プリミティブ・プライメイツ ~暴君転生~   作:翠碧緑

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75話 くだらぬ日常

 

「ミゼリア様! サフィレーヌ様の派閥が……っ」

「とうとう来ましたわね……」

 

 ミゼリア派閥『プリンセス・オーダー』の研究室では慌てたような令嬢たちの声が響いていた。

 元々ただの魔法研究のために用意されていたその部屋は、いまや貴族令嬢が過ごすための豪華な空間に変えられている。

 

 そしてその中心の豪華な椅子に座るミゼリアの顔は苛立ちを隠せていなかった。

 

「うるっさいわね! そんなの()()()()()()! 学園中同じことばっかり!!」

 

 久し振りに癇癪を起こすミゼリアを見て、何故か令嬢たちは和やかな雰囲気になった。

 

「ああ、まだ安心ですわね」

「この感じならそうですわね」

 

「人の反応で判断しないで!」

 

 慣れたように話すのは昔から彼女の周りにいた者たちだ。

 

「そ、そうですか……?」

「でも……」

 

 逆に不安そうになっているのは、学園から共に行動するようになった者たちだ。

 

「後からわざわざ出てきたのは、こうやって動揺させるためよ!

 いい? 絶対に嫌がらせとか無視とかしないでね!

 特にエルザ!」

 

「わ、わかってましてよ……?」

 

「ああ!? その顔はもうやってるわね!? 仲良くしなさい!」

 

 名指しされた令嬢が慌てるが、ミゼリアは釘を刺す。

 

「私達はそのままを貫くの。他の派閥が落ちていくのを眺めるだけで、評価は上がるわ。

 不正をせずにただ正しくあればいいの。勢いに任せて作られた新派閥なんて勝手に消えてくのよ」

 

 なんてことのないように堂々と指示を出すその姿は王女らしく、新参の令嬢たちからの評価を上げた。

 

「……そう書いてあったのですか?」

 

「そうよ! こういうとき慌てると事象カードの『内乱』が飛んできて酷いことになるんだから!」

 

 中心メンバーの一人が質問すると、ミゼリアは凝ったケースに入ったカードを自慢気に出して、よくわからぬ説明をした。

 

 少し呆れる令嬢と、戸惑う令嬢。

 その違いによってミゼリアとの親密さの判断がつく。

 

「あの札は一体……?」

 

「えっと……一種の予言みたいなものよ。あれで度々ミゼリアは……あー、占い! そう、占いをしてるの!」

 

「おお……!」

 

 ただハマった遊びの話をしていると言って、ミゼリアの評判を落としたくなかった令嬢がそんな説明をした。

 

 それを聞いていた令嬢たちが尊敬するような視線をミゼリアに送る。

 

「うーん……」

 

 シャカシャカとカードいじりをしながら、ミゼリアは考える。

 

 最初のうちはみっともないと皆叱っていたが、よく集中する癖になっているようだったので放っておくようになった。

 

「もしかしてああやって占いを……?!」

 

 それを見た新人の令嬢が興奮して質問する。

 

「そ、そうね。間違ってないわ」

 

 全部は間違っていないので答えた令嬢は流した。

 

「ミゼリア、何か気になりますの?」

 

「……貴方たちは『シニストラ・アモリス』のメンバーが付けてる腕輪についてどう思う?」

 

 ミゼリアが疑問に思うのはわざわざ見せびらかすように、サフィレーヌの派閥が着けている青色の腕輪だ。

 

「会員の証ですよね? わざわざ作ったようです」

「わたくしたちも何か作りませんか?」

「欲しいです!」

 

 ミゼリアはまたはしゃぎ始める友人たちに溜め息をこぼす。

 

 彼女が気になったのは、潜り続けると思ったサフィレーヌがどうしてあんな目立つように宣言したのかということだ。

 

 サフィレーヌがミゼリアの行動を予測するように、ミゼリアもサフィレーヌを予測していた。

 

「うーん……。サフィレーヌにしては派手すぎるのよねー」

 

「そうですわよね」

「たしかに。わざわざリーダーとして違うものを作っていますから」

 

「違う?」

 

「あら? 知りませんでしたか?」

「サフィレーヌ様の腕輪はメンバーと違うものなのです」

 

 ミゼリアは見ていないので知らなかったが、サフィレーヌはリーダー専用の腕輪を作っているらしい。

 

「サフィレーヌ様のものは“銀色”がメインでした。そして、綺麗な青色の石がはめられていましたわ」

 

「────」

 

 ミゼリアはそれを聞いて、理解した。

 

 サフィレーヌの行っていることはたしかに挑発だ。

 しかし、その相手は他派閥ではなく、個人である。

 

 サフィレーヌは()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

 “ルクスとの繋がり”を示唆している。いや、宣言している。

 

 『彼は私のものである』と。

 

「上等じゃない……っ」

 

 本当にサフィレーヌは自己主張が強くなったとミゼリアは彼女に対する認識を改める。

 

 アレに対して油断している余裕はない。

 着実にアレは女としての力を付けている。

 

 向こうが容赦をしてこないのだから、ミゼリアも全力で抗うしかない。

 

 サフィレーヌからの“個人戦”のお誘いをミゼリアは受けることにした。

 

「──私たちもエンブレムを用意するわ」

 

「あら、興味無さそうでしたのに……」

「占い結果でしょうか!?」

「ちなみにどんなものを?」

 

「分かりやすく目立ちやすいブローチにするわ!

 イザベラ! 用意しなさい! ブローチ欲しさに人がやってくるくらい派手にデザインしなさい!」

 

 指令を受けた令嬢は鉱石が掘れる領地を持つ家の出身だ。

 

「かしこまりました。ご希望は何かありますか?」

 

「金色よ。金を使いなさい」

 

 王族に許されている色を使えと王女が命じた。

 ミゼリアが本気であるという証だ。

 

「そして、私の装飾には“銀色”を使いなさい!」

 

 それはサフィレーヌ派閥に対する宣戦布告に他ならない。

 しかし、その真の意味を共有しているのはリーダー同士のみ。

 

 ミゼリア派閥の動きはサフィレーヌ派閥へも伝わり、それを聞いたサフィレーヌは微笑んだという。

 

 やがて、新入生の派閥は入学から三ヶ月が経つ頃には二強となる。

 

 そして、その二つの派閥が上級生に対しても牙を向け始める。

 激動の一年が幕を明け、上手く適応できた生徒とそうでない者の差は大きくなっていった。

 

 まず腕輪かブローチを付けているかどうかで判断され、もし付けていないのなら被害は受けないが疎外感を感じる。

 

 腕輪を付けている者は、魔法実技や研究に役立つアドバイスを受けることができる。

 ブローチを付けている者は、流行り物や差し入れの共有がなされ話題に困らない。

 

 一年生の校舎では迂闊に『青色』と『金色』の単語を口にできなくなっていた。

 それは言わば所属政党の話であるからだ。

 

 ちなみにこの事件の黒幕は、友人グループすら作れずに蚊帳の外にいて、図書室で一人寂しく読書する姿をたまに目撃されている。

 

 

 

 

 日々異常な熱気に包まれている学園内で、俺は無党派層となりフツーに浮いていた。

 

 あの子たちすごいわね~。どうしてあんなに元気なのかしら??

 

 サフィは俺があげたブレスレットを大事そうにしてくれているので、それは嬉しいんだけど、ミゼリアちゃんのしているあのブローチは何かな?

 

 何故か妙な圧を感じる……。

 当たり前の話だが、俺がどちらかの派閥に入ることは無い。できるわけねえだろ。

 

 実のところ俺にはボッチしか道がないのである。なんで婚約者を除け者にするんじゃ!!

 

「どう思いますぅ?」

 

「黙れ」

 

「こわ」

 

 俺がボッチなのは学園内だけである。

 研究室にはゴーレムちゃんたちがいっぱいだし、家に帰ればフィフがいる。

 ……あれれ?

 

 まあいいや。

 

「へいへい手が止まってますぜ? 姉さ~ん。そんなんだから厨房ぶっ壊すんだよ」

 

 俺は今学園都市の一般生徒向けの食堂でフィフを煽っている。

 机の上にはエクスローンがあり、食事をしながら久しぶりに対戦していた。

 

 今回この食堂を訪れたのは、コイツが部屋の厨房をぶっ壊したからだ。

 しばらく家事ができてたからコイツがポンコツだってことを忘れてたぜ。

 

 なんでも難しい料理に挑戦しようとして、苛ついて包丁で調理場を両断したらしい。

 どこでどんな力発揮してんだよ、この駄剣。

 

「ふっ……学び舎では静かなのに、私相手にはよく喋る。人間は孤独に弱い。大丈夫わかっている」

 

 え? むかつくんですけど?

 

「そうなの? 俺は強いからその情報は違うと思うわ。そっちはどうなの? 使用人同士の交流会的なの一度も誘われてないんでしょ? リエーニは誘われてんのにな? わはは」

 

「あ?」

 

「あ?」

 

 ブチギレ合いながら食事とゲームをする俺たち。

 

 もちろん、食堂なので他にも客がたくさんいる。

 話し声は周囲には聞こえていないが、仲良く机を囲む姿は見えている。

 

 だからだろうか、俺はある少年に話しかけられた。

 

「やや! それはエクスローン!! 初版ではないですか!!」

 

「ん?」

 

 スーパーメガネくいくい君がやってきた。逆に典型的すぎて納得しちまった。

 

「素晴らしい! この学園で(たしな)む者と会えるとは!!」

 

「はあ……?」

 

 この手のゲームのファンってめんどくせえんだよな……。

 大会運営側で何回かファビッさんについて行ったことあるけど、ガチで変人しかいなかった。

 

『死ね』

 

「アッ!?」

 

 ソイツに気を取られていたからか、致命的な一撃を盤面に喰らった。

 

「んふふふふふ」

 

「…………」

 

 フィフ様はご満悦だった。それでいいのかよ武帝様……。 

 

「ほほう! 中々にレベルも高い!!」

 

 うぜえ……。

 

「なにやってんだ? ミゲル?」

 

「エクスローンですよ! 知らないのですか?!」

 

「なんだ?」

「なに見てんの?」

 

 なんかギャラリーが増えやがった。

 こっちは集中してるんや、散れ散れ。

 

 なんとかフィフの一手を俺は返す。

 

「チッ……!」

 

 舌打ちしてくるがそれが効いている証拠だ。馬鹿め。

 

「な、なんかすごい態度の従者だな」

 

「しかし、エクスローンの腕前は確かですぞ! 女性棋士は珍しい!」

 

 解説席がいつの間にかできていた。

 俺とフィフが座る席の隣には椅子が移動され、勝手に盛り上がる男ども。

 

 なんか学生ノリだな……。いや学生なんだけども。

 このなんでも巻き込む感じが懐かしいぜ。

 

「……死ね」

 

 普通に口に出すなよ、馬鹿野郎。

 

「おっとこれはまずい攻撃が来ましたよ!」

 

「おいお前ホントにコイツの主なのか? 舐められすぎじゃ……」

 

 二人目の明らかに体育会系の男が馴れ馴れしく肩に手を乗せてくる。

 

 フィフに舐められてないかって? 今更すぎる。

 

「僕は従者の戯言で一々腹を立てたりしない」

 

「早くしてほしい。降参ってこと?」

 

 俺から奪った駒を手の上で弄びながらフィフが挑発してきた。

 はっはっは……。はっはっは……。

 

「黙れやボケアホカスコラ。実力じゃねえぞ」

 

 あ。

 

「一瞬で虚言となりましたぞ」

 

「なんだこの主従は……」

 

 駄目だ。

 このゲームは人を無茶苦茶にしてしまう。

 

 その後も煽るフィフとキレる俺。そして、それに一々ツッコミと解説を入れてくるギャラリー。

 

 まあ、結構楽しかったよ。

 

「大変気分がいい。日々のストレスが消えた」

 

 結局、フィフに負けた。けっこう粘ったのによー。

 

 机に頭を投げ出す俺をフィフは煽りまくった。ぐぎぎ……。

 

「あのー、よろしければなのですが……」

 

「ん?」

 

 ミゲルとか言われていた奴が手を挙げて話しかけてきた。

 まあ、うん。言いたいことはわかってるよ。

 

「よろしければ僕も……」

 

「おら座れや」

 

「!! よろしくお願いしますぞ!」

 

 容赦しないですぞ!!

 

 

「うっそやろ……」

 

 だいたい三十分後、俺はボコられていた。またこの展開かよ……。

 

「…………」

 

 あんな感じで対局中のコイツは冷静沈着だった。

 最新の戦法も使ってくるし、対策を知らない俺は初見殺しであっという間に処理された。

 

「あの、失礼ですが、対戦歴はどれくらいですかな?」

 

「え? うーん……合計すると半年くらいかな?」

 

 くそう、結構ブランクがあるんだよな。あとで流行り研究しよ。

 

「……ほほう」

 

 メガネが光った気がする。どんなところに魔法使ってんだコイツ。

 

「ミゲルは大会優勝してる奴だよ。よく保ったなお前」

 

 体育会系の男がそんなことを言う。

 やっぱこのゲームの経験者よくないよ。格下殺して楽しむんだもの。

 

「ミゲルだっけ? 詳しいなら後で教えてよ。武帝国じゃ全然流行ってなくてさ」

 

「おや? 武帝国出身でしたか。いいでしょう!」

 

「良かったなミゲル。ゲーム仲間できて」

 

 純粋に喜んでいるミゲルをいい笑顔で体育会系が叩いた。

 

「オレはランザス。貧乏子爵家だぜ! コイツも大して変わんない男爵家出身」

 

 男爵以下の貴族は結構きつい生活を強いられているらしい。

 

 貴族は基本労働を嫌い、名誉職を望む。

 何も役職を持たない貧乏貴族は、嫌いな労働をするか、家を失うかである。

 

 商人と結婚をするルートもあるが、ファビッさんたちのように白い目で見られてしまう。

 

 コイツらも親の見栄でこの学園に入れられたのだろう。

 

「お前の名前は?」

 

 ……滅茶苦茶名乗りにくいんですけど。

 

「偽名でいい?」

 

「なんでだよ!」

「友情は!?」

 

 うるせえなー。

 

「友達になるなら名乗ってやるよ」

 

「どんな契約ですか?」

「お前言ってて悲しくないか?」

 

 うるせえなあああああああッ!?

 

「……じゃあギャラリー集合! よく聞け!」

 

「すごいなコイツ」

「従者しか話し相手がいない暗い人物かと思ってましたが……」

 

 ……もうコイツらへの態度決めたわ。

 

「ルクス・フォノスだ! よろしくぅ!!」

 

「…………?」

「…………?」

 

 予想通り空気が凍った。

 まあ、わかるよ。

 

 学校の食堂で話しかけた相手が、自分の国の王女と結婚する予定の大金持ちのボンボンだったんだもんな。

 

「も、申し訳ございませんでした!!」

「ひ、ひいいいいいっ!!」

 

「フィフ、逃がすな」

 

「ん」

 

「「ぎゃあああああああああっ!?」」

 

 フィフに足を引っ掛けられ、コントみたいに転げる男たち。

 

「なんで名前を名乗った友達から逃げるのかナ?」

 

「わわわわわわわ……」

「うおおおおっ!? コイツらはどうなってもいい!! オレだけは助けてくれ!!」

「えっ……?」

 

 一つの友情が終わったようだ。

 

 ぎゃあぎゃあ喚く余裕はあるんだよな。

 

「とりあえずお前ら友達な? 仲良くしようぜ?」

 

「…………」

「…………」

 

 貴族社会はダルンが言ってた通りガチで縦社会だ。

 

 伯爵家に生意気な態度を取って許されることはそうそう無い。

 

「いや……マジで普通にしてくんない?」

 

「あ、そう?」

「そっち系で助かりましたぞ」

「っぶねえ……」

「生きたァ~」

 

 マジでノリで生きてんなコイツら……。

 

 まあ、大人同士ならともかく子どもの間では案外そうでもなかったりする。

 俺にとってもこのくらいがいいや。

 

「最初に名前聞かないお前らが悪いだろ」

 

「いやいやいやいや」

「伯爵家の令息がこんなところにいるのが悪いですぞ!」

「しかもフォノス家だろ!?」

「大金持ち!」

 

 ちらりとフィフを見たが、“ここにいる理由を言ったら殺すぞ”って目をしていたので言いかけた口を閉じた。

 危ねえ。

 

「まあいろいろと気分転換にね。お前らは普段からここに?」

 

「まあな」

「安くて量が多いこの食堂は最高ですぞ!」

 

 貧乏学生のセリフすぎる。

 

「今夜は伯爵家らしく奢るから、話聞かせてくれないか?」

 

「!!」

「おお……ルクス様……」

「全部話すわ」

「アレやっていい? “メニューに書いてあるの全部出せ”ってやつ」

 

 コイツら……。

 

 さすがに食い切れるだけの量を新たに注文し、机同士をくっつけて座った。

 運ばれてくる料理は確かにボリュームがあって財布に優しかった。

 

 案外タカられることはなく、単純にコイツらとの会話を俺は楽しんだ。

 

「金ないって言うけど、生活費は保つの?」

 

「きついですぞ!」

「学園の用意してくれた仕事があってそれやってるわ」

 

「へえ、そんな制度が」

 

「雑用ばっか」

「ギルドで働くよりはいいかなあって……。あっ! 別にフォノス家がどうたらじゃなくて……」

 

「いや、フォノス家がどうたらの話だろうが……」

 

 成金を嫌う貴族たちはギルドに依頼を出すのさえ躊躇っているらしい。

 働くとなったらなおさらだ。

 

「うーん……。なあ、俺に雇われてみない?」

 

「……怖い」

「何をさせられるので?」

「借金取り?」

「闇オークション?」

 

「ちげえよ!! 俺個人が行おうとしてる事業の手伝いをして欲しいんだよ」

 

「なんだ?」

 

 興味はあるっぽいな。

 なら実際に見てもらう方がいいか。

 

「演劇をやろうと思ってて、その営業とか受付とかが足んなくてさ。ギルドで探すと仲介料取られるし、来る奴らもあんま信用できなくてな」

 

「ほほう」

 

「お前らなら逃げても追えるし」

 

「ほほう……?」

 

 一斉に首を傾げる野郎ども。仲良しか。

 

「まあどんなものやるか知らなきゃアレだし、明日学園の第三ホール来てくれ。そこでいつも練習してる」

 

「なんかおもろそう」

「ちなみにおいくらで?」

 

 あー…どれくらいがいいんだ?

 

「確定で一日200ロルド! 売上が出たらさらに増える!」

 

「明日絶対行くわ」

「フォノス家バンザイ!」

「母ちゃん俺……俺……家捨てるわ……」

「毎日定食食えるぞ?」

 

 コイツらほんま……。

 

 次の日、コイツらはなんか他にも友人を連れてきた。30人くらいになってた。

 こんなに貧乏学生いたのかよ。

 

「うおおおおああああああああっ! 王女様ぁあああああああ!」

「白騎士様かっこよすぎだろ!!」

「あ? 黒騎士様の男らしさがわかってねえのか?」

 

 演劇を見た奴らは即答で働くと言った。まあ、ならもういいや。

 

「あの、僕『ロク』ちゃんが好きになっちゃったんだけど……」

 

 なんか叶わぬ恋が始まってる。

 演者である彼女たちがゴーレムであることはおもろいので黙ってることにした。

 

 卒業する時にでも暴露してやろう。

 

「ルクスー、ここの研究会なんて名前なんだ?」

 

「え? 特には決めてないけど」

 

「決めましょうぞ! ルクス殿!」

 

 ミゲルとランザスがなんかまとめ役になってる。

 っていうか待て。

 

「お前ら……何言ってんの?」

 

「何って()()()()()だしな!」

「そうですぞ! 打倒ヴァリアント・ローズ!!」

 

 馬鹿言ってんじゃねえぞ? あとその相手ルクスの天敵なんスわ。

 

「ええー……?」

 

「でも、実際オレらも入ったほうがよくないか?」

「研究会の活動として予算を貰える可能性がありますぞ」

 

 なんで理論武装してくんだよ……。

 

 なんだかんだ俺もノリに騙され、あれよあれよという間に俺の派閥ができちまった。

 

 トップ層に比べれば吹けば飛ぶような弱小派閥だが、単純に居心地が良かった。

 

 野郎同士の馬鹿なボケとくだらない雑談。講義の課題が終わらないと嘆き、終わっている者がそれを煽る。

 遠い日の風景が思い出され、俺もそれに混じった。

 

 その研究会の名前は『遊興楽団』。ただ楽しむことを研究するお遊びグループだ。

 

 でも──だからこそ、俺には素晴らしいもののように思えるのだった。

 

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