World Migration ―箒星の魔女たち― 作:壊人二十面相
前回投稿から2年近くも空けてすまない……
そしてそんなにも間が開いたのに新作がこんなに短くて本当にすまない……
1944年7月3日14:00 連合軍西部方面総司令部
宮藤との邂逅の翌日、私はミーナ中佐と共にロンドンの連合軍西部方面総司令部を訪れていた。
名目としては501で「保護」している「民間人」との面談ということになっているが、無論ミーナ中佐も私もそれを文面どおりに受け取ってはいない。
恐らくは私を、正確には私のバーバルスを自陣営に引き込みたいというのが狙いだろうというのが中佐と私の一致した見解だった。
しかし、連中は知るまいがバーバルスだけを手に入れたところで使用はおろか解析さえ出来はしまい。
分解するための工具がこの時代には無いというのは前に語ったとおりだが、それ以外にもバーバルスには
一応この世界にある工具でも外装を無理矢理切り裂いて分解することも出来なくはないが、そうしたとしてこの時代の技術レベルでは原始人がコンピュータを独学で解析して複製するようなものだ。使われている技術の1%も理解できるか怪しい。
つまりアレを如何こうしたければ私ごと手に入れるしかないわけだが、目下のところ中佐の下から離れる心算は欠片ほどもありはしないし、聞いた限りにおいてその話を持ちかけてくるであろうトレヴァー・マロニーなる人物を私は「従うに値しない人物」だと考えている。
報酬で動く傭兵とて雇い主を選ぶ権利はあるのだ。
「全く面倒臭い。」
私の呟きに、隣を歩いているミーナ中佐が苦笑する。
「ごめんなさいね、手間をかけさせて。」
「まあいずれこうなることは予見してた。寧ろ今更かというくらいだ。」
「確かに思ったより動きが鈍かったわね。」
実際都合3か月何のアクションもなく放置である。私の存在を把握してないなんてことは無いはずだから警戒されていたのかもしれん。
本当に存在を把握してなかったんだとしたらお笑い草だが。
「ま、何にせよ今日で隠れ潜むような生活ともおさらばだ。これで大手を振って暴れられるってものよ。」
「……お手柔らかにお願いね?」
「お偉いさん方の出方次第ではここで大暴れすることになるかもしれんね?」
「それは流石に勘弁して……」
中佐は頭を抱えた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
1944年7月4日09:00 501JFW基地 ブリーフィングルーム
「今日から私たち501部隊に新たに一人の仲間が加わります。坂本少佐が扶桑皇国から連れてきた宮藤芳佳さんです。
そして、本日付でエマさんが正式に501の臨時隊員となりました。
では二人とも、一言お願いね。」
「宮藤芳佳です! よろしくお願いします!!」
「エマノンだ。もう見知った顔ばかりだが、まあ改めてよろしく。」
中佐に促され、宮藤が緊張した様子で、エマが気楽な様子でそれぞれ挨拶を述べる。
宮藤はともかくもう既に501の隊員たちと3ヶ月間共に過ごしているエマが改めて挨拶する必要があるのかと言えばまあないのだが、これも一つのケジメである。
「宮藤さんの階級は軍曹になります。同じ階級のリネットさん、面倒見てあげてね。」
「は、はい!」
「それからエマさんは正式な軍属ではありませんが中尉相当の権限が付与されています。一応皆さんに伝えておくわね。」
「おー、私とおんなじかぁ。」
エマの待遇については先日行われた「面会」の際に連合軍司令部との協議の末決まったものである。
面会から場所を移すほど長引いた協議の内容がいかなるものであったかは敢えて語ることはしない。
ただ、協議の終了後連合軍側の代表者となっていたマロニー大将とブリタニア首相ウィンストン・チャーチル氏は非常に苦い顔をしていたとだけは述べておこう。
この後、階級章その他諸々のセットを渡された宮藤が拳銃の受け取りを拒否したりといったことがあったが、概ね恙なく朝のブリーフィングは終わり解散となった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
1944年7月4日14:25 エマの部屋
「……暇だ。」
今日予定していた分の訓練を昼前までにこなし、昼食も終えた私は完全に暇を持て余していた。
中尉待遇になったとはいえ正規軍人ではない私に書類仕事など回ってくるはずもなく、今日付で501に入隊した宮藤は軍事教練など受けたこともない全くのド素人であるため坂本少佐に早速基礎から扱かれており私が手出しする段階にない。
仕方なく情報端末に入っている本やら映像やら各種娯楽で暇をつぶそうと試みたものの大方繰り返し見たものばかりで、この501基地の資料庫にあった本はあまり読み込んでいないが歴史書を除けばストライカーユニットの基礎理論とか戦術教本の類ばかりであまり私の興味を引くものではなかった。ユニットの技術情報はギークなら喜んだかもしれないが。
仕方ないので基地の中でも散歩しようかと情報端末のディスプレイになっているスマートグラスを外そうとしたその時であった。
情報端末の方に超空間通信が入った。
『こちら『
「こちら『E1』、待ちくたびれたぞギーク。」
『いやぁついつい最近発見された新素材の解析に熱が入っちゃってねぇ。どうせビーコンからの座標データの解析に時間かかるからと研究にかまけてたらいつの間にか転移先の座標把握まで終わってたよ。』
「…どうせそんなことだろうと思ってたよ。」
予想通りの理由に呆れつつも、数か月ぶりに聴く相棒の声とその調子に少しばかりの安心感を覚える。
別に独りで異世界に跳ばされて心細かったなんてことはない。ないったらない。
『ハハハ、流石にお見通しか。ま兎に角元気そうで何よりだ。』
「まー何とかなー。とはいえそろそろ装備の消耗が気になってきたところだった。」
『むむ、そうなのかい? なら迎えに行くのは早い方がいいな……じゃあ24時間以内にはそっちに跳ぶよ。』
「ん、了解した。こっちもそのように構えておく。」
『じゃあね~』
そして私の返答を待たずして通信は切れた。
ギークと合流できるとなれば懸案事項はどれも解決に向かう。
ギークの持つ船には各種物資生産用のプラント設備が搭載されていて、実物があれば余程特殊な素材を使っていない限り直ぐに複製して生産できる。これで弾薬の心配はほぼなくなる。
バーバルスの燃料も本来使用している専用品が使用できるようになり、本来の性能を出せるようになるはずだ。ちなみに今までは代用品として灯油を使っていた。
そして何より今までは消耗が加速するために使用を封じていたバーバルスの機能開放もこれで気兼ねなく使用できるようになる。バーバルスと私の本気はまだまだあんなものではない。
何にせよ、ギークが迎えに来たとてまだまだ帰るつもりはない。
ペグマタイトでの任務は結果的に放棄することとなってしまったが、契約の途中破棄は傭兵の仁義に悖る。
ミーナ中佐との契約が終わるまでは休暇も兼ねてこの世界に居るつもりだ。
「……そうだ、ギークが来ることを中佐に伝えておかないと。」
ギークが何処にジャンプしてくるつもりかは訊きそびれたが、あのサイズの物体が突然現れたらこの世界では良くてパニック、悪ければネウロイと誤認されて攻撃されかねない。
少なくとも501の隊長にしてこの基地の責任者である中佐には話を通しておかねば拙いだろう。
そう考えた私は中佐を探しに部屋を出た。
バーバルスのエンジンの燃料系は特殊で可燃性の液体なら最悪アルコールでも飛行可能です。
但し本来の燃料以外を使った場合性能が落ちる上に各部パーツの劣化が早まります。
次回の時系列はアニメ3話の後半くらいになります(予定)