【『怪物』は存在しないと結論づけた。】
そこは天井一面を覆う水晶群が淡く輝き、日の届かない迷宮でありながら、疑似的な昼と夜を生む安全階層。
冒険者たちが羽を休め、傷を癒やすための場所
――“だった”。
だが今、そこにあるのは楽園ではない。
水晶は砕け散り、森は踏み荒らされ、
澄んでいたはずの湖面には衝撃の波紋が幾重にも走る。
悲鳴、
怒号、
金属のぶつかる音。
それらすべてを踏み潰すように
オオォォォォォォォオオ!!
黒いゴライアスが、そこにいた。
山のような巨体が一歩動くたび、
地面は沈み、樹木はへし折れる。
冒険者たちは陣形を組み、必死に抗っているが、
放たれる一撃一撃は、巨獣にとっては些細な抵抗にすぎない。
絶望が、恐怖が辺りに広がる中、それは現れた。
―――――――――
すこし時間を戻して、
18階層と19階層を繋ぐ出入り口。
本来ならば楽園への門であるはずその場所は、大量の落石によって完全に封鎖されていた。
そこにひとつの影が現れる。
黒い霧と青い外套を纏い、人のようで、どこか違う。
モンスターのようで、どこか違う存在。
影は、塞がれた出入り口を見上げる。
岩は幾重にも重なり、自然崩落というには不自然な量だった。
またその隙間からは少しの光が見えていた。
「……行き止まり?」
影は落石に触れ確かめる。
「いや、塞がっている?……なら、」
そう言い彼は少し離れて銃を構え、
ブォン
重低音が響く、そして――
ズドン
撃った。
弾は真っすぐ飛んでいき落石を貫いた。
――かに思えた。
「……?」
次の瞬間、彼の目に映ったのは――
何一つ変わっていない光景だった。
砕けた様子も、
抉れた跡も、
粉塵すら舞っていない。
穴すら、開いていない。
そこにはただ、
撃つ前とまったく同じ形の落石が、
何事もなかったかのように鎮座している。
影は、本能的に理解する。
理由も、理屈も、説明できないが――
この岩は、銃では壊せない。
「……どうすれば……」
少しの焦燥がよぎる。
と、そのとき、
――――《ペラッ》
頭の奥で、何かが
『しょうがないな。ボクの力を貸してあげる。』
「……?」
何かが聞こえたと思ったら突然、黒い霧が逆立つ。
身体の輪郭が、軋み
外套が裂け、
影が増える。
背後に広がる、羽のような黒。
そこに刻まれた、無数の黄色い目。
視界が、変わる。
すると突然、左手の重みが増す。
いつの間にか、
そこには銃の代わりにランプの形をしたハンマーが握られていた。
淡い灯りが灯る。
それは温かく、
同時に、抗いがたい圧を放っている。
影は、落石へと向き直る。
「……これで、いいのか」
あの声の正体や困惑が残るが、影だったものは"そんなことどうでもいい"とばかりに言葉を発する。
返事はない。
だが、ランプがわずかに輝きを増す。
そうして影だったものは
踏み込み、
腰を落とし、
振りかぶって、
ドン――ッ!!
幾重にも重なっていた落石の一部分が、砕け散る。だがそこを補うようにさらに落石が降ってくる。
「――ッもう一回!」
ドン――ッ!!
そうしてまたもや落石の一部が砕け、降ってくる。
ドン――ッ!!
もう一度、
ドン――ッ!!
二度
ドン――ッ!!
三度、そうして、道を塞いでいた落石は役目を終え、道が空いた。
すると、空いた向こうから、様々な
その時――
オオォォォォォォォオオ!!
一際大きい
黒いゴライアスの怒りが、楽園を引き裂いていた。
影だったものは、迷いなく足を踏み出す。
「……鎮圧を開始する。」
黒い羽と灯りを携えた
tips
何故、銃で落石を貫けなかったか。
それは魔弾の射手の性質である。魔弾の射手が放った弾丸は全てを
※向こうで誰かに当たっているじゃね?という疑問は独自の設定として向こうの地形を知っていなければ向こう側にはいかないっていうことにしてください。m(_ _)m