二体の機獣の激闘に、学校はたちまち大パニックに陥る。
部活や居残りをしていた生徒が、教師達に誘導されて逃げて避難してゆく中、タスクはこの戦いを見守っていた。
「ヒャハハハハ!喰らえ喰らえ喰らえぇ!!」
グルォオオオ!!
ミトラのファングタイガーは素早く、強かった。
まともに動けないソニックレイダーを、右から、左から、その爪と牙で何度も切り裂き、砕き、攻め立てる。
ファングタイガーの瞬発力を活かした戦法である。恐らく、今までこの街を守る戦いの中でも、そうして勝ってきたのだろう。
「そこだぁ!!」
グルガァア!!
そしてついに、攻撃を受けながらもなんとか立っていたソニックレイダーであったが、ファングタイガー力を込めたの強力な爪の一撃を受けて吹っ飛ばされた!
そして姿勢を正す事も出来ず、そのまま校庭に倒れ、叩きつけられてしまう。
ギャオッ………!
横倒しになり、苦しそうに唸るソニックレイダー。しかし、その牙は尚相手を剥いており、反抗の意思は未だ潰えない。
だが受けたダメージは大きく、立ち上がれない。そこに、ミトラのファングタイガーが牙を剥いて悠々と迫ってくる。
「その反抗的な目が気に入らねぇな、もう少し痛めつけてやるとするか………!」
グルルルッ!
ミトラの目はサディスティックに光っている。不良特有の、見下した人間を一方的に嬲る事に快感を覚えた、外道の目だ。
一緒に戦う内にそんなミトラの性格が移ったのか、ファングタイガーもまた牙を剥いて唸り、ソニックレイダーの恐怖を煽るように、ゆっくり、ゆっくりと迫ってくる。
「ヒヒヒ………ん?あぁ?何だあいつは………」
だがその時、ミトラがファングタイガーのメインモニター越しに、自身とソニックレイダーの間に割り込むような形で現れた人影を見つける。
その人影………タスク・ダイワは、何の迷いも無く、担いだロケットランチャーの引き金をファングタイガー向けて引いた。
***
………対ゾイドジャミング弾!
歩兵がゾイドと戦うための武装であり、特殊な弾頭を使ってゾイドの
何故そんなものがここにあって、タスクが使ったかというと、勿論であるがソニックレイダーと共に対ゾイド用に搬入されたからだ。
「う、腕が痺れる………けど、仕方ないッ!」
それを撃ち込まれ、まるでコショウを頭から被ったかのようにギャアギャアと悶えるファングタイガー。
タスクは空になったロケットランチャーを投げ捨て、倒れたままのソニックレイダーへと走る。
ギャオッ………?
「コックピット、失礼するよ!」
そしてタスクは迷う事なく、ソニックレイダーの首筋に設けられたコックピットに乗り込む。
そして手綱を握るかのように、慣れた手つきで操縦桿を握った。
「………僕みたいなのが
そして言い聞かせるかのように、操縦桿越しに気持ちを伝えるかのように、ソニックレイダーに語りかける。
「でも嫌とは言わせないし、言わない。奴に勝つには、お前も
そしてキャノピーが閉じられ、慣れた手つきで操縦システムを次々と立ち上げてゆく。
そう、昔に地元のイベントでラプトールに乗った時のように、あの頃何度も繰り返した動作を思い出しながら、タスクはソニックレイダーの
「コンバットシステム起動!オートバランサー、ニューロン伝達機能、ゾイドコア共に安定!………さあ、起きろソニックレイダー!!」
………ギャオオッ!
ソニックレイダーの目が、タスクに呼応するかのように輝いた。