とうとう始まりました長編シリーズです。
今回はいつも以上のカオスとシリアス?をひとつまみしてお送りします。
感想、評価共に待ってまーす!
パンパンっ!!
きゃーきゃー
わぁーわぁー
学園の至る所で賑やかそうな声が響き渡る。
見渡せばトレセン学園の生徒のみならず、一般の老若男女から、地方のトレセン学生と様々な人が学園を訪れていた。
そして学園内では様々な出店があり、生徒や業者が美味しい匂いを綴らせながら焼きぞばにたこ焼き、クレープ、じゃがバタ、焼き鳥、ベビーカステラ、綿飴と日本人のDNAが疼く光景が広がる。
そんな並木通りを歩く2人の男性がこの光景にある疑問を抱いていた。
「近年、トレセン学園の中央トレーナーの数が減っているとのことだ」
「どうした急に」
「今年の感謝祭のメインが何か知ってるか? 中央トレセントレーナー達による運動会・・・・名称・・・踊るトレセン大運動会だ!」
場所は変わり、トレセン学園運動場。
ここでは普段ウマ娘達が体育の授業や、練習に使用する等、通常の学園の運動場の十何倍以上の広さを誇っている。
そんなトレセン学園運動場の中心にいたのはウマ娘ではなく・・・・
『・・・・・・・・・・』ず~~~~~~ん
中央トレセントレーナー達が死んだ目でジャージを着て立っていた。
ターフの中には魔物が住むの~~~♪
頼れる仲間は~~~~皆目が死んでる~~♪
大体そんな感じ~~~♪トレセン日和~~~♪
「作者ぁ!!!てめえ調子ノッってんじゃねーーぞ!!コラァ!!!」
「うわ!急にどうしたグレトレ!」
「ビックリしたじゃないか・・・」
「だ、大丈夫ですかグレトレさん!あ、船橋産の梨ジュースでも飲みますか?美味しいですよ」
声をかけてきたのは、同期のマルゼンスキーのトレーナーことマルトレ、ミスターシービーのトレーナーことシビトレ、そして中央トレセンの資格を取る際に世話したフリオーソのトレーナーことフリトレである。
3人はグレトレと同じく青の鉢巻きとジャージを着てこのトレーナー集団の先頭に立っていた。
「いや、すまねえ・・・どうにも悪意ある文章を並べられた気がしてな・・・」
「仕方ないさ・・・こんな見世物・・・」
「このチーム分けだって・・・納得いかないよ俺・・・」
「まさか高等部担当が赤と中等部担当が白・・・そしてチームトレーナーと担当が寮に住んでいない人たちは青なんて・・・」
「畜生・・・ただでさえ、チームトレは人数的に個人トレより少ないってのに・・・トレセンの3割ぐらいだぞ!」
「寮に住んでいないウマ娘なんて数える程しかいませんからね・・・」
適当な人選に嘆く男達。
すると後ろの方から声が掛かる。
「あの・・・私は戦力外にしか・・・」ズーン
声をかけてきたのはマルトレ、シビトレ、グレトレの同期であり、元理事長代理も務めたチームファーストのトレーナー、樫本理子である。
今日は運動会ということで、いつもの耳飾りも外し、慣れない青ジャージ服に身を包む。
だがその顔は極度の緊張からか、土色に染まっており、今にも死にそうな様子である。
それもその筈、ウマ娘の良識者は既に理解していると思われるが、彼女の運動音痴は周知の事実であり、最近はそれに拍車が掛かり、チームのウマ娘に介護紛いまでされている程だ。
「だ、大丈夫だ樫本!俺たちが付いている!」
「そ、そうだよ樫本さん!」
「ああ、俺たちが君を守から!!」
「何でしょう・・・・知らない人が見たら乙女ゲーのヒロインみたいな絵面が・・・」
心配するグレトレ達を余所に、フリトレはこの光景を一言で表現したのだった。
ブーーーーーーー!!!
「あ、集合のサイレンですね・・・」
「仕方ない並ぶか・・・」
「・・・・まずは本日、天候にも恵まれ、トレーナー誰1人休まず、ファンの方々も満員御礼と、全てのことに対して、感謝っ!!!!」
壇上にはマイクを握りつつもジャージ姿の理事長が嬉しそうに話す。
「・・・来なきゃ三ヶ月の減俸とか・・・ふざけてるぜ・・・」
グレトレの皮肉めいた小さな声がマイクの音量にかき消される。
「諸君、今宵はトレーナーとして、日々邁進してるであろう!皆がウマ娘たちを熱心にサポートしてくれてきたこと、真に感謝!さて今回の運動会だが、例年以上に力を入れさせて頂いた。テレビ局からも放送枠を買い取り、この運動会の内容は生中継で配信させて頂く!!」
『な、なにぃぃぃぃ!!!!』
理事長が扇子を指した方向にはテレビクルーの車両やカメラにガンマイク、リポーターなどが勢揃いしていた。
「ち、チバテレも来てるのかな!?」
フリトレは少し興奮気味になりながらもテレビスタッフの方向に視線を向ける。
「バカヤロウ!!浮かれてんじゃねえ!あのロリやりやがったな・・・」
「どういうことだグレトレ?」
興奮気味のフナトレを怒鳴り、理事長の睨み付けるグレトレと状況を理解出来ていないマルトレ。
「テレビクルーが来てるんじゃ、俺たちトレーナーもやる気なしなところをウマチューブのショート動画なんかに上げられてみろ・・・炎上不可避だ・・・」
「そ、そんな・・・」
「しかも最悪、担当にまで被害がいく可能性も・・・」
これでやる気のない運動会をしたら担当に被害が行くかもしれない現状を理解する多くのトレーナーたち。
その中には顔を青くするものや、グレトレと同様で理事長を睨み付ける者まで現れる。
そんな殺気立つ中、理事長は屋外ライブなどで扱う大型モニターの前に立つ。
「諸君らの健闘を祈るために学園からは今回の運動会にて優勝したチームには褒美を取らせることにした・・・たづな!!」
「はい!皆さん、こちらの画面に注目下さい」
同じくジャージ姿のたづながマイクを握りながら、空いた手で、運動場に隣接された大型モニターの方を指す。
「まず今回の優勝者チームにはもれなく強制有給休暇を10日もあげます。もちろん休暇を返上する際はその分の給料を贈呈することも可能です♪」
『な、なんだって~~~~!!!!!』
これは多くのトレーナーが目を光らせる。
それもその筈、この中央では、担当の成績=給料といっても過言ではない。
グレトレのように担当の多くがG1を勝ち取っている場合はその辺の国会議員よりも高給取りである一方、成績の振るわないトレーナーの給料は最低賃金ほどしかない。
そして、トレーナーは普段激務であることから、休みなど存在しないといっても過言ではない。
そのため、この休みorボーナスは薄給の彼らにとって、地獄に垂らされた糸の様な存在なのだ。
「おっしゃぁ!!やるぞーーー!!!!!」
「勝って母ちゃんに孝行できる!!」
「やっと・・・やっと・・・休めるのか・・・」
ほぼ七割のトレーナーが嬉しそうにやる気を出し始める中、グレトレは険しい顔をする。
「やりやがるな・・・サラリーマンの様に年二回のボーナス制度の無いトレーナー業においてこれは効く」
「うちの青チームも結構嬉しそうにしている人が多いよ」
「それはそうだろう・・・チームトレで成績良いところは少ないし、担当たちにご飯やご褒美なんて出していたら、すぐ金欠になるし・・・」
「話で聞いたことあります、チームトレのエンゲル係数は半端じゃないって・・・そうなると先輩のところとかすごいんじゃ・・・」
「・・・・オグリとのおでかけでどんなに安くても数十万は飛ぶからな・・・まあそれ以上に稼いでいるから、俺は平気だけど・・・」
「さ、流石、凱旋門賞トレーナー・・・」
「俺の事は良い・・・それよりもウチ含めて、一気にやる気が起き始めたな・・・」
「さらに!今大会で優秀な成績を収めた方々のところには・・・・・ファーストクラス付で世界の何処にでも旅行が出来る権利を与えます!!」
「うむ!!アメリカ、ヨーロッパのみならず!!可能な限りの海外への旅行権を贈呈しよう!!!」
『うおおおおおおおお!!!!!!!』
その言葉を聞き、会場内にいたトレーナーたちのボルテージが一気に高まる。
「よっしゃああ!!妻と念願の海外旅行に行けるぞ!!」
「よっしゃあ!これでやっと新婚旅行にいける!!」
「彼女とワイキキ・・・いやグアムも捨てがたい!!」
「凱旋門・・・生で見たいな・・・」
「オーストラリア・・・エアーズロック・・・くぅぅ~~♪」
これにはG1トレーナーたちも大喜びのようで、その中には見知った顔ぶれもいた。
「はあ・・・興味ないな・・・」
「それ言えるの先輩だけですよ・・・」
一方、アメリカもフランスにも行っていたグレトレとしては、今ひとつのようで、少しがっかりした様子になる。
そんなグレトレにフリトレが苦言をする。
その頃観客席では・・・・・・・・・・
「よっしゃあ!!頑張れトレーナー!!目指せ海外旅行!!」
「ウソでしょ!!絶対に勝たないで!!奥さんと旅行なんて認めないんだから!!」
「これでチームが勝てばトレーナーは休み・・・遊び倒そうかな・・・」
一方ウマ娘たちの方は素直に嬉しそうにする者もいれば、ゲート不備勢のように悔しそうに負けを望む者、普通に休みだけを狙って、トレーナーとどう休日を過ごそうか考えるものと、色々に別れていた。
そんな中・・・・チームグレイの4名はというと・・・
「こちらもすごい熱気だな・・・」
「ええ・・・正直私たちにはあまり興奮するような物ではありませんが・・・」
「トレーナーさん、今は昔ほど忙しくないもんね~」
「せやな・・・海外に関しても、ミラ子とゴルシの時にパリ行ってるし・・・ドバイもオグリで行ったしな・・・」
「あの時の皆さん、特にタマさんの慌てようはスゴかったですわね・・・」
「仕方ないやろ!パリもドバイも物価高すぎやでホンマ!!」
「私もパリはもう良いかな・・・あの時は観光とか言って騙されてレースに出されて苦労したし・・・」
「凱旋門賞バが言うなやっちゃ・・・」
「未だに思い出しますが、よく勝てましたわね・・・」
「ゴールドシップの時と違って奇跡のような勝ち方だったな・・・」
思い出すはミラ子の凱旋門賞挑戦及び、チームグレトレ初の海外遠征。
サポーターとして佐岳メイが付いていった。
当時のメンバーはタマにオグリ、ハヤヒデにマックイーン、スカイとヒシミラクルの面々。
学園からはチームグレイが代表として選ばれ、グレトレが選んだのはミラクルであった。
当時のグレトレが言うには・・・
「正直色々と万全に準備していくけど、まあミラクルかな」
そしてグレトレは彼女には敢えて、海外遠征の練習会及び、ロンシャンに出てみようぜと騙してパリに行ったのだ・・・
その後、フォア賞でギリギリの2着をもぎ取ると、練習と観光を巧に調整し、レース三日前までギリギリ凱旋門賞出走の事実を隠していた。その上、彼女以外のチームメンバーはその事実を知っており、ものすごく怒ったという。
そしてレース当日。日本は否、世界はこの衝撃を忘れなかっただろう・・・
レース開始から1500m時点でヒシミラクル・・・バテる!
その様子を見ていたチームの面々にメイ、トレセン学園で見守っていた人たちに観客は思った。
『終わった・・・・』と・・・・
しかしそんな中、1人だけその状況を見て、勝利を確信した人物がいた。
「あ、勝つな・・・これ・・・」
そうグレトレであった。
その一言はパチンコで先バレ演出をくらったような反応であり、彼は勝ち確を信じ、あまつさえ煙草に火を点け始めたのだ。
そしてレースでは、ミラクルの周りにいた名だたるウマ娘たちはミラクルを放置する。
欧州や海外ではチームを組んで勝たせることもあり、フォア賞で2着のミラクルも警戒対象であったが彼女のバテ顔を見て警戒を解いてしまったのだ。
高速馬場の日本においてはスピードが重視される。しかし、欧州では高低差と芝の関係からか、スタミナが重要視される。
だからミラクルは不慣れな環境でバテたのだと思われたのだ。
そしてレース後半状況は流転する。フォルスストレート中盤でバテたままミラクルが加速し始めたのだ。
しかし、それを見たグレトレ以外の全員がミラクルは正常な判断が出来ていないと悟る。
誰も追うことは無く、最後の長い直線で振り切れば良い・・・そう判断したのだ。
だが・・・・
『ヒシミラクル!!ヒシミラクル!!掛かったと思われたジャポンのウマ娘!!落ちるどころか、じわじわと加速していきます!!!!!!!!』
フォルスストレートからコーナーを脱出後、ヒシミラクルはさらに加速していったのだ。
『!!!!!』
後続のウマ娘もその状況に気が付いたのか、慌てて追い始めようとする。
しかし、長い上り坂と下り坂を経てからのフォルスストレートで、その上慌ててのスパートに完全にタイミングを崩された他のウマ娘たちはそのままミラクルを追い続けるも、時既に遅し・・・
前日の雨でいつも以上に荒れた馬場により、スタミナも尽き、加速もあいままならないままレースはヒシミラクルの勝利により幕は閉じた。
結果、2着に3馬身の差を開け、名の通りヒシミラクルは凱旋門賞を勝ち、奇跡をおこしたのだ。
レース後のインタビュー時にグレトレは語ったのはただの一言・・・
「ミラクルが起きました」
惜しくも菊花賞と同じコメントを語ったのだった。
その後、日本にて、記者会見の際、グレトレはヒシミラクルのご機嫌を取る事の方が辛かったとも乙名史悦子に愚痴ったのだった。
「そんな凱旋門賞バが今じゃ隣でお好み焼き食うとるもんな・・・」
「え~~だって屋台のお好み焼きってなんか美味しく感じない?」パクパク
「わかるぞ!」バクバク
「オグリも食い過ぎや・・・なんやその山の様なじゃがバタは」
「ですがベビーカステラなど、出店でしか味わえないのもまた乙ですわね♪」パクパク
タマが呆れる中、食べることが大好きな3名は出店の食べ物を買い込み、たまたま見つけた見晴らしの良い場所でグレトレの私物であるキャンプ用の折りたたみのベンチ(スノーピーク)に座り、観戦していた。
一方、その頃・・・・・・反省部屋では・・・・
「ああ、生で見たかったな~~~」
「うむ、トレーナー君が青チームの先頭に立っているな」
「あそこの端っこに映ってんのマックちゃんたちじゃん・・・もう出られたのかよ」
「オグリさんの山盛りの料理のおかげで分かりやすいですね♪」
重罪部屋の住人たちも本日は視聴覚室にて全員で映像を見ることになっていた。
「出して下さい!!!!!現地に行かなくては!!!」
「おい、こら暴れるなクロノジェネシス!!」
「こいつ小さい癖にすごいパワーだぞ!!」
「現地へ見に行くんです~~~~!!うわ~~~ん!!!」
愛するトレーナーの勇姿を網膜に焼き付けようと暴れるクロノジェネシス。
刑務官ウマ娘に取り押さえられながら大泣きし始める。
「それにしても理事長はどうしてこんなことしたんだろ?」
「カレンくん、そのことに関してだが、おおよそだが見当はついている」
「まあ、ぶっちゃけトレーナー不足だからな・・・中央・・・」
「主にウマ娘の逆ぴょいだけどね~~」
カレンの疑問にハヤヒデ、ゴルシ、スカイが順番に答える。
「最近じゃ募集も減ってるっていうしな~~」ボリボリ
「まあ私達の立場からすると否定し辛いよね~~」ゴクゴク
ゴルシとスカイは呑気に刑務所グルメのアルフォートとコーラを嗜む。
「なんでアルフォートとコーラなんですか?」
「ふむ刑務所のお菓子はアルフォートとコーラが良いとされてるとか」
「何処知識ですか・・・」ポリポリ
「お、始まるみたいだぜ」
ゴルシがそう言うと、大型モニターの理事長が開催の宣言を始める。
「それでは選手代表として、紅組代表ルドトレ!白組スペトレ!青組代表グレトレ!前に!」
「はい」
「はい!」
「へ~い」
静かに返事をするルドトレと、真面目に返事するスペトレに対し、いつもの様子で返事をするグレトレの3人は理事長の前にたち選手宣誓を行う。
ルドトレ「宣誓!!」
スペトレ「私達トレーナー、一同は!」
グレトレ「ありとあらゆる手段を尽くし~~」
ルドトレ「今日来ている妻に良いところを見せる為!」
スペトレ「かわいい担当の為ー!!」
グレトレ「スナック、キャバクラのネタ話にする為!」
「「「正々堂々戦うことを誓います!!!!」」」
「真面目にやらんかー!!!」
パンパンッ!!!
その言葉を聞き、理事長は怒ってツッコミをするが、予定通りに色煙付の音花火が大きく鳴り響く!!
こうしていつものぐだぐだした感じで地獄の運動会が始まるのであった。
次回予告
テンッテテテテ~~ン♪ テーンテーテン~♪(某機動戦士次回予告)
こうして始まったトレセン運動会・・・戦いは多くの戦士(トレーナー)を巻き込み混乱の渦へと誘う。
果たしてグレトレたちは無事でいられるのだろうか・・・
次回「一項目目 狩り物競争 フリトレ散る」
君は生き延びることが出来るだろうか・・・