ゾイドワイルドヴァーサス‐不良がゾイドで抗争する学園都市で自分達を守るためにゾイドに乗る事を選んだ陰キャ学生の話   作:アイアイホイホイおさるさん

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 そもそもの話、何故三高校はゾイドを使って派手に戦っているのに社会問題にならないのか?それは、大手動画ストリーミングサービスと、三高校のスポンサーとしてついているからだ。

 彼等は街中でゾイドを使って戦い、その様子を動画として配信している。それは動画ストリーミングサービス会社からすれば再生数と広告費を稼ぐ絶好のドル箱だ。

 それを失いたくない会社が市や警察に圧力をかけ、結果三高校が野放しになっている。

 そして三高校は動画で稼いだ資金でゾイドや武装を買い、より激しく戦い………という悪循環が出来てしまっているのだ。

 今や、不良と喧嘩も情報と経済の時代である。

 

「あいつらの戦術に乗っかるのは尺だけど、だったらこっちも動画再生数戦術は使わせてもらうよ」

 

 タスクを乗せたソニックレイダーが、波を立てながら池の中へと入ってゆく。それに追随するように、複数機のドローンがソニックレイダーの周りを飛んでいる。

 

「レベッカ先生、よく撮れてる?」

「ええバッチリよタスク君」

 

 このドローンは動画を撮影する機能のついたもので、三高校が自分達の戦いを録画し、配信するために使っている物と同一の物。

 目的は一つ、これから始まるゾイド部の活動を配信する事だ。

 三高校のような街中での戦闘行為ではなく、今回のようなボランティア等の「正しいゾイドの使い方」で広告費とスパチャを稼ぐ。それが、ゾイド部の狙いである。

 

「えっと………どうもー、タルデ高校ゾイド部のタスクです、これからあのガノンタスを捕獲していきたいと思います、と………」

 

 配信の向こうで見ている視聴者への自己紹介を済ませ、タスクは操縦桿を握る。

 ソニックレイダーが尻尾や腕で池をバシャバシャと鳴らしながら、水上に佇むガノンタスへと近づいてゆく。

 

 ………クワァ?

 ギャオオッ!!

 

 何だい?と問うように唸るガノンタスに対し、ソニックレイダーは威嚇するように激しく吠えてみせる。その間も尻は水を鳴らし、大きな音を立てる。

 

 クワッ、クワワッ

 

 すると、先程までじっとしていたガノンタスは、逃げるように水上を移動し始めた。短い手足で水底をかき、実際の亀かカバのように池の中を進んでゆく。

 ガノンタスは温厚であると同時に、素の状態では戦いの手段を持たない防御全振りのゾイド。ソニックレイダーが威嚇すれば、争いを避けるために逃げるとタスクは考えた。

 結果は、タスクの作戦勝ち。ガノンタスは罠のある方へと泳いでゆく。

 

 クワッ、クワワッ

 

 すると、ガノンタスが何かに反応した。箱罠の中、ポンと置かれたボーキサイトめいた鉱石のような物を、それが水に溶けたように放つ僅かな「におい」を見つけたのだ。

 ガノンタスは嬉しそうに数度鳴くと、箱罠の方へと短い足で水と水底をかきながら泳いでゆく。恐らく、公園の池で何日も飲まず食わずで佇んでいたのだろう。

 

 さて、ここでガノンタスを誘導する為に使われた餌こと「レッゲル」という鉱石が一体何なのかを読者の皆様に軽く説明しよう。

 レッゲルとは、古代の時代に蓄積された汚染物質等が地球に濾過されて生成された物質である。

 多く採掘される割には燃料としてはあまり役に立たないのだが、ゾイドの肉体を構成する物質と非常に近い構造をしており、ゾイドはこれを好んで捕食し、栄養に変えている。

 ゾイドの餌として非常に優秀かつほぼ無限の採掘量を誇る事から、軍から民間までのゾイドを運用する組織でゾイドの餌として使用されている。

 

 クワッ、クワワッ

 

 そんなレッゲルに釣られたガノンタスは、箱罠の中へとゆっくり近づいてゆく。特に罠を警戒する様子もなく、作戦は完全に上手く行っていた。

 

「よーし、いい子だ、そのまま罠に入れ………!」

 ギャウッ………!

 

 ガノンタスが箱罠の中に入ろうと短い足を乗り上げた、その時である。

 突如としてガノンタスの右サイドから爆発が起きた。否、爆発が飛んできた。何者かが放った弾丸が着弾したのだ。

 

「なん………ッ!?」

 クワァ………!?

 

 驚愕するタスク。その眼前でバランスを崩したガノンタスは転倒し、池の中で横倒しになってしまった。

 

「よっしゃあ!一発ヒットしたでぇ!」

「誰だッ!?」

 

 そして罪なきガノンタスに砲を浴びせた張本人は、通常ゾイドの侵入が禁止されているここグスタフ公園に、悠々とゾイドに乗って参上した。

 

「こいつらは………!?」

「緊急事態よタスク君!ヴィーダ校のゾイド軍団よ!」

「ヴィーダ校!?って事はこいつら、兵器ゾイド(バイザーつき)か!」

 

 そう、それは復元と同時に大規模な改造を施され、ゾイドの機能を大幅に向上させるZ-O(ゼットオー)バイザーを取り付けられた、ヴィーダ校の象徴たる兵器ゾイド達。

 先頭を進むのは戦車のような装甲に身を包んだワニガメ型ゾイド「バズートル」。そして両機として、背中にミサイルランチャーを後付けで装備したヴィーダ校の主力量産機であるダイオウグソクムシ型ゾイド「グソック」が二機続く。

 

「だはははっ!誰かと思えば噂のタルデ校のソニックレイダーやんか!こんな所で会えるとは思わんかったでぇ!」

「僕達の事を知っているのか?!」

「自分ら有名人やからなぁ!そして俺はヴィーダ校のタツマル・ニシガシや!よろしゅうなあ!だはははっ!」

 

 バズートルを操るのは、ヴィーダ校に所属する操縦者(ライダー)である「タツマル・ニシガシ」。

 彼の兄貴分(じょうかん)であるキタジマを硬派な番長とするなら、ニシガシはその舎弟でお調子者と言った感じか、無精髭を生やしてボサボサの髪を伸ばしている。

 某男の塾の力自慢な彼に近い見た目だが、ニシガシはしっかり社会に迷惑をかける不良なので、もし彼が邪悪な悪役として生まれていたらといった外見である。

 

「あと、俺らの目的はお前らが捕まえようとしとるそこのガノンタスや!」

「何だと!?」

「そいつを改造して俺のバズートルみたいな兵器ゾイドにするんや!抗争も続いとるさかい、一体でも多くの戦力がいるんや」

 

 ヴィーダ学園の特色は、兵器ゾイドを自前で開発できる工業力。それを駆使すれば、ガノンタスのような野良ゾイドを兵器ゾイドに改造する事など造作もない。

 そしてそんな事を聞かされて、タスクも黙っている訳にはいかない。

 

「だったら余計にここは退けられない!」

 ギャオオッ!!

 

 倒れたままのガノンタスを庇うように、ソニックレイダーが前に出る。

 タスクとしては、ゾイドをこれ以上不良の抗争という悪事に利用させるわけにはいかないという、愛と正義が故の行動である。

 

「………と、本来はそれだけやけどな?」

「どういう事だ?」

「本来ならガノンタスを捕まえるだけやった。けどな、お前がここに現れたんなら伝えなあかん事がもう一つある」

 

 しかしそんなタスクの勇気を嘲笑うかのように、否実際嘲笑いながら、ニシガシは酔っ払いのような目ニヤけたでソニックレイダーを見据えている。

 

「単刀直入に言う、自分俺らの仲間になれ」

「………何?」

 

 突然の勧誘。タスクも一瞬何を言われたか解らなかった。

 

「アルバ校の襲撃を二度も退け、おまけに生身でワイルドブラストまでしてみせる。お前の能力はウチの総番(キタジマのアニキ)も高く見とるんや。どうや?お前の力があれば、この街の頂点(テッペン)も夢やないで」

 

 わざわざ総番(だいひょう)の名前まで出して言うという事は、ニシガシの言っている事はヴィーダ校全体からの要求なのだろう。

 確かに、ヴィーダ校はアルバ校と敵対しているし、それを二度も退けた実力を持つタスクを仲間に勧誘するというのは筋は通っている。

 

「………笑わせるな」

「んあ?」

「誰がお前たちなんかに手を貸すか!」

 

 しかし、ニシガシは二つ見当違いをしていた。

 タスクは、ニシガシ達が夢中になって追い求める街の頂点(テッペン)になど、これっぽっちの興味もない事。

 そしてヴィーダ校アルバ校関係なく、社会に迷惑をかけて真面目な生徒(じぶんたち)を傷つける不良が大嫌いである事だ。

 

「僕達ゾイド部は、お前達みたいな戦争ごっこで他人に迷惑かける奴らと戦うために作られたんだ!そんな奴らに、ゾイドで皆を傷つけるような奴等の仲間になんか、誰がなるか!」

「でも自分、アルバ校と敵対しとるんやろ?」

「関係ない!タルデ校(ぼくたち)から見たらアルバ校(やつら)ヴィーダ校(おまえら)も等しく敵だ!!」

 

 何より、ゾイドを抗争に利用する連中に手を貸す訳が無い。この勧誘は、最初から破綻していたのだ。

 そして敵対するのでれば、ニシガシがヴィーダ校を代表して取る手段は一つ。

 

「そうかい!後悔すんなや!?おいお前ら!ソニックレイダー(あいつ)に集中砲火や!!」

「「ウッス!ニシガシの兄貴!」」

 

 グソックが甲羅両サイドの二連装キャノン砲を掃射した。まるで海戦のように、池に着弾・爆発の水柱が立つ。

 そしてその中を縫うように、ソニックレイダーが猛スピードで水上を駆け抜ける。

 

「煽ったのは自分だけど、結局戦う事になるのか!」

 ギャウオオッ!

「わかってるよ!自業自得だろ!?」

 

 グソックの砲撃により立つ水柱の内から、タスクは狙いを定めてレーザーガンを放つ。

 水柱が上手く目隠しになった為、グソックはソニックレイダーの射撃に晒される事になった。

 

「うわっ!」

 ギャワッ!

 

 岸から撃っていたグソックの内一機が、水上から放たれたレーザーにより、装甲の薄い下部から攻撃を受けた。

 途端に手綱(コンバットシステム)がダウンし、グソックは戦闘不能に陥る。残るは一機。

 

 

 ***

 

 

 ヴィーダ校の突然の襲撃により、予期せぬ戦闘に突入する事になった、ガノンタス捕獲チーム。

 ヘリック大学のスタッフがあわあわと慌てる中、レベッカだけは慣れた手つきでドローンを操作する。

 

「れ、冷静ねスチュワートさん」

「何だかんだ言ってバトルシーンの動画は儲かるのよ」

「というか、公園で戦ってゾイド部は大丈夫なの?」

「自衛の為の戦闘なら警察にも市にも話がつくわ」

 

 流石はゾイド部顧問である。公でゾイドを扱う為に、様々な場所へ手回しを済ませている。

 社会的問題はクリアしたとして、後はこの闘いの勝敗である。

 

「相手はダイオウグソクムシ型(グソック)ワニガメ型(バズートル)………ちょっと不利ね」

 

 少し考えた後、レベッカはある事を思い出した。

 

「そういえば、頼まれてた「アレ」はもう調整できてる?」

「え………ええ、コンバットシステムはバッチリよ」

「サンキュー!」

 

 確認を取ると、レベッカは公園の側に駐車しておいたヘリック大学のトラックへと急ぐ。

 ………後にレベッカは語った。「デキる大人というものは常に「こんな事もあろうかと」を怠らない物である」と。

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