Re:ウマドリ!!〜ウマ娘プリティーダービー&BanG Dream!ガールズバンドパーティ!外伝〜 作:キプkeep
ウマ娘たちとガルパキャラたちの出会いです!
この小説はpixivで投稿されたものを大幅に加筆修正、リメイクした内容となります。
ウマ娘。
彼女たちは、走るために生まれてきた。
ときに数奇で、ときに輝かしい歴史を持つ別世界の名前と共に生まれ、その魂を受け継いで走る…。
それが、彼女たちの運命…。
そんな彼女たちの日常に新たな変化が起きようとしていた…。
これは、ウマ娘たちと別世界からやってきた存在の物語…。
トレセン学園。
ウマ娘たちが日々トレーニングを行い、トゥインクル・シリーズを目指すウマ娘たちの養成施設である。
このトレセン学園のレースコースで一人のウマ娘が走り込みのトレーニングを行っていた。
「やぁぁ〜!!」
彼女の名はスペシャルウィーク。
日本一のウマ娘を目指して北海道から上京し、トレセン学園に編入したウマ娘である。
「アンタには負けないんだから〜!」
「それはこっちの台詞だ〜!」
彼女の後ろで走り込みをしているツインテールのウマ娘はダイワスカーレット。
同じく走り込みをしているショートカットで片目を前髪で隠しているボーイッシュなウマ娘、ウオッカと張り合いながら走り込みをしていた。
彼女たちが張り合っている間にスペシャルウィークは走り込みを終える。
「ふー…」
「お疲れ様スペちゃん。はい、どうぞ」
走り込みを終えた彼女にドリンクとタオルを渡したロングヘアのウマ娘はサイレンススズカ。
スペシャルウィークが入学する前に出会ったウマ娘で、彼女の憧れの存在である。
「ありがとうございます!んくんく…ぷはー!美味しー!」
「トレーニングの後は水分補給で150マイル!クールダウンもマイルールです!」
「うわぁっ!?びっくりしたー!」
スポーツドリンクを飲んだ彼女の真後ろに現れたウマ娘はグランアレグリア。
マイルに対する情熱は誰よりも凄まじいウマ娘である。
「ぜぇ…!ぜぇ…!つ、疲れたー…!俺にも飲み物くださいよせんぱーい…!」
「アタシにも…!」
トレーニングを終えてフラフラになったウオッカとダイワスカーレットはサイレンススズカにスポーツドリンクを要求し、サイレンススズカは苦笑いを浮かべていた。
同じ頃、トレセン学園にある誰も使われていない旧理科室にサイケデリックな光が鈍く漏れていた。
その中にはピンクや青などの光り輝く液体が入った試験管やビーカーが机の上で輝いており、その奥で一人のウマ娘が蹲っていた。
白衣を着た彼女の名はアグネスタキオン。
マッドサイエンティストとも言える科学者タイプのウマ娘で、彼女は何かの機械らしきものを作っていた。
「…ふぅ。これで完成だね」
仕上げに彼女は虹色に輝く花型の物体を機械の中に入れ、完成させる。
その機械はブラウン管テレビにアンテナと一つの丸い大きめのボタンを上面に取り付けたお粗末なものだった。
「終わりましたか…?」
すると、彼女の背後に音を立てずに黒髪ロングのウマ娘が現れる。
彼女の名はマンハッタンカフェ。
霊感を持つウマ娘で、彼女の腐れ縁である。
「おや?カフェじゃないか。あぁ、ようやく完成したよ」
「やっとですか…正直…貴方がなにかに取り憑かれたかのように普段以上に発明に没頭していたのが少し不安でした…ところで、その発明品はどんなものなのですか…?」
マンハッタンカフェは彼女を心配するようなことを言い放つと共に発明品について質問する。
「これかい?これはだねぇ…んん?すまない。あまり覚えていないねぇ」
「貴方らしくもないですね…用途不明な発明品を作るなんて…まぁ、普段から用途不明ですが…」
「厳しいことを言うねぇ。いや実はこれを作っている間の記憶が何故かあまり無いんだよ。発明品に使っているエネルギー源も三女神の像の前に落ちていた妙な石を使っているよ。だからこれが何に使うのかは私ですらわからないねぇ。とりあえず後で実験を…」
椅子に座りながら彼女がそう言い放ったその時である。
突然窓が開いて一人の銀髪の美女が侵入する。
「よぉ、タキオン!ちょっと匿ってくれねぇか?」
彼女の名はゴールドシップ。
一見すると絶世の美女だが、その正体は誰もが認める奇人である。
「おや?ゴールドシップ君ではないか。珍しいねぇ。君がここに来るなんて」
「いや〜、マックイーンのケーキを唐辛子を乗せたシュウマイにすり替えたらすっげぇキレられてよ〜。逃げてきたんだよ〜」
「相変わらず意味不明ですね貴方は…」
「よせやい照れるじゃねぇかよ〜♪ふ〜、疲れた疲れた」
マンハッタンカフェにそう言われながらもゴールドシップはその場に座り込む。
すると、ゴールドシップは椅子と勘違いして発明品の上に座ってしまい、そのままボタンが押されてしまう。
「あっ」
「へ?」
それを見たアグネスタキオンとマンハッタンカフェは二人揃って声を漏らし、ゴールドシップは理由がわからなそうな表情を浮かべていた。
すると次の瞬間、発明品の画面から七色の光が放出されると同時にアンテナから光の柱が放たれる。
「どわぁっ!?なんだぁっ!?」
それに驚いたゴールドシップは思わず発明品から離れ、発明品から伸びた光の柱はそのまま学園の天井を突き抜けて空高く登る。
「さてと!そろそろ練習を再開しましょうか…って、えぇっ!?な、なんですかあれは!?」
同じ頃、レースコースにいたスペシャルウィークは練習を再開しようとすると、上空を見て驚く。
空全体を真っ黒な雲が覆い隠しており、真ん中の穴らしき部分にはアグネスタキオンの研究室から伸びる光の柱が突き抜けていた。
「ぶっ!?なんだありゃ!?」
「嘘でしょ…!?」
「びっくり300マイル…!」
ドリンクを飲んでいて噴き出してしまったウオッカたちや呆然と立ち尽くしているサイレンススズカとグランアレグリアも空を見上げてかなり驚愕していた。
「タマちゃ〜ん♪待ってくださ〜い♪」
「やめ〜や〜!って、何やあれ!?」
同じ頃、母性的なウマ娘、スーパークリークが小柄なウマ娘、タマモクロスを甘やかそうと追いかけ、タマモクロスが彼女から逃げていると、上空の黒雲に気づく。
「えぇっ!?な、なんですかアレ!?」
「す、すごく凄い…!とにかく凄いことが起きてます…!」
トレーニング用ジムでは、サンドバックでパワートレーニングを行っていたおっとりお人好しウマ娘、ダンツフレームと彼女のトレーニングに偶然にも付き合うことになった爽やかな学級委員長ウマ娘、ナリタトップロードが窓の外を見て驚いていた。
彼女たち以外にも学園中のウマ娘たちやトレーナーたち、そして理事長室にいる者たちも空を見上げていた。
そして場面はこの世界とは全く別の世界へと移り変わる。
ウマ娘たちの世界とは別の世界の東京の新宿。
この世界にはウマ娘は存在せず、代わりにガールズバンドが絶大な人気を誇っていた。
そんなガールズバンドたちの憩いの場、CiRCLEにある足湯に五人のガールズバンドたちが足湯に足を浸からせてのんびりとくつろいでいた。
「はぁ〜〜…♪足湯最高〜〜…♪」
特徴的な猫耳のようにも見える星をイメージした髪型の彼女は戸山香澄。
ガールズバンド、Poppin'Partyのリーダーである。
彼女がくつろいでいると、隣にいるポニーテールの少女、山吹沙綾が微笑みながら言い放つ。
「あはは…まぁ、最近寒いから余計に気持ちいいよね」
「でも、足湯って本当に落ち着くよね〜♪」
彼女の隣に座っている黒髪の少女、牛込りみが足湯の心地よさに癒やされていると、その隣にいるロングヘアの少女、花園たえが提案を出す。
「それならCiRCLEが温泉になればいいのにね〜」
「いや、それはありえねぇから!」
彼女の発言にツインテールの少女、市ヶ谷有咲がツッコミを入れると、楽器を持った5人の少女たちがやってきてそのうちの一人が声を掛ける。
「あ、あの…ポピパのみなさん…何してるんですか…?」
「あっ、マイゴのみんな〜!」
声をかけてきた彼女の名は高松燈。
MyGO!!!!!のボーカルで、普段はライブハウスRiNGで練習をしているのだが、この日は香澄たちポピパとの合同練習のためにCiRCLEを訪れたのだった。
「あはは…驚かせてごめんね〜。待ってる間に香澄が足湯に入りたくなって〜」
「なるほど〜…私も足湯入ろっかな〜?」
「ダメに決まってるだろ」
ピンク色のロングヘアの少女、千早愛音がそう呟くが、黒髪のロングヘアの泣きぼくろの少女、椎名立希が彼女にツッコミを入れると、ベージュのロングヘアの少女、長崎そよが声を掛ける。
「とりあえず、先輩たちも練習始めましょうか」
「そうだな。香澄ー、そろそろ上がるぞ」
「うん。練習練習〜♪」
そよに言われて有咲が香澄にそう言い放つと、香澄たちは足湯から足を出すと、そのまま濡れた足を拭いて靴を履き、楽器を持ってCiRCLEに入ろうとしたその時である。
「ん?風…?」
金色と青のオッドアイが特徴的な少女、要楽奈は急に強い風が吹いていることに気づく。
「え?」
ふと香澄は空を見上げると、そこにはウマ娘の世界に発生しているものと全く同じ中心部に穴が空いた黒雲が空全体を覆い隠していた。
「えぇーーっ!?」
「な、何あれ!?」
空を見上げたその場にいる全員は驚きの声を上げていると、黒雲の中心部の穴の周りに虹色の光が一瞬だけ現れると同時に穴が10個に増え、そのうちの一つが香澄たちのいる場所の辺りにあるものを吸い込もうとする。
「うわっ!?どうなってるの〜!?」
「み、みんな!何かに掴まって!」
吸い込まれそうになりながらも沙綾がなにかにしがみつくよう全員に言い放つ。
すると、穴に吸い込まれそうになって燈の体が浮かび上がる。
「わっ!?」
「っ!燈!」
「燈ちゃん!」
咄嗟に立希と香澄が彼女の腕を掴むが、穴は何故か吸い込む勢いが強くなり、そのまま香澄たちや他の全員も浮かび上がる。
「うわぁぁ〜〜!!」
「吸い込まれる〜〜!!」
そのまま全員は穴の中に吸い込まれた。
そして同じ頃、ウマ娘の世界に現れた黒雲をトレセン学園の屋上から観ている一人のウマ娘がいた。
頭脳明晰だが、普通の会話が苦手な不思議なウマ娘、ネオユニヴァースである。
彼女は両手を掲げながら黒雲を観ていた。
「…『来る』…9組のガールズバンド…」
そう呟きながら彼女が目を瞑ると、彼女の脳裏に黒雲の中の光景が広がる。
数多くあるマルチバースを通り、香澄たちと他に吸い込まれた9組のガールズバンドたちの姿が脳裏に広がっていた。
「…いや…10…?!『1組多い』…よ…!?」
しかし、こちらの世界に向かうガールズバンドが9組ではなく、10組いることに気づいた彼女の顔は驚きと困惑が入り混じった表情となっていた。
そして同じ頃、アグネスタキオンたちは装置を止めようと必死になっていた。
「おいおいタキオン!これどーするんだよ!?」
「言われなくても今やってるよぉ!」
慌てるゴールドシップの言葉にアグネスタキオンが怒鳴るようにに叫ぶと、発明品が爆発すると同時に中から花型の石が飛び出す。
その石は突然10個の欠片となって砕けると、窓を破って何処かへと飛んでいく。
それと同時に黒雲から虹色の落雷が落ちると同時に穴の中から8つの光がトレセン学園の各地に落ちる。
「い、今学園のあちこちに何か落ちましたよ!」
「す、スペ先輩!上!上ッ!!」
すると、ダイワスカーレットが驚きながら上空を指差していると、遅れてきたかのように穴から現れたピンク色と青の光がスペシャルウィークたちに向けて落ちてくる。
「えぇーーっ!?」
「み、みんな逃げてーっ!!」
サイレンススズカの一言でスペシャルウィークたちは一斉にその場から離れると、先程まで彼女たちがいた辺りにピンク色と青の光が直撃し、それと同時に空一面を覆っていた黒雲は跡形もなく消えていき、青空が戻った。
「い、イタタ〜…!だ、大丈夫みんな?」
「あ、あたしたちは大丈夫です!」
「な、なまらビックリした〜…!」
「おーい!何が落ちてきたんやー!?」
すると、吹き飛ばされながらもなんとか無傷で済んだスペシャルウィークたちのもとに近くにいたタマモクロスとスーパークリークが偶然近くを通りかかって合流したダンツフレームとナリタトップロードと共に駆けつける。
「タマモクロスさん!それにトップロードさんたちも!」
「おやおや。派手に落ちてきたようだねぇ」
すると、アグネスタキオンがマンハッタンカフェと発明品を起動させた実行犯であるゴールドシップを連れてやってくる。
「タキオン!もしかしてアナタなにかしたの?」
サイレンススズカが問いかけると、アグネスタキオンは笑みを浮かべながら言い放つ。
「よしてくれないか?私は開発しただけで何もしてないよ。実行犯はゴルシ君さ」
「あんなとこ置きっぱにしたら椅子と間違うだろ〜。それよりもすっげークレーターだけど何が落ちてきたんだ?」
ゴールドシップはクレーターを見ながらそう呟くと、スペシャルウィークは穴の中を覗き込む。
すると、そこには地面に上半身だけ埋まり、下半身だけが地面から出ている状態で埋まっている香澄たちポピパと燈たちマイゴの姿だった。
「い…犬◯家の◯族…?!」
それを見たスペシャルウィークは思わず某推理映画のワンシーンを思い浮かべていると、マンハッタンカフェが口を開く。
「どうやら落ちてきたのはこの方々のようですね…早く引っ張り出して保健室に連れていきましょう…」
「そ、そうね…」
彼女の言葉にサイレンススズカが返答すると、何処からかネオユニヴァースが現れる。
「うわぁっ!?ね、ネオユニヴァースさん!?」
「貴方…どうやってきたのですか…?」
突然現れたネオユニヴァースに全員が驚くが、ネオユニヴァースは気に留めずに穴の中にいる香澄たちや周りを見る。
すると、ダンツフレームとグランアレグリアを見た途端、彼女は目を見開いて驚いている様子だった。
「…!?『変わっている』…?」
「え?」
ネオユニヴァースの言葉にスペシャルウィークが不思議に思うと、誰かがやって来る。
「お、おーい…!」
やって来たのは帽子がトレードマークの引っ込み思案なウマ娘、シュヴァルグランとその姉のヴィルシーナ。
そして末っ子のヴィブロスの三姉妹だった。
「シュヴァルちゃん?それにみんなもどうしたの?」
「じ、実は空から見たことのない人たちが落ちて来て…!救助の応援をお願いしたくて…!」
ダンツフレームの問いかけにヴィルシーナが答えると、それを聞いたネオユニヴァースが彼女に声をかける。
「…!ネオユニヴァースが"手伝う"よ…アグネスタキオンとマンハッタンカフェは他に落ちた場所を"お願いする"よ…」
「わ、わかりました…」
「こっちだよー!」
ネオユニヴァースの問いかけにマンハッタンカフェが答えると、ヴィブロスに案内されて他の場所へと向かう。
「そ、それじゃあ、私たちも早くあの人たちを助けましょう」
「は、はい!」
ナリタトップロードがそう言うと、スペシャルウィークたちは香澄たちを穴の中から引っ張り出し、保健室に運んで行った。
それからしばらくすると、保健室のベッドに眠っている香澄が目を覚ます。
「ん…?ここは…?はっ、みんな!?」
目を覚ました香澄が辺りを見回すと隣で有咲たちや燈たちが眠っていることを確認する。
「ふぅ〜…みんないる〜…」
香澄はホッと一息つくと、扉が開いてスペシャルウィークが入ってくる。
「あっ、目が覚めましたか?」
スペシャルウィークは香澄が起きていることに気づくと、彼女の隣に近づく。
「え…?み、耳と尻尾…?」
香澄はスペシャルウィークの頭の上の耳と尻尾を見て困惑していると、燈が目を覚ます。
「ん…?ここどこ…?ん?なにこれ…?」
すると、寝ぼけていた燈はスペシャルウィークの尻尾を引っ張ってしまう。
「イダダダダッ!?尻尾引っ張らないでくださ〜い!」
「わっ!?びっくりした!?って、本物の尻尾!?」
香澄が痛がるスペシャルウィークを見て驚いていると、有咲たちも目を覚ます。
「ったくなんだようるせ〜な〜…」
「あれ?ここは…?」
「みんな!気がついたんだ!」
「よかった…!みんな無事だった…!」
有咲たちが目を覚ましたことに香澄と燈が気づくと、サイレンススズカたちが声を聞いて入ってくる。
「スペちゃんどうしたの!?」
「おっ、みんな起きてるじゃねぇか」
「へっ?な、何?み、耳と尻尾?コスプレ?」
保健室に入ってきたサイレンススズカたちを見た愛音がそう呟くとウオッカが口を開く。
「コスプレェ?何言ってんだよ?ウマ娘なんだから尻尾と耳があって当たり前だろ?」
「う、ウマ娘…?な、なんですかそれ…?」
「えっ!?う、ウマ娘を知らないんですか!?」
りみの言葉にナリタトップロードが驚いていると、後から入ってきたアグネスタキオンが声をかける。
「どうやら彼女たちはウマ娘が存在しない世界からやって来たようだね。我々を知らないのも無理はない」
「あ、貴女は…?」
「アグネスタキオン。君たちをこの世界に呼び寄せてしまった発明品の開発者だよ」
香澄の問いかけにアグネスタキオンは自己紹介をしつつも説明すると、スペシャルウィークが彼女に声をかける。
「あれ?そういえば、カフェさんとユニヴァースさんは?」
「カフェとユニヴァース君なら理事長に事情を説明しに行っているよ。それよりも…」
アグネスタキオンは壁に立てかけられている香澄たちの楽器を見る。
「眠っている間に君たちの私物を少し確認したが、君たちはバンドなのかい?」
「え?は、はい…」
燈が彼女の質問に答えると、コツコツとノックの音と共にマンハッタンカフェが入ってくる。
「失礼します…あっ、お目覚めになったようですね…」
「カフェさん。どうでしたか?」
「理事長に報告したら彼女たちを連れて私達を含めて全員、体育館に来るようにとのことです」
スペシャルウィークの問いに彼女はそう答えると、全員で体育館に来るよう言い放つ。
「へ?わ、わかりました…皆さん、荷物を持って着いてきてください」
「は、はい…?」
ナリタトップロードに言われたとおりに香澄たちはベッドから起き上がって荷物を持つと保健室を出て彼女たちについて行った。
しばらく歩いていると、愛音が小声で紗綾に声をかける。
「あ、あの、山吹先輩…この人たち大丈夫かな…?コスプレみたいな格好だし…」
「え?うーん…まぁ、助けてくれたんだし悪い人じゃないんじゃないかな〜…?それに似たような人周りにいるし…」
沙綾は周りにいる自分たちを見ながらヒソヒソと小声で話し合うウマ娘の生徒たちを見てそう呟く。
しばらくすると、体育館にたどり着き、扉を開けて中に入る。
中に入ると、大勢のウマ娘たちと共に他のガールズバンドたちが集まっており、全員が一斉にスペシャルウィークたちの方を向く。
「!ましろちゃん!?それにみんなも!?」
「燈ちゃん!」
「初華ちゃん!?初華ちゃんたちもここに…!?」
香澄がガールズバンドたちを見て声を上げ、仮面のヘヴィメタルバンド、Ave_Mujicaのギター&ボーカル担当、三角初華が燈に声をかけて燈が彼女たちもいることに驚く。
すると、スペシャルウィークの同期の芦毛のウマ娘、セイウンスカイが声をかける。
「おぉ〜、もしかしてキミらも空から落ちてきた女の子?」
「スペちゃんたちもその人たちと遭遇していたようですね」
質問してきたセイウンスカイに続いて同じく同期の大和撫子風のウマ娘、グラスワンダーが微笑みながらそう言い放つ。
「あ、あの…貴女たちもその…ウマ娘さん…?」
「どうやらそのようね」
燈の問いかけにRoseliaのリーダー、湊友希那がそう答えると、右耳のあたりに小さな帽子と青いバラを身に着けた小柄なウマ娘、ライスシャワーが問いかける。
「あ、あの…スペさんたちもあの黒雲から落ちてくるところを見たの…?」
「は、はい…」
「私たちも空から落ちてきた彼女たちを他にも居合わせた子たちと一緒に介抱したということが共通してるかな?」
ライスシャワーの問いにスペシャルウィークが答えると、イケメン風のウマ娘、フジキセキが何も無いところからシルクハットを取り出してそこから鳩を取り出す。
「わっ!?ま、マジック!?」
「凄い…!」
「フジさんスッゲェーッ!」
彼女の突然のマジックを見たRAISE A SUILENのベース兼ボーカルのレイヤこと和奏レイとMorfonicaのボーカルの倉田ましろも驚き、フジキセキに憧れる不良気質のウマ娘、ジャングルポケットが目を輝かせていると、バーチャルバンドとしても活動するガールズバンド、夢限大みゅーたいぷのボーカル担当の仲町あられが泣きべそをかく。
「それよりもここどこ〜!?ぼくたち変な穴に吸い込まれてこんなところに来ちゃってそれで〜…!」
「落ち着いてください。どうやら10バンド全員がこの不思議な世界にやってきたようですわね」
Ave_Mujicaのキーボード担当、豊川祥子があられを宥めると、ネオユニヴァースがAve_Mujicaのメンバーたちをジッと見つめていた。
「……」
「あ、あの…どうかしましたか…?」
「ユニヴァース先輩、あの人たちや私たちのことさっきからずっと見てるわね?」
花の世話が好きな心優しいウマ娘、カレンブーケドールとお姉さん気質なウマ娘、ラヴズオンリーユーが不思議に思っていると、体育館のステージに二人の女性がやって来る。
「あっ、理事長とたづなさんが来たよ!」
「理事長?」
ウマ娘のアイドル、ウマドルの少女、スマートファルコンがそう言い放ち、隣りにいたAfterglowのギター兼ボーカル、美竹蘭が呟くと、緑色のスーツを着た理事長秘書、駿川たづなが演台の隣に立つと、演台の前に帽子に猫を乗せた一人の少女が立つ。
「歓迎!ようこそトレセン学園へ!君たちが空に現れた黒雲から落ちてきた少女たちだな!」
扇子を掲げた彼女は一見すると幼い少女のようにも見えるがれっきとしたトレセン学園の理事長、秋川やよいである。
「初めまして♪理事長秘書のたづなです♪」
たづなもやよいに続いて笑顔で自己紹介をする。
「あ、あれが理事長?」
「小さいわね〜」
Pastel*Palettesのボーカル、丸山彩とハロー、ハッピーワールド!のボーカル、弦巻こころがやよいを見てそう呟く。
「理事長さん!私達を集めたのは皆さんと接触したことですか?」
サトノ家の令嬢であるウマ娘、サトノダイヤモンドがやよいに問いかける。
「うむ。そうだな…アグネスタキオン。マンハッタンカフェから話は聞いたぞ!君の発明品が彼女たちを呼んだそうだな!」
「実行犯はゴルシ君だけどね」
「全く…ゴールドシップさんも貴方も何をしているんですの…」
彼女の発言にメジロ家の令嬢であるウマ娘、メジロマックイーンが呆れながら二人に言い放つ。
「ねぇ〜、アタシらを元の世界に早く戻してくれない?急に連れてこられてマジで意味分かんないんだけど」
モニカのギター担当、桐ヶ谷透子がアグネスタキオンに向かってそう言い放つが、彼女は飄々とした態度で答える。
「いや〜、実は発明品が急に木っ端微塵に壊れてしまったから無理だね〜。発明品に使っていたエネルギー源も何故か消えてしまったのだよ」
「えっ!?じゃあ、私達元の世界に帰れないの!?」
「そういうことだね」
香澄の言葉にアグネスタキオンがそう言い放つと、たづなは困った表情でやよいに問いかける。
「困りましたね…どうしましょうか?」
「ふむ…とりあえず今日のところは彼女たちを寮に泊まらせてまた明日話し合おう。フジキセキ。彼女たちを寮に案内したまえ」
「はい。えーっと…50人はいるから…確かさっき5人1組のバンドって、聞いたから…5組は栗東寮に、残りの5組は美浦寮に案内するよ。みんな着いてきて」
「は、はい!」
フジキセキにそう言われてガールズバンドたち全員は彼女に着いて行こうとすると、Ave_Mujicaのベース担当、八幡海鈴とドラム担当、祐天寺にゃむが話し合う。
「しかし、ウマ娘とは一体なんなのでしょうか…?私たちと姿がよく似ていますが…?」
「さぁ〜?頭の上に耳と尻尾が生えてるだけの変な子達にしか見えないけどねー」
二人がそんな会話を交えていると、その会話が聞こえていたのか、やよいが彼女たちを呼び止める。
「提案!もしよかったら明日の模擬レースを見学してみないか?」
「も、模擬レース?」
やよいの提案に香澄たちは不思議そうにすると、彼女は説明する。
「ウマ娘たちの模擬レースだ。彼女たちの活躍する姿を是非見てほしい!」
やよいがそう言い放つと、ガールズバンドの何人かは困惑しつつも頷き、二人について行った。
「模擬レースってどういうことかな?」
「なんだか大変なことになっちゃったね香澄ちゃん…」
「そうだね…」
体育館から出て歩きながら、たえが模擬レースについて疑問を持ち、りみとそんな会話をしていた香澄はふとレースコースの方を見る。
既にあたりは夕日に照らされ、香澄たちが落ちたクレーターの穴も綺麗に塞がれてウマ娘たちが普段通りに走り込みをしていた。
「練習…?ごめんちょっと先行ってて」
「う、うん…?」
ウマ娘の練習が気になった香澄は沙綾にそう言ってコースの方を観ると、二人のウマ娘がいることに気づく。
一人は史上初の9冠女王の異名を持つトリプルティアラのウマ娘、アーモンドアイ。
もう一人は無敗のトリプルティアラウマ娘、デアリングタクトだった。
アーモンドアイは準備運動をしており、タイマーを持ったデアリングタクトが合図を出すと、アーモンドアイは一気に駆け出す。
「あっ…!」
それを見た香澄は言葉を失う。
彼女の走りは観ているものに衝撃を与え、そして背中に翼が生えたかのように軽やかで全てを魅了する美しい走りだった。
走っているアーモンドアイの表情も笑顔で走ることを何よりも楽しんでいるようにも見えていた。
「綺麗…!まるで飛んでるみたい…!」
香澄は彼女の走りを夢中になって見ていた。
そしてアーモンドアイが走り込みを終えてスピードを落としながら止まり、デアリングタクトが持ってきたタオルとドリンクを受け取ると、自分を見ている香澄の存在に気づいて彼女の方を向く。
アーモンドアイの瞳はサファイアのように澄んだ青い瞳で、そしてその瞳は星空のように輝く美しい瞳だった。
「…っ!あの子の瞳…お星さまみたいにキラキラしてる…!」
香澄は彼女の美しい瞳に魅了され、二人がしばらく互いに見つめ合っていると、アーモンドアイは微笑みながら香澄に向かって手を振る。
「あっ…え、えへへ…」
手を振られたことで香澄は照れくさそうに手を振り返すと、有咲の声が聞こえる。
「香澄ー。早く来ないと置いてくぞー」
「あっ、すぐ行く〜!っと、練習頑張ってね!」
呼びかけられた香澄は慌てて行こうとすると、アーモンドアイに労いの言葉をかけてから有咲たちの方へ走って行った。
そんな彼女を見ていたアーモンドアイとデアリングタクトは互いに顔を見合わせながら微笑んでいた。
それから数分後、トレセン学園から少し離れた学生寮、栗東寮と美浦寮にやって来ると、それぞれ5組のバンドの合計25人に分かれて入ることになり、ポピパ、マイゴ、パスパレ、ハロハピ、RASは栗東寮に。
Roseliaとアフグロ、モニカ、ムジカ、ゆめみたは美浦寮の寮長のウマ娘、ヒシアマゾンに連れられて美浦寮に泊まることになった。
「さぁ、ポニーちゃんたち。君たちのお部屋はここだよ」
栗東寮の寮長でもあるフジキセキがとある部屋の扉を開けて香澄たちを招き入れる。
その部屋は大部屋で、ちょうど人数分の二段ベッドが用意されていた。
「おぉー!広いお部屋!」
「今日はみんなお疲れだと思うからみんなゆっくり休むといいよ。それじゃあ、晩御飯になったら呼ぶからね」
そう言ってフジキセキは部屋から出る。
「っは〜…なんか色々と疲れた〜…」
「いろんなことがありすぎて頭がパンクしそう…」
「で、ですね…」
有咲はベッドに寝転がりながらかなり疲れた様子でそう言い放ち、ハロハピのDJ担当、ミッシェルこと奥沢美咲とRASのギター担当、ロックこと朝日六花も未だに困惑した様子でそう呟く。
「でも、楽しそうだわ!」
「ふふっ、こころの言う通りだね。儚い…」
普段と変わらぬ笑顔でそう言い放つこころに対してハロハピのギター担当、瀬田薫は微笑みながら言うと、扉をノックする音が聞こえる。
「ん?はーい?」
自分のベッドに荷物を置いた香澄が返事をすると、扉が開かれる。
「失礼します」
入ってきたのはスペシャルウィークだった。
「あっ、貴女は確か…」
「スペシャルウィークです。あの、突然こんな事になってしまってすみません…私達も何がなんだかわからなくて…」
「い、いいよ〜気にしないで!」
申し訳無さそうな表情で謝罪するスペシャルウィークに対し、香澄は慌ててそう言い放つ。
「ありがとうございます…そういえば、皆さん私達のこと珍しそうに見てますが、本当に皆さんのいたところにはウマ娘はいないんですか?」
「え?えっと〜…ちょ、ちょっと待って!」
スペシャルウィークの質問に香澄は少し考え込むと、燈たちと小声で話し始める。
「ねぇ…どう説明したらいいかな…?」
「どうって…普通にウマ娘なんかいないって言えばいいだろ?動物の馬ならいるけどよ…」
「で、でも、動物の馬がいるって言っても混乱するんじゃないかな…?ウマ娘って、普通に人間っぽいし…」
有咲の言葉に彩は小声でそう言い放つ。
「あの…?なにか変なこと言いました?」
「へっ!?な、なんでもないよ!あはは〜…う、ウマ娘はいないな〜。それよりも、さっき理事長さんが模擬レースって言ってたけどスペシャルウィークちゃんたちはレースやってるの?」
香澄は慌てながらレースのことを問いかけると、スペシャルウィークは説明する。
「はい!私達ウマ娘はいつもレースに挑んでます!特に私は日本一のウマ娘になるためにトゥインクル・シリーズで頑張ってます!」
「日本一のウマ娘?」
「はい!故郷のお母ちゃんとの約束なんです。日本一のウマ娘になってみせるって…だから私は毎日トレーニングやレースを頑張ってるんです!」
香澄の問いかけに答えながらも笑顔で夢を語るスペシャルウィークの目はとても輝いており、香澄は彼女の表情に見惚れていた。
「スペシャルウィークちゃん…!私、スペシャルウィークちゃんの夢応援するよ!」
「!ありがとうございます!えっと…」
「戸山香澄!よろしくねスペシャルウィークちゃん!」
「はい!あっ、私のことはスペって呼んでください!明日の模擬レース、頑張りますね!では、失礼します!」
「うん!また明日ねスペちゃん!」
スペシャルウィークはそう言うと、香澄たちに一礼してから部屋から出た。
「結構いい子だったね」
「うん!」
沙綾の言葉に香澄は頷いた。
その夜、トレセン学園の屋上にはネオユニヴァースがいた。
ネオユニヴァースは両手を掲げながら夜空を見つめていた。
「…『変わっている』…ネオユニヴァースが"観測"した別宇宙と…大きく違う…アグネスタキオンに使わせた三女神の石が違うから…?」
そう呟きながらネオユニヴァースはゆっくりと目を瞑る。
アグネスタキオンの発明品に使われたエネルギー源の石はどうやら彼女が何処かで手に入れたものであり、三女神の像の前に置いた石を彼女に石を拾わせていたようだった。
「ネオユニヴァースが"観測"した別宇宙にはいたみんなが…あの中にいなかった…代わりに別のウマ娘たちがいた…あの10組目は…ネオユニヴァースも知らない"特異点"…シュヴァルグラン達も…」
別の宇宙を見ることが出来る彼女の脳裏にはあの場にはいなかった別の8人のウマ娘たちが浮かんでおり、そしてムジカやシュヴァルグランたち5人、そしてグランアレグリアたち8人のウマ娘以外のウマ娘たちとガールズバンドの姿があった。
「石も消えてどこに行ったか『わからない』…それでも…この世界でもみんなと一緒に変える…これから来るウマ娘の『残酷な運命』と…"厄災"から…!」
そう言いながら手を下ろした彼女のその表情は決意に満ちていた。
そして翌日…模擬レースが行われるトレセン学園のレースコースでは、大勢のウマ娘の生徒たちが集まっていた。
観客席には香澄たちガールズバンドたちも全員集まっていた。
「わぁ〜…!いっぱい集まってるね〜!」
「えぇ。私達の世界のバンドと同じくらいの人気みたいね」
香澄と友希那が周りを見ながら言うと、焼きそばを販売しているゴールドシップがやって来る。
「ゴルシちゃん印の焼きそばはいらんかね〜?大盛りで具材たっぷりで美味しいよ〜」
「あっ、焼きそばくださーい!」
「広町にもくださいな〜」
「毎度あり〜」
アフグロのリーダーでベース担当、上原ひまりとモニカのベース担当、広町七深は焼きそばを購入すると、レースコースのゲートにスペシャルウィークたち模擬レースに出走するウマ娘たちがゲートの前に立つ。
普段模擬レースを行う際は体操着を身につけるのだが、今回はウマ娘を知らない香澄たち向けに特別にトウィンクル・シリーズで着用する勝負服を着ていた。
「あの服は何?」
「あれは勝負服と言って、私達ウマ娘に不思議な力を与える服よ」
勝負服が気になった香澄の言葉にサイレンススズカが答えながら説明する。
『美しい青空が広がる模擬レース場。今、出走を控えた10人のウマ娘たちがターフに立ちました。なお、実況はわたくし赤坂が行います』
普段はトゥインクル・シリーズで実況を担当する女性、赤坂美聡がこの模擬レースの実況を行うと、ウマ娘たちがゲートに入る。
「集中集中…!」
スペシャルウィークは集中しながらゲートに入り、他のウマ娘たちもゲートに入る。
「みんなの気合いの入り方が凄いね…!」
「よーし、スペちゃん!頑張ってー!」
「!はい!」
香澄の応援を受けたスペシャルウィークは体勢を整える。
『各ウマ娘、ゲートに入って体勢を整えました!』
出走準備が整うとゲートが開き、10人のウマ娘たちは一斉に走り出す。
『スタートです。各ウマ娘、きれいなスタートを切りました』
「始まったよ!」
「どんな走りを見せてくれるのかしら?」
香澄とこころはそう言いながらレースを観る。
先行争いを行いながら走り続け、何人ものウマ娘たちが凄まじいスピードでゴールに向かっていた。
「は、速い!?何あの速さ!?」
「人間離れしてるよ!?」
蘭とアフグロのキーボード担当、羽沢つぐみが彼女たちのスピードを見て驚くと、アグネスタキオンが笑みを浮かべながら言い放つ。
「当然さ。ウマ娘は時速60キロをゆうに超えるからねぇ」
「60キロ!?車並みじゃねぇか!?」
「筋力も人間を超えているわ。だからもしも転んだりぶつかったりしたら大怪我を負うわ。下手したら命に関わる怪我を負うかもしれない…私達ウマ娘の走りは命がけよ」
「命がけって、そんなに重大なことだったの…!?スペちゃん…!」
アグネスタキオンの話を聞いたRASのドラム担当、マスキングこと佐藤ますきはウマ娘のスピードに驚き、サイレンススズカからウマ娘の走ることに対する熱意を聞いた香澄たちはレース観戦に集中する。
『4番、イマジンサクセス外から行く!更に、5番リボンカプリチオ!更には9番グリードホロウ!その後ろ、2番、スペシャルウィーク!』
スペシャルウィークは他のウマ娘たちに行く手を阻まれるかのように後ろを走っており、なかなか先頭に出れなかった。
「あれじゃあ抜け出せないよ〜!」
「頑張れスペー!ウマ娘は度胸だー!」
「スペちゃん頑張ってー!負けるなー!」
「ファイトー!」
(まだまだ…!もう少し…!)
香澄たちがエールを送る中、スペシャルウィークは冷静に抜け出すポイントを探っており、次第にレースは第4コーナーへと入る。
『間もなく第4コーナー!先頭は変わらず10番、サンバイザー!』
「模擬レースだからって、絶対に負けないんだから…!」
先頭を走るウマ娘がカーブを曲がった途端、僅かに他のウマ娘たちの隙間ができる。
「!ここ!」
それを見たスペシャルウィークは力いっぱいに踏み込むと、一気にスピードを上げ、最後の直線へと駆けていく。
『ここでスペシャルウィーク!あがってきた!ここで仕掛けてきました!』
「!スピードが上がった!」
「行けー!スペちゃん!」
スペシャルウィークは徐々にスピードを上げ、先頭のウマ娘に近づいていく。
「ついて来ないでよ〜〜!!」
「観ていてください香澄さん!これがウマ娘の走りですっ!!」
そしてスペシャルウィークは先頭のウマ娘と並び、そのまま先頭を抜け出すと一気にゴール目指して駆け出す。
『ここで抜け出しましたスペシャルウィーク!脚色は衰えない!200を通過!リードは2バ身!これは凄い!?』
「む、む〜り〜〜!!」
先頭を抜かされたウマ娘は完全に距離を離され、スペシャルウィークは一着でゴールする。
『スペシャルウィーク!一着でゴールイン!!』
「っ!やったー!凄いよスペちゃん!」
スペシャルウィークがゴールしたことにより歓声が上がる。
「ふぅー…!えへへ♪勝ちました!」
「凄い…!これがウマ娘のレース…!すっごいキラキラドキドキする…!昨日のあの子と同じくらい…!!」
笑顔で観客席に手を振るスペシャルウィークの姿を見た香澄は手に汗握り、目を輝かせながら彼女から目を離せずにいた。
その彼女たちの表情を後ろから見たネオユニヴァースは嬉しそうに微笑んでいた。
それから数時間後、香澄たちガールズバンドたちはスペシャルウィークたち昨日のメンバーたちと共に体育館に集まっていた。
「別世界の諸君!ウマ娘たちのレースはどうだったか?」
「な、なんか凄かった…!」
「言葉に出来ないけど…手に汗握りました…!」
「今度の漫画の題材に出来そうです…!」
やよいの質問に燈とモニカのドラム担当、二葉つくしとゆめみたのキーボード担当、藤都子が答える。
「うむ!それなら良かった!ところで、アグネスタキオンの発明品の修復にはまだ時間がかかるそうだ。そこで、君たちさえ良ければここでしばらくの間ウマ娘たちと一緒に暮らしていくのはどうだ?」
「こ、ここでウマ娘たちと?」
「そうだ!無理にとは言わない!君たちの意見を尊重する!」
やよいの問いかけにガールズバンドたちはもちろん、スペシャルウィークたちも困惑の表情を浮かべていたが、香澄は真っ先に声を上げる。
「あ、あの!私、ここでスペちゃんたちと一緒に過ごしてみたいです!さっきのレースですごく感動しました…!ここでスペちゃんたちの夢を近くで応援したいですし、それにスペちゃんたちの手助けをしたいです!」
「香澄さん…!」
彼女の言葉を聞いたスペシャルウィークは驚きつつも嬉しそうな表情を浮かべていると、他のガールズバンドたちも口を開く。
「香澄ならそう言うと思ったよ」
「だね♪私もここでウマ娘ちゃんたちと一緒に楽しみたいし♪」
「そうね。ここでもバンド活動は出来るわ」
「ウマ娘のみんなと一緒にみんなを笑顔にしたいわ!」
「か、香澄さんが言うなら私も…!」
「私も香澄ちゃんに賛成するよ」
「一生になるかもしれないけど…ここでみんなとバンドしたり、ウマ娘のみんなを応援したい…!」
「私はさきちゃんと一緒ならどんなことでも大丈夫だよ。それにウマ娘さんたちに少し興味もあるし」
「ぼ、ぼくだってこの世界でも頑張ってやるぞー!」
各バンドのボーカル組が中心となってウマ娘の世界で過ごすことを決めると、それを聞いていたやよいは扇子を広げてそれを掲げる。
「決定!君たちの思いは受け取った!君たちを特別に仮トレーナー兼トレセン学園の一員として我々が保護する!これからは君たちもウマ娘たちをサポートしてくれ!」
「はい!」
やよいの言葉を受け、ガールズバンドたち全員が返事をすると、スペシャルウィークたちが駆け寄る。
「香澄さん!これからもよろしくお願いします!」
「うん!よろしくねスペちゃん!」
「アフォーマティブ…ネオユニヴァースはあられと"友達"だよ…」
「う、うん!よろしく!」
全員が笑顔で握手し合う中、香澄が突然あることを思いつく。
「そうだ!理事長さん!ちょっとステージ借りていいですか?」
「うむ!構わないが、何をするつもりだ?」
「みんなに私たちのことももっと知って貰いたくて♪みんな、ちょっと待っててね!」
「なるほど…そういうことね戸山さん」
香澄がやよいから体育館のステージの使用許可を貰うと、彼女の様子に何かを察した友希那や他のガールズバンドたちは香澄と共に体育館から出る。
しばらくすると、ステージの上に楽器を用意した香澄たちガールズバンド全員が現れる。
「お待たせみんな!」
「香澄さん、それってもしかして…」
「うん!今からみんなに私たちのライブを披露するよ!」
「模擬レースのお礼に私たちもお返しにライブしちゃいまーす!」
香澄と彩がスペシャルウィークたちに向かってライブを開催することを宣言すると、沙綾がドラムスティックを鳴らす。
「ワン・ツー・スリー!」
沙綾が合図を出すと、ガールズバンドたちは一斉に演奏を始める。
香澄たちボーカル組の歌声に加えてギターとベース、キーボードの音色が響き、激しく鳴り響くドラムやDJにバイオリンなど、彼女たちが奏でるメロディが一つとなっていた。
「す、凄い…!」
「みんなカッケェー!」
「ウェイウェーイ!盛り上がってきたー!」
「ゴルシちゃんのダンスも見せてやるぜー!」
彼女たちのライブを見たスペシャルウィークとウオッカは目を輝かせ、パリピ系ギャルウマ娘のダイタクヘリオスとゴールドシップもテンションが上がり、他のウマ娘たちも大いに盛り上がる。
「ふふっ、みなさん凄い盛り上がりですね理事長♪」
「うむ!これで彼女たちの心もより繋がるだろう!」
たづなとやよいはその光景を微笑みながら見守っていた。
彼女たちのライブは寮の門限ギリギリまで続いたという。
…………………………
その頃、レースコースでは一人のウマ娘が走り込みを行っていた。
すると、地面に何か光るものが落ちていることに気づくと、彼女はそれを手に取る。
それは、砕け散った花型の石の一つであるピンク色に輝く欠片だった。
他の場所に散らばる残りの9個の欠片も他のとある9人のウマ娘たちが拾っていた。
こうして、ウマ娘たちとウマ娘の世界にやってきたガールズバンドたちのドタバタな日常の物語が始まったのだった。
続く。
「次回予告フリートークコーナー」
「スペちゃん!これからよろしくね!トレーニングも勉強も遊びも頑張ろうね!」
「はい!はぁ〜、それにしてもお腹空きました〜。ニンジンハンバーグでも食べましょう!いただきま~す!パクパク…ん〜♪なまら美味しいです〜♪」
「美味しそう…じゅるり…!スペちゃん、一口…」
「…あげません…」
「え?」
「あげません!」
「えぇ〜!?じ、次回!第2話「トレセン学園ご案内!」次回もお楽しみに!」