|д゚)チラッ
………よし誰も見ていないな
このちょうど3000文字の作品を投稿と、
……………。
………よし、寝るか。
駆ける、ただひたすらに駆ける。
黒い翼を背負った“それ”はナニカに突き動かされるように疾走する。
だがそう簡単には行かず進行を妨げるように影が複数現れた。
牛の顔を持った人型のモンスター、【ミノタウロス】
黒い犬で
二足歩行で赤い目を持った白い兎のモンスター、【アルミラージ】
その他にも次々と現れる様々なモンスターたち。
それらは
最初に追いついたのは【ミノタウロス】だった。
唸り声とともに振り下ろされた
だがそれは次の瞬間には粉々に破壊されていた。
砕け散った石斧の破片が宙を舞い、
重たい音を立てて地に落ちる前に“それ”はすでにその場から消えていた。
【ミノタウロス】は一瞬、何が起きたのか理解できなかった。
己の得物が砕かれたという事実よりも先に、胸元に走る衝撃と、内側から込み上げる崩壊と損失の感覚。
その後
周囲のモンスターが少しうろたえる中、次に攻撃をしかけたのは【ヘルハウンド】であった。
【ヘルハウンド】は背後から、“それ”に向かって灼熱を浴びせようとし口を開ける。
だが“それ”はまるで背中に目がついているかのように身を翻しやってきた灼熱を避ける。
吐き出された炎は虚空を焼き、森を一瞬の間、赤く染め上げた。
それに少し驚きながらも【ヘルハウンド】は若干焦げた地面を蹴り上げながら距離を詰める。
そうして今度は自前の牙を“それ”へと向け噛みつこうとするが、それは叶わなかった。
【ヘルハウンド】は突如“それ”が持つ武器から発せられる光に視界を奪われた。
“それ”はその隙を見逃さず、武器を逆手に持ち替え、走る勢いのまま横殴りに振り抜いた。
鈍い衝突音。
側頭部を捉えた一撃。
【ヘルハウンド】の身体は横殴りに吹き飛び、木の幹に激突し、そのままずり落ち灰となる。
間を置かず、草むらから、2つの白い影が飛びかかる。
赤目の白兎【アルミラージ】が二体。
同時に跳躍し"それ"の喉元を狙って武器を振る。
が、“それ”は瞬時に屈み。攻撃を避ける。
二体の【アルミラージ】は空中で交錯し、狙いを外した武器が虚空を切り裂いた。
“それ”は屈んだ姿勢のまま踏み込み、
地面すれすれから、武器を掬い上げるように振り抜く。
先に跳びかかった一体の腹部を据え、
小柄な身体は宙を舞い、灰となった。
そのまま、もう一体の兎へと目線を向ける。
赤い目が、恐怖に揺れた。
だが逃げるには、遅い。
“それ”はすでに地面を蹴っていた。
一瞬、黒い羽が揺れる。
次の瞬間にはもう、距離は詰まっていた。
横薙ぎに振るわれる獲物。
ドッ――!!
鈍い衝撃音。
【アルミラージ】の小さな身体は、木々の向こうへと吹き飛び、
着地する前にその輪郭が崩れ、灰となって霧散した。
モンスターたちの本能が告げる。
――アイツには勝てない。
だが、それでもモンスターは止まらない。
何かに引き寄せられるように。
何かに導かれるように、次々と飛びかかってくる。
振るう。
砕く。
薙ぎ払う。
一撃ごとにモンスターは吹き飛び、灰となり、消えていく。
まるで嵐の中を駆けるように。
まるで障害物を払いのけるように。
“それ”は、ただ獲物を振るう。
そしてついに“それ”は森の境界を越えた。
視界が開ける。
そこには数十人の人と、大きくそびえ立つゴライアスの体があった。
何人かの人がこちらを向く。
その目は、一様に見開かれていた。
驚愕。
困惑。
そして警戒。
黒い翼。
異形の武器。
人ともモンスターともつかない存在。
それが戦場の端に立っているのだから無理もない。
「……なんだ、あれは」
誰かが呟く。
「新種の……モンスターか?」
だが、“それ”は気に留めない。
視線はただ一つ。
戦場の中心。
そこに立つ巨体へと向けられていた。
『悪い子! 悪い子!』』
頭の奥で、何かが囁いた。
小さくてどこか強そうな声。
“それ”は、ゆっくりと前へ踏み出す。
冒険者たちの視界の端で、黒い影が戦場へと入ってくる。
すると、
突然ゴライアスの赤い目がこちらを、侵入者を捉えた。
圧倒的なプレッシャーが向けられる。
「……!」
“それ”は咄嗟に横に
ド ォ ォ ォ ン!!
直後、さっきまで立っていた場所へ巨大な拳が叩きつけられた。
地面が爆ぜ、土と岩が弾け飛ぶ。
衝撃が戦場を駆け抜け、近くにいた冒険者たちが思わず身を伏せた。
「……!?」
だが、“それ”はすでに次の動きに移っていた。
転がった勢いのまま立ち上がり、地面を蹴る。
黒い羽が大きく揺れ灯りを宿した武器が、淡く光を放つ。
“それ”は、一直線に巨体へと突き進み、懐へと入ろうとする。
距離が縮まる。
ゴライアスの巨腕が再び振り上げられる。
だが、それが振り下ろされるよりも一瞬早く“それ”は踏み込み懐へと入った。そしてその勢いのまま武器を振りかぶる。
ドンッ!!
灯りの武器が、黒い皮膚へ叩きつけられた。
鈍い音が響く。
だが手応えが、浅い。
ゴライアスの巨体はわずかに揺れただけだった。
“それ”は急いでそこから離れようとする。
だが。
ゴライアスの赤い目が、すぐ目の前で“それ”を捉えていた。
「……っ」
巨腕が横から薙ぎ払われる。
ドォンッ!!
衝撃。
“それ”の身体が大きく弾かれる。
だが直撃ではない。
かろうじて身を捻り、威力を逃がす。
それでも衝撃は大きく、地面へと叩きつけられた。
急いで体を起こす。
肺が軋む。
視界がわずかに揺れる。
だが、それでも“それ”は立つ。
まるで何かに執着しているように。
その時だった。
視界の端に、一人の女性冒険者の姿が映った。
倒れている。
脚を押さえ、立ち上がれないまま地面に伏していた。
そのすぐ上で巨大な影が動く。
それはまるで邪魔なものをどけるようだった。
「……!」
考えるより先に身体が動いていた。
黒い羽が大きく広がり、地面を蹴る。
“それ”は一直線に飛び込んだ。
倒れている女性冒険者と振り下ろされようとする巨腕の間へ、庇うように立つ。
巨腕が、振り下ろされる。
ド ォ ォ ォ ン!!
“それ”は武器を使いその巨腕を受け止める。
足元の地面が沈み込み、土と岩が爆ぜる。
衝撃が空気を押し潰し、風を産む。
ギリリㇼ、ギリッ……
しばらく拮抗した後に、
“それ”は足元に倒れている女性冒険者を軽く蹴飛ばす。
「……!?!!」
女性冒険者は突然の出来事に、息が詰まる。
だが次の瞬間拮抗していた均衡が、崩れた。
ゴライアスの巨腕がさらに押し込まれる。
ギシッ――
武器が軋む。
“それ”の腕が震える。
黒い羽にある目が明滅する。
圧倒的な質量。
圧倒的な力。
「――っ!」
声にならない声。
バキィッ!!
そしてついに“それ”の武器は弾かれ巨腕が叩き落とされた。
衝撃が爆ぜる。
“それ”の身体が大きく吹き飛んだ。
バキバキバキッ!!
背後の木々を何本もへし折りながら吹き飛び、森の縁の地面へ叩きつけられる。
ドサッ――
土が舞い上がる。
黒い羽が、かすかに揺れる。
視界が揺れる。
音が遠い。
呼吸が浅い。
身体が、動かない。
戦場の方から誰かの声が聞こえた。
「……今の……庇ったのか……?」
「モンスター、じゃないのか……?」
だが、その声も徐々に遠ざかる。
視界の端で、倒れていた女性の冒険者がこちらを見ていた。
その表情は、驚きと困惑で固まっている。
“それ”は、そのことを確かめたあとゆっくりと目を閉じた。
そうして意識は、暗い、昏い闇へと沈んでいった。
【彼の限界】
レベル3の大鳥がレベル5のゴライアスに勝てないのは当たり前。
必然であり抗いようのない現実。
では勝つためには守るためにはどうすれば良いか……
森の仲間と力を合わせるしか無いだろう。