World Migration ―箒星の魔女たち―   作:壊人二十面相

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ついにやってもうた……

よければゆっくり読んでいってね!


1944年4月 ブリタニア戦線 「『太陽系』作戦」
Task01 傭兵と魔女の邂逅


西暦2840年4月1日 惑星「ペグマタイト」W-07空域

 

赤茶けた岩石地帯の上を1機の戦闘機が飛ぶ。

双発の推力偏向型ジェットノズル、水平尾翼一体型のクリップトデルタ翼、斜めについた垂直尾翼、そしてなにより目を引くのが主翼翼端、エルロンがあるべき場所に存在する推力偏向型イオンエンジン。機動性を高めるためであろうことは想像がつくものの、なぜそんな位置にわざわざ付いているのかは設計した本人以外には理解できないだろう。乗っている本人でさえも。

外見からどんな設計コンセプトがあったのかさっぱり見当がつかないが、ミサイルなど武装の類が外付けされていないところを見るにステルス性があるらしいことはわかった。

なんとも奇妙なこの戦闘機は、型式番号XM-38、機体名を「バーバルス(B a r b a r u s)」と言った。

 

<<管制機よりレイヴンへ。まもなく作戦空域に到達する。目標は貴機の10時方向を飛行中。>>

 

「レイヴン、了解。こちらのレーダーでも確認した。…随分デカいな、幅200mはあるぞ。」

 

管制機からの通信で「レイヴン」と呼ばれたパイロットは、自機のレーダーを見ながら驚いたようにつぶやく。

 

「こんなものがここに接近するまで本当に気づかなかったと?」

 

<<まるでワープしたかのように突然現れたと報告を受けている。>>

 

「ワープねぇ……」

 

ワープという単語に、パイロットの脳裏に知り合いの変態技術者の顔がちらつく。

今自分が乗っている機体もそいつの設計で、世界水準の20年先を平気で先取りするような天才(天災)ならそんなものも作れるのかもしれないと思い、なんとなく頭が痛くなった気がした。

ちなみにだがワープ技術そのものはこの時代すでに存在している。

しかし装置が非常に重く最低でも200mクラスの航宙艦でなければ搭載できないようなもので、さらに起動には原子炉数基分という莫大なエネルギーが必要になるためよしんば搭載できたとしても起動など不可能である。

と、よくよく考えてみたら自分の持っている艦にも、「ヤツ」の「弁当箱」にもワープのさらに上を行くモノが積んであったことを思い出して思わず頭を抱えそうになった。

まあもっともいくらヤツが頭のネジがダース単位で抜けてる天災な変態とはいえ、やっていい事と悪い事の区別くらいは付く男だし、実験のミスでこんなところにモノを飛ばすなどというポカをやるような男でもない。さすがに今回ばかりはシロである。

 

「それで、オーダーは撃墜だったか?」

 

<<そうだ。既に再三通信で呼びかけたが一切応答がない。叩き落としてくれ。>>

 

「了解。」

 

<<頼んだぞ、傭兵。オーバー。>>

 

「あれだけのデカブツ、報酬はたっぷり貰うからな。オーバー。」

 

通信を切り、機首を目標に向けてアフターバーナーを点火し、急加速する。

目標までの距離は約100km、ペイロードの半分も武装を積んでいない現状ならすぐの距離である。

2分と経たないうちにレイヴンの視界に目標が見えた。

 

「見えた……なんだあれ?」

 

それは航空機と呼ぶにはあまりにも異質だった。

フォルムは全翼型の爆撃機にも似ているがエンジンの排気が一切確認できず、コクピットらしき部分も見える限りでは確認できない。そして表面全体が漆黒の六角模様で構成されており、そのうちの数カ所は赤くなっている。

少なくとも空を飛んでいる以上航空機には違いないだろうが、レイヴンは未だかつてこんなものは見たことがなかった。

 

無人航空機(U  A  V)…か?ともかく攻撃を―――っ!!」

 

光り始めた赤い六角形を見て嫌な予感を感じ、咄嗟に機首を下に向け急降下する。

その数瞬後、つい先程までバーバルスがいた場所を赤い光線が駆け抜けていった。

 

「あっぶな、あの赤い六角形レーザー砲か。…チッ、下にもある。」

 

機体下面にも光る赤い六角形を認めたレイヴンは黒い航空機の真後ろ同高度に機体をつけた。

地上では目標物を見失ったレーザーが地表に穴を穿っていた。

 

「飛び抜けて高い威力ってわけではなさそうだけど…流石にバーバルス(こ い つ)の対レーザー障壁じゃ10秒保てば御の字か。……なら!」

 

レイヴンがコンソールを操作すると、バーバルスの機体下面中央が開き、中からミサイルが現れる。熱源探知式短距離空対空ミサイルである。

そして黒い航空機の機体両翼上面の熱源反応4つにロックオンし、それを外さないように上昇して射線を確保する。

 

「レイヴン、FOX2!」

 

バーバルスが黒い航空機の上に出ると同時にレーザー照射の予備動作が始まったが、ミサイルの到達の方が早い。着弾したミサイルは見事に黒い航空機の両翼をもぎ取った。しかし、

 

「うへぇ、なんとなく予想はしてたけど羽根もげたのに飛んでる……ってか再生してる?!ナノスキンかなんかかよ…」

 

よく見るまでもなくちぎれた両翼の根元が白く光り、また翼が生え始めていた。

 

「クソ、させるか!」

 

叫びながら再びコンソールを操作する。するとウェポンベイのスロットが回転式弾倉のように回転し、今度はミサイルではなく大口径砲が現れた。バーバルス専用に試作された88mm汎用レールガンである。

 

「レイヴン、スラッシュ!!」

 

発射コードを叫びながら黒い航空機の上面めがけてレールガンを掃射する。

放たれた88mm弾は黒い航空機に大穴を穿ち、そのうちの一発が機体中央にあった赤い球体のような何かを粉砕するのが見えた。

その数秒後、黒い航空機は白い破片になりながら崩壊した。

 

「……目標破壊。これより―――!?」

 

旋回してその場から離れようとしたその時、黒い航空機が進んでいた先の空間に突如巨大な穴が空き、周囲のものを吸い込み始めた。

無論それは直近を飛行しているバーバルスも例外ではない。

 

「時空間断層? そうかあいつはこれから…! 不味っ…吸い込まれる……!」

 

旋回の真っ最中に引っ張られたことで完全にバランスを崩し、スピンしている現状では引力場からも機体からも脱出は不可能だ。

 

「う…うわああああああああああああああ!!」

 

そのままレイヴンとバーバルスは穴に吸い込まれ、直後に閉じた穴とともに姿を消した。

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

1944年、この世界の人類も大きな戦争の真っ只中にあった。

とはいえ人間同士の戦争ではない。むしろ、「奴ら」の所為で人類はお互いに殺し合う余裕を失っていた。

1939年9月1日、オストマルクに突如現れた「奴ら」は人類に攻撃を開始。人類はそれを出現場所に因んで「ネウロイ」と名づけた。

通常兵器での撃破が困難なネウロイ相手に人類は苦戦を強いられ、たった2年のうちにヨーロッパのほぼ全域からの撤退を余儀なくされた。

無論、人類もやられてばかりではない。

人類は種族そのものの危機とも言えるこの状況に際し国家の垣根を越えて協力、ネウロイに唯一対抗できる魔法力を強化・増幅する新時代の魔法の箒「ストライカーユニット」を開発。各国から魔法力を持つ少女「ウィッチ」を集めた精鋭部隊「501統合戦闘航空団」、通称「ストライクウィッチーズ」を結成した。

 

1944年4月1日06:00 ブリタニア

 

軍の朝は早いものだが、起床時間にもならない朝の6時では流石に起きているものも少ない。島に基地がある以上聞こえるのは波の音と鳥の鳴き声くらいなもので、つまりはいつも通りの静かな朝……のはずだった。

静寂を破ったのは一つの落着物。第一発見者は坂本美緒少佐。ただし落下の際の轟音に501の隊員のほとんどが目を覚ましていた。ちなみに例外はハルトマンとルッキーニである。

 

「これは…ウィッチ…なのか……?」

 

落着地点に一番近く、最初に駆けつけた美緒は「それ」を目の前にして珍しいことに唖然としていた。

なにしろ、それは一般的なウィッチの姿からは大分離れているのだから。

両足にストライカーユニット(らしきもの)を履いているが、既存のものより2回りは大きく、形状も既存のストライカーや航空機との技術的繋がりをほとんど見いだせない。

右手には大型の機関銃を持っているが、手持ち式のガトリングガンなど見たことも聞いたこともない。

左手に持って――というより装着している金属の箱に至っては正体の見当すらつかない有様。

正直ウィッチというよりネウロイに取り込まれかけた人間と言ったほうがまだ説得力がありそうだ。

そしてなによりも異常なのは、轟音を伴って落下したはずなのに目立った外傷もユニットの破損も見られないということ。

 

「ともかくこのままにしておくわけには――」

 

「おーい、少佐ー!」

 

美緒がその推定ウィッチを運ぼうとしていたそこへ、二人の女性が駆けつけてきた。

美緒と同じくストライクウィッチーズに所属する、リベリオンのシャーロット・E・イェーガー中尉―通称シャーリー―とカールスラントのゲルトルート・バルクホルン大尉である。

 

「おおシャーリー、バルクホルン、丁度いいところに。」

 

「轟音が聞こえたので駆けつけてきたのだが…これは?」

 

「わからない。私が音を聴き付けて来た時には既にここに倒れていた。」

 

「見たことない形のストライカーだな。

 あれか、噂に聞くジェットストライカーってやつか?」

 

そう言われて改めて見てみれば、そのようにも見えた。

しかしバルクホルンが疑問を投げかける。

 

「だが噴流式は我がカールスラントでも未だ試作機でのテストを重ねている最中だし、他国で開発に成功したという話も聞かない。

 …一体このユニットはどこの誰が作ったんだ? そしてそれを履いている彼女はどこの誰なんだ?」

 

「さてな、彼女が目を覚ませばあるいは訊くこともできるかもしれないが…

 ともあれ私は彼女を医務室に連れて行く。二人はユニットと装備一式を格納庫に運んでおいてくれないか?」

 

「了解。」

 

「りょーかい。」

 

 

 

 

 




~わりとどうでもいい補足~
冒頭で「レイヴン」と呼ばれているのはもちろん主人公です。
「レイヴン」というのは傭兵に対して使われるコールサインで、複数の傭兵が戦闘に参加している場合は「レイヴン01」のように末尾に番号をつけたものを戦闘毎に適当に割り振られます。
やってる人はエスコンインフィニティの協同ミッションを想像してもらえばわかりやすいかと。



~わりとどうでもいい設定資料~

惑星ペグマタイト

地表の大半が岩石と砂で覆われた砂漠の星。
竜巻めいた砂嵐や数ヶ月に一度程度しか降らない滝のような大雨など地球と比べれば過酷な環境ではあるものの、重力と大気の成分及び気圧は地球とほぼ同じで、気温も人間がなんとか生活できる程度の範疇に収まっており、宇宙規模で見れば住みやすい星である。
岩石地帯からは鉱石、砂漠地帯からは燃料と鉱物資源が非常に豊富で、そのためペグマタイトは別名「宇宙に浮かぶ巨大鉱石」と呼ばれている。
燃料は石油に似た性質の油と神烏石(常温核融合炉の燃料ペレットになるヤタニウムを含有する石)が存在し、どちらもその総量は未だ予測の域を出ないが、少なくとも油だけでも数京バレルはあるだろうと言われている。
一方鉱石は様々な種類のものが産出し、レアな鉱物は今のところ発見されていないが、産出する鉱物はいずれも軍民問わず幅広く使われる資源価値の高いものばかりで、おまけにこちらも埋蔵量が未だ不明である。
このように戦略的価値の高い惑星であるため、現在この惑星の領有権を巡って戦争が起きている真っ最中である。
ちなみに直径が地球の1.5倍ほどあるにもかかわらず、何故か重力がほとんど変わらない。

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