プリミティブ・プライメイツ ~暴君転生~   作:翠碧緑

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129話 こんの罰当たりが!

 

 聖国ラークフム。

 俺と同じ人間が生きる国。

 

 同じ肉体と外見を持つはずのラークフムの人々に対して、俺が抱いたのは違和感だった。

 

 俺がロルカニア王国出身のロルカニア人であるということも関係しているのだろう。

 しかし、彼らの考え方の根本的なものが俺とは違うのだ。

 

 “(から)となった教会”を見つめながら、俺はそんなことを思う。

 

 その教会はオリジェンヌにあったものと比べれば遥かに綺麗で、小さくても立派なものだったが、イヤな雰囲気だった。

 ピカピカの真っ赤な鳥居がいくつも並ぶ神社や、高そうな仏像が並んだお寺を見ている感覚だ。

 

 一言で言えば(カネ)臭え。

 

 でも、そんな教会はもぬけの殻だ。ご立派な女神像だけが配置されている。

 

 教会を探索し終えた俺たちは、外に出た。そして、涼しい風を感じながら辺りを見回す。

 

「寂しいところだな。宿代は安くて済みそう」

 

「……そうですね。好きな部屋を選びましょうか」

 

 つい俺がこぼしてしまった皮肉をルイナは咎めることなく受け取った。

 

 俺たちは聖国をゆっくり移動しながら、まず教会のある場所を目的地としていた。

 ルイナ曰く、教会施設には女神の技術が隠されていて、俺のメンテナンスや装備の補充ができるからだ。

 

 しかし、ここの教会には残されたものなどなかった。

 

 最初に辿り着いたこの小さな村落は、人の声も動物の声もない無人となっている。

 代わりにあるのは、開けっ放しの扉が風に揺らされ軋む音と、枯れ果てた畑が広がる景色だ。

 

「野盗に襲われたのか?」

 

「いえ、荒らされていません。整備がされていないだけで、ライフラインも生きています。単純に捨てられたのでしょう」

 

 ルイナが見る方向を見ると、用水路や魔力的な電線がそのまま残っていた。

 夜に点灯するであろう街灯も一定の間隔で立ててある。

 

 王国の王都並のインフラはあるらしい。

 使うエネルギーが違うだけで、住心地は日本の田舎と変わらない気もする。

 

 整備された石の道を進む。

 近くのガラス窓の奥を覗くと、持ち運べない机や椅子などの家具だけが残され、食器や衣服などは見当たらなかった。

 

 山の中の村とは言え、かなり整った場所だ。

 

 俺は王国の学園で学ぶ傍ら、夜に活動していた時期がある。

 そのときに見ることがあった、いわゆる都会ではない村にはこんな立派な家はなかった。

 

 井戸水と隙間風、常に火事に怯えるような生活形式だ。しかし、この村にはぱっと外から見るだけでも空調設備があるように思えた。

 ネトス教会の所属だったんだから、俺のいた孤児院にもこれくらいしてくれればよかったのに。

 

 それだけで、どれくらい子供たち(アイツら)は生きていられたのだろう。

 

 聖国は()()()()()()()()()()

 それが第一印象だった。

 

 これが国境近くの村なのだから、聖都となるとどれくらいすげえんだろうな。

 

「ルクシア、なにか思うところがあるようですね」

 

 俺のくだらない不満を感じたのか、ルイナがそう語りかけてきた。

 

「……なんで聖国()()にしたんだ?」

 

「ふふふ、貴方でも、羨ましく感じるものなのですか」

 

 少し乾いた笑みを浮かべてルイナは返事をした。

 

「そりゃあそうだろ。冷える夜の湯浴みは地獄だぜ?」

 

「そうですか。私は経験がありませんから、その感覚は共有できません」

 

 俺の軽口に、目を逸らしながらルイナは反応する。

 なんかすぐに沈んだ表情をすんだよな、コイツ。

 

「……え? そういや、あんま水浴びとかしないよなお前。やだ、不潔ぅ~」

 

「そういうことではありません! それに今は余裕がないだけです! お望みなら洗体設備程度すぐに作ってあげますが!?」

 

「マジ? すごく欲しいです~、ルイナ様~。さすが~、天才ですぅ」

 

「……! まったく……しょうがないですね。これだから人間は」

 

 俺がおだてて物理的にすり寄ると、ルイナはニヤけながら端末をいじり始めた。

 マジでお風呂作ってんのかコイツ。

 

 テンションの上下が激しいヤツだ。全身が承認欲求でできてんのかよ。

 

「ちゃんと広めにね。お湯の温度調整と……そうだ! 湯船は下から泡出るようにしてくれ」

 

「次々と……。調子がいいですね……。ん、泡……? なぜ、泡……?」

 

「それ重要だから、絶対つけろよ? まさかできないなんてことはないっすよね?」

 

「当然です!」

 

 胸を張って自慢げに宣言したこともあって、ルイナはすぐに風呂を作っちまった。設置してみたが広さも旅館の露天風呂みたいでテンションが上がった。

 しかも、あのゲームキャラクターが持つような無限容量のカバンに入るものなのだから、普通にヤバい。

 

 どこでもお風呂に入れるようになっちまった。女神様マジですげえ。

 

「んひゅふふ……」

 

 そんな生産者は興奮した俺の言葉を聞いて気持ち悪い笑い方をしていらっしゃった。

 

 携帯露店風呂である。でもさすがに水とエネルギーは必要だったらしく、村に残っていた設備に接続して水とエネルギーを補充することにした。

 

 それで結局その日は携帯露天風呂を使えないので、村のお風呂をちょっと拝借することになった。

 

「私がいない間、誰が管理していたのでしょうか。まったく杜撰なものです。アクセス権がそのままなんて……」

 

 使えるのか少し不安だったが、ルイナが設置してあったパネルをいじるとあっという間に使えるようになった。

 例えると、水道も電気もガスも一括管理しているアカウントがログインしたままになっていたということだろうか。

 

 といっても操作できるヤツはコイツしかいないんだろうけど。

 

「ふい~……」

 

 清潔感のある湯船につかりながら、マスクを少しだけ外す。

 息を止めながら、軽く顔を洗う。

 

 さっぱりしたわ。むずむずしっぱなしだったからな。

 早くこれのいらない体に戻りたいが、いつになるやら。

 

「…………」

 

 浴室に備え付けられた姿見の前に立つ。

 そこに映るのは全部を失ったバカ野郎だ。

 

 友を失い、国を救えず、なにもできなくなった役立たず。

 くすんだ金色がその証明だ。

 

 ──さて、どうしたもんかね。

 

「あがったぞ~」

 

「そうですか……」

 

 風呂から出てリビングに行くと、大きめのタブレットをいじるルイナがいた。

 

 なんか、異世界なんだけどそんな感覚がしねえな……。風呂上がりの男がまだ入っていない妹に伝えに来た感覚だわ。

 向こうの日常と同じなんじゃねえの、コレ。

 

 一人でそんな不思議な思考に囚われていた俺に、呆れたような声がかけられる。

 

「……髪の乾燥が終わっていませんよ」

 

「あ?」

 

 んなもん、がしゃがしゃ拭いときゃ乾くだろ。魔法使えねえし。

 

 ……なんか半目で睨んできやがった。

 

「乾燥機がありましたよね?」

 

「あったか? そんなの」

 

 なに? ドライヤーもあんの? 便利じゃのぉ。

 

「ああ……王国ではありませんでしたか……」

 

 勝手に一人で納得すると、ルイナは脱衣所からそれっぽいものを持ってきた。

 異世界でもヘアドライヤーの形はそんな変わらないらしい。

 

「ほら、座って下さい」

 

「いいよ、自分でやるから」

 

「知らなかったのにできるわけないでしょう! さっさと座りなさい!」

 

「……なんやねん」

 

 だいたいわかるんだけどなあ……。

 

「まったく……せっかくの美貌を無駄にしようとするなんて。維持してこそです」

 

「へえへえ」

 

 器用に乾かされながら、俺は女神様の説教を受ける。

 肉体を生成できる世界で、そんなこと言われてもって感じなんだけど、なんか違うのかな。

 

 髪の毛がくそ長いせいで時間がかかりそうだ。

 

「カツラつけたくなかったから切らなかったけど、これなら髪の毛切ろうかな」

 

 メイドとしてのリエーニは死んだようなもんだから、いいよな。

 長髪って重いし、暑いし、洗うの時間かかるしな……。

 

「やめておいたほうがいいでしょう。体内リソースの無駄です。貴方の姿は()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ……よくわからない理論来たな。

 前にトーリア先生が言ってた話か。

 

「“魂”ね……」

 

「はい。貴方が生命体である以上、そう設定されます」

 

 『設定』。

 時々、ネトス教の教えに出てくる表現だ。

 

 つまり、俺はくすんだ金髪の長髪として設定されている、ということか?

 

「それってどういう話だ? 俺がこのまま短髪になったとして、なにが問題になる?」

 

「“肉体は魂を参考に形を保とうとします”。この髪の毛を切ると、今のこの長さまで再生を始めるのです」

 

「それは……当たり前の話だろ?」

 

「いいえ。毛先を整えるのとは違い、それは“肉体の損傷”と同義なのです」

 

 なんじゃそりゃ。

 今まで、髪切りなんてしてきたぞ。

 

「片腕を欠損しても生きる人型の生命体がいたとします。それは魂がそう変化しただけのこと。

 つまり、“片腕を欠損した肉体を持つ”と魂に刻まれたのです」

 

 なんかスピって来たな。

 運命論的なやつ?

 

「わかりやすく言って」

 

「はあ……。まあ、感覚の違いでしょうか。

 私からすると、貴方は自らの肉体を切除したいと言っているようにしか思えず、その再生に使われるエネルギーで貴方の体力が無駄に消耗されるのは勿体ないのですよ」

 

 なるほどなー。

 もし、コイツが言ったことが真実なのだとすれば、魂を書き換える技術が生まれるのも理解できる。

 

 『ネトス・ヴァリュキュリア』。

 魂をあらかじめ設定し構成された、ある意味で完成された人間種。

 

 基本が人間であるというだけで、彼女たちと人間は違うのかもしれない。

 

 心に浮かぶ、あの生真面目な女の子を俺は想う。

 あの地下で会ったときにあの子は理解していた。

 

 自分のことを。自分の運命を。

 罪悪感すら抱いていた。

 

 ……早く、会いたい。

 いつまでも愚痴を聞いてあげたい。

 

「…………」

 

「それに、短髪の信徒は悪い印象を与えてしまいます。これからのこともありますから、髪の毛はこのままにしてくださいね」

 

 冗談めかして笑うルイナを見る。

 もう少し、コイツのことを俺は知っておきたいと思う。

 

「……ルクシア?」

 

 さっき、この村で探索していたときにコイツは俺からの質問を無視した。

 

 “()()()()()()()()()()()()()()()()”。

 

 俺のその質問にルイナは答えなかった。

 答えられない理由はなんだろうか。

 

 いくつか予想はついている。

 そもそもファビっさんたちから聞いていた魔王領の発展具合からして、この世界の平均的な文明レベルは高いはずだ。

 

 つまり、聖国が発展しているのではなく、それ以外の()()()()()()()()()()()()()()()

 

 支配形態を考えれば、当然だ。

 だからこそ気になったのだ。

 

 ルイナが──いや、共謀していたのだとしたらコイツら三魔族が、聖国だけには文明を与えた理由を。

 

 まあ、大した理由なんてないのかもしれない。

 単純に、実験的に聖国で運用していただけなのかもしれない。

 

 だが、今の全部知っている俺にも答えないということは、なにかがあるということだ。

 

 多分、すごく個人的でくだらない理由なんだと思う。

 

 もしコイツが俺に言わないのが、“()()()()()()”を恐れてのことだとしたら、またぶっ飛ばしてやる。

 

 これ以上テメエらの株が下がったところで、俺にはなんの影響もねぇんだからな。

 

「ルイナ」

 

「はい?」

 

 少し焦ったような反応をルイナはした。

 

「もう誤魔化すんじゃねえ。()()()

 

「────」

 

 ドライヤーの音が消えた。

 

 振り向いたときに見たルイナの顔には、少しの怯えが混じっていた。

 

「なんの……ことです?」

 

()()だよ」

 

 俺はドライヤーを指差した。

 

「もう一度聞く。“なんで、聖国だけ”なんだ?」

 

「…………」

 

 溜め息をついて、ルイナは少し離れた椅子に腰掛けた。

 

「貴方は……オーレイルもこんなふうに追い詰めていたのですか?」

 

 人聞きの悪いことを言うんじゃねえよ。失礼な。

 

「そんなんじゃねえよ。まあ、大抵無言で抱きついてきて誤魔化されたけど」

 

「私もそうすればいいのですか?」

 

「ダメ。もう許さん」

 

「ははは……」

 

 いつもの乾いた笑いだった。

 少し息苦しそうにしながら、ルイナは次の言葉を紡ごうとする。

 

 しかし、詰まっていた。

 

 親に叱られた子のように下を向いて黙っていた。

 

 じゃあ、俺の言うことは決まっているな。

 俺は腕を組んで顎髭をいじるような仕草をしてルイナに語りかけた。

 

「ルイナ」

 

「……はい」

 

「怒らないから言ってみなさい」

 

「……本当ですか?」

 

 あれ……? まずい、このネタ通じねえわ。

 そういや魔族って親子とか教師とかねえじゃん……。

 

「お、おう。先生怒りませんよ……?」

 

「……!」

 

 ほっとしたような顔をして、ルイナは話し始めた。しかもどこか得意げに。

 

「聖国を発展させた理由、それは()()()()()()()()()です。厄介な大魔族たちを排除して、人間領域を拡大したあとは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ね」

 

 あ?

 なんて言ったコイツ。

 

「シーハルンの分体の情報は“目”で確認済み。武帝国には遺伝崩壊を狙った作戦をいくつも用意して次世代から壊すつもりでした。

 コーロンは痛みに弱く、オーレイルは肉体さえ破壊できれば対策できます。完璧な流れですよね?」

 

 待て待て待て待て。

 なんかどんどん声が明るくなってやがる。

 

「大量生産した戦乙女たちが発展途上の文明を作業のように攻略していくはずだったのです!

 んふふ……私の作った技術による完璧な勝利です!」

 

 百点のテストを見せる小学生みたいなノリでコイツはなんちゅうことを言いやがる。

 

 俺の表情は少しだけ痙攣し始めた。

 

「それが……それが、まったくどうしてあんなことに……ッ! ああ、もう! 誰ですか?! アルテを徴兵した無能魔族は!?

 あと、もう少しだったのに……ッ!!」

 

 苛ついたようにぷんぷんし始める邪神がいる。

 

 落ち着け……。落ち着きなさい、()()()()()()()……。

 私は、女神様の信徒を目指すのよん……。

 

 偉い偉いルイナちゃまを大事にして……。

 

「それは、大変でしたね……?」

 

「そうでしょう!? おかげでせっかく生まれた三体の神芸品(ゴッデスファクツ)適正者も失って……! そして、こんな肉体ですよ?! 信じられません!」

 

 『ねー?』みたいなノリで俺に言ってきやがる。

 

 わかった……。わかったぞ……。

 この甘えたガキにはお仕置きをしてやる。

 

「ルイナも大変だったんだな。ところで、いつもメンテしてもらってるんじゃん? 今日くらいは俺もしてやるよ」

 

「えっ? いきなりどうしたのです?」

 

「いつもお世話になってる女神様にナニカしてあげたいって思うのは、信徒として当然だろ?」

 

 魔法を使えなくても、ルクスとして生きてきた無表情を俺は作ることができた。

 

「んひゅへへ……、貴方も自覚できてきたようですねっ」

 

「お御足に触れさせていただきますね。ここにはツボというものがございまして、そこを押すと体の疲れが取れるのです」

 

 俺はそっと裸足のコイツの足の裏に触れる。しっかりと逃げられないように体を固定して。

 

「なるほど。たしかにそこには肉体の────ッ!?」

 

 やっぱりなァ……。

 コイツ、かなりヒドイ。

 

「ルク、シア……!! 何を……ッ!?」

 

「えっ? メンテですよ?」

 

「ぎゃああああああああッ!! いたたたたたたたッ!! や、やめ────ッ!!」

 

 少しは筋力が戻っているので、コイツの足を固定して俺は足つぼを思いっきりついた。

 

「は~い、健康になろうねぇ、ルイナちゃま! おりゃおりゃ」

 

「……ッ!? なんですか、この痛みはああああッ!! 知らな……ッ!!」

 

 涙目になって暴れるルイナを俺は逃さない。

 

「めちゃくちゃ事情を話してくれてありがとな! おかげでてめえらのろくでもなさがよ~くわかったわ!」

 

「えっ!? あぎゃああっ!! 怒らないって……!!」

 

「アレは怒るときに言うセリフなんだよ!! 覚えとけや、この駄女神がッ!!」

 

 半分マジで脅したら、ルイナの表情が青ざめた。

 だが、こういうヤツは口だけで言っても直んねえからな。

 

 なんか……ちょっと楽しいし。

 

「ひっ!? 暴君です!! ひぎゃああああああああッ!! 助けてえッ!!」

 

「ほんとに反省してんのか、テメエ!!」

 

「してます!! してます!! いぎゃがぎゃぎゃ!!」

 

 思ったより軽い力なのに、コイツの足の裏硬すぎる。終わってんな。

 

 

「……ひぐ。うぅ……ひっく……」

 

 数分後、ぐちゃぐちゃになったリビングには啜り泣く女神様と、タバコを吸う真似をした女装シスターがいた。

 

 やべえ……。結構やりすぎたかも。

 冷や汗をかきながら、横目で見るとルイナが足を震わせながら体を起こした。

 

 そして、涙目でつぶやくように、絞り出すように、言の葉を紡いだ。

 

「…………ごめんなさい」

 

 もちろん、そんな言葉で消える罪ではない。

 

 コイツは明らかな悪意で動いていたのだから。

 欲望を抱いて、犠牲を厭わずに。

 

 ……ほんと、めんどくせえなぁ。

 

「明日からも続けるからな」

 

「え……? い、いやです……!」

 

「お前のメンテだっつってんだろうが。俺だけじゃなくお前もやって対等な」

 

「あぅ……」

 

 ガチでいやがるコイツを手刀を食らわせて黙らせた。

 

「…………!」

 

 そして、なんとなくこのアホの頭を撫でた。

 これぞバイオレンスメンテじゃい!

 

 いや、あのね? DV彼氏っぽいけど、こういう感じじゃないと、コイツが言えないっていうか……。

 

「ルクシア……?」

 

「そんで? ()()()どうすんだよ?」

 

「──!」

 

 不安そうな顔が、少しだけ安心したように変わる。

 見捨てねえよ。見捨てるわけがない。

 

 神サマってのは空の上で偉そうにしてるもんだからな。

 全ての罪を抱え吐きそうになるであろうこの人がまた天に帰れるように俺は送り出すだけだ。

 

 またドヤ顔で聖国のことを語り始める少女の顔を見ながら、俺はつい微笑んだ。

 

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