ゾイドワイルドヴァーサス‐不良がゾイドで抗争する学園都市で自分達を守るためにゾイドに乗る事を選んだ陰キャ学生の話 作:アイアイホイホイおさるさん
#5
◆◇◆これまでのあらすじ◆◇◆
学園都市リヒト市にあるタルデ高校。そこは、都市を三分して支配する三つの不良高校によるゾイドを使った抗争に巻き込まれ、苦しめられている進学校だった。
苦肉の策として、タルデ校は自分達もゾイドを購入し、三高校のゾイドに対抗する事を決定。その
そしてゾイドが納品される日の放課後、それを聞きつけた三高校の内の一つ、私立アルバ高校のミトラが操るファングタイガーがタルデ校を襲撃!
タスクは納品された恐竜型ゾイド・ソニックレイダーを操り、これを撃滅!見事、タルデ校に初勝利を齎したのであった!
***
「………で、お前はタルデ校の陰キャに自慢のゾイドをやられて、おめおめと逃げ帰ってきたと」
ここはアルバ高校………の校外にある街の一角にある路地裏で、アルバ校生徒の溜まり場の一つ。
ソニックレイダーに敗れ、ファングタイガーも破損するという大失態を犯したミトラはそこで、仲間達から吊るし上げを食らっていた。
「で、でもよ、奴等の操るゾイドは本当に強かったんだ!本当だ!」
「何にせよ、負けて逃げ帰ってきた事には変わりないだろ?」
「フタトラっ、それはっ………!」
そんなミトラに圧をかけているのは、不良仲間の「フタトラ」。ミトラと似たような仕様の制服を着て同じような金髪をしているが、こちらはドレッドヘアーを後ろにまとめている。
「ミトラ、俺達はただ戦ってる訳じゃない。アルバ高校の看板背負って戦ってるんだ。それがタルデ校の、まともにゾイドに乗った事も無いだろう奴らに負けたようでは、アルバの沽券に関わる」
「いっ、イチトラ先輩………」
「わかるか?俺達の世界はナメられたら終わりなんだよ」
そして彼らを総括しているのが、彼らの
やはり世紀末のような改造制服に金髪で、お揃いの金髪はウルフカットである。虎なのに。
「しゃあねえ………次は俺とフタトラも一緒に行く」
「えっ!?」
イチトラが立ち上がる。フタトラも一緒だ。
顔を上げるミトラに、イチトラはニッと笑って語りかけた。そこには皮肉でも嘲笑でもなく、見ている者を安心させる強さがあった。
「確かにお前は失態を犯した………だが同時に、お前がナメられたという事でもある」
「いっ、イチトラの兄貴………!」
「だったら、「お礼」をしに行かないとな?」
弟分の不始末は兄貴分がつける。そんな男気を感じさせるイチトラ。
その背後………路地裏の突き当たりとなるフェンスの向こうで、彼ら三人の愛機たる残り二体の戦闘機械獣が、そのナイフのような牙を剥いて
***
その日タスクは、いつも自分が寝ている布団とは違う違和感の中で目を覚ました。そして視界の先に広がるのは、いつもの下宿先の寮の天井ではなく、白い見慣れない天井。
一体これはどういう事か?と微睡みの中で呆けていると、これまであった事を思い出すと同時に目を覚ましてきた。
「ここは………そうだ、僕はあのゾイドと戦って………!」
飛び起きたと同時に、広がる光景からここが自室ではなく保健室のベッドの上だと言う事を知った。
それと同時に、ここまでの記憶が蘇ってくる。それが確かなら、タスクはソニックレイダーに乗り込み、アルバ校のファングタイガーと戦い、撃破した。そして………
「目覚めたようね、タスク君」
見れば、つい先ほど様子を見る為に保健室に入ってきたのか、レベッカの姿があった。その手には買ってきたのか、とある有名カフェのお持ち帰り用の紙袋が握られている。
「レベッカさん、僕は………」
「あの後気を失ってそのまま眠っちゃったのよ。びっくりしたわよ、いきなり倒れちゃうんだもの」
「………すみません」
「謝る必要はないわ。あなたが悪い訳じゃないし、初めてゾイドに乗って戦ったんだもの、仕方がないわよ」
そう、タスクはあの戦いの後気を失っていた。そして丸一晩眠っていたのだろう、保健室から見える窓の外はもう明るく、時計は10時を指していた。
既に授業は始まっており、これまで無遅刻無欠席でいたタスクは、これで生まれて初めての遅刻をしてしまう事になった。
「ああ、無遅刻無欠席の皆勤賞が………」
「身体の方が大事よ。そんな事より、お腹すいてるでしょ?」
「あ、どうも………」
そう言ってレベッカが持っていた紙袋を一つ手渡す。ムーンバッカスと書かれたそれに入っているのは、コーヒーカップとクロワッサン。
夕食も朝食も無しに眠っていたタスクを気遣って買ってきてくれたのだろう。タスクは好意に甘え、それを口に運んだ。
「食べながらでいいから聞いて欲しいの。まずは初勝利おめでとう。初めての実戦で勝利するなんて、流石は天才ゾイド少年と言った所ね」
「ですから………天才は昔の話ですよ、今は凡人です」
「それで、ここからが本題なのだけれど、私達はソニックレイダーを運用する為に部活を立ち上げる事になったの。いわばゾイド部ね」
聞いて、タスクは昔の深夜アニメや日常系四コマ漫画で見るような謎の部活………特にシカの飼育を目的としたアレを思い出していた。
だが確かに、学校で生徒がゾイドを運用するとなれば、自動車研究会等がそうであるように部活という形になるのだろうとも思った。
「ゾイド部………なんか、いよいよアニメみたいな事になってきましたね」
タスクは、本来気を引き締めるべきこんな状況で少しだけ浮かれ気味な自分自身を皮肉った。
***
程なくして学校の一角、昔古い倉庫があったとされる空いた土地に、一軒の格納庫が設置された。
この格納庫であるが、簡単な固定をして設置するだけで簡易的な基地として機能する、いわばインスタント基地とでも言うべき優れものであり、軍でも使われている代物である。
何故そんなものがタルデ高校にあるかと言うと、まずはソニックレイダーを格納するため。そして、これから発足される「ゾイド部」の部室として使用する為である。
「改めまして自己紹介するわよ。私はレベッカ・スチュワート。このゾイド部の顧問兼整備・カスタム班よ」
「それで僕タスク・ダイワが部長兼部員第一号、と」
ギャウ
「そして、部の立ち上げの為のあれやこれやの手続きをしに来たのが生徒会長のこの私ダイスケ・ハイト」
部室にいるのは現在三人と一機。しかし一名は部外者である。そしてゾイド部にいる人間はたった二人であり、部員に限定すればタスクただ一人。
部の備品であるソニックレイダーを強引に部員として扱うとしても、たったの二人しかいない。通常、これでは部活としてまるで成り立たない。
「………あの会長、部員が一人しかいない部活って解体されるんじゃありませんでしたっけ?」
「ゾイド部は特例として認める事にした。まあ勿論、入部希望者が出てきて
そもそも、ゾイドという存在に対する好感度が最悪のこの学校でゾイド部に入りたいという生徒がいるのか?
という点に関してはタスクもハイトも頭が痛くなるので考えない事にした。
「ではそんな生徒会長に対する宣誓も込めて、あなたにこのゾイド部の活動理念について説明するわね」
「よろしくお願いします、レベッカ先生」
顧問である以上はレベッカ「さん」ではなく「先生」である。タスクは真面目なのだ。
そして「先生」と呼ばれたレベッカもまた、呼ばれるに相応しいだけの義務を果たす。
「我々ゾイド部は、三高校によるゾイド犯罪に対抗する為の、あくまで自衛の為の部活よ。彼等に勝って街の頂点を取る為ではなく、あくまでこのタルデ校を守る為にのみ、ゾイドの利用が許される。これはゾイドを運用するに至って、市と結んだ契約でもあるわ。くれぐれも守って頂戴」
「はい、先生」
三高校の暴虐を「いじめ」のような軽い言葉ではなく、きっちり「犯罪」と言い切ってくれるレベッカに、タスクは好感を覚えた。
それまでタスクの出会った大人は、タスク達が受けた被害を学生同士の軽いトラブルとしか見なかったから。
「次に部の活動資金については学校からの支給………ではとても間に合わないので、市から成果に応じた補助金が出る事になっているわ」
「つまり?」
「不良
ゾイドは基本、整備からカスタマイズまでとにかくお金がかかる。それを考えると、市からお金を出して貰えるのは願ったり叶ったりである。
もっとも撃破数検挙数による賞金式である事に関しては、タスクもレベッカと同意見であったが。
「他に何か質問はあるかしら?」
「はい、先生」
「はい何でしょうタスク君」
一人しかいない状況でわざわざ挙手して質問するというのは、中々に茶番チックである。しかし、タスクにはどうしても聞かねばならない事があった。それは。
「例えばですけど、授業中に不良のゾイドが攻めてきたりした時、僕は授業を抜け出して対応するって事ですよね?」
「まあそうなるわね」
「あの、その場合授業は欠席扱いになったりするんですか?それはちょっと………」
少し恥ずかしそうに問うタスクを前に、なんとも優等生学校であるタルデ校らしい質問である。と、見ていたレベッカは若干微笑ましく思った。
「ええ、その件に関しては………」
「その事に関しては私から説明しよう」
「会長!」
と、ここで今まで黙っていたハイト生徒会長が再びずいっと会話に入ってきた。
「敵ゾイド襲撃によって授業を抜けなければならなくなった場合、その授業に関しては免除する事となっている。当然内申点にも響かないし、欠席扱いにもならない。安心して戦ってくれたまえ」
「なんだか、至れり尽くせりですね………」
「そりゃあ、我々の身を守ってほしいからね。それに身を挺して前線で戦うのなら、これぐらいはしてやるものだよ」
授業に関しての心配は解消した………と思いきや、それを聞いてもタスクの表情は、未だ不安を抱いて晴れないでいた。
「………どうした?何か不満か?」
「いえ、授業が免除されるのはいいんですよ?でもその授業、僕は出てないですよね?」
「そうなるな?」
「それで授業についていけなくなったり、学力が落ちる事に関しては、やっぱどこかで補習とかしてくれるんですよね?」
聞いていたレベッカもハイトも、つくづくこの学園は優等生学校であり、タスクは優等生なのだと痛感した。
彼はこんな状況においても、自分が学校の授業についていけなくなる事を危惧していたのだ。