異世界転生したらドスケベ悪魔に攫われた話をしよう!   作:テムテムLvMAX

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1話 ハードボイルド5歳児爆誕

 

 

 私は異世界の片田舎に転生した前世がある人間です……転生の時には神らしき人物に巡り合ったのですが、転生にはオマケが必要だと言われ、私はよく考え『知識』と答えました。

 

 するとどうでしょう、転生した異世界で私は見たもの全ての情報を得られる目を得ました、オンオフの出来る凄い目を……だけれど代償もあったのです、私の目は異世界では『悪魔の覗き穴』と呼ばれる漆黒の目だったのです。

 

 白いところが黒で、黒いところが白に、両目の色が反転してしまったのです……たったこれだけで、いや、恨み節は止めましょう。

 私の目は人を恐れさせ遠ざけ、家族は私を投げ出して……生まれて5年で孤児として孤高に生きてゆかねばなりません。

 

 

 

 

 ええい! 丁寧な言葉はやめだ! 

 

 ファッキン神様! テメェのせいで前世より難易度アップの人生スタートしてんじゃねぇか何が“オマケ”だ! 余計なお世話だ! 

 

 

「はぁ……ほーんとクソ」

 

 

 ぼやいても仕方ない、現状俺はストリートチルドレン真っ逆さま、いやそれより酷いかもしれない。

 俺の生まれたこの街はウーゴルって言うんだが、王国随一の人口密度と信心深さを誇る大都市だ。

 レンガを積んでモルタル塗ったまるで白磁の街並みだが、人の腹の中は真っ黒だよ。

 

 この目のせいで乞食になることもできない、中心地から追いやられる様に裏路地へと逃げてきたが、それでも俺はまだ追われてる。

 肉体年齢は5歳だぞ、夜風が冷たくて熱も出る、雨の日は最悪だ……お漏らしはしてないぞ、さすが俺。

 

 今は家を追われて三週間が経過した所だ、裏路地は俺みたいな孤児や乞食が身を寄せ合って暮らしている下水道もある入り組んだ場所で、俺は明日も分からず暮らしている。

 

 この三週間で一番の成果を教えてやろうか? 貧相な奴らにもヒエラルキーがあるんだってよ、なりふり構ってられないはずなのにそれでもプライドと立場を得ようとする。

 

 

 全てを見通す目が無くとも人の汚い部分は見えるんだぜ。

 

 

 ここまで目が悪いところしか言ってないな……これでは公平ではないな、実際目に助けられた事もある。

 前も言った通りこの目は全てを見通す、正確には“目を通してモノの情報を取得”しているみたいだけどな。

 

 この世界のありとあらゆる情報から目の前の物体の情報を探して統合し最も正確な情報を目だけで得られている、要は現代のスマホアプリで出来ていたことを目だけでやっている状態だ。

 

 しかも集めてくる情報の種類は人の記憶や日記も対象になっていると思われる、この目で人物を見た時、名前以外に癖やルーティン、好み、職業、この後のやりたいことまで見られる。

 まさに『悪魔の覗き穴』と呼びたくなるのもわかる、下手すりゃ人生丸裸だからな……。

 

 で、この目の良いところだが、人混みをこの目で観察すると面白いに尽きる。と言うかそれしかない。

 

 街には大きな壁があってな、外敵を遠ざけるための壁だ、その壁の上は見晴らしのいい通路なんだ。普段は兵士が見回りに来る以外人は来ないから俺はそこから中心地の人混みを眺めて暇を潰している。

 

 今もそうやって暇を潰してる、おっ今通ったねーちゃんかわいい〜、ってな具合に。

 

 おっ、俺の知り合いが壁の上に登ってきてるのが見える、アイツは俺の数少ない良心的な友達だ。

 

 

「アニキ〜! ここにいたんですか〜! ……高くて怖いっス!」

 

「よ〜フルストック」

 

 

 こいつはフルストック、世間一般では不良少年と呼ばれる子供だ、俺より10歳上の十五歳なんだが、どうにも金持ち生まれらしくてな、どこかナヨナヨした頼りなさもあるんだが……こいつ俺の目でビビるどころか喜んで近寄ってきたド変態だ。

 そこで俺は気づいたよ、この世界にも不良文化と中二病はあるんだってな。

 

 フルストックとの出会いはコイツが路地裏に迷い込んできたところからだ、親に反発して不良になりたがってる所に俺がこの目で出ていったから、それを見たこいつは反社会的な魅力を俺に見いだした、それからこいつは俺を年下だというのも気にせず“アニキ”と呼んでついて回ってくる。

 

 俺も話してると暇つぶしになるし食べ物はちょいちょいくれるし、いい奴だ、何より目で見ることと会話で確かめることは違うと教えられる、目で見られるのはあくまで客観的に過ぎない、コイツが俺に合うかどうかの主観的な情報は、会話して初めてわかる。

 

 

「アニキ、今日の分っス!」

 

「いつも悪い、このパンは……サンブック通りのか」

 

「そうです! アニキが一番うまそうって言ってたんで買ってきました!」

 

 

 泣けるぜ……確かにサンブック通り_この街の中心で城に通じる一本道_は俺もよく見ている、元々あの辺りに住んでたってのもあるが、あそこの十字路の角のパン屋がすげぇうまそうにパンを焼くんだ。

 それを一回だけ聞かせたんだが、それを覚えたんだこいつは、見事な舎弟だよお前は! 

 

 

「んじゃ遠慮なく……むぐむぐ」

 

「どうですか? 美味いっすか!」

 

「美味くねぇ……」

 

「え?」

 

「ウルトラスーパーベリーベリー最高にハイッ! て感じの旨さ爆発だ!」

 

「何言ってるか分からねぇけど喜んでるので嬉しーっス!」

 

 

 乞食してるから何食っても美味い! とは言わない! コイツの優しさだけでどんぶり三杯だからな! 

 美味い美味いと食べたらあっという間だった、5歳児でも食べきれるサイズで助かった、これでしばらくは食べなくて済む。

 

 

「さて……フルストック、なんの用だった? いつもの親の愚痴なら何でも聞いてやるぞ」

 

「いや今日は違うっス……」

 

「ふむ……初めに言っておくぞ、やめとけ」

 

「ま、まだ何も言ってないっス!?」

 

 

 俺の目を前にしてそんな事企むとはなぁ〜悪いやつだよお前、それを俺が留めないとでも思ったかよ。

 

 一応ら俺も転生前はいい年したオッサンだった、年の取り方は悪くなったかもしれねぇがそれでも後輩を変な道に行かせるような奴になった覚えはねぇ。

 

 

「フルストック、家出はやめとけ、それも俺みたいに路地裏に来るんなら尚更だ」

 

「どうして!! オレはアニキみたいになりてぇんです! 親の言いなりになるより自由に世界を見てみたいっス!」

 

「社会からはみ出したいお年頃なのはわかるが、お前の親は悪く見えねぇし、大人になれば親の言葉の意味も判るだろう、それでも判らないなら大人になってから家を出な」

 

 

 俺が見た限りコイツの親は金持ちだが嫌味に感じない善人だ、金があるから善人として振る舞える事もあるだろうが、信心深いご両親だからな、金がなくとも変わらんだろうよ。

 もちろんコイツの言い分は理解できる、親が自分を縛っているように見えるだろう、実際その側面は否定できん所も見えた、信心深さ故の弊害だ。

 

 

「フルストック、人生は長い、時には坂を登る我慢や谷を滑り降りる覚悟も必要だと思うぞ」

 

「……アニキ、為になるっす……もうしばらくは待ってみるっす……」

 

「それがいい」

 

 

 一時の迷いで人生を棒に振ることはない、じっくり悩め、そして決めろ。俺はさっさと投げ出されたがお前はそうはさせないぜ、お前が俺をアニキと呼ぶ間はな。

 

 

「所でアニキ、これ知ってるっすか?」

 

「どれのことかな?」

 

「悪魔の噂っす」

 

 

 悪魔の噂……おかしいな、知らないぞ? 見たこともない……一体何処から来た? 俺も人間だから見落としもあるだろうけど、それにしても不自然だな。

 俺が知らなくてフルストックが知ってる、となるとごく一部の人間のみが知ってる情報でごく一部の人間だけで出回ってる話か。

 

 

「面白そうだ、聞かせてくれ」

 

「だと思ったっす! これ、父さんが何処かの来客と話してた噂なんすけど……このウーゴルに悪魔が出たらしいっす、それも上位のおっそろしい悪魔が……夜な夜な子供を攫っては記憶を消していくらしいっす! 怖い!」

 

「なんか……変なやつだな?」

 

「え? 怖くないっすか? だってアニキも狙われるっすよ!」

 

「よく考えろフルストック、悪魔はなんで記憶を消す? 何か見られたくないものを観たからだろう、子供が狙われているという点は俺もよくわからん、しかし、これは言える、俺もお前も大丈夫ってことだ」

 

「そうっすか? アニキが言うならそうっすよね!」

 

 

 

 悪魔の噂か……明日から意識して探してみるか……。

 

 いや、むしろその悪魔自体を探すほうが早いか、その悪魔自身が自認が悪魔なら見ただけで悪魔と判るはず、フィルタリング機能もあるこの目なら案外さっと見つかるかもな。

 

 

「よぉしフルストック、今からその悪魔とやらを探してやろう」

 

「アニキの目って悪魔も判るっすか!?」

 

「判るはずだ、今まで悪魔は見たことがないが……どうとでもなるだろう」

 

「それって向こうも気が付かないっすかね?」

 

「見る分で咎められたことは一切ないな」

 

 

 悪魔を検索ワードにして街をグルっと見て回った、壁の上の見晴らしの良さでもウーゴル全体ともなれば時間は少し掛かる。

 街の入口である東西の門からずっと見ていき、南の商業区、北の城、全ての通りを見て……悪魔は見つかった。

 

 

「サンブック通り、十字路の角……」

 

「え? そこってパン屋じゃ!? あの人が悪魔!?」

 

「まあ待て、結論を早まるな」

 

 

 更にじっくりと見てみる、確かにパン屋の中に自認悪魔の存在がいる、その存在はそこから動かず止まっている、呼吸もしてない様に見える。

 このままではぼやけた輪郭しか見えない、もっと集中してもっとクッキリと見てみたい、目に力を込めて凝視してみるか……せめて形から性別くらいは判別してみたい。

 

 

 __ギロッ

 

 

 さっきまで動きがなかったのに俺がよく見ようとしたら動きがあった! 目が開き、俺を見た、確かに俺と目が合った! 

 

 

「見られた……!?」

 

「あ、アニキ……うしろ……うしろ……!」

 

 

 後ろ? まさか……! 

 フルストックの震えながら俺に伝えた言葉が俺の背後にその存在がいることを教えてくれている、俺は冷や汗が溢れて止まらない自分を何とか動かし、体を後ろに向けてその状態を確かめる。

 

 

「ハァイ……ようやく見つけた、貴方が探し物、ね……まさかそっちから見つけてくれるなんて……すっごく幸運」

 

「す……すす……すすす…………」

 

「ん?」

 

 

 

 

「スケベ──!!!!!」

 

 

「うるさい」

 

「アニキーッ!?」

 

 俺が絶叫は街に木霊するとその存在によって意識が刈り取られ俺はその場に力なく倒れた。

 

 最後に目に焼き付いた光景は、ドスケベ獣足コウモリ系悪魔お姉さんでした……すまねぇフルストック、お前の性癖は守れなかった……!

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