またもや独自設定が含まれるよ。
【そんな時に誰かが逃げながら叫びました。
『あそこに怪物がいる!この森には怪物が住んでいるんだ!』】
『O-02-63』
【罪と罰を背負って羽ばたきたまえ】
闇が、静かに波打っていた。
底のない黒。
ありとあらゆる物を飲み込もうとする漆黒。
それは過去のことを幻想し、映していた。
『悪い子』
1羽の名もなき鳥が言葉を発する。
『……どうして守ったの?』
“それ”は、答えない。
答えられないのか、答える必要がないのか、
“それ”は己自身でも分からなかった。
『ねえ』
『キミは、どっち?』
漆黒が揺らぎ映像が乱れ、消えていく。
その最後に、奥で何かが
『黒く昏い森の悲劇の物語よ。今や悲しき過去の傑物よ。』
階層に突然、魔法の詠唱文が響く。それに伴うようにダンジョンが揺れる。
突然の出来事に冒険者を含むモンスター達は行動を止めてしまう。
『今宵、我は物語の続きを紡ぐ。』
その揺れは些細なものであったが、黒いゴライアスが現れたあの時よりも何倍にそれは不穏さを含んでいた。
『犯した罪は消えぬとも、』
『我は進むことを示そう。』
森がざわめき、数多のモンスターが今すぐにここから離れたいという感情に支配される。
なぜならその不穏な気配が自分たちに向けられていると理解してしまったからである。
『その意思は、いつか路を照らす先駆けとなると信じて』
どこか童話のようで、どこか贖罪のような詠唱が紡がれていく。
『さあ、終焉の狼煙を上げよ、』
そんな詠唱の途中、突如森の中央に不気味な門が現れた。
『その胸に残るのが悔恨であれ、』
『あるいは消えぬ願いであれ、』
その不気味な門は詠唱に呼応するように次第に光を帯び始める。
黄、赤、どこまでも深く昏い黒。
『想いを胸に抱き、』
『炉に火を焚べよ。』
『それは
詠唱が進んでゆくと、
門から黒い羽毛に白い包帯のようなものを巻いた鳥の足のようなものが這い出てくる。
『さあ、終幕を穿ち、
門が広がっていきひび割れていく。
そんな門の奥から黄色い瞳がこちらを覗くのが見える。
『暗き森の
【
【ギャオオオオオオオオオオオオオオオオ】
そしてついに“怪物”は姿を表した。
あの黒いゴライアスに負けず劣らずの巨体。
赤々と染まった嘴のようなもの。
黒い羽で瞬きをするたくさんの瞳。
細い首の先にある単眼の目。
周囲のモンスターたちは、逃げるという選択すら間に合わなかった。
膝をつく、あるいはその場で崩れ落ちる。
“恐怖”という概念を、肉体ごと叩き込まれたかのようにその場で萎縮する。
そしてそれは冒険者も同じような状況であった。
怪物から放たれているプレッシャーの矛先が今はモンスターたちに向けられているからなんとか立っているのが精一杯だった。
怪物はそんな冒険者を横目に黒いゴライアスへと視線を向ける。
怪物の全身の瞳が、一斉に細められる。
次の瞬間、その巨体を何かが包む。
それはあの時の門に灯った、目のような光だった。
光が収まると、その怪物は黒いゴライアスの懐へと一瞬で潜り込んでいた。
「――ッ?!グォォオオオオ!!」
突然のことに驚きながらも迎え撃つように、自分を鼓舞するように黒いゴライアスが腕を振り下ろす。
大気が裂け、地面が砕け、ただの一撃で周囲一帯が崩壊する拳を、
だが。
怪物は、動かない。
避ける素振りすら見せず、
その巨躯で、ただ“受けた”。
鈍い衝突音が響く。
確かに直撃した。
確かに、潰したはずだった。
それでも。
「……グ、ォ……?」
黒いゴライアスの喉から、理解の追いつかない呻きが漏れる。
潰れたはずの場所。
その中心に、
“怪物”はいた。
何事もなかったかのように。
羽一枚、乱れず。
無数の瞳が、ゆっくりと瞬く。
まるで、
“今のが何か?”とでも言いたげに。
そして今度は自分の番だというようにその鉤爪を振り上げる。
重く、鈍い衝撃と鋭い刃物で切られた音が、時間差で空間を震わせる。
黒いゴライアスの巨体が、まるで軽いもののように吹き飛び、森の奥へと、ダンジョンの壁へと叩き込まれた。
木々がなぎ倒れ、
地面が抉れ、
遅れて、絶叫と衝突音が響く。
「グォォオオオオオオオ!!」
だが怪物は、追わない。
ただその場に立ち、静かに、全ての瞳で“見ていた”。
逃げ場など、ないと。
ここはもう
“黒い森の中”なのだと示すように。