World Migration ―箒星の魔女たち―   作:壊人二十面相

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エマとネウロイとの本格的♂戦闘。

バーバルスの機動力がお披露目できるのは何時だろうか…


Task05 傭兵とネウロイと射手座の矢

中佐からの帰還命令を受けた私は、行きよりは時間をかけて下に降りた。

そういえば酸素マスクもなしに高々度まで行ったが何ともなかったな。

これも魔法の力ってやつなのか?

 

「それで、テストの結果はどうだい?」

 

「そうね、貴方とそのストライカーの力は十分に見せてもらったわ。」

 

「それじゃあ?」

 

「ええ、これからよろしく頼むわね、エマノンさん。」

 

中佐が笑みを浮かべながら手を差し出してきた。

私はその手を取りながら応える。

 

「エマでいい。こちらこそ、何時までになるかわからないがよろしく頼む、ヴィルケ中佐。」

 

「なら私もミーナでいいわ、エマさん。」

 

「了解だ、ミーナ中佐。

 ところで一応契約書を作っておきたいのだが――」

 

私が話を進めようとしたその時、基地にアラートが鳴り響いた。

 

<<警報! 警報! グリッドN-33地点にネウロイ出現! ウィッチ各員は迎撃に当たられたし!>>

 

「どうやらそんな場合じゃなくなったみたいだな。」

 

「ええ…総員出撃準備! エマさんは――」

 

「私も上がる、ストライカーも履いたままだしな。

 …が、その前に武装をくれ。丸腰じゃどうにもならん。」

 

「わかった、ならばお前が持っていたものを返そう。

 誰か、アレを持ってきてくれ!」

 

少佐が声をかけると整備兵の一人が台車を引っ張ってきた。

台車の上には手持ち式のガトリングガンが1丁とそれに給弾ベルトで繋がったタンク型弾倉、そして直方体型の箱状のナニカが載っていた。

 

「これは…ほう。」

 

近づいて視界に収めると、HMDに情報が表示される。

そこには「12.7mmSALGAT」と「Weapon Container Binder」と書かれていた。

ストライカーになって武装はどこに行ったのかと思っていたが、こいつらもこんな姿になっていたか…

私は躊躇なくガトリングの弾倉を背負い、給弾ベルトをガトリングの給弾口(ローディングポート)に接続してグリップを右手で握る。

するとガトリングは本体フレームから伸びたリング状の固定具で私の右腕に固定された。

続いてウェポンコンテナバインダーの側面についているグリップを握ると、やはりこちらもガトリングと同じような固定具で左腕に固定された。

そして直後、左右の手に持った武装がバーバルス本体に認識されリンクが確立、兵装のパラメータが順に表示されていく。

 

<<12.7mmSALGAT残弾1万発、パルスレーザー用電力供給システム正常。>>

<<ウェポンコンテナバインダー、搭載兵装認識中…完了。>>

<<短距離空対空ミサイル残弾76発、機体レーダーとのリンク完了。>>

<<高機動中距離空対空ミサイル残弾60発、機体レーダーとのリンク完了。>>

<<40mm対地対空両用レールガン残弾65発、電力供給システム正常、キャパシタへの蓄電開始、冷却システムアイドリング中。>>

 

ガトリングとレールガンはスケールダウンしてるが、どうやら装弾数とかは元と同じらしい。

一応ガトリングとウェポンコンテナバインダーの起動テストをしておこう。

格納庫の中で発砲するわけにはいかないのでガトリングは砲身を回転させるだけ、ウェポンコンテナバインダーは兵装の切り替えをするに留める。

……うん、どちらも問題なく回っている。

 

「随分な重装備だが、それで飛べるのか?」

 

「少佐、自前の武装を持って飛べないなんてタダのギャグだよ。

 じゃ、お先に。」

 

「待って、場所はわかるの?」

 

そう言って飛び立とうとする私を止めるミーナ中佐に、振り返って笑みを返しながら答えた。

 

「半径100km以内はバーバルスの探知範囲内だ、外に出ればレーダーに映るさ。」

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

先行して離陸した私は高度を上げながらレーダーを確認して首を傾げた。

まず北北東の方角距離70km高度10000mほどの位置に大型の反応がひとつ、これはおそらくさっきの報告にあったネウロイで間違いないだろう。

しかしそれとは別にやや小さめの反応が複数、東北東の方角距離60km高度200mほどの位置に有った。

速度は推定時速1000km前後、海峡を横断するコースを取っている。

地上レーダーで捕捉できんわけだ、高度が低すぎる。

反射波のデータから外形を取得して表示させてみると、古典的なロケットのような胴体にテーパー翼が付いた形状をしているのがわかった。

どう考えてもこれは人類側の兵器ではなさそうだ。

 

「こちらエマ、ミーナ中佐、東北東の方角距離60000高度200に小型の反応を複数確認した。

 数は9、おそらくネウロイの編隊だと思うがどうする?」

 

<<何ですって!? 進路は?>>

 

「このまま行くと西に海峡を渡ってブリテン島に到達するルートだな、これは。

 速度は推定時速1000km前後、かなりの高速だ。」

 

<<なんてこと……>>

 

相手は遷音速域に片足を突っ込んでいる。

ストライカーの速度がレシプロ機並みだと仮定するなら、彼女らでは少々荷が重い相手だろう。

 

「幸い北から来る大型は足が遅いし私なら小型に追いつける。

 奴等の相手は私がしよう。」

 

<<…そうね、お願いできるかしら?>>

 

「問題ない、最低でも足止めくらいは出来る。」

 

<<わかったわ、でも無理はしないで。>>

 

「そりゃシャカにセッポーってヤツだ、ミーナ中佐。」

 

さてやるか、会話してる間に丁度射程に入ってきてくれたことだしな。

私はウェポンコンテナバインダー―長いしこれからはバインダーと略そう―の搭載兵装から高機動中距離空対空ミサイル(H   M   A   A   M)を選択し、見えてきたターゲットコンテナを視界の中央に収める。

すると中央に近いものから順に正方形のターゲットコンテナに菱形のロックオンマーカーが重なり、表示が赤くなってロックオンの完了を知らせてくれる。

 

「FOX2!」

 

発射コードを発声しながらバインダーのトリガーを引くと、側面が開いてミサイルが4発放出される。

放出されたミサイルは一瞬の間を置いて飛行翼を展開、同時にジェットエンジンに点火してターゲットへと飛翔した。

「サジタリウスⅣ」と名付けられているこのミサイルは、やや高級な部類に入る中距離空対空ミサイルだ。

速度より機動性を追求し、主機には固体ロケットモーターではなく推力調整ができるジェットエンジンを使用し、主翼にはエレベータとエルロンを備える。

中距離空対空用だが形状はほとんど巡航ミサイルのそれだ。

更に強度はそこまで高くないが電子防御(C E C M)も搭載しており、飛行限界まで逃げ切られない限り間違いなく命中する。

もっとも、その分一発の値段も平均の4倍と安くないが。

さて、自分たちに向かってまっしぐらに飛んでくるミサイルにネウロイ達が何もしないはずはない。

恐らく正体はわかっていないだろうが赤いビームで迎撃を試みているのが見える。

が、戦闘機にさえハードキルタイプの迎撃システムが搭載されているのが珍しくない世界のミサイル、しかも結構な高級品が迎撃された時のことを考えていないわけもない。

ビームの発射を検知したミサイルたちは各々上下左右への回避機動を取り始めた。

何しろネウロイのビームというのは見てから回避可能な程度に遅い、つまり光速で飛んでくるレーザーと比べれば遥かに回避難度は低い。

人間ならともかく電子頭脳が制御するミサイルが回避に失敗する理由がないのである。

そのまま飛翔して3発がネウロイの横っ腹に突き刺さり爆発、3体のネウロイを白い結晶へと変えた。

残る1発は寸前でビームを照射されたため回避行動をとり標的を外してしまったが、外れたと感知するやバーバルスからのレーダー照射を頼りに即座に反転、標的の尾部に命中し綺麗さっぱり吹き飛ばした。

…撃った張本人が言うのもなんだが相変わらずえげつない機動性だ。

続いて第二弾として今度は短距離空対空ミサイル(S  A  A  M)をお見舞いする。

再び4発放たれた先ほどよりやや小型なミサイル「カッパーヘッド」は、サジタリウスⅣとは打って変わって速力を重視した高速ミサイルである。

UAVであろうと逃げ切ることは叶わない超高速で飛翔するミサイルたちは、ネウロイに迎撃の暇すら与えず着弾、粉砕した。

これで撃破8、残るは1機、ミサイルを使うのも勿体ないのでガトリングを使おう。

私が下に向けていた銃口を正面に向けると、視界に円形のガンレティクルが表示された。

…ふむ、どうやら戦闘機の頃とは違ってこっちのガンレティクルはしっかり銃口の向きとリンクしてるらしい。

ガトリングが付いている右腕を振ってみるとそれに合わせてレティクルも動いた。

安定させるためにバインダーのグリップから離した左手でガトリングのグリップ前方のハンドルを握り、標的のネウロイを注視すると視界に標的の未来位置がホログラム表示された。

これは標的の現在の速度・進行方向と彼我の距離と登録されているガトリングの銃弾の速度から導き出されたものであるため絶対の未来予知とは違う上にこれに従って撃つとレーザーが当たってくれないが、それでも自力で一々敵の未来位置の予測をやるよりは遥かに楽だ。

…銃弾だけで撃てばここから撃破も――!

 

「っとぉ、危ない危ない。」

 

丁度撃とうとしたその時にネウロイからビームが飛んできた。

バレルロールで躱したが射撃タイミングを逃した挙句敵の進路上に出てしまった。

 

「って逆に好都合じゃないか。」

 

そう、ストライカーは戦闘機と違って後退ができる。

前に飛ぶより速度が出しにくいが地の速度が速いバーバルスは後進時でも目の前のネウロイより速かった。

ポジションはネウロイの真正面、相手の胴体が満月のように真ん丸に見える。

そこにもビームを発射する赤い六角形があったが、もう遅い。

 

「FOX3。」

 

トリガーを引き絞るとモーターが唸りを上げて回転し、八つの銃口から12.7mm弾とパルスレーザーが噴き出した。

レーザーと弾丸合わせて毎分7200発という超ハイペースで吐き出されるそれは、徹甲弾に混ぜ込まれた曳光弾の効果もあって光線のようにすら見える。

1秒にすら満たない短時間の連射だったが、銃弾とレーザーの嵐はビーム砲を破壊してネウロイを正面から削り飛ばし、胴体中央のコアを蜂の巣に変え、ネウロイを白い結晶へと変えた。

 

周囲に敵影無し(レ ー ダ ー ク リ ア)、ネウロイ編隊の全機撃墜を確認。

 さて向こうは…」

 

<<エマさん、無事!?>>

 

通信を飛ばそうと思ったところで中佐から通信が来た。

声色を聞くに随分心配されてたらしい。

 

「こっちは今終わったところだミーナ中佐。

 そっちも無事撃破したみたいだな。」

 

ネウロイに接近した時に近距離に切り替えていたレーダーレンジを元に戻すと北の方に居た大型の反応が消えていた。

彼女らの戦闘が見れなかったのは残念だが、まあこれから機会はいくらでもあるだろう。

 

「一先ず脅威は去ったようだし、先に基地に帰投させてもらうぞ。」

 

<<ええ、また後で。>>

 

「ああ。エマノン、基地へ帰還する(R. T. B.)。」

 

 




―今回やろうと思って止めたネタ―

エマ「半径100km!敵の動きは手に取るように探知できるッ!!」


――――――――――――――――

あの世界のミサイルは最低でも赤外線シーカーと母機からのアクティブレーダーホーミングの併用が普通になっています。
ステルスどころかECMやフレアの搭載が当たり前なので、シーカーだけだと高確率で当たらないからです。


~わりとどうでもいい設定資料~

12.7mm光学実体複合型機関砲(Solid And Laser composit GATling gun)

ストライカー・バーバルスのメインウェポン。
人間サイズに合わせて口径が30mmから12.7mmにサイズダウンしており、形状は手持ち式のM134(ミニガン)に似る。
連射速度はレーザーと実弾併用時で毎分7200発、有効射程3km、砲身はレーザー用と実弾用それぞれ4つずつの8砲身構成となっており、この辺りは元の戦闘機の時と変わらない。
弾薬は背負式の弾倉から給弾ベルトを介して供給され、装弾数は最大1万発。
ただしレーザーは機体の主機が動いている限り撃てる。

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