ゾイドワイルドヴァーサス‐不良がゾイドで抗争する学園都市で自分達を守るためにゾイドに乗る事を選んだ陰キャ学生の話   作:アイアイホイホイおさるさん

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#4

 ジャミング弾の効果は甚大であった。ファングタイガーの操縦システムが動かなくなってしまったのだ。

 ミトラは必死にコックピットのコンソールをカタカタと鳴らし、その一撃によりダウンした操縦システムをなんとか起こしてゆく。

 

「このっ!くそっ!タルデ校の分際でナメやがって!」

 

 まるで顔を洗うかのようにファングタイガーは顔をガリガリと搔き、ようやくジャミング弾の効果は薄れてきた。

 コックピットのモニターからようやく砂嵐が収まったと思ったミトラであったが、彼の目に映ったのは立ち上がったソニックレイダーの姿。

 

「なんだテメエ、まだ立つのか………?」

 

 ミトラとしては結構痛めつけたハズであった。

 しかしどうだろうか?目の前にいるソニックレイダーは、まだ俺は戦えるぞと言うかのように立ち上がり、相変わらずの反抗的な目を此方に向けていた。

 

「まあいい、だったらもう一度眠ってもらうまでだ!ファングタイガー!」

 グルガァアアッ!!

 

 ミトラが操縦桿を倒す。再びファングタイガーが爪と牙を剥き、ソニックレイダーを切り刻まんと飛び掛ってきた。また先程のような「死のダンス」を踊らせてやろう、と。

 しかし、そんなミトラの邪悪な願いは、外れる事となった。

 

「ふんっ!」

 ギャオッ!

「何ッ!?」

 グルォッ!?

 

 一瞬の事であった。気づけばソニックレイダーは地面におらず、空中に舞い上がっていた。

 繰り出されたファングタイガーの爪の一撃を紙一重で避けたかと思うと、ミトラが回避された事を認識するよりも早く、その背後に着地してみせる。

 まるで軽業師かカンフー映画のアクション俳優がごとき早業。とても、先程までの一方的に嬲られていたソニックレイダーと同一とは思えない。

 

「なんだこいつ、いきなり早く………ま、まさかッ!?」

 

 そこでミトラは思い出した。生意気にも自分にジャミング弾をぶつけてくれたあのタルデ校生徒(タスク)の事を。

 そして気付いた、そいつの姿がどこにも無い事と、ソニックレイダーのコックピットハッチが閉じている事に。つまり、ここから弾き出される答えは。

 

「ま、まさか………コックピット(そこ)に居やがるのかッ!?テメエが操縦者(ライダー)だって言うのか!?」

「その通りッ!!」

 

 コックピットに座るタスクが、握った操縦桿を目一杯倒した。前へ進め、と操縦桿(たづな)越しに命令を下した。

 するとソニックレイダーが大地を踏み鳴らし、ファングタイガー向け突撃する。

 

「タルデ校の分際でぇぇっ!!」

 グルガァア!!

 

 ファングタイガーが迎撃としてレーザーガンを撃った。しかし、ソニックレイダーに当たる事は無かった。

 放たれた光の弾丸が着弾するよりも早く、ソニックレイダーは左右に飛び上がっては避けを繰り返した。

 

「このぉ!何で当たらないんだよぉ!!」

 

 苛立ったミトラは更にレーザーガンを撃たせたが、いくら振り注ごうがソニックレイダーはそれを次々と避けつつ、その強靭な脚で地面を蹴り、ファングタイガーに急速接近する。

 20m、15m、10、9、8、7………刹那、その時は訪れた。

 

「行けえええっ!!」

 ギャオオッ!!

 

 すれ違う一瞬、ソニックレイダーはファングタイガーのレーザーガンの片方に噛みつき、一気に噛みちぎった。

 金属とパーツのひしゃげる音と共に火花が出血のように散り、レーザーガンがファングタイガーのボディから離れた。

 

「馬鹿なぁあ!?」

 グルガァアア!?

 

 衝撃によりファングタイガーがそのまま大きく吹き飛ばされ、コックピットを爆発と振動に襲われたミトラが次の瞬間見たのは、ファングタイガーの後方で口に折れたレーザーガンを咥えた状態でこちらを見るソニックレイダーの姿。

 

「バカな………素人があんな操縦を………!?」

 ガウウッ………!

 

 あり得ない!そう、ファングタイガーが言うように、悔しげに唸る。

 そしてファングタイガーの方にも異常が起きた。

 

「クソっ!こっちもコンバットシステムが………!」

 

 見れば、コンソールに灯る非常事態を示す警告。

 ゾイドを人間の兵器として成立させている様々な手綱(システム)の内、ソフトウェアであるコンバットシステムが衝撃でフリーズしてしまったのだ。

 これではファングタイガーは戦えない。対するソニックレイダーはそれを知ってか知らずか「まだやるか?」と言うかのように、相手を睨み唸っている。

 

「………仕方ない、引くぞ!」

 ガウウッ!

 

 ミトラ自身、自分より下に見ていたタルデ校に背を向ける事は屈辱であった。

 しかし今まで生き残って来れたのは引き際を弁えていたからだ。ので、今までそうしていたように、ファングタイガーを反転させ、夕焼けの街の中を走り去って行った。

 コンバットシステムがフリーズしたファングタイガーも、生物的危機感の方が勝ったらしく、ミトラの操作を受け入れ、文字通り尻尾を巻いて逃げていった。

 

「はあっ………はあっ………か、勝てた?」

 

 脳裏に、ファングタイガーを追いかけるという選択肢が一瞬浮かんだが、タスクはそれを却下する。

 ファングタイガーを下したタスクの身体は、とてつもない疲労感に襲われ、今にも倒れそうな程疲れていたからだ。

 

 ギャオオォォーーーーーーンッ!!

 

 一方、戦いに勝利したソニックレイダーが勝利の咆哮を挙げる。こうして見ると、ソニックレイダーも由緒正しい恐竜型ゾイドだという事がわかる。

 もうそこには、かつての傷ついた病み上がりのゾイドの姿は無かった。ソニックレイダーは、立派な勝者として君臨していたのである。

 

 

 ***

 

 

 ファングタイガーが尻尾を巻いて逃げ出し、戦いが終わった頃には、もうすっかり夕方になっていた。

 

「本当に勝ったのか………?」

「ああ、どうやらそうらしい」

「俺達のゾイドが勝ったのか?」

「はは、案外できるもんだな………!」

 

 生徒達が心配そうに、そして勝利したソニックレイダーを称えるかのように集まってくる中、レベッカもまた、戦いを終えたソニックレイダーの元へと駆け寄ってきた。

 先も話したが、ソニックレイダーはついこの間まで大怪我を負って大学に保護され、治療を受けていたゾイド。それがあんな激しい戦いをして、大丈夫なのかと思ったレベッカであったが。

 

 ギャウウッ

「………そっちは、無事そうね」

 

 ソニックレイダーが「僕は大丈夫だよ」と言うように小さく唸る。

 回復してすぐの戦闘だった為心配していたレベッカだが、見たところ受けたダメージも装甲の傷も自力で治癒できる程であり、これと言って疲れている様子も無かった。

 ソニックレイダーの方はもう大丈夫そうである。だが。

 

「でも、タスク君は………」

 

 問題は、ゾイドに乗った事はあれど、ゾイドを使った戦闘は今回が初だったタスクの方である。

 

「(ゾイドの操縦は身体に強い負荷がかかる………昔少しだけ乗った事があったとしても、これだけ激しい操縦をすれば、タスク君は………!)」

 

 コックピットを覆う半透明のキャノピーが展開し、そこからタスクが顔を出した。

 

 ギャウウッ………

「あ、ありがとう………」

 

 同時にソニックレイダーが姿勢を落とし、降りるよう促した。タスクはそれに従い、コックピットから這い出るように地上へと降り立つ。

 見たところやはりと言うか、激しい動きにより全身にかかる重力(G)と極限状態での判断に晒されたタスクは、ひどくやつれているように、レベッカには見えた。

 

「タスク君………」

「レベッカさん………うっ、ぐうっ」

 

 そして、レベッカの心配事はすぐ現実となった。

 しばらく立っていたタスクであるが、すぐに限界を迎えたのか、ぐらりと体勢を崩して倒れる。

 そして近くにいたレベッカが、咄嗟にそれを抱きとめた。幸い、レベッカより背が低かったタスクは、簡単に受け止める事が出来た。

 

「タスク君!」

「うう………僕、ちょっと疲れちゃって………立てない………や………」

「タスク君!?ちょっと、タスク君!?しっかりして!!」

 

 しばらくは意識を保っていたタスクであったが、直にレベッカに抱きとめられたまま目を閉じ、そのまま意識を手放した。

 がくり、と脱力するタスクを前に、レベッカはまさかの事が起きたのでは?と慌てふためいた。

 

「………いえ、ご安心を。彼は眠っているだけです」

「貴方は?」

「保険の先生です、はじめまして」

 

 パニックになりかけたレベッカであったが、そこに保険の教師がやってきて冷静に答える。

 確かにタスクは目を閉じ意識を失ってはいるが、よく見てみればスウスウと寝息を立てたまま眠っているだけである。

 大事には至っていないと見ていいだろう。しかし、身体に酷い負担がかかっている事は見て間違いない。

 

「とりあえず保健室のベッドに寝かせましょう、さあ」

「は、はい………!」

 

 レベッカは保健教師に勧められ、共にタスクを保健室へと運ぶ。その様子を他の生徒達やソニックレイダーは心配そうに見守っていた。

 これから待つ戦いに備え、今は眠れ。誰かは分からないが、誰かがタスクにそう言っているようにも見えた………。

 

 ………かくして、タルデ高校初のゾイドによる戦闘はこうして幕を閉じた。

 そして、これが長く続く三高校との戦いの日々の始まりである事を、タルデの生徒達も、タスクも、レベッカも、ソニックレイダーも、未だ知らないままでいた。

 

 

 ………ZOIDS(ゾイド)

 それは機械の肉体と動物の本能、闘争心を併せ持ち、地球最強の兵器として君臨する、金属生命体=生きたロボットである。

 ここ、学園都市リヒトにて。

 都市を三分割し勢力化に置くアルバ、ヴィーダ、グァンマの3つの学園が、街の覇権と己の威信を賭け、ゾイドを用いた学園間抗争に日夜明け暮れていた。

 そんな中、そんな抗争と無縁でありながらも、三高校の戦いに巻き込まれ疲弊している進学校・タルデ高校があった。

 タルデ校は自分達の身を守る為、敢えて三高校と同じ土俵に立つ決心をした。彼らのように、ゾイドを力として求めたのである。

 この物語は、不良達の熱いドラマの裏で踏みにじられてきた優等生達の逆襲の物語………そして、一人の少年と一体のゾイドが歩んだ、青春という名の戦いの記録である!




今日のゾイド
・ソニックレイダー
種別:ディノニクス型
本来は普通のギルラプターだったが、身体の装甲の大部分を失う重傷を負った状態でヘリック大学に保護され、ソニックバードの装甲を移植される等の改修を施された。
そしてタルデ高校に編入され、タスクの相棒ゾイドとなる。
バネ性に優れた脚部を生かした俊敏な戦い方を得意としており、本能解放する事で背中のウィングスタビライザーを展開し、エネルギーを纏った爪で敵を切裂く「ストライクレーザークロー」を繰り出す。
尚ソニックレイダーという名前はあくまでニックネームであり、ゾイドとしての種別は単なるギルラプターである。
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