遊戯王VRAINS Ⅱ Wisteria Flower   作:紅緋

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おい、デュエルしろよ
(前話)




02:M∀LICE

 

 LINK VRAINSの一角。草薙仁──グラスモーⅡは人気(ひとけ)のない場所を黙々と歩いていた。

 

(うーん……あからさまでしないよりはマシだけど──)

 

 財前晃とのやりとりの後LINK VRAINSへ直行。相手がSOLが主催する大会の関係者を襲撃するのであれば、既に大会出場資格を得ているグラスモーⅡ(自分)もターゲットにしている可能性もある。今はまだ情報が少ないため、翔一の情報収集と並行して囮捜査のような形でグラスモーⅡはあえて人気のない場所を歩いていた。

 

(──まぁ早々出くわすものじゃないよね)

 

 だが所詮は初日のその場あたりな行動。一応、翔一が情報収集と同時に警戒もしてくれてはいるが、1時間近くブラついて成果はなし。あまりにもヒマ過ぎて途中から路地のゴミ箱を数え始めたほど。

 そんな中、兄から通信が入る。

 

『仁』

「あっ兄さん? いきなりLINK VRAINSはちょっと逸り過ぎたかも。一旦ログアウトしてもど──」

『気をつけろ、()けられている』

「──っ!?」

 

 突然の報告に思わず身構えるグラスモーⅡ。表情には出さないよう、目線だけで周囲を見るも怪しい人影はない。自分の視界の外に居るであろう人物にグラスモーⅡは警戒を強める。

 

『相手が本命かどうかはわからない──が、これはチャンスだ。うまく誘い込むんだ』

「……わかった」

『危ない時は強制ログアウトさせるからな』

「うん」

 

 平静を装いグラスモーⅡは歩を進める。さらに奥へ奥へ、より人気がなくより人目のないところへ向かう。

 数十分ほど歩けば袋小路へと辿り着き、そこでグラスモーⅡは息を整え、体を反転。アバターには流れないハズの冷や汗を垂らしながらも、強い眼差しで薄暗い道を睨む。

 

「出て来なよ。ここなら誰の邪魔も入らない」

「──お見通し、という訳か」

 

 薄暗い道から影が2つ(・・)

 1つは白い衣装──だったであろう、薄汚れてところどころがボロ雑巾のように破れたハノイの騎士の衣装に身を包んだ男。顔の上半分を覆う仮面も右目部分が割れ、充血した目を大きく見開いてグラスモーⅡを睨む。

 1つは黒い衣装。かつてハノイの騎士の幹部であったバイラの衣装を白黒反転させた衣装に身を包み、長い紫色の髪を靡かせる少女。

 その中でハノイの騎士の男が前へ進み──

 

「グラスモーⅡ、私とデュエル──誰だ貴様!?」

「えっ」

 

 ──背後の少女に身構える。

 

「ふっ……!」

「なっ──っ!?」

 

 すると少女は無言でデュエルディスクから発光するワイヤーを射出。ワイヤーは男の腕に絡みつき片腕だけ拘束する。

 

「き、貴様何者だ!? 私の邪魔をする気か!? このデュエルアンカーは何だ!?」

 

 ガチャガチャとデュエルアンカーを振りほどこうとするものの、物理的な手段では(ほど)くことができないため男は少女に向かって声を荒げる。

 

「ねぇ──」

「何だ!?」

「私とデュエルしてよ」

「えぇ……」

 

 が、男の問いのどれにもない返答をする少女。

 苛立つ男。

 謎の少女。

 困惑するグラスモーⅡ。

 全く事態も状況もわからなく、グラスモーⅡと男だけが頭上にクエスチョンマークを浮かべる。

 

「デュエルだとぉ? 何故私が貴様とデュエルを──」

「理由は3つ」

 

 少女は指を1本立てる。

 

「1つ。貴方はLINK VRAINSで騒ぎを起こし、その解決のために来るPlaymakerを目的としている」

 

 続けて2本目。

 

「2つ。私は貴方に力を与えたモノ(・・・・・)を追っている」

 

 最後に3本目。

 

「3つ──私の名はWisteri∀(ウィステリア)。Playmakerの娘」

 

 少女──Wisteri∀の放った言葉にグラスモーⅡと男、そして通信している翔一の目が見開く。

 

「Playmakerの娘……だと? そんな嘘で私を騙そうなど──」

「このデュエルディスクに見覚えは?」

 

 そう言ってWisteri∀は左腕に着けたデュエルディスクを男に見せる。

 20年以上前の──それもカードを直接セットする方式の旧式も旧式、まるで骨董品のようなデュエルディスクを。

 

『あのデュエルディスク──いや、それだけじゃない。登録IDも遊作のデュエルディスクと一致している……!』

「デュエルディスクの登録IDが一致って……それじゃあ、あの子は本当に……」

 

 グラスモーⅡの懐疑的な態度から確信に変わった様子を見て、男の口角が上がる。

 

「──なるほど、嘘ではなさそうだな。Playmakerの娘、Playmakerを出せ」

「私とデュエルして、私に勝てたら」

「面白い……ならば引きずり出してやろう!」

 

 Wisteri∀と男は互いにデュエルディスクに構え対峙。

 状況に置いていかれたグラスモーⅡだったが、騒動の元凶であるハノイの騎士のような男──そしてPlaymakerの娘を名乗るWisteri∀から目を離す訳にはいかない、と瞬きも忘れて注視する。

 

「デュエルっ!」

「デュエル」

 

 先攻を取ったのは男。5枚の手札を一瞥し、下卑た笑みを浮かべる。

 

「完璧な手札だ──私はライフポイントを1000支払い、永続魔法《ドラゴノイド・ジェネレーター》を発動! 1ターンに2度まで《ドラゴノイドトークン》を特殊召喚することができる! 現れよ2体の《ドラゴノイドトークン》!」

 

 永続魔法の発動と同時に男のライフポイントは3000になるが、その直後に2体のトークンが生成。

 

(EXデッキからの召喚はできなくなるけど、通常召喚を残したまま2体のモンスター……これは……)

 

 過去のニュースや映像からハノイの騎士が使役するエースモンスターを思い浮かべるグラスモーⅡ。最近のデッキなら下手をすれば詰みかねない効果を持ったモンスターが出てくるだろうと身構え──

 

「《ドラゴノイドトークン》を出した場合、エンドフェイズに相手の場にも同じだけ《ドラゴノイドトークン》を出す。続けて私は魔法カード《アイアンドロー》を発動! 自分場に機械族が2体のみの場合、2枚ドロー! さらに永続魔法《冥界の宝札》を発動!」

「なっ──」

 

 ──その前の行動に言葉を失う。

 《ドラゴノイド・ジェネレーター》からレベル7以上のモンスターを出すなら手札消費は2枚になるが、それを補うように合わせて使用したドロー加速(ターボ)の数々。

 

「さぁ見るが良い! これがかつてリボルバー様より賜りし最強のカード! 2体の《ドラゴノイドトークン》をリリースし──《クラッキング・ドラゴン》をアドバンス召喚ッ!!」

 

 そんなグラスモーⅡの反応に一瞥もせずに男は自慢のエースカード《クラッキング・ドラゴン》を降臨させる。

 かつてサイバース世界やLINK VRAINSに破壊の限りを尽くした黒棘の機械竜──それが再びLINK VRAINSへと顕現した。

 

「永続魔法《冥界の宝札》の効果発動! 2体以上のリリースを要するアドバンス召喚時に2枚ドローする!!」

 

 手札増強カードで増やした男の手札は5枚。それら5枚に目を通し、恍惚な表情を浮かべる。

 

「完璧に近いドローだ……私は魔法カード《ピアニッシモ》を《クラッキング・ドラゴン》を対象に発動! このターン《クラッキング・ドラゴン》の攻撃力を100にする!」

「攻撃力100──なるほど」

「察したようだなPlaymakerの娘! 私はさらに魔法カード《機械複製術》を《クラッキング・ドラゴン》を対象に発動! 攻撃力500以下の機械族と同名モンスター2体をデッキから喚び出す! 来い──2体の《クラッキング・ドラゴン》ッ!!」

「なっ──」

 

 グラスモーⅡは絶句してしまう。1体でも厄介な《クラッキング・ドラゴン》が3体もフィールドに。それも《ドラゴノイド・ジェネレーター》や《アイアンドロー》といった使用に癖のあるカードを使いつつ、盤面を作った男のデュエルタクティクスは一朝一夕で身につくものではない。

 

『仁、どうやらあのハノイの騎士のような男だが……遊作が初めてスピードデュエルした男だ』

「遊作さんとスピードデュエル……あっ」

『あぁ、おそらく遊作に負けてからも鍛え続けたんだろう……この20年、愚直にな』

「それであの盤面を……」

 

 努力は裏切らない、とでも言うような盤面にグラスモーⅡは舌を巻く。

 敵と言えどその実力に虚偽はなく、ただ愚直なまでに得た修練の結果──ただ、その目的がPlaymakerという事実に顔を伏せる。

 

「驚くのはまだ早い! フィールド魔法《ガイアパワー》と永続魔法《悪夢の拷問部屋》をそれぞれ発動! そしてリバースカードを1枚セットし、エンドフェイズだ!」

「……あぁ、そういうコンボね」

 

 男が新たに出した2枚のカードを一見したWisteri∀は納得したように呟く。

 そんなWisteri∀に視線も向けず、男は嬉々とした表情で口を開いた。

 

「《ドラゴノイド・ジェネレーター》の効果で貴様の場にも《ドラゴノイドトークン》が特殊召喚される──さぁここからだ! 《クラッキング・ドラゴン》の効果発動! 相手が1体のみ召喚・特殊召喚した時、そのレベル×200攻撃力を下げ、下げた数値分のダメージを与える! 食らえクラック・フォール!!」

 

 《クラッキング・ドラゴン》から蛍光緑の光が放たれWisteri∀を襲う──

 

「まだだ! 《クラッキング・ドラゴン》は3体居るため残り2体のクラック・フォールも受けてもらう!」

「構わない」

 

 ──続けて2体の《クラッキング・ドラゴン》からも同じ光が放たれ、Wisteri∀のライフポイントを小刻みに減らしていく。

 

「──っ、そうか《ガイアパワー》はそのために……!」

『仁?』

「通常なら攻撃力300の《ドラゴノイドトークン》は攻撃力を下げられても途中で攻撃力0になるからダメージも発生しない……けど《ガイアパワー》は地属性の攻撃力を500上げる。今の《ドラゴノイドトークン》の攻撃力は800。これで合計600のダメージを与えることができる」

『なるほど……ん? 待ってくれ仁。確かアイツの使ったカードに──』

「《悪夢の拷問部屋》の効果発動! 相手に効果ダメージを与える度にさらに300ポイントの追加ダメージを与える! 3体の《クラッキング・ドラゴン》で発生した3回の効果ダメージ──合計900のダメージを受けるがいい!」

 

 グラスモーⅡと翔一のやりとりの最中、男の真のコンボが牙を剥く。

 《クラッキング・ドラゴン》の200ダメージ3回、《悪夢の拷問部屋》の300ダメージ3回──合計1500ダメージがWisteri∀のライフポイントから引かれる。

 一瞬にしてライフポイントの3分の1以上を持っていかれるも、当のWisteri∀は涼しい顔。

 そんなWisteri∀の表情には目もくれず男は相変わらず嬉々とした顔のまま。

 

「《ドラゴノイドトークン》はもう1体貴様の場に特殊召喚される──さぁ3体の《クラッキング・ドラゴン》のクラック・フォールと《悪夢の拷問部屋》で3回の効果ダメージ、合計1500のダメージを受けろ!」

 

 蛍光緑のレーザー、炙るような炎が3回ずつWisteri∀を襲う。

 このターンで一気に3000もの効果ダメージを受け、Wisteri∀の残りライフポイントは──1000。

 

「ククク、これで私はターンエンドだ」

(……マズい)

 

 グラスモーⅡは男の盤面を見て口元を押さえた。

 3体の《クラッキング・ドラゴン》と永続魔法《ドラゴノイド・ジェネレーター》・《冥界の宝札》・《悪夢の拷問部屋》。

 フィールド魔法に《ガイアパワー》と正体不明のセットカード。

 手札こそ0枚だが、この状況はWisteri∀が圧倒的に不利。

 

(攻撃力700以上のモンスターを出しただけで《クラッキング・ドラゴン》と《悪夢の拷問部屋》のコンボで1000以上のダメージは確定……リンクモンスターで繋げようにも必ずどこかで召喚・特殊召喚はしなくちゃいけない。これは相当辛い……!)

 

 一見すれば詰みに等しい状況。

 現在はモンスターの召喚・特殊召喚を重ねてリンク召喚で戦うことが主流。そんな環境下で残りライフポイント1000で3体の《クラッキング・ドラゴン》を相手にすることは厳しい以外の言葉が見つからない。

 

「フハハハ! どうだPlaymakerの娘! 私の3体の《クラッキング・ドラゴン》の前に手も足も出まい! サレンダーするなら今の内だぞ?」

「私のターン、ドロー。速攻魔法《エネミーコントローラー》を2枚発動。2体の《ドラゴノイドトークン》をリリースし2体の《クラッキング・ドラゴン》のコントロールを得る」

「……は?」

 

 自信満々に高笑いする男の顔が凍り付く。

 3体の内、2体の《クラッキング・ドラゴン》は反旗を翻しWisteri∀のフィールドへ。

 

「なっ、き、きさ──」

「私の場に居る2体以上のモンスターを全て除外し魔法カード《ドラスティック・ドロー》発動。2体の《クラッキング・ドラゴン》を除外し3枚ドロー」

「──貴様ぁあああぁぁっ!!」

(うわぁ……)

 

 グラスモーⅡは少しだけ男に同情した。

 エースモンスターをコントロール奪取された上にドローのコストにされるというぞんざいな扱いに激昂するのも無理はないだろう。

 さらにサイバース族しか特殊召喚できないとはいえ脅威の3枚ドロー。Wisteri∀の手札は一気に6枚まで増えたので実質2体の《クラッキング・ドラゴン》をほぼノーコストで処理したに等しい。

 

「《クラッキング・ドラゴン》を対象に手札から罠カード《無限泡影》発動。このカードは自分場にカードがない時に手札から発動でき、対象のモンスターの効果はこのターン無効になる」

「おのれぇ……!」

 

 3体居た《クラッキング・ドラゴン》が1体に減り、さらには効果も無効。

 これでWisteri∀は《クラッキング・ドラゴン》と《悪夢の拷問部屋》によるコンボを気にせず展開することができる。

 

「手札を1枚墓地へ送り魔法カード《サイバネット・マイニング》を発動。デッキからレベル4以下のサイバース族を1体手札に加える。私はデッキから《M∀LICE<P>Cheshire Cat》を手札に加える」

「……M∀LICE(マリス)?」

『聞いたことがないカテゴリだな……』

 

 Playmakerの娘を名乗る以上、サイバース族使いであることは予想できたが手札に加えたカードに草薙兄弟が頭上にクエスチョンマークを浮かべる。

 サイバース族は基本的にAiたち──イグニスにしか生み出すことはできない。現在は例外的にSOLテクノロジーから生産されているサイバース族もあるが、あれらはあくまでも現在のランキング1位(・・・・・・・)の協力あってのものだ。

 それをSOLテクノロジーの協力なしで生み出すとなれば、余程サイバース族──イグニスに理解がなければ成し得ない。

 

「私は魔法カードで2枚ドローする」

「チィ、好きなだけ引くがいい!」

「魔法カード《天よりの宝札》。自分の手札・場のカードを全て除外し2枚ドローする」

「……は?」

「……え?」

 

 翔一が真剣に考えていた最中、対峙者と観戦者から呆けた声が出る。

 《天よりの宝札》。2枚ドローできる魔法カード──だがその代償として手札・場のカードを全て除外するというあまりにも大きいデメリットを持つカード。

 

「ふ、ふふ、ふははははは! 何だPlaymakerの娘! ドローのために残りの3枚もの手札を除外するとは……どうやらPlaymakerは貴様に戦術を教えていなかったようだな」

「……私は3枚の手札を全て除外し2枚ドロー」

「ふん、たった2枚の手札で私の《クラッキング・ドラゴン》に立ち向かえるハズが──」

「除外された《M∀LICE<P>Cheshire Cat》、《M∀LICE<P>White Rabbit》、《M∀LICE<P>Dormouse》の効果をそれぞれ発動。自身が除外された場合、ライフポイントを300払うことで自分場に特殊召喚できる。合計900のライフを支払う──帰って来てチェシャ、ラビット、ドーマウス」

「──は?」

 

 その大きいデメリットに嘲笑の高笑いをしていた男の声が止まる。

 2枚の手札しかなかったWisteri∀の場に突然3体のモンスターが現れる。

 悪戯好きの猫、慌てん坊の白兎、寝ぼけ眼の鼠──それら3体が次元の狭間より帰還した。

 

「特殊召喚した《ホワイトラビット》の効果発動。デッキから【M∀LICE】罠をセットする。私はデッキから《M∀LICE<C>GWC-06》をセット。」

(一気に3体のモンスター……!?)

「《ドーマウス》の効果発動。デッキから【M∀LICE】モンスターを除外し、このターン【M∀LICE】モンスターの攻撃力は600アップする。デッキの《M∀LICE<P>March Hare》を除外」

(それだけじゃない……)

「《チェシャキャット》の効果発動。手札から【M∀LICE】カードを除外して2枚ドロー。私は手札の《M∀LICE<C>TB-11》を除外して2枚ドロー」

(それぞれのモンスターの効果で盤面を強固に、そしてデッキ圧縮からのドローで手札の質を高めている……!?)

 

 グラスモーⅡは淡々とデッキを回すWisteri∀から目が離せない。残り1000だったライフポイントは【M∀LICE】モンスターの帰還効果で900払い、今の残りライフポイントは僅か100。だと言うのにWisteri∀はメインフェイズに相手が何かしてきても関係ない──それどころかメインフェイズでは何も仕掛けて来ないという確信を持ち、自分の手足の如くデッキのカードを捌いていく。

 

「私は手札から2枚の魔法カードを発動する。《トランスターン》と《ダウンビート》」

「なっ、何をするつもりだ……?」

「《トランスターン》は自分場のモンスターを墓地へ送り、デッキから同じ属性・種族でレベルが1つ高いモンスターを特殊召喚。《ダウンビート》は自分場のモンスターをリリースし、デッキから同じ属性・種族でレベルが1つ低いモンスターを特殊召喚する」

「貴様のモンスターは全てレベル3──つまりレベル4とレベル2を出す訳か」

「そう。私は《チェシャキャット》と《ドーマウス》をそれぞれコストにし──デッキから《サイバース・ウィザード》と《スタッグ・リバイバー》を特殊召喚する」

「なっ──」

 

 男の顔が驚愕の色に変わる。

 《サイバース・ウィザード》と《スタッグ・リバイバー》──かつてPlaymakerがフィニッシュのために一助した彼にとっては憎きカード。

 

「──現れろ、我が願いに応える未来回路」

 

 男が呆気に取られている内にWisteri∀が動く。

 頭上にサーキットが出現し、それに呼応するリンクマーカーが輝き始める。

 

「アローヘッド確認。召喚条件は【M∀LICE】モンスターを含むモンスター3体。私は《M∀LICE<P>White Rabbit》、《サイバース・ウィザード》、《スタッグ・リバイバー》の3体をリンクマーカーにセット」

 

 上・左下・右下のリンクマーカーに3体のモンスターが光へ転身し、リンクマーカーの輝きが増す。

 

「サーキットコンバイン。現れよ、リンク3──」

 

 3つのリンクマーカー眩い閃光を放ち、サーキットから1体のモンスター──女王がゆっくりとその姿を顕現させる。

 

「──《M∀LICE<Q>HEARTS OF CRYPTER》」

 

 赤・白・黒──3色の煌びやかなドレスを纏い、手には身の丈を優に超える王笏(おうしゃく)を持つ、無機質で無愛想で無感情な女王──《M∀LICE<Q>HEARTS OF CRYPTER》がWisteri∀の場へゆっくりと降り立つ。

 

「リンク素材になった《スタッグ・リバイバー》の効果を発動。リンク素材として墓地に送られた自身以外のレベル4以下のサイバース族を守備表示で特殊召喚できる。私は《サイバース・ウィザード》を守備表示で復活」

「くぅ……!」

 

 男にかつての忌々しい記憶が蘇る。あの時と同じように上・左下・右下のリンクマーカーを持つリンクモンスター、そして《スタッグ・リバイバー》の効果でそのリンク先に蘇る《サイバース・ウィザード》。

 リンクモンスターこそ異なるものの、当時の再現をさせられてWisteri∀を睨む目がより鋭利になる。

 

「《クラッキング・ドラゴン》を対象に《サイバース・ウィザード》の効果発動。《クラッキング・ドラゴン》を守備表示にし、このターン私のモンスターは《クラッキング・ドラゴン》しか攻撃できず、その守備力を攻撃力が上回っていれば貫通ダメージを与えられる」

 

 当時と似た(・・)状況ではあるが、同じ(・・)状況ではない。

 

(まだだ……! まだ私にはこのセットカードが──ハノイの崇高なる力がある……!)

「《クリプター》は《ドーマウス》の効果により攻撃力が600上がり、今の攻撃力は3100。この貫通ダメージで終わる」

 

 まだ終わらない、と男の血走った目が訴える。

 それを一瞥したWisteri∀は、何を思うでもなく淡々とプレイングを続行。

 

「バトルフェイズ。私は《クリプター》で《クラッキング・ドラゴン》に攻撃──する前に《クリプター》の効果を発動。除外状態の《M∀LICE<P>March Hare》をデッキに戻し、相手の場のカード1枚を除外する」

「なっ──!?」

 

 男は残された最後の希望にしてハノイの崇高なる力──《聖なるバリア-ミラーフォース-》が《クリプター》の王笏で無惨にも消え去る。

 

「行け《クリプター》」

 

 女王──《M∀LICE<Q>HEARTS OF CRYPTER》は主の命を受け、その巨大な王笏を振るう。

 華奢な姿からは想像もできない渾身の一振り(フルスイング)は《クラッキング・ドラゴン》を叩きつける──どころか王笏の部分だけ抉り取るように削られ、バチバチと千切れたコードや回路が悲鳴を上げる。

 

「あっ、あぁ……!」

 

 20年前と同じ。守備力0の《クラッキング・ドラゴン》に攻撃力3100となった《M∀LICE<Q>HEARTS OF CRYPTER》に抗える術はなく、無惨にも爆散。

 

「ぐっ、ぐぁああああぁぁぁっ!!」

 

 爆発の余波で男は後方へと吹き飛ばされ、背中から壁に激突。がっくりと項垂れてその意識を失う。

 

 対してWisteri∀と《M∀LICE<Q>HEARTS OF CRYPTER》は同じ無感情な表情のまま、ただ敗者を見下ろすだけ。

 

「すごい……」

 

 そして、その光景を食い入るように見ていたグラスモーⅡ──草薙仁はただその光景を目に焼き付けるしかできなかった──

 

 





Playmaker初デュエル再現に注力しました
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