色んな服を着たがる式神   作:青色好き

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新年あけましておめでとうございます。
今年もハーメルンで細々と小説投稿を続ける予定です。


第1話:“ふぁっしょん”をやってみたいです!

 髪の毛が風と共に揺れる。

 

 今日は少し違う服を着ている。フリルが付いた、少し可愛らしい洋服だ。何だか違う服を着ると少し生まれ変わったような気がする。そんな事もあって少し気持ちが高揚している。

 

「おぉ……! これは何とも美麗な…… これなら春虎様もお気に召すかもしれません!」

 

 小学生と思しき少女が新しい服を着て喜んでいるのだが、他の少女と大きく異なる特徴がある。彼女の頭部からは犬もしくは狐を彷彿とさせる耳が生えており、腰からは動物の尻尾が生えている。その尻尾はフリフリと上下左右に揺れている。まるで喜びを表すかのようだ。

 

 明らかに人とは異なる風貌。

 

 それは当然だろう。

 

 彼女は人間ではなく“式神”だ。

 

「さぁ! これを春虎様に見せていきましょう!」

 

 彼女の名は「コン」。

 

 陰陽師で知られる土御門家の分家出身の、土御門春虎に従う式神だ。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「そういえばコン、何かファッションとかした方が良いんじゃないか?」

 

「“ふぁっしょん”ですか……?」

 

 ある日の陰陽塾。コンは主の春虎の部室でこのような会話が出てきた。陰陽師の講義が終わって部屋でのんびりとしている時だった。普段はゆっくりと休むのだが、今日は何かの雑誌を読んでいる。表紙からして服に関する雑誌らしい。親友の冬児から借りた物だろうか。

 

「まぁ、簡単に言えば服や飾りを楽しむ事…… なんだけどよ、コンもやってみないか?」

 

「私が“ふぁっしょん”をするという事ですか?」

 

「そうそう。コンなら色んな服とか防止とか似合いそうだし…… コンにとっても社会勉強になるんじゃないかな~…… って思うんだよ」

 

 社会勉強ですか。

 人の世界だと服を着て楽しんだり、状況や祝祭に応じて服を変える事があるらしい。陰陽関連の行事でもそれは沢山ある。春虎もそういう行事に参加した事がある(家の伝統・陰陽塾の講義の一環で)。コンもそうした衣装の変更をした事はあるが、娯楽や気分転換などのファッションで服を変えた事は無い。そのため、コンにもそういった楽しさを伝えようとしているのだ。

 

「しかし、私の使命は春虎様のお傍に仕える事です。そういった娯楽を楽しむおつもりは……」

 

「まぁまぁ、そう言わずやってみたらどうだ? 可愛い服を着た姿とか見てみたいしな!」

 

「か、可愛い……!?」

 

 大事な主からの言葉に少し…… というより結構反応をする。自身が可愛いと思うような事は無いものの、仕えるべき主から言われるとなると流石に照れてしまう。顔はリンゴのように赤く染まり、頭頂部からは少しだけ湯気が出そうだ。頭頂部から生やす狐耳もピコピコと揺れており、尻尾もブンブンと揺れている。

 

「で、でしたらその“ふぁっしょん”を試してみようと思います!」

 

「お、そうか!」

 

 コンは春虎の「可愛い」という言葉に反応した事もあり、ファッションを試してみようと決意した。コンの主である春虎から褒められるかもしれないと、考えたからだ。

 実を言うと、コンは服装について考えた事があるのだ。何時もは姿を消して春虎の側についているが、春虎の友人である夏目・冬児・京子・天馬・鈴鹿…… そして此処の塾生達の服を見ていて、「ああいう服を着てみたい」と思った事があるのだ。コンは式神であるが、人々のファッションには興味があるようだ。

 

「よぉし! それなら早速服屋に行ってみるか! あっ、詳しいアドバイスをくれる人が必要だな! 夏目と冬児と…… 京子・天馬・鈴鹿を連れてくか!」

 

「は、はい! 春虎様と服選び……!」

 

 春虎と一緒に服選びに行けるという事もあり、コンは喜びの表情を浮かべた。頭から生やす狐の耳はピコピコと動き、尻尾はブンブンと上下に動かしている。まるで犬の喜びを示す行動のようだ。彼女はどちらかというと狐だが。

 

「はっ! そうだ…… 折角ですので今持っている服を着てみようと思います!」

 

「ん? 今持っている服で?」

 

「は、はいっ! “ふぁっしょん”というものは服を着て外出するという事! 服屋に行く事も外出するという事なので、いっそ今ある分でもいいので着替えてみようかと……」

 

「それもそうだな! 予行演習みたいな感じでやってみるか!」

 

 コンの考えに春虎は、確かに、と言いたげな表情で納得している。服屋で服を買って着替えをさせるのも良いが、今ある服でも何とかコンにファッションは出来るだろう。と言ったものの、コンのサイズに合う服は………… あっただろうか…………

 

「う~ん………… あっ、これならいいかもしれねぇ!」

 

 服を収納しているロッカーを漁ってみると、そこにはとある服が見つかった。何故その服がこのロッカーに収納されているのか分からないが、この大きさならコンにも十分合うだろう。

 だが、コンは狐の尻尾を生やしている。つまり、尻尾を通す穴が必要となる。ハサミで穴を開けられるだろうか。そう思って、ズボンの尻の部分を見てみると、丁度尻尾を通せる位の穴が空いていた。

 

(う~ん、この穴、何で空いてるんだ? それにこの服も何処かで見た事があるんだよな……)

 

「春虎様?」

 

「あ、いや、出かけるのに丁度良い服があるぞ。それを着てくか!」

 

「ハイッ! 春虎様! 先ずはこれを着てみます!」

 

 服買いの前に、簡単なファッションをしてお出かけする事にした。春虎もコンもルンルン気分だ。コンはその服を着て、春虎は夏目達に連絡を入れて服屋に出かける準備をする。コンはこれから可愛い服を着れるかもしれないと思い、ワクワクしている。二人はお出かけの準備を急ぐのであった。




次回は2026年1月8日21時00分に投稿予定です。
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