World Migration ―箒星の魔女たち―   作:壊人二十面相

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未だに各キャラの口調がはっきりしない…


Task04 傭兵と愛機のデモンストレーション

中佐たちと格納庫に戻ってきた私は今、愛機(だったもの)が固定されている台座の前に立っている。

なお大尉は中佐の指示を受けて、観測機器の準備のために途中で何処かへ行っていた。

ここに来るまでの道すがらベルトキットは返してもらい、チンガードタイプのHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を始めとした装身具も既に身につけている。

あとはストライカーユニットを履くだけだ。

…正直不安がないわけではない。

変わり果てた姿の愛機が私に使えるかどうか、そもそもユニットの起動に必要な魔法力が私にあるのか、不確定要素はいくらでもある。

だが、その一方で、「コイツは私に応えてくれる」という確信めいたものも感じていた。

迷いを振り払い、台座の上に立ちユニットの挿入口から脚を入れた。

その瞬間、私の体を青い光が包んだ。

 

「これは……これが魔法力の光…なのか?」

 

光と同時にHMDの電源が入り、視界に機体の各情報が投影され始める。

燃料およそ7割、弾薬類表示なし(武器を持っていないので当然だが)、三次元レーダー作動正常…

その最中ふと頭に違和感を感じた。

手を伸ばしてみると、何やらフワフワした感触があった。

 

「黒い羽根…使い魔はカラスか。」

 

「使い魔?」

 

少佐のつぶやきが聞こえたので聞き返してみる。

 

「ああ、ウィッチは魔法力を使うとき使い魔の力を借りる。

 それは犬であったり猫であったりはたまた鳥であったりと様々で、例えば私はドーベルマン、ミーナは灰色狼を使い魔にしている。

 お前はどうやらカラスのようだな。」

 

「ふーん…」

 

カラスね、確かに私には似合いかもしれん。

ギルドのエンブレムにワタリガラスが描かれているように、傭兵はカラスに喩えられることが多い。

即ち「戦場から戦場、陣営から陣営に渡り歩き、人の命を生きる糧にする」という蔑みも含んだ喩えだ。

もっともそんなことを気にする傭兵など居やしないが。

ちなみに正規軍人は言わずもがな犬である。

 

「魔法力の発動には成功したようだ、エンジンを回してみろ。」

 

「了解、エンジン始動。」

 

何時ものように――現代の戦闘機は操作の幾らかが思考制御と音声認識で行えるようになっている――キーワードを発声してエンジンに火を入れる。

独特の甲高い音を立てながらエンジンが回り始めた。

 

「回転数正常、圧力値正常、推力偏向ノズル作動よし…」

 

私が推力系のチェックを進めていると、音を聞き付けてか次第に人が集まってきた。

数人の少女たちが比較的近くまで寄って来て物珍しそうにこちらを見ており、さらにそれを遠巻きにするように整備兵であろう作業着姿の男たちがこちらを見ていた。

それぞれ口々に何かを言っているようだが、距離とエンジン音のせいで今一よく聞こえない。

 

「…チェック完了、そろそろ飛ぼうと思うが良いかい?」

 

「ああ――っとそうだ、その前にこれを着けろ。」

 

少佐が何やら耳栓のようなものを差し出してきた。

 

「なんだい、これ?」

 

「魔導インカムだ。通信機器がなくては飛んでから会話ができんだろう。」

 

「いやそんなことは――」

 

と言ったところでここが異世界で乗っているのがストライカーユニットだということを思い出す。

バーバルスには当然通信機が備え付けられているが、技術レベルが数百年単位で違うのだから通信機の規格も違うだろうし、そもそも通信技術の根本が違う可能性もある。

改めて渡された魔導インカムを見てみると、形状は大昔のイヤホンのような円盤型、周波数の選択機構が見当たらないところを見るに固定周波数でやり取りをするのだろうか。

マイクに相当する外部機器も見当たらないので装着者の声は骨伝導で拾う感じか。

…バーバルスの通信機で対応できなくはないかもしれないが、周波数が分からん以上これを使うより他になさそうだ。

 

「――何でもない、これでいいか?」

 

渡された魔導インカムを耳にはめ込んで見せると少佐は頷いた。

そして周りの連中に声をかけて格納庫出口までの通り道を空けてくれる。

 

「サンキュー少佐。あと10カウントで発進する。」

 

チェックも兼ねてインカム経由で少佐に宣言してカウントを開始した。

それと同時に、正確には「発進しよう」と思ったと同時に足元に魔方陣が現れる。

おそらくストライカーユニットに存在しないランディングギアの代わりになるものなのだろうと適当に納得しておいた。

 

「…5、4、3、2、エマノン、発進(テイクオフ)。」

 

そしてカウントゼロと同時に台座のロックが外れ、体が前に滑り出す。

流石に今のままでは遅すぎる、もっと速度が必要だ。

私はパワーを一気に最大(マキシマム)に叩き込み、加速を開始した。

戦闘機だった頃よりも早いスピードで上がっていく速度、無論移動スピードも速い。

既に場所は格納庫出口を出て外、速度は時速約300km、十分すぎるくらいの速度が出ている。

私は高度を上げ、大空へと飛び立った。

 

<<信じられん…こんな短い距離で離陸するとは……>>

 

インカムからは、少佐の驚いた声が聞こえていた。

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

「信じられん…こんな短い距離で離陸するとは……」

 

今しがた飛んでいったエマを追うことも忘れて美緒は唖然としていた。

通常航空ウィッチが離陸するときは足元に展開した魔方陣の上を滑走して速度を稼いで離陸する。

ストライカーユニットはその性質上普通の航空機と違って垂直離着陸も可能だが、魔法力と燃料の消費が激しいのであまり推奨はされていない。

行われるのは滑走に使える長くて平坦な場所がないか、もしくは滑走している時間もないほど差し迫った状況の時くらいだ。

それをエマはほんの100m程度の滑走距離で離陸したのである。

元々短距離離着陸(STOL)機であったバーバルスがストライカーユニット化した結果であった。

 

「それに加速も信じられないくらい早いわ…ともかく外へ行きましょう。」

 

ミーナの声にはっとして外へ向かうと、既にエマの姿は見えなくなっていた。

慌てて魔眼で探すと、飛び立った方向の上空で大きく、しかしかなりのスピードで旋回しているのが見えた。

 

「話に聞いたとおり、速いな。」

 

「少佐、奴の話を信じるならこれはまだ本気ではないようだぞ。」

 

バルクホルンがそう言って持っていた計測機器を美緒に見せる。

速度計は時速1000km程、高度計は5000m程を表示していた。

と、そこへエマからの通信が入った。

 

<<こちらエマ、離陸は成功したがこれからどうすればいいんだ?>>

 

「エマさん、まずは空戦機動を見せてほしいから自由に飛んで頂戴。

 ただこの島からあまり離れないようにお願いね。」

 

<<了解だ中佐。>>

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

自由に飛んで欲しいと言われたが、そう言われると何をやるか迷うところだ。

まあまずはコイツに慣れるためにもシザーズ辺りの軽いやつからやるか。

 

「っとその前に見えやすいように高度を下げておくか。」

 

旋回待機をやめて高度を下げながら左右に旋回を繰り返して蛇行する。

高度4000、シザーズを止めてループザループ、そして海面を背にしてやや緩めにスプリットS、現在高度は3000まで下がった。

…どうせなら見たことないであろうものを見せて驚かせるとしようか。

私はさらに高度を下げて、滑走路への着陸コースを取る。

だがもちろん着陸するわけではない。

速度をそのままに格納庫出口でこっちを眺めている彼女らから最もよく見えるであろう位置に来たと同時に、進行方向を変えずに宙返りをした。

所謂クルビットである。

そして基地の尖塔の傍をフライパスし、そろそろいいだろうと通信をする。

 

「こちらエマ、一先ずこんなもんでどう?」

 

<<…ええ、十分よ。

 では続いて速度テストを行います、出せるだけ出して頂戴。>>

 

「了解!」

 

速度テストを行うなら衝撃波の影響もあるし多少高度を上げたほうがいいだろう。

私は島からやや離れた位置まで上昇しながら移動し、再び島上空に向けて今度は加速しながら飛行を開始する。

元々遷音速域に入っていた速度はあっという間に超音速域に到達し、尚も上がっていく。

風も音も置き去りにする速度の中で、唯二つバーバルスのエンジン音とインカムからの声だけが聞こえていた。

 

「2000…2500…3000…」

 

<<軽々と音速を超えてまだ速度が上がるだと…>>

 

<<すっげー…乗ってみたいなぁ……>>

 

なにやら聞き覚えのない声も聞こえる。

まあ後で紹介してもらえるだろう。

 

「…3500…4000…」

 

<<もういい、戻ってこい! 次は高度テストに移る!>>

 

「ん、了解。」

 

レーダーを見ると島が随分端に映っていた。

危うく迷子になるところだったな……

急いで来た道を引き返し基地上空に戻った。

 

<<よし、戻ったな。

 では続いて高度テストに移る、限界まで上昇してみてくれ。>>

 

「はい了解。」

 

水平飛行姿勢から体を引き上げて上昇体勢に入る。

速度計の表示が下がっていくのと引き換えに今度は高度計の表示がどんどん上がっていく。

 

「7000…8000…9000…10000…12000…」

 

順調に高度を上げていく私とバーバルス、しかし…

 

「…15000…ちょっと上昇が鈍くなってきたか。」

 

<<そろそろ限界か?>>

 

「いや、まだ大丈夫だ。」

 

ペースは落ちてきたもののそのまま上昇を続ける。

そして…

 

「…21000……22000! 限界高度に到達した。」

 

普段はこんなに高くまで飛ぶことはない。

両足のエンジンはその出力を大幅に下げ、高度維持に必要な推力を生み出すのが精一杯になっていた。

 

<<了解したわ、エマノンさん。

 テストはこれで終了します、そのまま降りてきて着陸して頂戴。>>

 

「了解、これより帰還する。」

 

雲さえも遥か下に望む光景。

地表が空気のフィルターに遮られてほんのりと青く見えた。

その風景に、大昔人類で初めて宇宙に出て帰還した宇宙飛行士の言葉が頭をよぎった。

 

「地球は青かった…か。」

 

<<ん? 何か言ったか?>>

 

「いや、なんでもない。」

 

 

 

 

 




書き溜めてある分は投下し終わりました。
というわけで続きがいつになるかは作者にも不明です。
出来れば年内に1話くらい上げたいとは思ってますが。




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